文花座

歌舞伎、宝塚歌劇団、劇団四季・・・大好きな舞台の感想をつらつらと♪

歌舞伎演目解説

[ リスト | 詳細 ]

歌舞伎演目のストーリーを詳細に綴っています
記事検索
検索

全5ページ

[1] [2] [3] [4] [5]

[ 前のページ | 次のページ ]

『都鳥廓白浪(=みやこどりながれのしらなみ)』

―――初めての方はその1からお読みください―――

その1【三囲稲荷前の場】【長命寺堤の場】→http://blogs.yahoo.co.jp/hana_yukiyanagi/289770.html
その2【向島惣太内の場】→当記事です
その3【原庭按摩宿の場】→http://blogs.yahoo.co.jp/hana_yukiyanagi/328843.html

【向島惣太内の場】

ここは、惣太夫婦が営む向島の桜餅屋。
女房・お梶が一人店番をしているその家に、二人の男が訪れました。
一人は『都鳥の印』の代金を催促しに来た古道具屋の小兵衛。
そして小兵衛に伴われてやってきたのは、最前、梅若丸母子と散り散りになってしまった吉田家家臣・軍助です。
二人の尋ねる惣太は留守。惣太が戻るまで待つという二人を、お梶は奥の間へ案内しました。

折りしもその時、店に飛び込んできたのは傾城花子。
花子は、惣太が廓に通いつめ、入れ揚げている美しい女郎・・・実は、かつての主家の御曹司・松若丸に瓜二つ!
惣太は、いざというときの身代わりにもなろうかと、彼女を身請けをして手元におきたい考えなのです。お梶は事情を聞かされてはいましたが、花子に会うのは無論初めて。
あまりに主君・松若丸にそっくりな姿に驚きを隠し切れません。
ほどなく戻ってきた惣太に、花子は「嫌な男に身請けされそうになったので、愛しい惣太の元へ逃げてきた」と甘えてしなだれかかります。
女房の目の前で・・・惣太はひとりあたふたしますが、お梶のほうがオトナ。
「恩ある主家の為だから」と腹を括り、プライドの高そうな花子に女房持ちと知られてはうまくないと自分を女中と偽ります。あまつさえお茶まで入れてあげたりしてご接待。
お梶の協力に力を得た惣太は、廓での姿そのままに花子としっぽり色模様・・・その姿に、頭では理解しているお梶も頭にくるやら呆れるやら。
そうこうするうち、女中の目を気にした花子は惣太を促し、一緒に奥へ消えていきました。

すべてを見聞きしてしまったのは、奥の間に通されていた軍助。
ただ一人の頼りと、主従命懸けで縋ろうとしている男がこのていたらくとは・・・
軍助は失望し、奥へ消えた惣太の代わりにお梶に食ってかかります。
軍助は再興への資金として吉田家秘伝の薬を持参していました。
その薬は絶世の妙薬と名高く、この薬に女の血を混ぜたものを飲めば、どんな病もたちどころに癒えるというもの。値は千金です。
眼病を患う惣太へ、その大切な薬をも分け与えようと思っていたというのに!
夫の行動を涙ながらに詫びるお梶。自身こそが辛かろうに、一心に夫の身を案じるお梶に心を動かされた軍助は、去り際に薬の一包みをわざと落として行きました。

軍助が去った桜餅屋へ、またも二人の男。
一人は花子を使っていた廓の店より遣わされた閻魔の庄兵衛。売り物買い物の女郎・花子の身代は丁度百両。金と引きかえにしない限り、逃げた花子を連れ戻さねばなりません。
連れ立って来た貸衣装屋の喜兵衛は、廓通いに格好をつけるため惣太が借りた衣装と、花子が纏っている小袖の代金を取り立てに来たのです。
そこへ現れたもう一人の男、葛飾十右衛門。
花子の身請けのため身代の百両を携えてきたというのに、当の女に逃げられ、馴染みの惣太の元へ逃げ込んだに違いないとあたりをつけてやってきたのです。
先ほどの古道具屋も奥から現れ、『都鳥の印』の代金百両の支払いを迫ります。
惣太の手元にあるのは、梅若丸の懐から奪った百両包み、たった一つ。
今、百両を閻魔の庄兵衛へ叩きつければ、花子を身請けすることができる。
しかし、『都鳥の印』代金百両を支払わねば、大切な家宝が他人の手に渡ってしまう・・・
切羽詰った惣太は苦しみ、悩みぬきますが、ついに下した決断は―――
百両の金を古道具屋に支払い、『都鳥の印』を手に入れたのです。そして、それを心の証として花子へと渡しました。
それで、所持金のすべてを使い果たしてしまった惣太。金を取れなかった貸衣装屋の喜兵衛は惣太と花子の着物を奪い取り、下着姿の寒々しい二人を罵ります。
その有様の中、一計を案じた花子。
惣太と取り交わした起請文(心変わりをしないという男女の間の証明書)を葛飾十右衛門へ渡し、これをかたに自分を身請けするつもりだった百両を貸してもらえないかと言うのです。
一笑に付されてしまうのが当然のずいぶんと無茶な願いですが、葛飾十右衛門はそれを受け入れ、懐の百両を惣太へと差し出しました。
そして帰り際、惣太へ「お梶を見捨てるな」と言い置いて去っていったのです。
実はこの葛飾十右衛門、お梶が幼い頃に生き別れた実兄で吉田家の旧家臣でした。
ひそかに吉田家再興を願い行動していた葛飾十右衛門でしたが、惣太が家宝大事の姿勢を崩さなかったことでその心根を信頼し、自らの手元に置こうと狙っていた松若丸生き写しの花子をも惣太の手に委ねたのでした。

男たちが去り、惣太と花子は二人きりに。
花子はかいがいしく惣太の肩を揉みながら、その表情はしてやったりと会心の笑み。
傾城花子、その正体は盗賊の天狗小僧霧太郎!
惣太の目が見えないのをいいことに手下を家へ引き込み、家中の金目のものを盗み出させます。『都鳥の印』も箱から取り出してにせの茶碗にすり替え、まんまと奪いとりました。
異変に気付いた惣太をあざ笑って足蹴にし、霧太郎は配下の宵寝の丑松と連れ立って、高笑いで家を引き上げていきました。

そこへ、先ほど去った軍助が駆け込んで来ました。
主君・梅若丸の無残に殺された遺体が、隅田川からあがったというのです!
殺人の証拠は、首に巻きついた手ぬぐい・・・勢い込んだその言葉を聞く惣太は衝撃に打ちのめされます。
それは、まさに自分が殺したあの若者のことではないのか!
「都鳥の行方も知れず」という軍助の言葉に我に返った惣太は、都鳥の印だけは手に入れたと急き込んで印の入った箱を差し出しますが、中から出てきたのはただの茶碗。中身は霧太郎にすりかえられていたのです。
絶望した軍助は、若君を守りきれなかった自らを恥じて切腹しようとします。
慌ててそれを止めようとする惣太。二人が揉み合ううち、刀は誤って軍助の腹に突き刺さってしまったのです。傷の深さにもうこれまでと思い定めた軍助は、庭の井戸に身を投げて自害を遂げました。
残された惣太は、脱力して座り込みます。
知らなかったこととはいえ、恩ある主君を自らの手にかけて殺してしまったのです。
忠義の家臣も殺してしまった・・・もはや腹を切るしかないと思い定めたその時、それを止めたのは妻の苦しげな声でした。
奥からふらふらと現れたのはお梶。なんと、乳房を突いて血を溢れさせているのです!
吉田家秘伝の妙薬は、女の血を混ぜて用いるものだと聞いたお梶。
女が女たる所以はその乳房、夫の重い眼病を癒すにはその血を使うしかないと思い定めたお梶は、命を賭して薬を創り上げたのでした。
薬を飲んだ惣太の眼はたちどころに癒え、開いた眼で見たのは瀕死の妻の姿―――
惣太の眼が見えるようになったことを見届けたお梶は微笑んで息絶えます。
惣太は気力を振り絞り、盗賊霧太郎から『都鳥の印』を取り返すべくその根城へ向かうのでした。

―――その3へ続く―――

その1【三囲稲荷前の場】【長命寺堤の場】→http://blogs.yahoo.co.jp/hana_yukiyanagi/289770.html
その2【向島惣太内の場】→当記事です
その3【原庭按摩宿の場】→http://blogs.yahoo.co.jp/hana_yukiyanagi/328843.html

『都鳥廓白浪(=みやこどりながれのしらなみ)』

その1【三囲稲荷前の場】【長命寺堤の場】→当記事です
その2【向島惣太内の場】→http://blogs.yahoo.co.jp/hana_yukiyanagi/306240.html
その3【原庭按摩宿の場】→http://blogs.yahoo.co.jp/hana_yukiyanagi/328843.html


【三囲稲荷前の場】

京の吉田家は、帝の信任も厚い名門中の名門。
帝から直々に賜った『都鳥の印』を家宝とし、代々大切に守ってきました。
ところが、計略に陥れられた吉田家にお家騒動が勃発、混乱の中で都鳥の印を盗み出されてしまったのです。
帝から賜った品を紛失した―――
そのことが絶好の口実となり、その罪によって家はお取り潰し、当主は切腹させられました。
嫡男・松若丸は東国に逃れましたが、以後消息はぱったりと途絶えてしまい、生死も定かではありません。
母・班女の前と次男・梅若丸は、松若丸を探し出し、力を合わせて吉田家再興を果たしたい一心。ともかくも松若丸が逃れた江戸へと、京を発ちました。
忠義の家臣・軍助が付き添いますが、女子供の頼りない道中は苦労の連続です。
ようやく江戸に辿り着いたまさにその時、追っ手が一行を襲いました。
軍助は母子を守って奮闘し、必死に追っ手を食い止めて背後に守った母子を逃がします。

しかし、多勢に無勢。追っ手が母子に迫るのは時間の問題・・・
母子が共に討たれれば、吉田家の血が絶えてしまう!
班女の前は梅若丸に所持金のすべてを託し、隅田川沿いに住むかつての家臣を頼るようにと告げて梅若丸一人を逃がします。
女といえども、腕に武術の覚えある班女の前。
逃げる梅若丸を背後に守りつつ勇敢に戦いますが、力及ばず、壮絶な討ち死にを遂げました。
しかし、梅若丸はその間に無事に逃げおおせたのです。

【長命寺堤の場】

頼みの綱の母、軍助と引き離された梅若丸。
いくら気持ちは勇ましくとも、育ちのいいお坊ちゃま。ましてや右も左も分からない初めての江戸、母に頼るように伝えられた人物は、その名前さえ知らない有様―――
高価な衣装を身にまとい、懐を膨らませたいいカモが江戸のごろつきどもに狙われるのは時間の問題。
さっそくヤクザ者に絡まれ、梅若丸、大ピンチ!!
そこへ駕籠に乗った浪人・惣太が現れます。憂いをあらわにした思案顔、眼病を患っており目が見えません。
騒ぎを聞きつけ、駕籠掻きに少年が襲われている様を聞いた惣太はごろつきどもの無体をとどめようとしますが、目の見えない惣太を侮ったごろつきどもは言うことを聞きません。
駕籠掻きはとばっちりを恐れて逃げ去ってしまいました。
そこで駕籠から降りた惣太、目が見えないことなど嘘のような鮮やかさでヤクザ者を追い払ってしまいます。
その鮮やかな手並みにあっけにとられた梅若丸。そこは素直なお坊ちゃま、尊敬の眼差しですっかり心を許してしまいました。
ヤクザ者から救われて気が緩んだからでしょうか、梅若丸は突然の癪(=胃痙攣)を起こして苦しみだします。
惣太が介抱してやろうと梅若丸の懐へ手を差し入れたところ、手に触れたのは、3つの小判包み。この少年は、懐に300両あまりの大金を持っていたのです。
惣太ははっと息を飲みます。喉から手が出るほど欲しい、金―――

この惣太、実は班女の前が梅若丸に尋ねるよう告げた吉田家の元家臣だったのです。
そして今、家臣が身を粉にして駆けずり回っている理由はあてのない金策でした。
吉田家お取りつぶしの元凶『都鳥の印』をずっと捜し求めていた惣太は、それをやっと見つけだしました。なんと、街の古道具屋で売られていたのです。
主家の再興のため、何が何でもそれを手に入れたいと逸る心を商売男に見透かされ、ふっかけられたのは百両という法外な値段。
足元を見られていると知りつつも、他に変わるもののない都鳥の印・・・
相手は売り買いが商売の古道具屋、やっと捜しだした都鳥の印もいつ人手に渡るかしれたものではありません。
必死になって当てのない金策に駆けずり回り、万策尽き果てて呆然と帰宅する道で、か弱い少年の懐の金子を知ってしまったのです。

癪が治まった梅若丸はお礼を述べて立ち去ろうとします。
しかし、その心は不安でいっぱい。助けてくれた惣太に頼りたい、すがりたい心が道を行く足を鈍らせます。
惣太もまた苦悩していました。浪人とて武士。いくら進退窮まったと言えども、見ず知らずの少年に金を無心するというのか・・・
しかし、背に腹は換えられません。ついに決心して少年を呼び戻し、事情を語り懐の金子を借りたいと願い出ます。
驚いたのは梅若丸。
助けてくれた惣太の事情には同情するものの、この金は吉田家再興のために絶対必要な金なのです。まして、母が命にかえて梅若丸に託した金。
母の言っていた元家臣に会い、その人に渡すまでは絶対に失うわけにはいかないのです。

元家臣はこの惣太。惣太の主家はこの梅若丸。
運命は二人を出会わせたにもかかわらず、目の見えない惣太は梅若丸に気付かず、幼い梅若丸は元家臣の顔を知りません。
事実の糸は歪んで絡まり、もつれ合って・・・

二人の争いは険悪な熱を帯び、梅若丸は執拗なこの浪人に声を荒げます。
高い声に驚いた惣太は、懐から手ぬぐいを出し少年の口をふさごうとします。
しかし、目の見えない悲しさ、手ぬぐいが口元からすべり首にかかってしまったのです。首を締められ、声も出せずに暴れる少年。慌ててなおも押さえつける惣太・・・・
少年は首を締め上げられ、窒息してついに息絶えてしまったのです。
力を失った少年に驚いた惣太は、体を揺すって呼びかけますが、消えた命は戻りません。
期せずして殺人を犯してしまったと知り、呆然とする惣太。
しかし、もう後には引けない。惣太は少年の懐から金を取り出し、首に巻きついた手ぬぐいもろとも遺体を隅田川へ投げ捨てます。

あたりは漆黒の闇夜に変わっていました。
少年の懐から奪った百両ずつ3つの金包みを、惣太は闇の中で落としてしまいます。
慌てて地面を探るうち、その場には別の人間が一人、二人と現れます。
惣太。
宵寝の丑松。
廓から逃げ出してきた惣太なじみの傾城・花子。
花子を身請けしようとして逃げられた葛飾十右衛門。
闇夜の中でぶつかり、もつれ合いながら、3つの金包みはそれぞれ惣太・葛飾十右衛門・傾城花子に持ち去られました。

――――その2へ続く――――

その1【三囲稲荷前の場】【長命寺堤の場】→当記事です
その2【向島惣太内の場】→http://blogs.yahoo.co.jp/hana_yukiyanagi/306240.html
その3【原庭按摩宿の場】→http://blogs.yahoo.co.jp/hana_yukiyanagi/328843.html

【舞踊ストーリー】

中国の伝説の霊獣・猩々は、人を夢見ごこちに酔わせる美酒を守護する神。
そして自分自身も、旨い酒に酔い、朗らかに遊ぶことを何より喜ぶ神様です。
樽に酒をたっぷり詰めた一人の酒売りが、猩々の住むという潯陽(しんにょう)の江に現れました。
酒売り稼業を守ってくれるこの神様にたらふく酒を飲んでもらおうと、重い樽を背負ってはるばるやって来たのです。
樽のふたを取れば、馥郁と広がるかぐわしい香り。
いかにも旨そうな酒の匂いに誘われて、潯陽江の水面をするすると滑って現れたのは伝説の猩々!
童子のような姿に真っ赤な髪。
無邪気な懐っこさと近寄り難い神々しさを体に纏った、人ならぬ身の霊獣です。
酒売りは猩々に酒を注ぎ、猩々はそれをどんどん飲み干します。
邪心のない酒売りの日々の感謝に満ちた酌を受け、飲むほうも飲まれる方もありがたく嬉しい酒盛りが続きます。
朗らかに酔って舞い踊り、さらに酒を過ごしていく猩々。
さすがの猩々も足元がふらつくほどに飲み尽くし、酒売りへの感謝の気持ちが溢れます。
いくら汲んでも酒が尽きないという伝説の酒壷を酒売りに与え、猩々はまた水の上をすべって消えてゆくのでした。

【参考公演・文献】
芸術祭十月大歌舞伎(歌舞伎座/2004年10月公演・昼の部)・同公演チラシ

【作品データ】
作曲:西 亨
振付:八代目坂東三津五郎

【最終更新】
2005年3月1日

【舞踊ストーリー】

粋でいなせな鳶頭は、女なら誰でも騒がずにいられないほどのイイ男。
祭の酒に酔っ払い、いい気分のところを若い者に突っかけられてはお相手をしないわけにもいきますまい。
色男ぶりを甘く見た若い者を、小手先で鮮やかに追い払ってみせたところに芸者が登場。
この芸者、江戸前の小股の切れ上がったいい女。
鳶頭にぞっこん惚れ込んで、二人の仲もあながち他人じゃないけれど、鳶頭の気のいい優しさが自分以外の女にも振りまかれているのが気に食わない。
女のほうで放っておかない男前、騒ぐ周りを見ていれば、不安は募ってやりきれない。
祭に浮かれた鳶頭に、ついつい野暮な愚痴をぶつけます。
私がこんなに思っているのに、あんたの態度はあいまいでやりきれやしないじゃないか。
それを聞いた鳶頭。江戸っ子の一途なところ、酒の酔いも手伝ってか、女にそういわれちゃぁとばかりに「それじゃあ女房になってくれ」ということに。
そのままの勢いで鳶の親分に挨拶まで済ませてしまい、晴れて二人は夫婦の仲に。
芸者はあまりの急展開に、嬉しいやら呆れるやら。
戸惑いは隠せずとも嬉しさも隠し切れない、初々しい新婚ぶりを見せ付けます。
江戸で人気の姐さんと、噂も高い鳶頭。人も羨むカップルぶりです。

晴れて夫婦になっては見たものの、鳶頭の色気も血気も相変わらず。
若女房の身の上に、カチンとくる噂は絶え間なく流れてくる始末。
もしや浮気をと疑いはするものの、嫉妬のようで野暮ったく、口に出すのも悔しいばかり。
私はあの鳶頭の女房だと思えば、空意地だって凛としていたいもの。

若鳶が登場。なりは小さいが、気合いも意気地も一人前。
そこに、先般鳶頭にあしらわれた若い者、懲りずに仲間を引き連れてきた。
若鳶はばったばったと若い者をあしらってみせ、鳶頭と芸者は鷹揚に喧嘩見物としゃれ込みます。
痛快な若鳶の活躍ぶりに気が晴れた芸者。若鳶に近寄ったところへ若い者が突っかかってきます。女を守らざぁ男が廃る。若鳶、芸者を背中に守っての大喧嘩。

若鳶ばかりにやらせておく訳にはいかねぇとばかり、鳶頭も喧嘩へ参戦。大人数の若い者を相手の大立ち周りとなります。
祭の獅子まで巻き込まれ、鳶頭にやっつけられる始末。
鳶頭、若鳶の痛快な姿に周囲はやんやの大喝采です。

敵はあらかた片付き、鳶頭も若鳶も花の喧嘩をたっぷり堪能。
鷹揚に扇を使い、格好よく引き上げようかとのところ。
二人の雄姿にすっかり惚れ直し、からりと機嫌を直した芸者と連れ立って帰ろうとしますが・・・
負けっぱなしの若い者、どうあっても一泡吹かせなきゃあ収まりません。
鳶頭、若鳶、芸者と連れ立った一行の、女の芸者に突っかかります。
しかしそこは、江戸で聞こえたお姐さん。鮮やかな一発、男を打ち負かせてみせます。
守られるだけが女じゃない。きりりと気の張った、江戸女の心意気。
これが江戸で一番の鳶頭の女房だ、と見得を切らんばかりの鮮やかさで周りをアッと言わせます。
全員が祭のスターのとなった御一行。
今度は仲良く連れ立って、周囲の視線を一身に、気持ちよく引き上げていきます。

【参考公演・文献】
吉例顔見世大歌舞伎(歌舞伎座/2004年11月公演・昼の部)・同公演チラシ

【最終更新】
2005年3月1日

【物語】

ここは質屋の店先。毎度の常連・御数寄屋坊主の河内山宗俊が脇差を片に金を借りに来ています。
その脇差、たいした品ではないのですが「天下の河内山の品だぜ」「俺のプライドにかけて絶対流しはしねえから」と言葉を尽くして法外な値を借り出そうと交渉中。
いつものことに、番頭も苦りきっています。
お前じゃ話にならねぇ、主人を呼べと息巻く河内山に、主人は奥で取り込み中だという番頭。
そこへ、疲れきった青い顔の女主人・おまきが現われます。
実は、今、奥で親族会議を開いて話し合いをしていたとのこと。事態は深刻、進退窮まったおまきは藁にもすがる思いで河内山へ事情を語ります。
おまきの一人娘・浪路は松江出雲守の屋敷へ奉公に出ているのですが、その美しさが松江公の目にとまり、妾になれと迫られていました。
夫もすでに亡く、女一人で店を切り回すのも苦労なおまきは、娘に婿を取って家を継がせたい考え。
婿もすでに許婚の仲の人がおり、浪路にも松江公の妾になろうなどという考えはまったくありません。
断りつづけてはいるのですが、松江公の執心はそれを許してはくれません。
そこで、どうしてもと願い出て一時宿下がりをさせ、そのチャンスに許婚との婚約を済ませてしまいました。既成事実を作ってしまえばとの考えだったのですが、それは松江公の怒りに油を注ぐ結果に。
浪路は館に監禁されてしまったのです。
松江公の無体を咎めようとも、相手は武士。下手なことをすれば無礼打ちの一言で浪路は殺されてしまうかも知れず、家にもどんな咎があるか分かりません。
女一人の手には負えなくなり、親類一同を呼び集めての話し合いをしていたのですがまったく埒があかないのだと嘆くのです。
それを聞いた河内山は思案を巡らし、すべて俺に任せろ、娘を無事取り返してやろうと胸を叩きます。しかし、もちろんただとはいかない、娘の命代は前金100両、成功の暁にはもう100両と吹っかけます。
今まで河内山には散々煮え湯を飲まされてきた番頭は猛烈に反対し、おまきもおろおろととまどいますが、奥から出てきた親類の泉屋清兵衛は河内山に頭を下げて奪還を依頼。言い値通りの100両を渡し、河内山へすがることとなりました。
前金100両をふところに去っていく河内山の後姿へ、おまき。
「本当に大丈夫かねぇ・・・」
答える清兵衛の言葉も振るっています。
「大丈夫だ、河内山も名うての悪党、まさか失敗しましたなどとはいうまいよ」

松江公の屋敷に悲鳴が響きます。
走り出てきたのはやつれきった腰元浪路、それを庇う宮崎数馬。
抜き身の刀を引っさげて二人を追うのは、癇癪を爆発させた松江出雲守。
松江公は思い通りにならぬ浪路に業を煮やし、短慮な怒りから浪路を手打ちにしようというのです。
若い宮崎数馬は必死に松江公を宥め、暴行を思いとどまらせようとしますが、そこは若輩。焼け石に水のありさまです。
そこへ現われたのが重臣・北村大膳。この男、松江公におもねり保身を図ることにのみ長けた奸臣です。
あろうことか浪路を主人の意思に従わない罪人と罵り、またその浪路をそれほどまでに庇いだてする宮崎数馬は浪路と不義密通をしているに違いないなどと決め付けます。
絶体絶命のまさにその時、現われたのは家老・高木小左衛門。
正義感に長け、家老職として大きな存在である忠臣・高木小左衛門は松江公にとっても無視できないうるさい存在。小左衛門は松江公の短慮を窘め、二人を救います。

その場へ、上野寛永寺の使僧が訪れたとの連絡が入りました。
上野寛永寺は幕府の意志を代弁する重要な機関、いわば武家のお目付け役です。
その使者がなぜここへ? もしや、松江公の度重なる短慮の噂が寛永寺まで届いたか―。一同に緊張が走ります。
小左衛門は松江公に使者の出迎えを願いますが、頭に血が上った松江公は使者とは会わないと言い捨てて下がってしまいます。

高木小左衛門以下の家臣が居並び、主人は体調不良のためお会いできない、用件を承りたいと挨拶します。
鷹揚に挨拶を受ける使僧は、純白の衣に緋の袈裟も美しい高雅な雰囲気の僧侶・・・実は河内山宗俊!巧みな変装でこの屋敷に乗り込んできたのです。
河内山は柔らかい口調にびしりと棘を利かせ、主人の欠礼を詰ります。
そこへ、裃姿に正装した松江公が現われました。
先ほどは会わないと言い捨てましたが、さすがに反省した様子。短気な癇癪など嘘のような穏やかな物腰を繕い、使僧に挨拶します。
家臣を下がらせ二人きりになった河内山は、腰元浪路の一件を切り出します。
この一件、出入りの商人・和泉屋清兵衛より聞き知ったことを告げ、武士として許されまじき行為、ことは内密にすますから、すぐにも浪路を親元へと言い渡します。
しかし松江公もさるもの、浪路は不忠があったため懲らしめているだけである、家中のことに口出し無用とやんわりと切り返し、さらに密告のようなまねをした和泉屋清兵衛を罰するとまで口にします。
甘い顔は通らねぇか。河内山の態度ががらりと一変、凄みの効いた脅しの啖呵。
こっちはもう調べがついているのだ、そこまでしらをきるというなら、ことを公に寛永寺の調査をさせるまで!
正式な調査でことを公にされては、松江公の面目どころか地位も名誉もすべてが奪われます。
もちろんニセ坊主河内山にそんな権限はまったくない、言葉はすべて口からでまかせの大ハッタリ。気付かれればすべてがおじゃんのこの状況。
河内山と松江公の火花の散るにらみ合い、お互いに黒い腹の探りあい―――
・・・折れたのは松江公!
早速浪路を親元に送り届ける手配をさせた河内山は、悔しい松江公が下がっていくのを高僧らしい品のよさで穏やかに微笑んで見送ります。

仕事を終えた河内山。精進料理のご馳走が運ばれるのをやんわりと断り、実に品よく「黄金の茶」を所望します。黄金の茶、つまり小判。要するにタカリ。
袱紗をかけられ三方に乗せて届けられたモノを差し出され、微笑んでそれを受け取った河内山。家来が下がるのを見計らって、扇の先でちょっと袱紗を上げて確認・・・
その瞬間!時を告げる時計の音が鳴り響き、びびって飛び上がる!
さすがの悪党も、これだけの大芝居。緊張が隠せない様子です。

浪路奪還を無事すまし、かつ大金をせしめた河内山。
家来集に見送られ今まさに帰ろうとする時、玄関先に控えていた北村大膳が河内山を一目見て声を上げました。
北村大膳は江戸城で御数寄屋坊主・河内山宗俊と出会っていたのです。隠し切れない左頬の黒子がその証、寛永寺の僧とは真っ赤な偽り!
ばれたのならばしょうがねぇと河内山。高僧の演技をかなぐり捨て、伝法なべらんめぇ口調での大啖呵!
突き出すなら突き出せ、そっちははっきり認めやがったんだぜ!
河内山と北村大膳の間に強烈な火花が散ります。そこへ割って入ったのは高木小左衛門。
このことは、傲慢な松江公にとってもいい薬となったろう。すべてを知りながら、北村大膳の非礼を詫びお帰りくださいと促します。
歯噛みする北村大膳を尻目に、気持ちよく引き上げていく河内山。
帰りがけに振り向いてみれば、松江公が静かにそこに立っています。
その腹、煮えたぎっていることだろう!
にやりと会心の笑いを顔に乗せ、ぎりぎりと歯噛みする北村大膳へ向かって河内山は腹のそこから爆発するように叫びます。

「馬鹿めェ!!」

そうしておいて、人をおちょくるような芝居がかった態度で、高僧らしく去っていくのでした。

【参考公演・文献】
吉例顔見世大歌舞伎(歌舞伎座/2004年11月公演・夜の部)・同公演チラシ

【作品データ】
作:河竹黙阿弥

【最終更新】
2005年3月1日

全5ページ

[1] [2] [3] [4] [5]

[ 前のページ | 次のページ ]


よしもとブログランキング

もっと見る

[PR]お得情報

数量限定!イオンおまとめ企画
「無料お試しクーポン」か
「値引きクーポン」が必ず当たる!
CMで話題のふるさと納税サイトさとふる
毎日お礼品ランキング更新中!
2019年のふるさと納税は≪12/31まで≫

その他のキャンペーン


プライバシー -  利用規約 -  メディアステートメント -  ガイドライン -  順守事項 -  ご意見・ご要望 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2019 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.

みんなの更新記事