来た道行く道通りゃんせ/風にのって花ひとひら

のんびりしたブログですがよろしくお願いいたします。

八月の歌

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花茗荷

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花茗荷と朽葉



厳しい夏の陽射しの中を、今日も花は力強く咲いている。花をみていると、その花の中に、子供だった。乙女だった、成人だった。と、通り過ぎて来た色々な時代や場所が、自分の生きて来た記録のように浮かび上がってくる。鮮やかに見えて咲いてくる。開いてくる。

ふと思いだす花の思い出・・・・。それは心の記録・・・。
備忘録としてそんなことを綴っていきたいと思う。


そして、新たにまた、この夏も一つ花が咲いた。





   花茗荷 と  人形

渓流に鮎つりをする人影、迫る杉木立。花折れトンネル。寒風トンネル・・・

名前が、自然のなかに膨らんでいく。車の窓を開けると岩に砕ける水しぶき、重なる青緑の木々、陽の

光がそれぞれ粒子のように重なり合って入ってくる。


縁があって93歳と89歳のご夫婦の実家の掃除を手伝うことになった。

渓流に蛍が乱舞し、紅葉のころは心も体も赤黄金色に染まるという。しかし、冬は雪に閉ざされ生活は眠

ってしまう。生活は山を中心に炭を焼き、柴(薪)を作り、花を作りそれを現金に替え、糧は自給自足。

山の成木は、子供の教育のために町に別宅を持ち、次世代のために使われる大切な財産で、木々を子育て

と同じく大切に育てたと言う。しかし、子供たちに帰巣する考えなどなかった。ご夫婦の子供さんたち

も外国生活で、もう何十年と日本に帰っておられない。山の木だけが静かに語りかけている。


高い天井に保存した竹や木が囲炉裏で煙に燻され、飴色に染まる。防虫効果も加わりその素材はもてはや

され、雪深い道をかきわけ業者が買い付けに来たという。私には想像もつかない遠い遠い昔の物語のよう

な世界である。

300年は経っているという部屋の真ん中の、太い柱に手をおき耳を当てると、知らない古人(いにしえび

と)の息遣いが聞こえてくるような気がする。根無し草で転居をくりかえしている私には、こうして個人

の家が300年も現存する事に驚く。代々の人たちが少しずつ手を加え、生活がしやすいように改良されて

現在の姿に成ったという。

 ご夫婦は早くから町で生活しておられ、この家はいつしか独居老母だけになり、80歳までこの家を守

っておられたが、最後は施設に入られ102歳で亡くなられた。

そうして今、この家はご夫婦が守っておられる。若い時はこの自然豊かな地に帰ってくるのが、故郷

に帰ってくるのが誇らしく家の守りも財が許す限り可能で、心地よい責任感もあり張りがあったという。

しかし、自身たちが介護保険をうけ、身体も思うように動かなくなると、家の守りは厳しくのしかかって

くる。冬は雪囲いをしに、紅葉に目をやる暇もなく作業にはいり、雪下ろしは人に頼み雪解けに訪れると

家のあちことが痛んでおり、庭に鹿や猿や熊や猪の糞だけが散らばり物悲しいという。家は生活の息き遣

いがあってこそ朝日に歌い、月に安らぐのであろう。現在済んでいる住宅とこの代々の家を維持していく

のは並大抵ではないだろう。

人間の終末は福祉という形も有る。お二人にとってはこの家は心の支えでも有る。しかし、心の支えにま

で福祉の手は届かない。

腰を丸くして久しぶりに訪ねる家の鍵を嬉々として開け、戸を開け放って風を入れられる。

その動作には普段見ない、生き生きとした顔が伴なっている。


しかし、私は「ギョッ」とした。

飾られている日本人形の顔に黴がきているのだ。目の悪いご夫婦は、気がつかれていない。

私はこっそりとテイッシュでその黴を拭った。恐かった!。

今年の長雨は、長く締め切った家に、人形の顔に、黴をつれてきた。


屋敷の周りには茗荷が増え続け、みわたすかぎり茗荷で溢れている。

誰も採集する人がなく、<茗荷の子>は淡黄の淡い花をつけていた。

花は一日で萎むらしいが次々に咲き、朽ち葉の上に清らかに伸びて咲いている。

土の匂いと、力強く咲いている花は、静かに千年の歴史を語っているように思えた。


実を言えば、茗荷好きの私が、茗荷につられてそれを報酬に掃除を引き受けたのだ。

その昔、お酒好きの父は自分で酒肴(しゅこう)を作っていた。茗荷に味噌をつけ少し焼く。千切りにし

て鰹節を天盛りにする。私は小さいころからそんなものが「変な子ね」と言われながら好きだった。自宅

の庭にも少し植えているが、それは私の食には足らず店で買い足してまでも食べたいほどの茗荷好きだ。

茗荷を食べると「物忘れがひどくなる」という。いつも家族にそれを指摘される。


採っても採ってもいくらでも有る茗荷を摘み、私は少し不思議な気持になってきた。

人間も、形有るものも、朽ちる運命にある。しかし、次の世代に「送り続ける」ということはどういうこ

とだろうと、考えてしまう。

山から風が吹いてくる。この風はこの家があった300年前と同じ風が吹いているのだろうか。出来る事な

ら忘れて欲しくない。いつまでも、この家が続くことを願う。

しかし、山の風はささやいた。

「アナタ(茗荷)をいただき、私は全てを忘れて朽ちていきます」。


報酬のビニール袋三杯の茗荷は、柴漬けになって毎朝私を喜ばせている。丸ごと茗荷の柴漬けだ。あまり

の美味しさに、「何もかも忘れる」。

しかし、今後茗荷の花を見ると、あの黴のきた日本人形が重なることを、私は忘れられない。




      泣いている雷さま              木村徳太郎   「楽久我記」ノートより




                背戸の葛城
                つらなる山山。

                山を除けよと
                雷さまが

                七色染粉の
                でっかい壷を
                疏忽なされて
                踏んづけられた

                壷は潰れれて
                高野へかけて

                紀の川よりも
                長い虹がでた。

                背戸の葛城
                つらなる山山

                未だ泣いている
                雷さまが。



2006.08.25

♪「弘ちやんは生きている」1〜7はブックマーク(ご挨拶)にまとめて入れました。
 
 これからもよろしく愛読、ご指導をお願いいたします。また休み中も御出でくだり感謝でいっぱいです。更新もなかなか進まないブログですが、よろしくお願いいたします。

閉じる コメント(18)

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お早うございます。昨日あたりから朝はしのぎよくなりました。花ひとひらさんも茗荷好きですか私も・・お盆に実家に帰ったとき、昔からいっぱい出来ている蔵の裏に飛んでいきたくさんの茗荷を摘んできました。冷凍にして使っています。焼き茄子に、胡瓜もみに、どぼ漬けに、天ぷらに、これがある間はご飯時が待たれます。このふっくらとした姿と仄かな香り、たまりませんネ。1

2006/8/25(金) 午前 6:47 [ ささ舟 ]

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昨日は、かつて父の俳句仲間だったご婦人の墓参りへ行って来ました。23歳でご主人に戦死され、一人娘を育てて83歳でこの春に永眠されました。過疎の古里で石垣塀に囲まれた自宅に住む人も無く、死の間際まで美しい句を詠まれた方は杉林の裏山にひっそりと眠っておられました。周囲に茗荷が群生していて、ほの暗い木陰に白い芽がまるで灯明の様に揺らいでいました。私はその茗荷の芽を少し摘んで帰りました。「屈葬の雄叫びであり茗荷の子・古山のぼる」。

2006/8/25(金) 午前 6:58 [ 道草 ]

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日中はまだまだ厳しい暑さですがお元気でいらっしゃいますか。お稽古の方も一段と進んでいることと思われます。私はこの夏、なにも手づかず「ぼぉ〜」と過ごしました。シルバーセンターの方たちを見習わねばと思いつつ・・私は出来ません。来週は高野山に行こうかなと。大和の山々を仰ぎながら・・お元気でネ。

2006/8/25(金) 午前 7:25 [ ささ舟 ]

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ささ舟さま。おはよう御座います。日中は厳しい暑さですが、朝夕は空気がさらっとしてきましたね。新涼を感じるこの時期は茗荷のように爽やかです。冷凍にも出来るのですか。冷凍にする間も無くお腹に入っていましたが、一度冷凍も試みます。茗荷のある間、私は夏痩せなど不可能です。

2006/8/25(金) 午前 7:38 [ 花ひとひら ]

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道草さま。茗荷は人家に植えられるのか、以前登山した時、やはり廃屋の周りにたくさん茗荷が出ていたことが有ります。今思うとあの儚げな花は灯明かもしれません。いくつか貰って帰り、いただくのが自然への供養かもしれませんね。そうですか、茗荷に「屈葬の雄叫び」があるのですね。一つ、賢しこくなりました。有難う御座います

2006/8/25(金) 午前 7:39 [ 花ひとひら ]

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ささ舟さま。高野山ですか。いいですね。涼しく秋涼がもう漂っているのでしょうね。涼しい所で聞く蝉の声は沁みとおるようで爽やかですね。 下界の蝉の鳴き声は、まだまだ「じじー」と身を焦がされます。 お気をつけていってらっしゃい。また旅日記聞かせて下さい

2006/8/25(金) 午前 7:46 [ 花ひとひら ]

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素敵な絵ですね。 ミョウガは私も好きです。刻んだときのかおりがすばらしいですね。 絵からも香りが漂ってくるようです。

2006/8/26(土) 午前 8:01 [ rocky ]

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rockyさん。こんにちわ。茗荷好きで有難う。自分の大好きなものが他人さまも好きだと思うと、なんだか嬉しくなって親近感を覚えます。ちよっと辛いような味覚も良いです。花も優しい花で・・・。言い出したら贔屓の引き倒し止まらなくなるのでこの辺で。茗荷のご贔屓有難う御座います。

2006/8/26(土) 午後 1:15 [ 花ひとひら ]

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こんばんわ。おむすびです。 こどものころ、裏の藪のふもとに毎夏茗荷の花を見つけました。 子どもの舌には茗荷は難しいものでしたが、今は大好き。 今日も鰹のたたきに添えました。 この茗荷の絵は瑞々しく、なまめかしい。太陽を避けてそっと咲いているようです。

2006/8/26(土) 午後 9:54 [ ma_*ha*040* ]

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花ひとひらさん こんばんわ こちらでは はじめまして・・・です。 いつも温かいコメントをいただきありがとうございます。 ミョウガの絵 なんてステキなんでしょう。 私は自慢ではありませんが 絵は全く描けません。 それでも○一つでも描けるようになれたらと 絵手紙教室に出かけていますが 先生も批評に 困惑されているようです。 とほほ・・・ でも絵を見るのは大好きですので 花ひとひらさんのページにお伺いできる 楽しみができました。

2006/8/26(土) 午後 10:41 [ kazuki ]

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おにぎりさん、こんばんは。暑い日は茗荷の千切りを氷に載せて、少し梅肉も載せて「シャッキリ」とします。おにぎりさんはお料理上手。茗荷も色々に活用されるのでしょうね。花は冷奴の上に飾ります。花良し実よし全て良し、を食べさせていただいている割には、私は「良し」にはなりませんが。ふっくら茗荷は艶かしい所ありますね。

2006/8/26(土) 午後 11:39 [ 花ひとひら ]

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kazukiさん。こんばんは。訪問有難う御座います。絵手紙教室に行かれているのですか。いっぱいお花の絵を描いておられるのでしょうね。私の絵を見ていただいて有難う御座います。私も花を見る楽しみが出来ました。私は毎日とは行きませんが時々の更新ですが、また来ていただければ嬉しいです。

2006/8/26(土) 午後 11:45 [ 花ひとひら ]

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お早うございます。しばらくのご無沙汰御免なさいネ。昨日はすこ〜し秋風を感じる高野山に行って来ました。奈良であっては「吉野川」。紀州に入り「紀の川」となる。そののどかな川面を見ていると、有吉佐和子の小説「紀の川」「華岡青洲の妻」など、当地の因習や嫁姑のことなどが幽かによぎる。高野山は約千メートルの高さ、昨日の気温は24度と出ていました。1

2006/8/29(火) 午前 6:00 [ ささ舟 ]

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秋漬け場尾花が上に置く露の消(け)ぬべくも吾(あ)は思ほゆるかも。日置長枝娘子(へきのながえのおとめ)。奥の院では紫陽花の藍と、穂の若いすすきが一緒に咲きとても爽やかでした。和泉山脈の美しい稜線。遥かに紀淡海峡が・・。夏の終わりの優しい旅でした。花ひとひらさま、楽しみが待っています。ご自愛をネ。

2006/8/29(火) 午前 6:49 [ ささ舟 ]

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ささ舟さま。高野山に紀ノ川より長い虹は出ていませんでしたか。私の所では音ばかりでちっとも雷さまが来ません。雨と虹を見てみたいものです。いろんな優れた作品には、その当地の文化空気が影響しているのでしょうね。その場所に立ち、色んなことを思い描くことの出来るのは幸せですね。

2006/8/29(火) 午前 9:37 [ 花ひとひら ]

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ささ舟さま。こちらでも若いススキの穂が新鮮です。暑くっても生まれたばかりの穂は爽やかです。気分がしゃんとします。一面がススキになるごろは寂しくなりますが・・・。もう直ぐ露の綺麗な時季になりますね。お尻に根が生えて動かない私ですが、ささ舟さんのコメントで、いつも旅をさせていただいています。有難う御座います。夏の終り、ご自愛して又旅の話を聞かせて下さい。

2006/8/29(火) 午前 9:44 [ 花ひとひら ]

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花ひとひらさま。あのネ、一つ教えてくださいね。今すぐ笊に採りたい程の茗荷の絵の中の妖精の触っている物?は何でしょうか?めぐりの効かない私は気になって仕方がないのです。何て、物見のない老女でしょうね。お笑いください。一日限りの花ですが透けて優しいし、あの芳香が何とも云えない食欲をそそりますね。^^今夜も頂きますのよ。変なこと聞きゴメンナサイね。

2006/8/30(水) 午後 5:34 [ ささ舟 ]

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ささ舟さま。ウフフ。あれはね。葉脈だけになった朽ち葉が茗荷にひかかっていたのです。それが面白かったので描いたのですが、自分でも何か分からなくなりました。朽ちて行く葉(物を)妖精(私)が引っ張って捨てようとしているのですが・・・。「芋虫」かと思いますよね。自分で描いておいて、後で見るとあまりの拙さに赤面すること「多し」です。

2006/8/30(水) 午後 8:51 [ 花ひとひら ]


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