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「・・・ふん」
昼食後の眠気覚ましにと少し温んだコーヒーをすすりながら、どこの管理職も同じことをするように、東方司令部のロイ・マスタング大佐も新聞を広げていた。
朝にも一瞥していたが興味惹かれる記事も無く、つまらんとばかりにポンと机上に投げられた新聞は役目を終えたかのようにしわしわだ。
「まったく、きな臭い不穏な空気には事欠かないな。いつもどこかの地方で戦闘やら小競り合いやらが催されている。」
ため息をつきながら傍らのホークアイ中尉にぼやいてみる。
「大佐、恐れながら、催されている、という表現は適当ではないかと思われますが?」
険しい表情で生真面目に指摘してくるホークアイ中尉とは反対に薄笑いを浮かべる。
「軍に所属しているからには戦争反対、と唱える気もさらさら無いがね。戦争はいい出世の機会だと捉える者も多いだろう。ただ、無益な争いをわざわざ増やしているようにも見えてね。」
野心が見え隠れするような発言にホークアイ中尉が眉をひそめる。
「不穏当な発言は少し控えたほうがいいかと。」
どこで誰が聞いているかわからない軍内部ではあまり好ましい発言ではない。
「・・・まだまだ、遠いな。」
民主制に移行するにはしばらくかかるのはロイも承知の上だ。それまではいたしかたないこと、と朱に染まるのを拒むつもりも無い。
ふと、小競り合いによく巻き込まれる・・・というか、よくその中心にいる部下を思い出した。
「・・・鋼のは、今どこにいるんだ?」
「東にいるよ。」
執務室のドアが開くのと同時にエドワードの声が応えた。
赤いコートを着た小さな国家錬金術師と大きな鎧の二人が姿を現した。
 
ロイの驚きの表情で出迎えられたのは一瞬で、アルフォンスだけ執務室に残るように言われた。
エドワードはロイの態度に少し戸惑いも見せたが、マスタング組の軍人たちにも挨拶を交わすためにホークアイ中尉と退席し、一方アルフォンスは後見人である兄の上司、というか、恋人と対峙することになった。
残されたアルフォンスには皆目見当もつかない。
「・・・兄さんは、いいんですか。」
鎧の体をがしゃんと軋ませて執務室のソファに腰をおろす。すでに座っているロイが胡散臭そうな笑みを浮かべる。
「アルフォンス、君に、話があるんだよ。」
魂を定着させた鎧の体では表情は読み取ることはできないが、明らかにこの状態は尋常でないことを感じている。
ロイが開いた両ひざに肘をのせ、前かがみになってアルフォンスとの距離を縮める。
軍服の上着を脱いでシャツでいるせいか、襟元を少しくつろげている。同じ軍人を相手にしているわけではないので多少の空気の緩みを醸し出す。
「君達兄弟は、元の体を取り戻すために旅を続けているわけだが、その本懐を遂げた後のことを、考えているか?」
すべてを失った兄弟に未来を提示した後見人が目的を達した先のことを問いかけてくるのは初めてであった。
二人とも、考えていないわけではなかった。ただ、今それを考えるよりもまずは道を探すことに躍起になっていた。遂げた後でも考える時間はあるだろう、と先送りにしていた感もあるのは否めない。
「兄さんとそのことについてじっくり話したことはまだありません。まずは元に戻る方法を探すのが先決だ、と思ってますので。」
そうだろうな、と兄の上司はふふ、と笑う。
 
兄の恋人であるこの後見人が考えていることは大体察しがつく。
この上司が兄を手放すわけがない。兄とすでにそんな話をしているのだろうか。でもそれなら兄はなにかしらそれを匂わせることを言い出すはずだろう。それがない今の状態で、この兄の上司の言動はどういうことか、訳がわからなかった。
「アルフォンス、私は君の兄に、軍に残るように言うつもりだ。」
予測された答えを聞かされた。
「君にも、軍に残って欲しいんだ。というか、君は今は軍属ではないから改めて入隊、ということになるがね。いや、それなりの優遇はできるとは思うが。それか、君ほどの錬金術師なら国家資格を取ることも可能だろう。」
事務的な手続きはそう面倒ではない、ということをアルフォンスは知りたいわけではなかった。
「ちょっと待ってください。元の体に戻ってもなお、兄さんは国家錬金術師だから軍に残ることは可能なのはわかりますが、なぜぼくまで?それもわざわざ入隊を勧めるんですか?だって・・・」
ちらりとアルフォンスが言いにくそうにロイと目線を合わせる。
「大佐は、兄さんを傍に置いておきたいだろうけど、僕の目は近くに置きたくないのではありませんか。」
暗に兄とこの上司の仲を揶揄することになるだろうか。黙認はしているつもりだし、兄もまんざらでもなさそうだ。
それでもつい、上司の元に泊まった翌朝の兄の様子から物申したくなる時もある。
幸せそうだが体はだるそうで疲れが後を引いているときがある。体にどんな無理や負担を強いているのか、決して兄から語られることはないから憶測しかできないでいるが・・・
「いろいろと、不都合が出てくるのでは、ありませんか?」
抗議交じりに再度同じことを言ってみる。
 
ロイが珍しく挑戦的なアルフォンスの態度に、満足げに笑みを作る。
「じっくり考えてみてくれ。突然のことで冷静に考えられないだろう。今夜は一人で、考えをまとめてくれ。」
一晩の猶予を与えられたが一人で、という言い回しが気になった。
「兄は借りていくから。」
そうだろうな、とあきらめに似たアルフォンスのため息が聞こえた。
 
 
仕事を早めに切り上げて早速にエドワードを自宅へと連れ帰る。
もう何か月ぶりになるか、前回会った時から季節が変わっていた。
玄関のドアを閉じた瞬間にはもうこらえきれなかった。それはエドワードも同じことだった。
ぎゅっと腕に力をこめて抱きしめ、深く口付ける。エドワードもよくそれに応え、口内に侵入する舌とよく絡ませた。
息苦しさもまた心地よくなりそうだったが一旦体を離し、距離を置く。
「シャワーぐらい、浴びさせろよ。」
そのままなし崩しになりそうな勢いを抑えようと、わざとぶっきらぼうに睨みつける。
恥ずかしさを隠そうと本心と裏腹な行動に出ていることはロイにはすっかり知れている。それがまたかわいくて仕方がない。
ここは大人の余裕を見せるとしようか。
「先に入っておいで。」
意外とあっさりと離れたロイをあっけにとられて見送っているとまたロイが振り向く。
「しっかりと、磨いてきなさい。待っているから。」
恥ずかしげもなくウインクをして立ち去っていくロイに対してエドワードは真っ赤になる。
「ばっ・・・かじゃっ・・・ねーの?っこのエロ大佐!!」
そそくさとバスルームへと走りこむ姿もまたかわいい。派手に音を立ててドアが閉まるのを聞いていると思わずくすくすと笑いがこみあげてくる。
今頃水圧を限界まで上げて火照った顔を冷やしていることだろう。
 
 
シャワーを終え、いつもの寝室へ上がっていくと入れ違いにロイがシャワールームへと向かっていった。
タオルで髪を拭きながらそれを見送ると否が応でもこの後のことを考える。
いつものことだ。それがこの部屋へ来た時の日常と化している。
それが心地よくもあるが、不安も付きまとう。ずっと、このまま続けられるという保証も何もない。
(・・・これから、どうなるんだろうな、オレたち)
ふと考えた『オレたち』が自分と誰なのか、確定できない。今だけでなく、この先の未来のことも含めていつか考えていかなければならないことなのだ。
だが、今は・・・
階段を上ってくる音に不覚にも鼓動が跳ね上がるのを抑えられない。
静かに開けられたドアから濡れた髪を拭きながらロイが入ってくる。ゆっくりとエドワードに近づき、またそれをエドワードも待っていたかのように視線を送る。
ベッドサイドに立ちあがったエドワードを胸にかき抱く。湯上りの蒸気の香りが肌から直接鼻腔に届く。
抱きしめられて鼓動が伝わってしまうのではないか・・・
一抹の不安がわき上がると同時にベッドに押し倒された。
 
「・・・会いたかった」
頬を染めてうつむくエドワードも同じ想いだ。
「・・・アルと、何話してたんだ?」
あえてその流れに流されることを拒むかのように話題を変えた。
「気になるかい?」
「ああ。」
枕に広がる湿り気のある金髪を指で漉きいれながらとりあえずの答えを出しておく。
「・・・私たちの、これからのこと、と言っておこうか。まずは、」
柔らかい唇を喰ってから、と深く舌を忍び込ませる。迎え入れるエドワードも欲しかったとばかりに貪りあう。
言葉は無くても、部屋に響くくちゅり、と卑猥な音が互いの想いの深さを物語る。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
くロイです。。。
後編に続く・・・(苦笑)

閉じる コメント(3)

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く〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!
やっぱさああ!!!!やっぱさあ!!!はな文!いいよおvvv艶文だよ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜vvvvvvv

アルの、「兄は借りて行く」って言われた時の反応には笑っちゃったけどさvvvvv

2011/9/11(日) 午後 5:00 はっぴー

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はっぴー様>艶文なんて〜〜〜〜!!(笑)ロイのこと嫌いなのか?ってくらいに黒いでしょ?いや、好きだから黒いのよ〜〜〜(←意味不明)
アルはちゃんとわかってるのよね。モノ申したいことはいろいろだけど、お口チャックできるのさ。。

2011/9/12(月) 午後 4:49 はなあんこ

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内緒様>なんと??!!嬉しい限りです!!
続きは表に出せる内容じゃないけど、表にするつもりですよ(←おいっ!)
ありがとうございます!!こんな駄文にいいのかしら?(焦)

2011/9/12(月) 午後 4:51 はなあんこ

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