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♪ 思い出 巡り 夏休みのお子様ランチ
青字でロゴマークが入る白い小判型のお皿。小さく盛ったチキンライスの上に日の丸の旗が立つ。そし
て、エビフライにハンバーグ、ポテトサラダ。懐かしいお子様ランチだ。子供時代はこの皿が、もっと大
きく見えたものだが・・・。これは、大人になってから見る小学校の校舎や運動場が「こんなに小さかっ
たのか」と思う感覚と同じだろうか。
来春に閉店するデパートが、懐古イベントとして、「30年代のお子様ランチ復活!」を打ち出した。
幼少期を奈良の片田舎で過ごした私は、電車に乗って連れて来てもらう京都は、遥か遠くの、現在の外国
旅行のような思いだった。そして帰りには、必ずこのデパートに寄ってお子様ランチを食べさせてもら
う。ナイフとフォークを始めて知った豪華なフルコースであり、まるで夢のような場所であった。
大食堂の賑わいは活気に溢れており順番を並んで待つ。美味しそうな食べ物の匂いに、席の空くのをワク
ワクしながら待った。そして食事が済めば、お子様ランチの旗は大事に持ち帰えり、小物入れ(宝箱)
に入れた。連れて行ってもらうたびに集めた万国旗は、私の見知らぬ国が有ることを教えてくれた。
高校生の時、同級生のお兄さんが美術大学に行っておられ、夏休みには頼まれて絵のモデルをやった。
そのお礼もお子様ランチで、その時も旗を持ち帰った。
そして、自分の子供たちのお誕生日会には、お子様ランチを真似てサクランボと一緒に万国旗を飾り、腕
を振るったものだ。懐かしいお子様ランチである。
あんなに目を輝かせて食べたお子様ランチ。
最近はどんな食べ物でもいろんなものが簡単に手に入る。しかしどれほどの夢を残してくれているのだ
ろうか。
ワクワクして貯めた旗はとうの昔に無くしている。
私は「30年代のお子様ランチ復活!」イベントに、ついてきた旗をやはり昔のように持ち帰った。
この旗に、新しくこれから先の夢を乗せて、大事にしまっておこうと思ったのだ。
高校一年生の夏休み、同級生から「絵のモデルになってあげて」と頼まれて、東山三十三間堂でバスを降
り、汗をフキフキ坂道を登り京都美大に行った。薄暗い木造の校舎は歩くと床がぎしぎしと鳴り、私の通
っている高校より粗末に見えた。
高校は躾けの厳しい学校で、夏でも長袖の白いブラウスにネクタイを締め、スカート丈は膝下何センチと
決められていた。そして外出時も制服を着るように言われていた。
「必ず同級生(モデルを頼んだ美大生の妹)と同行のこと」で、絵のモデルは許可されていた。
待ち合わせの日、彼女は“向日葵の花柄”ワンピースを着て来た。私が「違反じゃないの?」と咎める
と、「良いの。でも、貴女はモデルだから、制服を着てこなきゃ駄目よ」と、こともなげに言う。私服
と言っても、私は姉のお古の、“アッパパ”と言うものしか持っていないし、ましてや背丈を20センチ
近くも縫い上げた服だから、制服での外出の方が良かったが、裏切られたような気持だった。
県下から生徒が集まってくる名門校だった。地元の田舎では誇らしく胸を張る制服も、電車通学の電車を
下りるころにはいつも萎縮して、私は<校則>をその通りに守るおとなしい生徒だった。モデルを言われ
た時は嬉しく簡単に引き受けたが、暑い京都の街を長袖など着ている人はいない。私は恥かしくて後悔し
ていた。
大学の構内は夏休みのために、学生の姿はまばらで、先輩に絵を見せに来ている受験生とおぼしき
制服姿の同年齢の人を見かけて、少しは安堵した。絵の具の匂いが暑苦しい空気の中に澱んでいる。蝉の
鳴き声が喧しく入ってくる教室。三つ編みのお下げ髪のほつれが、汗にまとわりつく。友達は向日葵の絵
の団扇(うちわ)で、優雅に仰ぎながら宿題をやっている。私は腹立たしくなった。
「僕も描きたい」と、もう一人学生が加わった。気楽な格好で宿題をしていた友達は“向日葵の花柄”の
ワンピースの裾を直し、椅子に座りなおしていた。向日葵が真直ぐに咲いたように見えた。私はまたも腹
立たしくなった。しかし、私は澄まし顔で指示通りに一点を見つめていた。
友達のお兄さんの描いた「私」は、電車通学の時に見かける「魚の行商のおばちゃん」のように、厳し
い顔をしていた。もう一人の学生のほうの絵は、優しいおすまし顔の高校生だった。私はこの絵の方が
気に入った。同じ「私」がモデルなのに、とても異なる二つの絵を「不思議だな〜と」思った。絵を通し
ての表現がとても違うことに驚き、なんだかそれが神秘的にも感じた。
絵が完成すると、「お礼に京都を案内してあげる」とお兄さんが言う。「絵をやる人は、いつも新しい物
を吸収して、センスの良いものに触れるようにしないといけない。デパートはセンスを磨くのに良い場所
だし、そこでご馳走をしてあげる」と、駅に近いデパートに連れて行ってくれた。もう一人の学生は「古
い寺とかを見せてやれよ」と言ったが、育ち盛りの高校生は、年寄りが行くようなお寺よりデパートの方
が良かったし、ご馳走をしてもらえるというので目を輝かせた。
そして、お兄さんは大食堂でお子様ランチを注文した。私は大人に見えるお兄さんがお子様ランチを食べ
るのが可笑しかったが、子供時代に父に連れられて何回か食べているので、懐かしく嬉しかった。
そしてチキンライスに乗っていた旗を、お兄さんの分も貰って帰った。
友達とはそれ以後、進路別でクラスが異なったので付き合うこともなくなった。お兄さんの描いた絵が、
その後どうなったのかは知らない。
私の高校生活は、ひたすら勉強ばかりだった。しかし、なにを勉強していたのか思い出せない。
私はふっと今になって思う。
高校生のあの時、お子様ランチでなく(古いお寺などを)もう一人の学生について行って、観て廻ってい
たらまた人生が違ったかなと・・・。
多感な高校生時代を、勉学だけに追われていたことを少し後悔する。夏休みに、もっと本を読むべきだっ
た。旅行もするべきだった。初恋もするべきだった。等々・・・・と。
庭に、あの時の友達のワンピースの花模様のような大きな向日葵が、太陽に向かって咲きだした。私はお
子様ランチを食べて、少しだけ昔にもどった。向日葵に、これから大人になって「歩いて行くのも良いね」
と旗を振ってみた。
♪ 西瓜提灯 木村徳太郎 「馬鈴薯の澱粉」ノートより
夕顔柵に
出た月よ。
提灯
西瓜のやうな月。
背丈が伸びて
大人になれば
目、鼻(はな)を
刻(く)つて吊ろうもの。
夕顔柵に
出た月よ。
♪ 「ニラメッコ」
サアサアハヂマリ
ヒロツチヤント
マサコチヤンノ
ニラミツコ。
オクチヲホソメテ
メメヲムキ
キツネノマネスル
ヒロツチヤン。
クロイメダマヲ
クルクルト
マワシテリキム
マサコチヤン。
アイテ ワラワソー
メメムケド
ドチラモクラハヌ
ニラミツコ。
2006.07.28
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おはようございます。華やかなひまわりで目が覚めました。絵のモデルさん。すご〜い!制服はセーラーでしたか?花ひとひらさまは、個性的な美人(別嬪さん)でしょうね。三つ編みのお下げがとてもお似合いでかわいい花ひとひらさまが見えてきました。そぅ、お子様ランチの旗、私も大事にしていました。いつからか新幹線のお皿になり、ヤクルトなど付いていますね。「ニラメッコ」メメヲムキキツネノマネスル ヒロツグヤン いいですね。
2006/7/29(土) 午前 7:13 [ ささ舟 ]
ささ舟さま。雨は上がりましたが梅雨開けはまだとか。まだ梅干は干せませんね。でも入道雲モクモク、向日葵にも見せてやりました。昔は女学校で戦後に共学になった学校で、いつも校門前に教官が立っていて服装を検査をしていました。プールも有ったけど金槌だったし、あまり楽しい高校生時代では有りませんでした。勿体無いね。ささ舟さまは、勉強もスポーツも抜群、エンジョイした高校生だったのでしょうね。きっと。1
2006/7/29(土) 午前 8:23 [ 花ひとひら ]
「ニラメッコ」の詩も「西瓜堤燈」も楽しいです。西瓜の苗のときから、堤燈を楽しみにしている優しさ。「ニラメッコ」はこんど孫に実演しようかと思います。いつも有難う御座います。2
2006/7/29(土) 午前 8:27 [ 花ひとひら ]
私にとって向日葵の記憶は、終戦の日に結びつきます。国民学校の二年生でしたから、戦争の意味は何も分かっていませんでした。それでも、一つの時代の終わった日の記憶です。「向日葵」 北原白秋:ああ あわれ/青にぶき救世軍の/よごれたる硝子戸のまへに/向日葵咲き/豪端を半纏ひとり ペンキ壷さげて過ぎく/いづこにか物売の笛/ああひと日一日の夕べ//
2006/7/29(土) 午前 10:22 [ 道草 ]
こんにちは。おむすびです。 真夏の熱気がつたわってきそうなしゃんとしたひまわりですね。 京都の美大(京都市立芸術大学)は私にとってもかなわなかった夢であり、一緒に浪人しながらともに目指していた人との初恋の思い出でもあり、10代のころを思い出しながら読ませていただきました。ちょっと甘酸っぱいいい時間でした。ありがとうございました。
2006/7/29(土) 午前 11:58 [ ma_*ha*040* ]
道草さま。花って不思議ですね。何か心に「重り」が或る日。花が目に留まり記憶に残っている。咲いていた花が(事柄は鮮明に思い出せなくっても、その時、目にした花が浮かび上がってきたりします。私は夏は、向日葵もですが、「マツバボタン」が夏の夕陽とともに心奥深く描かれています。ときどき顔を出して咲きます。向日葵は元気すぎて、ちよっとほんとは苦手です。
2006/7/29(土) 午後 7:08 [ 花ひとひら ]
おにぎりさん。こんにちわ。思い出はみんな財産ですね。その時苦しかった事も、甘酸っぱくなったり、と発酵するみたいですよ。いい思い出の沢山ある人は幸せですよ。おむすびさん、絵がお上手なわけ、分かりました。
2006/7/29(土) 午後 7:15 [ 花ひとひら ]