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篠突く雨・・・篠竹で刺すように激しく降る雨
「何があったっていうんですか!」
「なんでもない。ただ、明日から自宅謹慎というだけだ。・・・君には迷惑をかける。」
「なんでもなくてそんな処分が出るわけないでしょう!経緯を聞かせてください!」
「経緯もなにも、上官を殴って自宅謹慎ということだ。」
「っ!だから!」
ドアの中から普段は冷静な副官の珍しく激昂する声が廊下まで聞こえていた。
さすがにドアを開けようとしていたエドワードも一瞬躊躇する。ドアノブにかけた手も動かすことも出来ずに室内から聞こえる声に耳を澄ました。
「・・・ちょっと、間が悪そうだね。」
事態を察したアルフォンスが微動だにできないでいる兄に囁く。黙って頷くと外開きのドアが突然に開き、エドワードの額を直撃した。ドアを開けたロイも思わぬ反動に怯んだ。
「・・・・・・・ってーーな!大佐!」
「鋼の?!」
突然の来訪者に一瞬驚いたがそれも構わずドアを勢いよく閉めて廊下を速足で歩いていく。
「報告書なら中尉に渡しておいてくれ。」
中からは副官の呼びとめる声も聞こえてきたが無視して歩いていく。
「たっ!・・・大佐!ちょ、待てよ!」
大股で歩き去っていく姿に若干腹が立った。呼びとめてみても歩みを緩めることもない。
そんな扱いを受けて悔しいのと訳を知りたいという思いから追いかける。
室内から出てきた副官がドアの前でおろおろしているアルフォンスの姿に気がついた。
「アルフォンス君!」
兄も気になるが部屋に残された副官の珍しく不安げな表情が気にかかる。
「あ・・・中尉。なにごと?」
副官が廊下を足早に歩くロイとそれを追いかけるエドワードの背を見て、少し穏やかになった。
「・・・エドワード君も来てたのね。」
彼が追いかけて行ったなら、と安堵して残されたアルフォンスに笑いかける。
「・・・入って。せっかく来てくれたのに、見苦しいところを見せちゃったわね。」
訳が分からないのは副官も同様だが、子供にうろたえているところを見せたことを詫びた。
その気遣いがアルフォンスにも伝わった。
「・・・に、兄さんが、なんとかしてくれますよ!きっと!」
あえて声高に、フォローにもならないフォローをするしかなかった。
朝からくもり空ではあったが、とうとう雨が降り出してきた。
司令部を出て濡れるのに気がついてロイは小さく舌打ちをした。
「大佐!おい!待てよ!」
後ろから小さいのがにぎやかに追いかけてくるのは分かっていたが面倒で立ち止まることもしなかった。が、走って追いかけられては追いつかれてしまう。ロイも走って逃げるのはなんとも大人げない。
腕を掴まれてやむを得ず振り返る。
「なんだね!私は帰るんだが!」
面倒くさそうに、また感情をコントロール出来ないかのように声も大きくなる。
「なんで帰るんだよ!まだ午前中だろうがっ!」
エドワードも上官に対する口のきき方としてはふさわしくない物言いだ。
「自宅謹慎だ。追って沙汰をするまで自宅待機を命じられた。」
至って事務的な言い方をした。
「ドアの向こうで聞いていなかったのか?上官を殴ってきたんだ!そのくらいの処分はあるだろう。」
「殴るって・・・なんでそんなことをしたんだよ!」
「君に言う必要は無い。」
鋭い目つきで言い放った。その視線があまりにも冷たい色を含んでいて、エドワードは一瞬怯んだ。
「訳を聞いてどうするというのだ。君が上官にとりなおしてやるとでも言うのか?」
そんなことが出来るわけもない。ロイの上官ということは軍のなお上にいる人間ということだ。
「君に教える意味もない。」
冷たく言い放ち、背中を向けて歩き始めた。
まるで突き放した言い方をされてエドワードは少なからずショックを受けた。
確かに何を出来るわけもない。だから訳も話してくれないというのは心外だった。上司と部下という関係だけではないはずじゃなかったのか。もっと、深いところで繋がっていたんじゃなかったのか!
頭を大きな木槌で殴られたような衝撃だった。
「・・・そんな・・・そんなもんなのかよ!オレたちって!」
司令部の門を出たばかりでまだ軍人の目もあるのを気に掛けることも出来ず、大声で背中に叫ぶ。
ちらりと振り返ったロイの視線は雨と同様冷たかった。
「そんなもんだろう。」
違うのか?とエドワードの叫びを肯定して歩き去って行った。
雨はますます強くなる。
門兵がずぶ濡れでその場に座り込んでしまった放心状態のエドワードを執務室に届けてくれた。
ホークアイ中尉にタオルを借り、濡れた髪の毛を拭いたがロイに言われた言葉がまだ耳に響いている。
中尉が熱いお茶を入れてくれたがとても飲む気になれなかった。
「朝から上官に呼ばれて行っていたの。しばらく戻ってこなかったんだけど、ひどく怒って戻ってきたと思ったら、上官を殴ってきたと。その上官の副官がここに来てそう言っていたから本当みたい。」
「で、でも、大佐って、上に行くためには理不尽を呑みこむんじゃなかったですか?」
言葉を発しない兄の代わりにアルフォンスが訊ねる。
「そう・・・滅多なことじゃ、こんな激情に任せて行動するような人じゃないはずだけど。」
「その上官は何を言ったんですか?」
「・・それに関してはなにも言ってこないわ。」
ホークアイ中尉も言葉を選んでいるのが分かった。おそらくその上官はなぜの原因よりも、ロイが殴ってしまったことを声高に言いたいのだろう。誰しもが自分に都合の悪い事実を伏せたがる。
「よっぽど、腹に据えかねたのね。」
ため息をつきながら机に山積みになっている書類に苦笑いをした。ホークアイ中尉の困ったような笑顔は軍の上層部に呆れているようにも見えた。
司令部から傘を借りて二人は定宿へと向かう。が、エドワードの歩く速度が異様に遅い。ロイとどんなやりとりがあったのか、兄からは何も聞けずじまいだ。
「兄さん・・・」
心配なのに、踏み込んで問い詰められないアルフォンスだった。
その日の兄は沈黙を守ったままベッドにもぐりこんだきりだった。
篠突く雨2へつづく
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まってました!!!!!!!
アレですね!あのイラストですねvvvvvvv
く〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜v溜まらないなあvvvvvはなあんこさんの大佐、好きだよ〜〜〜〜〜vvvvvv
続き、早くGIVE ME!!!!
2013/6/25(火) 午後 6:05
わっ!先が気になる〜〜!殴った理由は〜?
2013/6/25(火) 午後 7:57 [ megu ]
人様の記事に公開されている自分の絵って、直視できない…(滝汗)
私も殴った理由が気になりますね。
ロイエドではありますが、穏やかでない大佐と中尉が見れたのも個人的に良かったです( ´艸`)
続き、楽しみにしてます〜。
2013/6/28(金) 午後 10:01
はっぴー様>アレですよ!アレ!あの時のイラストでもらってすぐにぐへへへへしてた、アレですってば!
でも今回の大佐、ちょいと今までと違うんですよ・・・
続き、期待せずにお待ちくださいませ(笑)
2013/7/1(月) 午後 1:48
megu様>気になりますか〜〜??殴った理由は・・・もうちょっとしてから。。
2013/7/1(月) 午後 1:51
れい様>このたびはリクして描いていただいてもう本当にうれしい限りですよ〜〜〜!我が家のスキャナーもあまり画質がよくないかもですが、私はこのイラストいただいてめっさ嬉しかったです!
ロイエドなんだけど、あまりそれっぽくないかもしれません。
あと、エドのイラストもそのうち使わせていただきますね〜〜〜!
2013/7/1(月) 午後 1:59