文花座

歌舞伎、宝塚歌劇団、劇団四季・・・大好きな舞台の感想をつらつらと♪

幕間の歌舞伎語り♪

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★初めての方は「その1」からお読み下さい★
「その1」 http://blogs.yahoo.co.jp/hana_yukiyanagi/53216454.html
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【第9回テキスト 義太夫原文】
おみつは親の気をかねて、答へなければ久松擦り寄り、「この身の手詰は遁れても、この御暮らしで余程の銀、後でお前の御難義には」
「ハテ俺ぢやとて相応のかくまひはせまいものか。始末してためたあの銀は、黒谷の方丈へ上げる冥加銀気遣ひしやんな。まんざらあればかりでもないわいの。
改めて言ふではなけれど、末はわが身と一つにする約束で、このおみつは婆が連れ子、あれも否でもないそふなり、折もあらば親方殿へ暇の事を願はふてみやうと、これがほんの儲け重宝、もふ大坂へ去なしはせぬぞよ。
早却なれど日柄もよし、今日祝言の盃さすぞ。なんとおみつよ、嬉しいか、アノマア嬉しそふな顔わいやいハヽヽハヽ。
われらは又頭を丸め参り下向に打ちかゝらふと、頼み寺へ願ふて袈裟も衣もちやんと請けておいたてや。
幸ひ餅はついてあり、酒も組重も、正月前で用意はしてある。サアサア早ふ拵らや」と、薮から棒を突つかけた、親の詞に吐胸の久松、知らぬ娘は嬉しいやら、又恥づかしき殿設け、顔は上気の茜裏袂くはへるおぼこさを見るにつけても今更に否応ならぬ親の前、急に思案も出の口の壁にいの字を垣一重。
裏の病架に咳嗽く声、「ホンニこちらのことに取込んで、定めて婆が淋しからふ。
久しぶりで久松にも逢はして、この事を聞かしたら薬より効目がよい。ハテ俯いてばかりゐずと、おみつよ、鱠も刻んでおけ。久松おぢや」と、先に立ち悦び勇む親の気を、知つて破らぬ間似合紙、襖引き立て、入りにける。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

【原文】
おみつは親の気をかねて、答へなければ久松擦り寄り、「この身の手詰は遁れても、この御暮らしで余程の銀、後でお前の御難義には」

【解説】
店への弁償に大金を差し出し、ひとまずの危機は脱したものの・・・ふたりの胸に不安が広がります。
(お父さんはこのお金を、いったいどうやって工面したというのか――)
あれほどの大金、貧乏所帯にあるはずもないのです。
悪いほうへの想像ばかりが膨らんで、お光は父親に問うことができません。沈黙に耐えかねた久松が久作に擦り寄って問いかけます。
「私のトラブルは解決して頂きましたけれど、この・・・貧しいお暮らしであれほどの大金を失っては、今後、お父さんに大変な思いをさせてしまうのじゃないですか」

【原文】
「ハテ俺ぢやとて相応のかくまひはせまいものか。始末してためたあの銀は、黒谷の方丈へ上げる冥加銀気遣ひしやんな。まんざらあればかりでもないわいの。

【解説】
久松の心配に応える久作の台詞。
「なにを言うかと思えば、子供のくせに余計な心配をしなさんな。いくら頼りなく見える俺だとて、自分の息子をかばってやるのにこれぐらいのことできないでどうするものか」
そして、お金の出処は?という暗黙の質問に答えます。
「あのお金は、節約してコツコツ貯めたへそくりだよ。(黒谷の方丈=)お寺さんへのお布施にしてありがたい念仏でも唱えてもらおうと思っていたが、まぁそんなことせずとも死にゃしない。いわば余分の金さ。」
そして、心配する二人の気を引き立てようとでもするかのように。
「なぁに、あれでへそくり全部ってことはない。まだあるから心配には及ばないよ」
たぶん、嘘。でも、こう言われた上でなお心配することは、父親の甲斐性を否定するようなもの・・・
息子と娘は、その優しさの前に、ただただ黙って胸の中で手を合わせるしかありません。

【原文】
改めて言ふではなけれど、末はわが身と一つにする約束で、このおみつは婆が連れ子、あれも否でもないそふなり、折もあらば親方殿へ暇の事を願はふてみやうと、これがほんの儲け重宝、もふ大坂へ去なしはせぬぞよ。

【解説】
久作の台詞が続きます。久松に向かって。
「改めて言うまでもないことだが」
末(=将来)は「わが」身と一つにする・・・ここの「わが」が「わが(娘)=お光」のことを指しているなら「お光」と「一つにする=一緒にする、夫婦にする」約束で、ってことで文意はスムーズにつながるんですが、一人称で「わが」って言ったら自分(=久作)のことを指してる可能性のほうが高いのかなぁ?
自分(=久作)と一つにする、同じものにする、といったら「家を譲って跡を継がせる」という意味になるのかな。どっちでしょう?誰か教えて(←いいかげん(^^;)

「このお光は婆が連れ子」
前出のことですが、この家の人間関係、お光ちゃんはお母さんの連れ子です。今のお父さん=久作とは血のつながりはないんですね。

「あれ(=お光)も久松との結婚を嫌がってはいないようだ。いい時をみはからって久松の勤務先へ相談し、そちらを退職させてもらって、家へ戻ってきてもらうつもりでいたら、(向うから帰してよこした。)こりゃ都合のいい、手間がはぶけてラッキーってもんだ。久松、もう大坂へは行かせないぞ」
「行かせないぞ」って言い方、戻る必要も義理もない、久松の進退の主導権はこちらだと言わんばかり。彼の気持ちを引き立てて楽に思わせてやろうとの配慮ですよね、優しいお父さんだよなぁ。

【原文】
早却なれど日柄もよし、今日祝言の盃さすぞ。なんとおみつよ、嬉しいか、アノマア嬉しそふな顔わいやいハハハハハハ。

【解説】
久松はもうこちらから願って退職させてもらうことに決まった。家では許嫁の娘がまさに結婚適齢期、準備万端!それならば・・・
「急ではあるが、日柄もいい(=大安か友引?)善は急げだ、今日、結婚式をするぞ!」
急も急、お光はビックリ!長年の夢が一気に現実になり、喜びを抑えていろってほうが無理です。
嬉しさが表情に溢れてしまうのを「アノマア嬉しそふな顔わいやい」とからかわれてしまいます。

【原文】
われらは又頭を丸め参り下向に打ちかからふと、頼み寺へ願ふて袈裟も衣もちやんと請けておいたてや。

【解説】
我ら、とは久作(=お父さん)とその妻(=お母さん)のこと。
「頭を丸め」=仏門に入り「参り下向に」=仏教修行に「打ちかかろふ」=とりかかろう・・・ということですけれども、まぁここは正式に出家するというほどじゃなく、隠居して念仏三昧の生活に入ろう、程度の意味でしょう。
常々「そろそろ・・・」と思っていたから、そこは根回しよく(笑)もうお寺にお願いして、袈裟や衣といった仏道修行のための服もちゃんと貰ってあるんだ♪と言います。

すでにこの家に準備されていた袈裟、衣。
実は後に、重要な小道具として使用されることになりますが・・・それはまた、後の話。

【原文】
幸ひ餅はついてあり、酒も組重も、正月前で用意はしてある。サアサア早ふ拵らや」と、

【解説】
ちょうどラッキーにも、今はお正月前。普段はないお餅も、お酒も、組重(=かさねた重箱。つまりおせち料理)のごちそうも準備できている・・・コレを全部、結婚式のお祝いに転用しちゃえばいいじゃないか!ってワケです。
そして、お光にさぁ祝言の準備をしなさい、と告げるのです。

【原文】
薮から棒を突つかけた、親の詞に吐胸の久松、知らぬ娘は嬉しいやら、又恥づかしき殿設け、顔は上気の茜裏袂くはへるおぼこさを見るにつけても今更に否応ならぬ親の前、急に思案も出の口の壁にいの字を垣一重。

【解説】
この急展開、晴天の霹靂、藪から棒とはまさにこのこと!
親(=久作)の言葉に久松は「あっまずい」と思う、けれど咄嗟の反論も出てこない。胸を突かれてハッとするのです。彼には、義理と恋慕に縛られた複雑な事情がある・・・
何も知らないお光は、ただただ夢が叶った!とその喜びと驚きばかりです。嬉しくもまた恥ずかしい「結婚」・・・顔は真っ赤、まるで着物の裏地に使う茜色みたい。袂で口元をおおって恥ずかしがるおぼこさ(=純情、無邪気、可憐)といったら!
久松とて、ともに育った兄妹分、彼女が憎いわけなどないのです。むしろ愛しい、傷つけたくはない。しかし・・・久松は思考フリーズ状態で、ただただぐっと押し黙るばかり。

【原文】
裏の病架に咳嗽く声、「ホンニこちらのことに取込んで、定めて婆が淋しからふ。
久しぶりで久松にも逢はして、この事を聞かしたら薬より効目がよい。ハテ俯いてばかりゐずと、おみつよ、鱠も刻んでおけ。久松おぢや」と、先に立ち悦び勇む親の気を、知つて破らぬ間似合紙、襖引き立て、入りにける。

【解説】
ト、そこに奥の病室から咳をする声がし、一同は病気で臥せっている婆(=お母さん)の存在に心つきます。
お光と久松が結婚して、この家で新しい生活が始まる!この家族にとって、これ以上に喜ばしいことなんてないのです。早速に知らせて嬉しがらせてやろう、どんな薬より元気が出るにちがいない!と久作は浮き立ちます。
照れ恥ずかしがって俯くばかりのお光を、一人にして落ち着かせてもやろうと、久作は「婚姻料理の膾を作っておきなさい」と命じ、久松を連れて奥へ入っていこうとします。
久松は、といえば・・・胸は憂鬱に沈んでいますが、若い二人の幸せばかりを願ってこれほど喜んでいる親の気持ちを傷つけることもできません。
間似合紙(=まにあいがみ)とは襖紙(=ふすまがみ)のこと。襖の紙の部分は傷つきやすく破れやすいため、触れぬよう注意を払って扱うべきものです。親の心をそれにたとえて。
そして、久作と久松は奥の病室へ。お光は一人、残されました。

――「その10」 http://blogs.yahoo.co.jp/hana_yukiyanagi/57000841.html に続く――

「歌舞伎狂言『仮名手本忠臣蔵』検定」 http://minna.cert.yahoo.co.jp/yvzu/17171?is_new=0
「歌舞伎一門『中村屋』検定」 http://minna.cert.yahoo.co.jp/yvzu/26056
に引き続き、作ってみました第3弾♪

題して・・・
「歌舞伎狂言『新版歌祭文 野崎村』検定」!
URLはこちら↓
http://minna.cert.yahoo.co.jp/yvzu/283673

舞台は穏やかな時が流れる田舎の百姓屋。
春がすぐそこに迫った、とある一日―――
田園風景に、咲き初むるは梅の花だけじゃありませぬ。
紅い蕾が緩むがごとくほのぼのと「女心」の花開く、可憐な少女・お光。
からむは、悲劇の渦中で生まれ持った身分をやつす、薄幸の美少年・久松。
そして、身分は大家のお嬢様・蝶よ花よと傅かれ、その美貌たるや百花の王とばかりの油屋お染。
静かに暮らしていた彼女の上を、たった一日で過ぎ去った人生最大の花嵐。
それが『新版歌祭文 野崎村』のドラマ!

この狂言を題材に、作ってみましたマニアック検定♪
使用はもちろん無料です。
設問は全10問、ドラマの進行に合わせてストーリーから・衣装小道具から・演出から・・・といろんなところをピックアップ。
合格は7問以上の正解ですが、イヤイヤ、なかなか厳しいと思いますよう(^皿^)←Sっ気全開

我こそは!の『野崎村』ツウ、初耳よ!の『野崎村』ビギナー、どちらもさまも大歓迎!
お時間とご興味のある方は、どうぞ試してみてくださいませ(^▽^)

多分私も取れない!?満点なんざゲットした方がいらしたら、ぜひご報告くださいねぇ!

★初めての方は「その1」から順番にお読み下さい★
義太夫を読む!第一弾 『新版歌祭文 野崎村』 ―その1―
http://blogs.yahoo.co.jp/hana_yukiyanagi/53216454.html

【第8回テキスト 義太夫原文】
「ソレ久松が引負の銀、渡したからは言分あるまい。とつとゝ持つて去なしやれ」と、聞いておみつも久松も思ひがけなき驚きに、小助もぎよつとしながらも、包み改め、「こりや正真ちや正真ちや。吹きや飛ぶ様な内のざまで、泥亀三つで一貫五百匁。出難い所からよふ出たな。銀受け取るからは言分ないわい」
「オヽそつちに言分がなふても、こつちにグツと言分がある、と言ふも古い物ぢや。
これまでお世話になつた親方様、御恩こそあれ恨みはなけれど、人に欺され取られた銀、引負の悪遣ひのと、無い名を付けて貰ふてはどふも済まぬ、と言ふて無理隙取るではない。暫く親が預つて置く程に、この通り言ふたがよい。モウ二十年俺が若いと、わごりよにはぐつと馳走もあれど、入らざる殺生。サア/\早ふ去んだがよかろ」と言はれてどふやら底気味悪く「ハテ銀の出入りさへ済んでしまや外の事はお構ひないわい。ドリヤさらば御暇申さふ」と打違取り出し、捻ぢ込み押し込み。
「ハア命冥加な一貫五百匁、内へ往んで出したところが、蛙になつてゐやせまいか」
「ハテ仇口を聞かずとも、足元の明い中」
「オヽヽヽ去ないぢや去ないぢや去ないぢや。銀こそは主の物、なんのその俺が手に、俺がコウかたげて、俺が足で、俺が歩いて、俺が体で、俺が去ぬるに、ぐつとも言分ない筈ぢや」と、へらず口して、とつぱ門口柱で頭、「ア痛、し」小助は足早に、大坂の方へ立ち帰る。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

【原文】
「ソレ久松が引負(ひきおい)の銀、渡したからは言分あるまい。とつとゝ持つて去なしやれ」と、聞いておみつも久松も思ひがけなき驚きに、小助もぎよつとしながらも、包み改め、

【解説】
土産の山芋を包んでいたはずの藁苞の中から転がり出てきたのは、なんと高額の銀貨でした!
お光も久松も、そして小助も驚きのあまり声もないところへ、久作の台詞。
『引負』=「主家の金を奉公人が使い込むこと」この場合、その疑いがかけられているというだけで実際に着服したわけではないのですけれども、「主家に損失を与えた分の銀」ということですね、その分だけの銀がここにある。それを返すからにはもう文句はあるまい、コレを持ってとっとと店に帰れと言い捨てます。
貧乏所帯に金がないことを見越し、かさにかかって久松を嬲りに嬲っていた小助は予想外の展開にぎょっとし、その銀はにせものではあるまいかと確認します。

【原文】
「こりや正真(しょうしん)ちや正真ちや。吹きや飛ぶ様な内のざまで、泥亀(どんがめ)三つで一貫五百匁。出難い所からよふ出たな。銀受け取るからは言分ないわい」

【解説】
小助の台詞。
『正真』=「偽りのないこと。本物であること」、この銀は本物だ。吹けば飛ぶような貧乏所帯で、『泥亀』=これは確認がとれなかったのですけれど、文意からいくと丁銀のことを泥亀って言ってるみたいですね。丁銀=海鼠(なまこ)の形をした銀の塊ってことですから、見かたによっては泥亀みたいにも見えるかもしれない?ための俗称かも。で、泥亀(=丁銀)3つ=一貫五百匁の換算率である、それは久松が店に与えた損失ぶんちょうどの金額だと。
金がないところからよく出したな、と捨て台詞に皮肉ってみせ、金さえ戻れば文句はないと言います。

【原文】
「オヽそつちに言分がなふても、こつちにグツと言分がある、と言ふも古い物ぢや。
これまでお世話になつた親方様、御恩こそあれ恨みはなけれど、人に欺され取られた銀、引負(ひきおい)の悪遣ひのと、無い名を付けて貰ふてはどふも済まぬ、と言ふて無理隙取るではない。暫(しばら)く親が預つて置く程に、この通り言ふたがよい。モウ二十年俺が若いと、わごりよにはぐつと馳走(ちそう)もあれど、入らざる殺生。サア/\早ふ去(い)んだがよかろ」と言はれてどふやら底気味悪く

【解説】
金を受け取り、これで文句はないと引き下がった小助に、今度は久作が言い分をぶちまけます。
「オイ、そっちに文句がなくてもこっちにはどうしても言いたいことがある!」、続く『と言ふも古い物ぢや』=って、なんでしょう(^^;コレわかんない・・・何が古いんだろ?分かる方いらしたら教えて下さい。で、分からないところはサクッととばすイイカゲン解説、先へ進みます。
これまでお世話になった店のご主人様には感謝こそすれ恨むなんてことはないが、今回のことは久松の責任とはいえ、その罪は真犯人に騙され陥れられたうかつさという点においてのみだ。それを『引負の悪遣ひの』=「使い込みだ、悪所通いのために使った、などと」根拠のない罪までひっかぶせて糾弾してきたことは無体な名誉毀損だ、絶対に許せない!しかし怒りはあるが、かつての恩は恩、それを忘れて久松を店から無理に奪い返すということはするまい。ここはしばらく親が身元を預かっておくという名目で、久松をすぐには店にお帰しませんぞ。ご主人にそう伝えておきなさい」
親として息子の名誉をしっかりと守護します。頼りがいのある、理詰めの言い分ですね。
そして「俺が20歳も若い血気盛りだったら(小助に対して)『馳走』=「返礼」、つまり暗に(てめぇが俺の息子にしたことに対してこぶしで報復もしようがな)と過去の血気盛んぶりをちらつかせ、小助を脅します。さっきまんまと投げられた小助、この親爺をノセると怖いのは承知済み。そういわれてぞっとします。

【原文】
「ハテ銀の出入りさへ済んでしまや外の事はお構ひないわい。ドリヤさらば御暇申さふ」と打違取り出し、捻ぢ込み押し込み。

【解説】
立場逆転、これ以上ここにいてはかえって面倒、とばかりに小助の台詞。
「金さえ取り戻せれば、ひとまず他の事情は不問に伏して構わねぇや。さっ、そんなら帰ろうか・・・」と『打違』=コレもわかんない(←これ多い(T^T))文意からいくと、金を納めておく場所のことみたい。着物の襟元とかのことかな、それとも財布や袋みたいなものかな?ちなみに辞書の意だと「十字形に交差すること。また、その形。ぶっちがい」なので、紐で縛るイメージもありますが、よくわかんないです。ま、それに銀を捻じ込み、押し込み。

【原文】
「ハア命冥加な一貫五百匁、内へ往んで出したところが、蛙になつてゐやせまいか」

【解説】
小助の捨て台詞。
「久松の命を救ったこの金、店に戻って出したところが蛙になっているんじゃあるめぇな」
久松が屋敷から預かった金を使いの途中ですり替えられ、店に戻って出した時には別ものになっていたことを「手品」に例えて皮肉ったのを引っ張り出しての嫌味。
また、ここが都会から離れた田舎であることを侮って、草深い里に潜む狐にでも騙されてるんじゃないだろうなぁと毒づきます。

【原文】
「ハテ仇口を聞かずとも、足元の明い中」
【解説】
久作の台詞。
「くだらない皮肉を言ってないで、明るいうちに帰れ」
明るいうちに、って、さっさと帰れという意味と同時に「田舎の暗い夜道、襲われたって犯人なんざ見つかるもんでもないだろうよ」と、暗に闇討ちの可能性を否定しない暗い気配がぎらつくような。ま、コレはかるーい脅し。実際に考えてなどいないでしょうけれど。

【原文】
「オヽヽヽ去ないぢや去ないぢや去ないぢや。銀こそは主の物、なんのその俺が手に、俺がコウかたげて、俺が足で、俺が歩いて、俺が体で、俺が去ぬるに、ぐつとも言分ない筈ぢや」と、へらず口して、とつぱ門口柱で頭、「ア痛、し」小助は足早に、大坂の方へ立ち帰る。

【解説】
小助の台詞。
「こんなところにもう用はねぇや、さっさと帰るにきまってんじゃねぇか!」想定外に弁償金をきっちりと返され、それまでかさにかかって優位にたっていた形勢が逆転した気配に対し「金を返したからといって威張りやがるな、この銀はもともとがご主人さまのものだ」と形勢に一矢を報い、『なんのその俺が手に、俺がコウかたげて、俺が足で、俺が歩いて、俺が体で、俺が去ぬるにぐつとも言分ない筈ぢや』=「主人名代の自分が受け取る権利を持った金だ、それをどうやって持ち帰ろうと、文句なんかあるまい!」と捨て台詞。
そして「あばよっ」と飛び出した門口柱で頭をガーンと打ちつけるドジを踏み(笑)そそくさと立ち去っていきました。
ここら辺の小者の皮肉っぽさ・コミカルさを、義太夫や人形浄瑠璃、芝居なんかでは実に面白く見せるのでしょうねぇ(^皿^)

――「その9」に続く――
「その9」 http://blogs.yahoo.co.jp/hana_yukiyanagi/56987528.html

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【第7回テキスト 義太夫原文】
マアマア何かは差し置いて、朋輩衆のお世話であらふと、蔭ながら言ふてばつかりゐますわいの。寒い時分によふ連れ立つて来て下さつたなふ。ソレおみつよ、茶なと汲まんかい」
「チエ納めな納めな納めな納めなやい。わりやマア夢に見たこともあるまいが、一貫五百匁といふ銀高、子の科は親にかゝる。銀立つるか、但しは又願はふかい、どふぢやいどふぢやいどふぢやいどふぢやいどふぢやい」
「ハテよいわいの、その様に息精張るは大きな毒、とかく人間は気を良ふ持つのが薬ぢや。ヤその薬で思ひ出した。土産にせふと思ふたこの山の芋をとろゝにして、出来合ひの麦飯を進ぜふかい」
「エヽ置けやい置けやい、見せかけばかりの正直倒し、イヤ麦飯のとろゝのと、ぬらくらとは抜けさせぬわエエ、あんだら臭い」と蹴散らす藁苞破れてぐはらりと出る丁銀。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

【原文】
マアマア何かは差し置いて、朋輩衆のお世話であらふと、蔭ながら言ふてばつかりゐますわいの。寒い時分によふ連れ立つて来て下さつたなふ。ソレおみつよ、茶なと汲まんかい」

【解説】
とりあえずほっと一息ついた久作。台詞が続きます。
落ち着いたらかるーく世話話、ってなもので、いつも久松がお世話になってます〜と愛想よくご挨拶。寒い中を店から連れてきてくれたことにお礼を言い、ぼんやりしているお光を「お客様にお茶も淹れないで」と叱りつけてみせます。
店の主人の名代=小助を客分扱いに、問題のない時分の関係どおり、いつものペースに戻そうとし、てみます、が。

【原文】
「チエ納めな納めな納めな納めなやい。わりやマア夢に見たこともあるまいが、一貫五百匁といふ銀高、子の科は親にかゝる。銀立つるか、但しは又願はふかい、どふぢやいどふぢやいどふぢやいどふぢやいどふぢやい」

【解説】
そんな上手くいくはずありませんね(当たり前。)
小助の台詞「うるさい黙れ黙れ!こんな貧乏所帯のお前さんじゃ夢にだってみたことはないだろうが、150万ったらとんでもねぇ大金だぞ!子供の罪は親が背負うもんだ、さぁ、久松が失くした金、ここに耳をそろえて出してもらおうか!できないというならまた話し合わなきゃなるまいぜぇ。おい、どうなんだよ何とか言え!」とかさにかかって喚きます。

【原文】
「ハテよいわいの、その様に息精張るは大きな毒、とかく人間は気を良ふ持つのが薬ぢや。ヤその薬で思ひ出した。土産にせふと思ふたこの山の芋をとろゝにして、出来合ひの麦飯を進ぜふかい」

【解説】
久作の台詞。
『ハテよいわいの、その様に息精張るは大きな毒、とかく人間は気を良ふ持つのが薬ぢや。』=「まぁまぁ、そう悪し様に怒鳴り散らすと体に毒ですよ。人間ってのはね、気を良く保つのが健康の秘訣ってやつで」と、怒りの矛先さらりとかわし。
こういう会話の切り回し、久作って結構一筋縄ではいかない雰囲気を持ってますよね。

『ヤその薬で思ひ出した。土産にせふと思ふたこの山の芋をとろゝにして、出来合ひの麦飯を進ぜふかい」』、さっき家を出るとき、店へのお土産に山芋を持っていくと言ってましたね。店へ届けなかったのですから「せっかくだから小助さんにご馳走しましょう」と。でも『出来合いの麦飯』を出そうというのですから、本気のご接待でないですね。ちょっとした嫌味といったところでしょうか。

【原文】
「エヽ置けやい置けやい、見せかけばかりの正直倒し、イヤ麦飯のとろゝのと、ぬらくらとは抜けさせぬわエエ、あんだら臭い」と蹴散らす藁苞破れてぐはらりと出る丁銀。

【解説】
久作の嫌味を受けて、小助の台詞。
「ええぃ、黙れ黙れ!見せ掛けだけいい人ぶりやがって、麦飯だとろろだと、ぬらくら言い逃れて(※とろろの食感・感触と、言い逃れの様を「ぬらくら」一語に掛けた言葉遊びなんかもさりげなく組み込んでますねぇ)誤魔化そうったってそうはいかねぇ!」と、土産の山芋を包んでいた藁苞を蹴散らし、た、ところ!
なんと!山芋が入っているとばかり思っていた藁苞の中から、丁銀(=江戸時代の銀貨の一種。海鼠形で、豆板銀とともに、計量して使用されたもの)が、がらがらっと音を立てて転げだしてきたのです!

――その8 http://blogs.yahoo.co.jp/hana_yukiyanagi/54824185.html に続く――

★初めての方は「その1」から順番にお読み下さい★
義太夫を読む!第一弾 『新版歌祭文 野崎村』 ―その1―
http://blogs.yahoo.co.jp/hana_yukiyanagi/53216454.html

【第6回テキスト 義太夫原文】
道引返しいつきせき戻る久作駆け入つて、小助を引き退け突き飛ばし、「コリヤヤイ留守の間へ来てわつぱさつぱ、様子によつて了簡せぬぞ」
「オヽよふ戻つて下さんした。最前から久松さんをな」
「オヽよいてや。久作が戻るからは娘もじつと落ち着け」と納める程なほ業腹煮やし、
「大枚の銀引負したこのばりめ、詮議に来た小助は親方の代り、それを又わりや何で投げたのぢやい」
「これは迷惑な。ひばり骨見る様な手で血気なこなた投げたのではない。
怪我のはづみで、出端れの曲り途で道が逢ふて、留守の間へ大坂から息子が来たぞやと、若い者どもが知らしてくれたで、行戻り五、六里を助つた徳庵堤。引返して戻つたが、そんなら何か、その引負で、久松は戻つたのか。アヽそれ聞いてマア落ち着いた。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

【原文】
道引返しいつきせき戻る久作駆け入つて、小助を引き退け突き飛ばし、「コリヤヤイ留守の間へ来てわつぱさつぱ、様子によつて了簡せぬぞ」

【解説】
家の奥へ踏み込ませまいととりすがる久松を、小助は殴る蹴るのめちゃくちゃな暴力。非力な少年少女は堪えるばかり、泣くばかりの大ピンチに駆け込んできた救世主!父親の久作が戻ってきてくれました!
久松にとりつく小助を突き飛ばし、怒鳴りつけます。
久作の台詞。「あるじの留守に許しもなく勝手に家に上がりこんで、大事な家族に暴力をふるうたぁ何事だ!理由のないことなら許さないぞ!」
おとうちゃん、カッコいい(>▽<)

【原文】
「オヽよふ戻つて下さんした。最前から久松さんをな」

【解説】
救世主にほっとしたお光は、悔し泣きに泣きながら父親に訴えます。
「よかった!お父さん、いいところに戻ってきてくれた!ひどいのひどいのよ、この人ったら無抵抗な久松さんに暴力ふるって!!」

【原文】
「オヽよいてや。久作が戻るからは娘もじつと落ち着け」と納める程なほ業腹煮やし、「大枚の銀引負したこのばりめ、詮議に来た小助は親方の代り、それを又わりや何で投げたのぢやい」


【解説】
久作の台詞。
『オヽよいてや。久作が戻るからは娘もじつと落ち着け』=「わかった、わかった。俺が戻ってきたからにはもう暴力など振るわせるものじゃない。お光、安心しなさい」と娘を宥めます。
予想外のヒーロー親父出現!
歯向かう敵のいないこの場で、腕力に任せて君臨していた小助は俄然、面白くない。
久松の窮状を聞けば慌てふためいて許しを乞うしかないであろう田舎親父の、今は頼りありげに自信たっぷりな様子に腹を立て、意地の悪い優越感でがなりたてます。
小助の台詞。
『大枚の銀引負した』=「とんでもない大損失を店に押し付けた」。
そして次の『このばりめ』、コレの意味が分からない。で、ちょっと検証してみたところ、もしかすると!?の面白い文意を見つけました。証拠はないので、正しいかどうかは分かりません。
文をほぐすと、おそらく『この+ばり+め』だと思われます。
『この』は「このやろう!!」とかに転用される、怒りや気分の高揚に乗せて、言葉に勢い、リズムをつける意味での『この』。
末尾の『め』は「ちくしょうめ!!」なんかで使う、〜のくせに・〜の分際で、という唾棄気分を盛り上げる接尾語ってとこだと思います。
で、まんなかの『ばり』。コレを辞書でひいてみましたら、いくつかの意味の中で目を引いたのがコレ!
「ばり=尿《「ゆばり」「いばり」の音変化》小便。(大辞泉)」
あっ!もしこの意味で使っているんなら『このばりめ』の意味は「このションベン野郎!!」じゃ、ないかいな!?
しょんべん野郎。その悪口のニュアンスとして「自分じゃなにも出来やしない」「自分の始末を自分でつけられない」幼いガキンチョ、という感じが滲みます。
この一言で、小助の久松に対する感覚っていうのがすごくよくわかる気がします。
おおっと、たった一言を肴に長話(笑)次に進みましょう。

『詮議に来た小助は親方の代り』=「事件の究明を任されてきた自分は、いうなれば親方(=店の主人)さまの名代だ」、
『それを又わりや何で投げたのぢやい』=「名代である自分に対しては、主人への態度と同じであるべきだろう。大恩あるご主人様に対して、お前、なんで投げ飛ばすという挨拶があるものか」と喚きたてます。

【原文】
「これは迷惑な。ひばり骨見る様な手で血気なこなた投げたのではない。
怪我のはづみで、出端れの曲り途で道が逢ふて、留守の間へ大坂から息子が来たぞやと、若い者どもが知らしてくれたで、行戻り五、六里を助つた徳庵堤。引返して戻つたが、そんなら何か、その引負で、久松は戻つたのか。アヽそれ聞いてマア落ち着いた。


【解説】
久作の台詞。
『これは迷惑な』=「なんと、筋違いないいがかりをつけられて困ったことだ」。
『ひばり骨』とは、痩せて骨ばっている意。「こんなガリガリの爺さんが、血気盛んなあなたをわざと投げ飛ばすなんてするわけがありませんよ。勢いづいた弾みでぶつかってしまっただけで」としらっととぼけます。暗に「こんな爺に投げ飛ばされたなんていったら、いい若いモンがみっともないぜ。投げられてなんかいねぇだろう?えぇ?」ってな逆説的脅迫さえ感じます。なかなかヤクザな親爺ぶり(笑)
で、ここからの台詞は「勢いづい」て家に飛び込んできた訳の説明。久作口調で訳しますと「そこの曲がり角で村の若い者に出会ったら、今、こっちから訪ねていこうとしていた久松が、入れ違いに留守の家に向かっていったぞと教えてくれたんだ。
道なかばの『徳』庵堤(という場所)でそれを知ることができたおかげで、往復20〜24Kmの無駄足を踏まずに済んで『トク』をした♪(←と、オヤジギャグ。)
それから急いで引き返して戻ってきたんだが、久松が帰ってきた理由ってのは、お前さん(=小助)の言う、店に損害を与えたために自宅謹慎してろってことなのかい」と。
そして『アヽそれ聞いてマア落ち着いた。』=「そういう理由か、あぁよかった」と言うのです。
この一言で分かるのは、久作は久松の失態をここで初めて聞いたわけじゃなさそうだ、事前に知っていたらしい、ってこと。
だって、もし初耳であるならば「よかった」どころかビックリ仰天、いかに息子のこととて、疑いと信じたい心に引き裂かれ、ともかくも詳しい事情を知りたがるのが普通の反応ですもの。
先刻家を出る前、お光の前ではそんなそぶりはまったく見せず、何もいわなかった久作ではありますが、事情を全部飲み込んだ上で店を訪ね、おそらく、どうにかして久松の身柄を引き取ってこようとしたんでしょう。
久作とて、久松の巻き込まれたトラブルの概要は知っていたとしても、詳しい事情まではわからなかったはずです。
銀一貫五匁=超乱暴な換算でいえば大体150万円くらいを着服した疑いというのですから、万が一警察機関にでも訴えられたらただですむわけがない。いや、それ以前に、被害を受けた武家側、信頼を失った店側が体面大事と久松一人に罪をおっかぶせ、内部リンチや制裁行為が起こらないとも限らなかったわけです。誰にでも人権がばっちり確保されている平成の世じゃないんです、田舎百姓の息子ひとりどうにかするのに――最悪、殺してしまうのにだって、後付の理由はいくらでもあった。
だから焦っていた。
最悪の事態をさえ思い描いていたところ、疑いをかけられたままであるとはいえ、五体満足でひとまず無事に家に帰ってきたというのですから、とりあえずはほっとしたのです。


――その7 http://blogs.yahoo.co.jp/hana_yukiyanagi/54796186.html に続く――


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