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☆ 郷土の民話 ☆
日本読売新聞昭和33年11月24日(月曜日) 木村徳太郎
松茸と十円札(奈良)
村にサク婆さんと言う、産婆さんがいた。ある夕方、サクさんを迎えにきて「私は伊那佐村との間に住んでいるものだが、妻が難産で苦しんでいる。とりあげに来てくれないか」と、腰をひくくさげて。言う
サクさんは、村であまり見かけないようすの人だったが、もちまえの親切心から、気軽にその男について出かけた。村をはずれて、伊那佐村にぬける林道にきた。この付近に家があったのかと、サクさんは変に思ったが黙ってついて行った。
一軒の農家があって、門口で松根油をたいて、数人のものがサクさんを出迎えて待っていた。サクさんはてきぱきと指図をして難産で苦しんでいた、年のころ、二十四,五の女の苦しみをやわらげて、玉のような可愛い男の子を無事にとりあげた。親戚のものや、家人の喜びようはたいへんなものであった。
ひとやすみして、また家人におくられて、サクさんはつつがなく家に帰って寝た
昨夜の疲れで、今朝は、少し遅く起きたサクさんが、井戸端に出ようとすると家の入り口で松茸の匂いがする。みると、松茸の包みと、祝儀袋がおいてあった。あけてみると、十円札が一枚入っている。
「こりゃ、昨夜の家のものが、とりあげの礼に朝早くから届けたのだろう。が、寝ていたのでおいて行ったものとみえる」サクさんはひとりごとのようにつぶやくと、松茸を台所へ。祝儀袋を神棚へのせた。
そんあことがあって、二日ほどたった。隣垣内の達産辰さんの娘が、嫁入りのためにもらった、祝いの金包みがどうしても一つたりない。どろぼう事のない、平和な村だけに、「誰がぬすんだのだろうか」としきりに噂が人の口にのぼった。
その噂に、サクさんは、神棚ら祝儀袋をとって、辰さんの家にでかけた。みせると無学の宇兵衛さんは、祝儀袋のおもて書をしたことがない。が、宇兵衛さんが用いた祝儀袋にちがいがなかった。
サクさんは、先日のとりあげのようすを話して、事情を語った。
聞いていた村人の一人が、「そりゃ、サク婆さん。きつねがうみよる子をとりあげたんじゃ」と、したり顔に言う。
伊那佐山へぬける林道へ、サク婆を先頭に、二、三の村人がとりあげに行った家をさがしに出かけてみたが、やはり見つからなかった。まさしくサク婆さんは、きつねの難産をとりあげてやったのにちがいがない。
その礼に、きつねが、辰さんの家から祝儀袋をぬすんで、サクさんの家に届けたのだろうと、村人の間でうなづき合ったという事だ。 (筆者きむら・とくたろう氏は民話の会々員)(備考・大門みつゑ、八二歳談。なお、伊那佐村にもおなじような話が伝わっている)
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きつねさん、いくら御礼でもそんなことをしてはいけませんね。(笑)それにしてもみんな正直でこころあたたまるお話ですね。
2008/6/18(水) 午前 0:16
くろひつじさま。有り難う御座います。ほんとですね、よその祝儀袋を盗ってきて・・・・でもいじらしいですね。ちゃんと御礼をしなくてはと懸命なのでしょう。松茸だけでは足らない、人間にはお金がと思ったのでしょう。それを分かってやる村人も優しいですね。昔昔・・・人も動物も自然の一員としてこうして仲良く暮らしていたのでしょう。
今はお礼をするどころか、そのうえ祝儀袋をごっそり盗んでいく輩もいますよ。礼には礼を尽くすきつねさん、矛盾しているけど可愛いです。
狐さんのお話では「ごんぎつね」がとても記憶に残っています。名作ですね。子供のときあれをよんでオイオイ泣きました。
それと余談ですが、木村徳太郎に「狐の裁判」というのがあるらしいのですが手元にないし、どんなものかとても読みたいです。(随分作品が散らばっているようです。悲しいとともに反省です(余談)
2008/6/18(水) 午前 6:43