文花座

歌舞伎、宝塚歌劇団、劇団四季・・・大好きな舞台の感想をつらつらと♪

歌舞伎演目解説

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【物語】

ここは大阪の遊郭・吉田屋の店先。
滑稽ななりをした阿波の大尽がぷりぷりと怒りながら店から出てきました。店の者が慌てて、総出で追いかけてきます。
阿波の大尽は吉田屋ナンバーワンの花魁・夕霧にぞっこん。
今日も夕霧目当てでやってきたのですが、当の夕霧がなにやかやと理由をつけてなかなか座敷に現われないのです。
「帰る帰る」とおかんむりの大尽を宥め、店の者は年末恒例の餅つきをしてくれと頼みます。
男らしいところを見せようと、大尽は杵を取り威勢の良い餅つきが始まりました。
店のものにはやし立てられ、興に乗ってきた大尽。
囃子言葉の中に無粋な自分を馬鹿にする台詞が組み込まれていることにも気付かず、すっかり機嫌を直してまた店へと戻って行きました。

そこへ、みすぼらしい紙衣(=布地が買えず、反古紙をつなぎ合わせて形だけ作った着物)に編笠姿の男が現われました。
吉田屋の暖簾を遠慮がちに覗き込み、中の下男に主人への取次ぎを頼むのですが、その態度は貧相ななりに似合わぬ鷹揚なもの。
下男はいぶかしみ、さまざまに問い掛けますが男の態度はなよなよ、答えはのらりくらり。変な奴が来たとばかり、追い払ってしまおうと下男は言葉を荒げます。
そこへ、店先の小競り合いに気付いた吉田屋主人・吉田屋喜左衛門が仲裁に入ります。
喜左衛門の登場に紙衣男は喜び、編笠を取ったその顔は・・・
大店・藤屋の若旦那、藤屋伊左衛門ではありませんか!
吉田屋一の大得意様・藤屋伊左衛門は、自他ともに認める吉田屋夕霧の恋人。
しかし夕霧恋しさに通いつめるあまり、身を持ち崩し親から勘当を受けてしまったのです。
それから1年、音沙汰のない恋人に夕霧は思いが募って体を壊し、ようやっと回復したところでした。
今はみすぼらしい紙衣姿の伊左衛門。遊ぶ金など持とうはずもないのを承知で、喜左衛門は伊左衛門を店へ招き入れます。

招き入れられたのは、かつて遊びを尽くしたいつもの座敷。
喜左衛門はかつてと変わらぬ態度で伊左衛門をもてなします。
伊左衛門の姿が寒々しいと、自分の羽織を着せ掛ける温かみ。
喜左衛門は懐かしさにさまざま語りますが、しかし一向に一番聞きたい夕霧の話題は出してくれません。
自分から切り出すのも悔しい伊左衛門、内心じりじりしながら待っていますが、ついにそのことには触れずに下がってしまいました。
次に現われたのは喜左衛門女房おきさ。
こちらも嫌な顔一つせず伊左衛門の来訪を喜び、さまざまに喋りかけますが肝心の夕霧の話題は出てきません。
たまりかねた伊左衛門、自分から夕霧の消息を問い掛けます。
そしておきさから語られた、恋人夕霧のいじらしさ。伊左衛門恋しさのあまり体まで壊し、今やっと勤めに戻ったばかりというではありませんか。
感激する伊左衛門。
すぐにも会いたいのですが、夕霧は先ほどの阿波の大尽の座敷を勤めている最中とのこと。
それならば影から覗くだけでもと、伊左衛門は吉田屋の広い座敷を駆け抜けて大尽の座敷へ向かいます。
そして覗いてみてみると、愛しい夕霧は大尽を接待中。
一目見た嬉しさが過ぎてみれば、自分以外の男に笑顔を見せる夕霧が悔しくてなりません。
自分の座敷に戻った伊左衛門は、拗ねて帰ろうとします。
しかしそこはやっぱり会いたい。たわいなく戻ってきてしまいます。
夕霧を待って無為な時間をつぶす伊左衛門。会いたい心は急きますが、なかなか夕霧は現われない。いらいらと待ちぼうけです。
そのうち、炬燵にもぐりこんだまま不貞寝を始めました。

そこへやっとの思いで大尽の座敷を抜け出してきた夕霧が現われました。
会いたい会いたいと思いつめ、夢にまで見た恋人・伊左衛門。
夕霧は炬燵に眠る伊左衛門に寄り添いますが、散々待たされた伊左衛門は子供のように拗ねきってしまっています。
大尽の座敷で見せていた華やかな笑顔を詰り、こんな惨めな私などどうでも良かろうよっとばかりのすげない態度。夕霧がさまざまにとりなしますが、聞く耳を持ちません。
夕霧は呆然。
会いたい思いを抑えかね、病気にまでなってしまった自分。
会えたら思い切り甘えかかって愛しんでもらおうと、そればかりを胸に駆けつけてきたというのに・・・
夕霧は涙ながらに訴え、伊左衛門にすがりつきます。
そうまで言われては、伊左衛門も自分の大人気ない態度をちょっぴり反省。
向き合ってみれば、胸に暖めてきた愛しい夕霧が現実にそこにいる喜びは抑えきれません。
心を溶かし、恋人同士は改めて久々の再会の感激に酔いしれるのでした。

そこへ、喜左衛門が嬉々として駆け込んできます。続くのは千両箱を抱えた下男たち。
驚く二人に、喜左衛門は伊左衛門の勘当が解けたこと、この金は夕霧を身請けする代金として届いたものだと告げます。
年の瀬に、これ以上ないハッピーエンド!
二人は喜んで寄り添い、めでたく大団円と相成りました。

【参考公演・文献】
吉例顔見世大歌舞伎(歌舞伎座/2004年11月公演・夜の部)・同公演チラシ

【作品データ】
玩辞楼十二曲の内

【最終更新】
2005年3月1日

【物語】

千年を生きた狐は妖力を手に入れ、体毛は真っ白に変化すると言われています。
そんな伝説の白狐が狩りの罠にはまり、まさに射殺されようというところを心優しい安倍保名に救われました。白狐は保名から受けた恩を胸に逃げ去ります。
後日、保名は計略に陥れられ、追い詰められて腹を切ろうとします。
まさにそのとき、許婚の葛の葉姫がその場に駆けつけ、必死の説得で自害を思いとどまらせました。
この葛の葉姫、実は保名に命を救われた白狐。保名を救い、傍に寄り添いたい一心で人の姿に化けて現われたのです。
それから6年。
貧しいながらに穏やかな日々が流れ、二人の間には可愛らしい男の子も生まれていました。

外を駆け回って泥だらけになった息子が帰ってきました。葛の葉は目を細めつつも、腕白振りをたしなめます。
そのうち、たわいもなく寝入ってしまった息子を優しく寝かしつけ、内職の機織りをはじめました。

そんな折、保名の暮らすあばら家に3人の人物が訪れます。
信田庄司・柵夫妻、伴われてきたのは夫妻の一人娘・本物の葛の葉姫。
行方の知れなかった保名の居場所をようやくに突き止め、尋ねてきたのです。
信田庄司は、許婚の仲の娘を6年ものあいだ打ち捨て、探し出すこともなかった保名に不信感をつのらせています。母親と娘をひとまず待たせ、保名の家を尋ねてみたところ・・・
なんとそこには、機織りにいそしむ女房姿の女が!
娘は裏切られたのかといきりたちますが、顔を見せた女を一目見て唖然とします。
女の姿形は娘・葛の葉姫そのものではありませんか!

そこへ、保名が帰宅します。
信田庄司と出会った保名は悪びれる様子もなく、6年ぶりの再会を喜びます。
不審顔の庄司が葛の葉姫を引き合わせると、保名は唖然。
いつもの女房姿ではなく、豪奢な姫の衣装に髷を高々と結い上げた姿の妻が、万感の面持ちでそこに居るのですから。
訳がわからないながらも、その葛の葉姫を妻と信じて疑わない保名は妻の両親に長い無沙汰を詫び、6年前に葛の葉姫を娶ったこと、一人息子のことを語ります。
驚いたのは葛の葉姫、その両親。
なんと言っても、葛の葉姫は愛する許婚と引き離され、恋しさが募るばかりに患いついていたのです。保名の居所を掴み、やっと床を上げたばかり。
保名もようやくことの奇妙さに気付きます。目の前に妻がいるのに、家の中からは普段と代わらぬ機織りの音が・・・
混乱する一同。
ひとまず3人を物置小屋に隠し、真偽を確めるべく保名は家に入っていきました。

家の中に入れば、愛らしい我が子が寝かしつけられています。
この子までなした妻がまさか・・・と思いつつ、妻を呼ばわります。
「女房殿・・・いや、童子の母は、いずれにおわす!」
現われた女房は、常と変わらぬいつもの姿。
子のために買い求めた風車を話題にたわいもない会話をしたあと、保名はカマをかけます。
「葛の葉、両親が来ているぞ」と。
葛の葉はぎくりとしますが、すぐに平静を装い嬉しがります。
髪を美しく整え、綺麗な姿で再会するのが何よりの親孝行と保名に言われた葛の葉は、姿を整えようと奥の間に消えていきます。
葛の葉が消えた居間で、一人悩む保名。
子供の母は長年連れ添った女房に違いなく、姿形も疑い様もない葛の葉姫。もしや今日訪れた方こそが偽者か、いや、恩ある信田庄司・柵夫妻を見間違うはずもない・・・・

奥の間へ引き下がった葛の葉は、一人覚悟を決めていました。
本物の葛の葉姫が現われたからにはもうこれ以上保名を騙しつづけることはできないと思い定め、息子を本物の葛の葉姫に託し、自らは姿を消すつもりでいたのです。
しかし決意は固くとも、やはり頑是無い子供と別れていくのは身を裂かれる思い。
寝入った子供の耳もとで、わずかでも思いが残ればと母の心を語り聞かせます。
見咎める者のない場所、白狐の本性が端々に現われ、不思議な現象がさまざまに起こる室内での悲しい子別れ。
最後に、思いのたけを込めた歌一首だけを残して消えようと決めた葛の葉は、それを障子に書き付けることにしました。

筆をとり、障子の裏に鮮やかに書き付けていきますが、人ではない身の性でしょうか、裏文字などの混じった奇妙な書体。
そのとき寝入っていた息子が目を覚まし、母を求めて出て来てしまいました。
むずがる息子をなだめますが、子供は母に甘えかかるばかり。抱き上げてやるとようやくに大人しくなりました。
さて、歌の最後を書き付けようとしますが、息子を抱いて両手はふさがっています。片手抱きにしようにも、息子はもう赤ん坊ではない成長振り・・・
葛の葉は両手に息子を抱いたまま、口にくわえた筆で最後の言葉を書き付けました。

『恋しくば 尋ねきてみよ 和泉なる しのだの森の うらみ葛の葉』

そこへ、保名の声。
もはやこれまで。
葛の葉は獣の素早さでその場から逃げ去っていくのです。

すべてを見、聞き、理解した保名が飛び出した時には、葛の葉の姿は消え、ぽつんとひとり残された息子だけが立っていました。
声を限りに呼ばわっても、もう妻の姿はどこにもないのです。
障子に書き付けられた歌を読んだ保名は、6年の労苦を共に過ごした女房への愛を、大切さを痛感して叫びます。
相談をして出て行くならまだしも、たった一人で心を決めて消えてしまうなど酷すぎる。
お前が狐であろうが人であろうが、そんなことはどうでもいいのだ。
狐を妻に持った男と嘲られようが罵られようが、それでも構わない。
尋ね来て見よというのか、ならばどこまでも追いかけ、尋ねあててみせる!
保名は忘れ形見の息子を抱き、決意を固めます。

一人、故郷のしのだの森へ帰ってきた白狐。
うっそうとした秋の枯野は、寂しさ辛さを身に沁みさせます。
愛する保名との別れ。
息子が葛の葉姫に愛されることを願い、今も母の乳を恋しがって泣いてはいまいかと思えば心が揺れ・・・思いを断ち切ろうと懸命に旅路を急ぎます。
一番嫌なのは、犬に吠え掛かられること。それが恐ろしく、身もすくむ思い。
先ほどまでの人の身を思えば、憐れなまでの境遇・・・・
そこへ、二人の男が白狐を見つけ、伝説の白狐を捕らえようと襲い掛かってきました。
白狐は、毅然と哀愁の情を振り切り、二人の男に挑みます。
狐の妖力で男達を翻弄し尽くしてその力を見せ付け、二人を見事にねじ伏せるのでした。

【参考公演・文献】
吉例顔見世大歌舞伎(歌舞伎座/2004年11月公演・昼の部)・同公演チラシ

【作品データ】
作:竹田出雲
補綴・演出:戸部銀作

【最終更新】
2005年3月1日

【物語】
源平合戦の激戦地・一の谷の傍にある生田の森。
戦場のどよめきが間近に伝わるその場所に、一軒の田舎家が建っています。
いそいそと花を活けつつ近所の人々と語らっているのは、家の娘・梅ヶ枝。
溌剌とした梅ヶ枝は、まだ幼さの残る16歳の少女です。
母親はすでに亡く、年老いた父親と二人暮らし。
平凡ながらも穏やかな日常が、ゆったりとながれていくような田舎家の風景です。

農家の庭には見事な紅梅の大木が、今を盛りと満開の花。
しかし奔放に伸びた枝が井戸の上を覆い、水をくみ上げる時の邪魔になります。
近所に住む農夫の虎作が枝を剪定しようと鉈をもちだすと、梅ヶ枝は大慌てで虎作を押し留めました。
なぜ切らぬのかと皆に詰め寄られ、困った梅ヶ枝は父を呼び出し助けを求めます。
現れた父親・甚五兵衛は、枝を切ろうとした虎作を叱りつけ、梅の由来を語り出しました。

娘が生まれた記念にと、由緒あるところから紅梅の一枝を貰い受けて育てて来たのだ。
娘の名もその梅から貰ったもの。
娘の歳と同じ16年を共に成長し、いまや梅の木も花盛り。
邪魔になるとは知りつつも、梅の木は娘の体そのもののように思われて、傷つけることが出来ないのだ、と。

愛情たっぷりに語る言葉に、一同は納得します。
折りも折り、戦の声が田舎家に近づいてきました。近所の連中は慌ててそれぞれの家に戻ります。

そこへ、幾人もの敵と切り結びながら一人の若武者が駆け込んできました。
若い面に勇敢な血気を漲らせた凛々しさ、美しさの匂うような若武者ぶりです。
剣戟の音を響かせて勇敢に戦った若武者は辛くも敵を退け、一息ついて農家の庭の井戸から水を汲み喉を潤します。
恐る恐る覗く甚五兵衛と梅ヶ枝に気付いた若武者は、源氏の武将・梶原源太景季と名乗り二人に問い掛けました。

戦乱の内、父・弟とはぐれてしまった。
道は一本、こちらへ行ったかと追いかけてきたが、この道を二人連れの武者が通りはしなかっただろうか、と。

それまで父の背中に隠れていた梅ヶ枝が踊り出、そのような武将は通らなかったと夢中になって返答しました。
景季はもはやはぐれたかと思い定め、それならば一人であっても戦場にとって返し、敵陣へ攻め込もうとの覚悟を固めます。
勇んで駆け出そうとする時、ふと目に飛び込んできたのが満開の紅梅。
背中に背負った箙(矢を入れる武具)は戦闘の中で矢種が尽き、空になっています。
血腥い戦場から一時の安寧を得た景季の心に、ふと気紛れな風流心が起こりました。
入れるものもない箙に、美しき紅梅を差して行こうと。
「梅の一枝をいただきたい」と所望された甚五兵衛は躊躇いますが、梅ヶ枝は決心の面持ちで鉈を手にとり、驚く父を制して一枝を断ち切って景季へ差し出しました。
先ほど、梅の枝を娘の身同然と言った父の言葉に、嬉しげに肯いた梅ヶ枝であったのに。

箙に梅を飾った景季は、一目散に敵陣へ駆け戻って行きます。

梅ヶ枝は往来に飛び出して、去った景季の姿を追いかけます。
見守る梅ヶ枝の視線の先で、紅梅を背負った景季の姿が剣戟の中に突っ込んでいく―――
「あぁ、梅が散る!」
梅ヶ枝はその姿を見守りたい一心。
留めようとする父を振り切り、戦場への道を駆け近づいて行ってしまいました。
父は娘の一心不乱の情熱に戸惑いながら、おろおろと娘を呼ぶのです。

敵方の平家の陣にも、景季の鬼神のような働きぶりと箙の梅の話が伝わりました。
景季の風流心に打たれた平家の大将・平重衡は景季を敵ながらあっぱれと褒め称え、ただ一人で敵陣に突っ込んだ若武者の命を救うよう部下に命じます。
景季は敵陣近くに迫り、大人数を相手の立ち回りを鮮やかに切り抜けていきます。

先ほどの農家を悲劇が襲っていました。
景季愛しさに戦場近くへ駆け出した梅ヶ枝が流れ矢に胸を射抜かれ、瀕死の重傷を負ったのです。
あまりの悲劇に狂乱する父へ、梅ヶ枝は自分は幸せだ、誰も恨んでくれるなと微笑みます。
愛しい人の背で、自分の分身の梅は戦闘の中に散っていったことだろう。
こうして、梅の本身である自分の命が散るのも当然なのかもしれない。
命の狭間で確かに寄り添い、あの人の命がけの戦を一番の傍で見守れたわが身の幸せ・・・
今際の際、梅ヶ枝は景季に手渡した梅の枝と同じ梅の枝を欲しがります。
甚五兵衛が庭に飛び出して切り落とした梅の枝を抱き、梅ヶ枝は幸福の表情のまま若い命を閉じるのでした。

悲しみに包まれた農家に、2人の武将が訪れます。
それは景季が戦場ではぐれた父と弟。
甚五兵衛は景季が先刻この家を訪れ、勇敢にも再び敵陣へ突っ込んでいったことを伝えます。
折も折り、戦闘を切り抜けた景季が再び田舎家に現れました。
父子の再会を喜ぶ一同に、吉報がもたらされます。
戦況は一変。源氏の武将・源義経の奇襲が大成功を収め、源氏方の勢いが戦場を覆い尽くそうかとの状況となっているとのこと。
遅れをとるわけにはいかない!父子は勇んで戦場に向かおうとします。

勇み立つ景季を甚五兵衛が呼び止めました。
父弟を先に発たせた景季は、先ほどの溌剌とした少女が冷たい死骸となっている姿に息を呑みます。
甚五兵衛の語る梅ヶ枝のいじらしい最後。
その事実が語るのは、何の気なしに所望した梅の由来、けなげな娘心―――

都で華やかな栄華を極めていた平家武士。それに引きかえ、源氏武士は獣じみた敗者の執念を胸に、草深い田舎暮らしを余儀なくされてきました。
力がすべての戦場にあっても、ふと心を掠めるのは劣等感。
気紛れに梅の一枝を所望したのは、ものの哀れも風流も心得ない田舎武士と罵られたくはないという浅はかな思いからではなかったか。
梅の心を受け入れるには遠く及ばず、ただ利用するばかりのお粗末さではなかったか。
それがこの取り戻せない悲劇を生んでしまった、罪のない娘を殺してしまったのだと景季は自らを責め、悔やみます。
梅ヶ枝の心に打たれた景季は、梅ヶ枝が抱いて死んでいった紅梅の枝を再び貰い受け、箙に差して戦場への供をさせたいと願い出ます。
代わりに、先ほど梅ヶ枝から受け取った、花の散り尽くした梅の枝を梅ヶ枝の胸に抱かせてやります。
父・弟の後を追おうと駆け出した背中を甚五兵衛が思わず呼び止めると、景季は笑顔を見せ、生きて帰ればお目にかかろうと言い残し駆け去っていくのでした。

【参考公演・文献】
吉例顔見世大歌舞伎(歌舞伎座/2004年11月公演・昼の部)・同公演チラシ
産経新聞 2004年11月15日記事

【作品データ】
作:岡本綺堂
演出:廣田一(2004.11公演)
初演:大正4年・帝劇

明治中期以降に生まれた「新歌舞伎」というジャンルの作品。
古典歌舞伎には通常演出家がつかず、家に代々伝わる型をベースに主役が芝居を作るが、新歌舞伎には演出家がつく。

【最終更新】
2005年3月1日

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