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雪の休日ほど嬉しいものはありません。
空からの手紙のように降ってくる雪
飽きずに見ています。
部屋の温もりに窓が曇ります。
丸く拭き取った中に
吹雪が激しく動いていました。
なんだか その中へ
手紙を入れたくなりました。
雪への手紙(一)
大きなひとひら、小さなひとひらが途切れなく舞い降り、白い緞帳を下したように視界を塞いでいく。白い緞帳の向こうの人影は滲み、視界から消える。前が見えない。空から呪文のように雪が舞うのだ。横殴りの吹雪が息苦しい。しかしその息苦しさも、「明日は休日」と思うと嬉しくもあった
雪は仕事や生活に支障をきたすが、休日ならゆっくりとできる。
太郎を眠らせ 太郎の屋根に雪ふりつむ
次郎を眠らせ 次郎の屋根に雪ふりつむ
「雪」三好達治
夜、静けさが深くなった。格子戸に雪明りの影が白く映っていた。町が雪だるまになっていくようだ。
雪日は暖かい。優しい温もりと静けさで目が覚めた。飛び起きて積雪量を計る。二十二センチあった。車が雪に埋っている。昨晩立てておいたワイパーが、雪の穂柱のように車体から突き出ている。長い棒の綿菓子のようだ。いや、天使が重すぎる二つの翼を落としていったようにも見える。滑稽だ。
例年なら、「大寒」の雪は、スノーパウダーと呼ばれるサラサラ雪なのに、水分をたっぷり含み、春の足音を思わせる雪だった。雪の少なくなったことや、時期に合わない春模様の雪は、地球温暖化のせいだろうか。
裸木は、ふんわりとモヘヤー毛糸の帽子に白いセーターを着ている。その根元を掘り起こすと、冬苺の赤い宝石が踊り出した。ナンテン、マンリョウが赤く光を放ち、ジャノヒゲの竜の玉は青い雫を丸めて濡れていた。スイセンは、別名「雪中花」の名の通り、誇らしげに雪の鏡に姿を映している。サザンカが灯り、ロウバイの花が香の雫を落としていた。
私は一歩一歩と、足跡を雪原につけて行く。なにもかもが、白の一枚布に覆われ包みこまれている。その上へ、私が一番手で足模様をつけていくのだ。胸が高鳴る。新しい物へ踏み込むように鐘が鳴る。
傾斜をもつ小道を、雪解け水が紋を描き陽にきらめいて流れていく。屋根の雪が、ほつれた布地の端のようにジグザグに垂れ、レース模様で静止している。その先には小さいツララが光っていた。蓋のされている側溝の奥から、雪水の落ちる音が水琴瓶のように響いてくる。
「パチッ」と竹が起き上がり、高音を立てる。「ザザザー」と低音の葉擦れの音が続く。「ヒュー」と鋭いヒヨドリの一声も混じる。
セイダカアワダチソウの群林が重たげにうつむき、その陰からツグミが出入りしていた。ススキの短い葉が赤く、雪原を割って覗いている。
暫らくすると屋根から、「ドドドー」と大太鼓が。雨とゆからは「ポタポタ」と軽やかな音。華やかなシンフオニィが始まった。
(1)
雪の降る町を 雪の降る町を
思いでだけが通り過ぎて行く
雪の降る町を 遠い国から 落ちてくる
この思い出を この思い出を
いつの日か包まん
あたたかき幸せのほほえみ (2番、3番省略)
「雪の降る町を」内村直也作詞・中田喜直作曲
私が最後まで空で歌える唯一の歌だ。私の6歳の時から、連続ラジオ放送劇の挿入歌として流れていた。半世紀以上、父と歌い、姉と歌い、我が子と一緒に歌い続けてきた歌だ。誰とも出会わない。声を出して歌ってみる。雪帽子をかぶった街路樹だけが、静かに聴いてくれた。
雪雲のすきまから陽が射してきた。木の影が映し出され、雪の上に光の筋が伸びる。雪上に木の影が黒い花のように映し出される。オレンジ色の光の帯がそれを引き立たせる。雪花の咲く木々、ナンテン、ピラカンサの赤も加わり、一幅の絵を観ているようだ。
雪は、静かに心休まる美しい休日をくれた。
「さぁ〜次は雪だるまをつくろう」
「あっ! その前に、雪かきもしなければいけない」
また吹雪いてきた。雪片が激しく舞う。前の見えない白い緞帳が降りてきた。緞帳の向こうへ「思い出」という手紙を放り込みたくなった。
木村徳太郎の作品(童話、論評、随想)を別頁「木村徳太郎=現在『伝書バト物語』」に掲載していきます。ご愛読下さい。
初詣 木村徳太郎 詩集「夕暮れノート」より
こんもりわた雪
雪のみち
八幡さまへ
初詣。
拍手うつて
心から
お祈りすれば
目にうかぶ。
水浸く山川
進まれる
兵隊さんの
御苦労が―。
お祈り終わつて
顔あげりや
鳩飛ぶ神苑(には)の
静けさよ。
〆縄飾つた
大鳥居
朱紅の初陽
いまのぼる。
2008.01.27
昨年も立春前に雪が降りました。
http://blogs.yahoo.co.jp/hanahitohira06/27884334.html
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まるで私までその雪の中を歩いているような文章に引き込まれます。
静かな雪景色、花ひとひらさんの文章からも、木村先生の詩からも伝わって参ります。ありがとうございます。
2008/1/28(月) 午前 4:40
昨日の朝、雪がちらつきました。胸躍らせて庭へ出て見ると、雪は垣根や門扉の上に、ほんのうっすらと積もっていました。向かいの家の瓦屋根も僅かに白くなっていました。我が家に雪は立ち寄らず、何処かへ行く通り道だったのでしょう。さっさと急ぎ足で行ってしまいました。日が昇り、僅かに残っていた雪はたちまち消えてしまいました。花さんの家の周りは22センチ。私の古里の京北辺りでは、40センチほど積もったと便りが届きました。雪はその辺りへ行ったようです。私は窓辺で遠い北の空を眺めながら、過ぎし日の雪遊びを思い出していました。そんな日曜日でした。
「返事」 高階 杞一
冬の くもった空へ
手紙を書いた
いいことなんて
あるのかなあ
つぶやいて
土のポストにいれた
その夜
雪が
降ってきた
遠い 空のはてからの
返事のように
2008/1/28(月) 午前 6:25 [ 道草 ]
「雪中花」そんな雰囲気が、しっかりと伝わってきます。
ひとひらさんの水仙、やっぱり素敵です。
私も、しっかりと絵を頑張らないと^^;
雪が降ると、本当に静かですね。
2008/1/28(月) 午前 7:13 [ pmm**608 ]
22センチですか。すごい雪ですね。こちらは道路は積雪なしで車や木々が薄化粧しました。22センチの大雪は子供のころ体験したかな?。雪景色を楽しんでおられる様子が目に浮かんできます。(私はとてもそれだけの雪を楽しむことは出来ないのではないか?と思います。)スイセンは寒くても凛と咲きますね。気高さを感じます。
私は先日、大きくなったフキノトウを見つけました。もう黄色の花を咲かせていました。小さいのを探しフキノトウ味噌を作りました。春はそこまで来ていますね。
2008/1/28(月) 午前 10:21 [ おいちにのさん ]
寒水仙の絵・・大きくしっかりとした姿に描かれましたね、綺麗ですね。雪への手紙(1)を読ませて頂きました。味わい深い文章でした。自然の何気ない描写が郷愁を誘います。
2008/1/28(月) 午後 6:26
くろひつじさま。有難うございます。白く気高くそして静か。でも恐ろしくもあります。そして、跡形もなく消え去る。たんなる自然のなかの季節の移ろい現象の雪ですが、人にいろいろの想いを起させますね。徳太郎の詩も読んでくださって有難うございます。静かな雪に頭を下げる。昔も今も素敵なことだと思います。
2008/1/28(月) 午後 11:33
道草さま。有難うございます。素敵な詩があるのですね。雪を見ていると、本当に手紙を書きたく(出したく)なります。>遠い 空のはてからの
返事のように >素敵な返事が帰ってきますね。
お天気を望んで「てるてるぼううず」。雪を望んで白い手紙。故郷あたりから風にのって雪が来るでしょう。こちらの雪は降るよりも、比良山から里へ、風に飛ばされてくる雪が積ります。>何処かへ行く通り道だったのでしょう。さっさと急ぎ足で行ってしまいました>ウフ。雪女に嫌われましたね。
2008/1/28(月) 午後 11:53
スミレさま。有難うございます。いまスミレさんの所へ行きました。そちらも結構降ったのですね。毎日雪が続くのは大変ですが、たまに積ると嬉しいし、新鮮ですね。(随分季節に失礼ですが)私は小さい雪だるまを沢山作って遊びましたよ。
2008/1/29(火) 午前 0:03
おいちにのさんさま。ありがとうございます。同じ県内でも広いですね。雪のユの字のない所もあれば雪囲いで過ごされている所も。県内10箇所のスキー場は全部○になりました。雪だけは実際に見ないと理解できないと思います。昔、もっともっと降ったとき、私たちは長靴、一駅向こうはおしゃれ靴。お互い言い合ったものです「雪は見たものでないと雪のことはわからん」て。昔、雪の中からフキノトウをみつけたときの喜びはひとしおでした
2008/1/29(火) 午前 0:16
tueda67さま。有難うございます。水仙は花はもちろんですが、葉のよじれが面白いです。雪がとても似合う花だと思います。スクッと立つ姿が美しいです。
雪の降る事が少なくなると、雪のことを忘れていく。雪へ手紙を書いておかねばと思います。
2008/1/29(火) 午前 0:36
お早うございます。水仙が咲きましたか?雪に合う花で何故か近かずいてそっとお話がしたいような花ですね^^『雪の降るまちを』花ひとひらさんも歌われますか^^いいですねこの歌。私は街灯にてらされてしんしんと降る雪を見るとこの歌が青春時代に返してくれます。
こんな夜お風呂屋さんに行く時かならず恋しい人の窓辺を見ました。雪の中で淡い灯がもれる窓を。たくさん雪遊びされましたね^^私は椿の雪を少しだけ食べました^^
2008/1/29(火) 午前 6:13 [ ささ舟 ]
ささ舟さま。有難うございます。「雪の降る町を」は、とても良い歌ですね。今日たまたまボランティアで行き、この歌をオカリナで吹いてきました、外は雪景色、ときどき雪が舞ってきます。この世界に入ってしまいました。皆さんもとても喜んでくださり(中には涙ぐむ方がいらっしゃり)感激しました。きっと涙ぐまれた方にはささ舟さんのように>かならず恋しい人の窓辺を見ました>そんな想い出があるのかなと思ったりしました。この歌は調がかわり、「この悲しみ、この空しさ・・」そして「新しき光降る鐘の音」・・・なんと奥深い詩なんでしょう。吹いていても身震いします。
それぞれに、雪に想いがあるのですね。こちらは根雪が残るだけになりましたが、行った先は幹線道路は溶けていましたが、山も家々の屋根も真っ白で、また違う世界を見せてもらえました。雪景色は気持が洗われますね。(生活は厳しいですが)昔は雪をよく食べました。シャーベットなんて言葉の知らない時です
2008/1/29(火) 午後 6:11
吉野は冬は雪で静かです。「雪の降る町を」は、しみじみとしていい歌ですね・・・いろいろな思い出が降り注いできますね。お父さんと同じようなことを思い、同じように生きています。今日は青空が久しぶりにさしました。
2008/1/30(水) 午前 11:29
吉野の宮司様有り難う御座います。吉野の雪はまた格別に綺麗ですね。深々と雪の音が聞こえるようです。「しっかりしろよ。頑張れよ」そんなふうにも聞こえました
こちらも今日は暖かで、土手に春の使者イヌノフグリがブルーの星を落としていました。「春!」と思いましたが、まだ2月、これからも寒さは続くでしょう。厳しい寒気団が次に来ているとか。寒いのは大変ですが、春を待つ、我慢、待つ楽しみが膨らみますね。のっぺら棒の季節は日本に合いません。吉野の雪に後醍醐天皇、義経を思い、待ちに待って咲く桜に秀吉を、そんなことを想う心を残しておきたいです。
2008/1/30(水) 午後 6:02
雪の隙間から空を仰ぎますと、桜の枝に小さな花芽がついていました。水仙の香り、蝋梅の香りを楽しんで雪深き山里に冬眠しています
2008/1/31(木) 午前 0:27
吉野の宮司様。こちらも桜の花芽が心なしか膨らんでいるように(干飯みたいに小さく硬いものですが、例年よりは大きいように)思います。雪の中では香りが春の近いことを教えてくれ、そしてもうすぐに野山に花が開くのですね。雪はそのための、喜びの前奏曲ですね。>雪深き山里に冬眠。冬眠は笑って過ごすのが健康的です。今大笑いしてきました。有難うございます。
2008/1/31(木) 午後 2:09
花の精がまわりで飛んでる様な、私のイメージの水仙です。花ひとひらさん、この花が好きなんです。先日の雪の中でも、可憐に咲いていましたね。そして、雪明かりの中で町を白く静寂に変えていく様子を、三好達治の世界の中で見ていました。きっと同じ光景を眺めていたのでしょうね。花ひとひらさんの描かれる世界へ再び感動的に引き込まれています。今はすべて美しい雪。「雪の降る町を」の歌が景色も心も包んでくれますね。ロウバイの花をよく見かけますね。春も近いかな。
2008/2/3(日) 午前 0:03 [ あしび ]
あしびさま。水仙の花がお好きですか。雪の中でこの花は凛としていますね。球根のスノードロップが有ります。この花は、雪の精みたいで可愛く水仙の妹みたいです。そしてスズラン水仙とかいう、スノー・フレイクもありますね。どれも雪に良く似合う花で、寒い中を冬に相応しく咲き、どれも「静」です。雪が静かに降るように咲く・・・。みな水仙の仲間でしょうか。私も好きな花です
2008/2/3(日) 午前 0:33