来た道行く道通りゃんせ/風にのって花ひとひら

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弘ちゃんは生きている(2)

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弘ちゃんは生きている(67)
次の日、弘はウメちゃんの家へ試合で汚れたユニホームを持って行った。炭焼き小屋に続く林は木々の匂いで溢れている。クヌギの木に大きなカブトムシが木汁を吸っていた。弘はウメちゃんが喜ぶだろうとお土産に、それを捕まえた。
ウメちゃんはいつものように山水を溜めた清水で洗濯をしている。
「ウメちゃん、ユニホームをみんな洗ってくれるんか。みんなは大助かりやわ。おおきに」
「お礼にカブトムシやる」と、
ウメが喜ぶのを期待して、ワクワクしながら渡そうとすると、ウメちゃんはなんだか慌てて洗っていた洗濯物をかくすようにして「いらん」といって
「ユニホームはそこへ置いといて。洗っておくから」といつものにこにこ顔でなく、なんだか恐い。この顔はおっ母の狐つきのときの顔みたいだと、弘は思った。
「ウメちゃんどうしたん。しんどいんか」弘は心配になり、ウメが隠した洗濯物を覗き込んだ。それには赤い血のシミがついていた。「ウメちゃん、どうしたん?」
弘はひっつこく声をかける。
ウメは、むうーとしながらも仕方なさそうに話し出した。
「あのな。女の人は月に一回生理と言ってこうなるんや。お腹は痛いし、気分も悪いし、しんどいんや。だからうるさく話し掛けんといて。だけど、これは大事なことなんやで。」
弘は驚いた。そう言えばお母が、狐つきになる時はいつも便所に血があった。
ウメちゃんは、お母と同じような大人なのか。ウメちゃんもお母のように意地悪な大人なのか、弘は心配になった。弘は、不安げにウメの顔をのぞきこんだ。そんな弘にウメは話し始めた。
「女の人は子供を生む準備を、ある年になればするんや。越出さんとかみんなはまだそんなことはないやろけど、私は年が多いから、もうその準備をしているんや。これはとても大事なことなんやから恐がらんといて。恐い顔になったり、イライラして意地悪するかもしれんけど、これは大事なことなんや」
「そんなら、うちのお母も時々狐つきみたいになって、おれをいつもより苛めよるけど、あれはその生理とか言うもんのせいか。狐つきとちがうんか」
「そうやで。そんなとき、いつもよりお母さんを大事にしたげんとあかんで。きっとしんどいんやわ。そんで怒らはるんやわ。」
「狐つきなんて言わんと、いつもよりお母さんを大事にしてお手伝いを良くして助けてあげんとあかんで。あんた男の子やろ。よう覚えとき!」
そうウメは言いたいことだけ言って、家の中にさっさと入ってしまった。
少し恥かしそうに、でもしっかりとした足取りで家に入っていった。其の後ろ姿に弘はなんだか神々しさを感じた。そして、自分でみんなのユニホームを洗い出した。
「そうか、お母は狐つきとちがうんや。おれを苛めるために狐つきになっとるんと違うんや。」弘はごしごしユニホームを洗いながら思った。みんなの汗の匂いがする。
弘はなんとなく男と女の違いがわかった様な気がした。そして、男は大事に女を守ってやらんとアカンのだと言う気がしてきた。
溜まっている冷たい山水で顔を洗った。弘はさっぱりした。ウメちゃんの不機嫌なことやお母の狐つきの原因が分かった。原因がわかれば優しくなれそうな気がした。
山から爽やかな風が弘の頬を渡って行った。なんだか弘は少し大人になったような気がして大きく背伸びをした。
  ☆☆☆
 梶野先生は宿直の晩、桐久保さんに風呂を貰いに行くのも忘れ、懸命に紙に数字を書き込み、算盤をはじいていた。
神社の湧き水から水を引っ張ってくるとしたら、どれぐらいの材料がいり、どれぐらいの経費がいるか計算をしているのだ。湧き水から1キロメートルばかりの距離を水を引き飲み水として使えるようにするには、まずパイプがいる。いったん水を溜め、ろ過しなければならない。水を溜める沈殿池から、ろ過池をつくり消毒して浄水池に持って来る。そこから送水ポンプを使って配水池に送り、やっと配水ポンプを使って水道として給水できるのである。最初の貯水池を作るにはセメントもいる。ろ過するには炭や棕櫚もいる。湧き水から貯水池までは圧力をかけないエンビ菅を使う。ろ過したあとは圧力をかけるのでビニールパイプを使う。梶野先生はなんども線をひいたり、算盤をたたいたりして唸っている。梶野先生は頭が痛かった。これはとても大事業だ。はたして子供たちだけで出来るのだろうか。不安だった。
どうしても村人の手を借りねばならないと思う。でも村人達はいがみ合っている。

 教室は最近、しっかりとまとまり活気がある。なににでもみんなは目をキラキラさせる。
先日もウメがみんなの前に立ち、奥田君たちに提案していた。「大人たちがお金をだしてくれないのなら、自分達でお金をつくったらエエと思う」。
奥田君もいつものようにウメをからかうわけでもなく「うんうん」と頷いてウメの話を聞いていた。梶野先生はウメに感心し励まされる。ウメはいつのまにか、越出あや子や女児たちをまとめ、また奥田君たち男児には、しっかり者のお姉さんのように振舞っていた。弘とウメを中にしてみんなで放課後に肩を組んで「頑張ろう」と大きく叫んでいたのをみた。
梶野先生は以前、団結について学童に宿題を出したことがあったが、これが団結の答えだと改めて自分が教えられる気持だった。
ウメは大滝小学校の学童たちが百合の花を売ってお金を得ているという話を聞き漏らしていなかった。大滝小学校の先生に、花を買ってくれる香料会社を教えてもらい、手回し良く手紙をだしていた。返事はまだらしいが、ウメの実行力と賢さに梶野先生は負けておれないと、眠気を吹き飛ばしまた算盤をはじいた。
弘たちも負けてはいられなかった。ウメは渡りの生活で、一カ所に長く落ち着いてはいない。たまたまいまは桐久保さんの手伝いで長期間、村にいるが、またいつ何処かへ行くかもしれない。だのに一生懸命に学童たちの力になろうと頑張っている。みんなはそんなウメをみて、みんなが力をあわせなければいけないと思っている。弘たちも、以前梶野先生が宿題に出した団結のことを思っていた。小さい力でもみんながそれぞれに持っている力を出し合えば、大きな力になること。そしてしっかりしたリーダがいればそれはよけい、何にも負けない大きな力となって動いていく。その力はきっと他にも影響していく。それが団結だと思った。いま僕らは団結して心を一つにして水道をなんとかして作り上げよう。そうすればいがみ合っている大人たちもきっと仲良くするのではないだろうかと思っていた。

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ウメちゃんは本来なら中学生なんですよね。カブトムシのお土産を喜んでくれると思った弘ちゃんはまだ子供ですね。でも、大切なことを教えてもらい、お母にも優しくなれる。お母も優しくしてくれる。家庭も和んでくることでしょう。団結の宿題が今、生きてきたのですね。大人たちにも何とか力を合わせて欲しいですね。話し変りますが伊吹山のふもとの学校ではもぐさの材料、ヨゴミを刈り取るなど、夏休みに子供でも結構力を合わせればお金を稼ぐことは可能ですね。今後の展開が楽しみです。

2007/7/18(水) 午後 8:06 [ おいちにのさん ]

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おいちにのさんさま。
ウメちゃん、なかなか賢いです。亀の巧より年の功?。
おいちにのさんさま。おもしろいこと発見。「もぐさの材料。ヨゴミ」
ヨモギのことですね。実は私は長い間、蓬のことをヨゴミって言っていました。なんかとても嬉しくなりました。私の中学校の時はヤマユリの花を大阪の香料会社が買いに来ていました。みんなで集めたユリを一箇所に集めた部屋はユリの香りで卒倒するほどでした。ユリからとった香水はやはりヤマユリの匂いがしたのでしょうか。私はまだ香水を使ったことが有りません。無香料が好きです。時々振り返るほどの匂いを残して通り過ぎる人に出会うと、あの山百合が集められていた部屋を思い出します。でも素敵な匂いも仄かは好きですが、きつ過ぎるのは臭いです。

2007/7/19(木) 午前 0:23 [ 花ひとひら ]

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こんにちは。ちょっといきなり過ぎて、あたふたとしました。ふとしたことで「そのとき」って来るのですね。わたし達もそうだったのかしら? 子どもたちだけで出来るほど簡単なことでは無いと思いますが、ここは団結を実践している子ども達の姿を見て、桐久さんはじめ村人が立上がってほしいですね。わたし達もしましたよ。タニシ採りとか。

2007/7/19(木) 午前 11:10 [ ささ舟 ]

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ささ舟さま。
あたふたさせてごめんなさい。徳太郎の未完作を中心にして、そこへみんな繋げようとしたらこうなりました。かなりごり押しで無理が有ります。改めて創作の大変さを痛感しています。が、気楽にこの世界を遊ばせて貰っている部分も、独りよがりですがあります。それに付き合っていただいていること、とても感謝です。有難う。差別用語と感じる言葉も有りますが、お許し下さい。弘ちゃんたち、早く水道を引かないと雪深い山村は大変。急ぎましょう。いつも有難う。
タニシ採り?これは佃煮にするのでしょうか。私はタニシの天婦羅食べたこと有ります。昔の子供たちは体と自然の恵みでお金を得たのですね。

2007/7/19(木) 午後 6:29 [ 花ひとひら ]

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ウメちゃんは聡明でしっかり者ですね。女性のその日は、母を大事にしてあげなければ・・なかなか素敵な、いたわりの言葉ですね。
いろいろ無いものの中から知恵を出していくんですね。

2007/7/21(土) 午後 9:44 吉野の宮司

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吉野の宮司さま。
いつも応援を有り難うございます。弥榮です。最近の若い女の子にもいつか母になることを神様から頂いた体です。粗末にしないで大切にして欲しいと思います。それと同時に男の人も女の子を大事に思って欲しいです。いづれ自分を生んでくれた母と同じになる女の子たちです。人間も動物の中の一つに違いありませんが、動物ではありません。そういうことをウメちゃんは言っているのだと思います。徳太郎は自分の未完作が、どうなっていくのかハラハラして居ると思います。この辺で完結に持っていかねばあの世で卒倒しかねません。一気に水道の水が流れるように完結するやもしれません。が、いつの日か必ず冊子にしてお届け出来るようにしたいと思っています。よろしくお願いいたします。新企画をしております。(どうなることか分かりませんが、宮司さまの陽明学。「やるしかないのである、やりもしないで・・ほざかしい事を言うな!」「致良知の教え」を守って行きたいと思います。

2007/7/22(日) 午前 1:57 [ 花ひとひら ]


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