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寄席に行って来た
寄席に行って来た。三回セットのチケットだ。一回目は同志社大学での講演と重なり行けなかった。三月の購入から半年も過ぎている。チケットを何処へしまったか忘れていて随分探し回った。が、その甲斐はあった。久しぶりに大口を開けて大笑いをしてきた。
私は落語が大好きだ。落語に接した始まりは五つ六つのころだろうか。子供たちが大人の鋳掛屋をからかい「ソラセヤナァ〜オッタン」と訳知りに、合いの手を入れる「イカケヤ」だった。私はその「ソラセヤナァ〜オッタン」が大好きで、それが口癖になっていた。
そのころ、商店街に住んでいたので、乾物屋、味噌屋、漬物屋、履物屋などを回って遊び場所にしていた。もちろん不定期に回って来る「イカケヤ」「ポンガシヤ」も遊び相手だ。駄菓子屋もあったが、そこは子供たちの大事な崇高な場所だったので、店主をからかうなどと言うことは滅相もなかった。が、昆布や鰹節が削られてゆく乾物屋にはよく足を運んだ。「オッタン、上手に削るなぁ〜」などと言うと、必ず削り終わりの指の先ほどになった鰹節や、小さい薄い昆布の切れ端をくれた。口に含んで噛んでいるとチューインガムのように柔かくなり、それは美味しかった。それを見ておっちゃんが「嬢ちゃん歯がええなぁ〜」と言う。私はニィーと歯を剥き出し「ニャヲォ〜」などとおどける。
「嬢ちゃん猫はあかんで」「ソラセヤナァ〜オッタン」……。私の口癖だった。
「ソラセヤナァ〜オッタン」をどんな時にも返事代わりに言う。父に叱られても友達に泣かされても 「ソラセヤナ〜オッタン」と言うと、気分がすっきりした。
何よりも、大人しく無口な姉が、私がそれを言うといつも大笑いしてくれた。たった五歳しか違わないのに、母親の代わりをするようにいつも私を守ってくれていた大好きな姉だった。
姉は二十三歳で亡くなった。葬式の時「ソラセヤナァ〜ソラセヤナァ〜」を、何に対して言っているのか分からないのに、私はそればかりを言って泣きじゃくっていた。
私は大阪生れで、大阪の空気がDNAとしてある。いっとき奈良に住み大阪弁と奈良言葉の混ざる、なんとも奇妙な喋り方が私の特徴になった。大阪で会社勤めをするようになった。「あの面白い喋り方の女の子」が、私の呼び方だった。本社は東京だ。社員旅行が合同である。そのころ人気番組だった「11PM」の真似を余興でする。東京本社の部長が「藤本義一」私が「安藤孝子」。部長と顔を合わせるのは初めてであったが、「面白い大阪弁の子がいる」は本社まで伝わっていて、部長直々のお誘いになったのだ。11PMは深夜番組のお色気番組で、安藤孝子という、京都の芸妓さんが京都弁で受け流し、そのすましたカマトトぶりが大人気だった。それを私にやれと言う。
私も大阪女だ。イチビリは大好きだ。しかしまだうら若い乙女だった。問いかけに「ソラセヤナァ〜オッタン。ソンナコトコマリマスヤンカ」と赤くなって繰り返えすばかりだった。ところがそれが大受けになり、人気者になってしまった。当然女子社員のねたみを買った。 「ソラセヤナァ〜」と思う。
そのころ、桂三枝はまだ大学生で「落語研究会(落研)」から売り出してきた。<ヤングオーオー>という番組があり、そこに四角い顔の笑福亭仁鶴が出てきた。二人が司会者だった。TVの普及と共に大人気の番組となり、ここから<お笑い>は松竹芸能から吉本興業に変わっていったのではないだろうか。桂三枝、笑福亭仁鶴、横山やすし、西川きよし、オール阪神・巨人、明石家さんま、桂文珍、島田紳助などが、ぞくぞくと出てきた。
おもしろかった。私の大阪人の血が騒ぐ。私も吉本へ入団したいと思った。
そのころのことを子供に「けどなぁ〜そのころの吉本は、美人は入れてくれなんでん」と言うと子供たちは「ウソヤ〜」と笑い転げる。「ソラセヤナァ〜」とも思う。
しかし、それよりも衝撃的だったのは桂枝雀だった。坊主頭の容貌が好きだったし、身振り手振りの面白いことといったらありゃしない。私は大ファンになった。こんどは本気で落語家になりたい、弟子入りしたいとまで思った。
そのときのことをやはり子供に話す。
「けど一番大きな理由は、好きな着物を落語家やったらいつでも着てられるしと思たんや」「ほんで、おちゃこ(着物を着て高座の座布団などを片付ける女性)がええと思たんやけど、おじいちゃんが『アカン』て言わはった。おじいちゃん、私が『おちゃこしたい』と言うたら、なんか勘違いしやはったんや」(おちゃこには隠語がある)
子供たちは笑い転げる。「ソラセヤナァ〜」と思う。
ところが、その枝雀さんがダンプカーに突っ込んで行き、亡くなってしまった。ほんとうにショックだった。あれだけ楽しませ笑わせてくれるその影に、枝雀さんは鬱と戦っていたのだ。私は枝雀さんに笑いころげ、憧れるばかりで、その繊細で壊れるような心には気がつかなかった。ただただその天才ぶりに驚き敬意を持つばかりだったのだ。あれだけ皆を喜ばせ楽しませてくれるには、並々ならぬ努力と、エネルギーと明晰な頭脳がいる。みんなが笑い転げている分、枝雀さんは身を削っていたのだ。それを思うとなんとも悲しくもなる。
「ソラセヤナァ〜」。
認知症の人が共同生活しているグループホームや、アートで触れ合おうという趣旨で「脳いきいき・ふれあいアート」として、数ヶ所へ指導に出かける。
どこの職員さんにもいつも言われる。
「先生の会話、まるで漫才を聞いているみたい」そして「先生、施設の文化祭に、落語か漫才やってもらえませんか」と来た。すると、私のイチビリ(すぐに調子にのり反応する大阪人のサービス精神だろうか)がうずき始めるのだ。即座に請け負った。台本はなし。相手がどう出るか。こちらがボケ役に徹する。
「面白い、楽しい」と言ってもらえるのが、私には一番の賛美のように思える。吉本に入りたかった。落語家になりたかった。そんな漠然とした夢の延長。大阪人のDNAが私に生きていることに、嬉しくなるのだ。
3回目の落語会にも行こう。そして大笑いしてこよう。
しかしなんですなぁ〜。思うのは桂枝雀さんの高座を、生でもう一度聞きたい。いまでも桂枝雀さんの大ファンだ。あんなおもしろい落語家は他にいないと思っている。
あの世で高座をやっているのだろうか。そのうちに、私も聞かしてもらえるのだろう。
是非あの世で笑い転げて聞かしてもらいたいものだ。
「(オアト!)ガ ヨロシイヨウデ」そんな声が聞こえる。
「ソラセヤナァ〜」……。
てまりつき(古揺) 木村徳太郎
トントンタタクハ ダレサンジャ
ソコノヨコチョノ ジイサンジャ
イマゴロナニシニ オイデタノ
ゾウリガカワッテ カヘニキタ
オマヘノハナゴハ ナニバナゴ
オモテガベッチン ウラハキヌ
ソンナハナゴハ シリマセン
ドウゾソコラデ キイトクレ
コレデイッカン カシマシタ
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(o´ノωノ`o)こんにち…ヽ(o´・∀・`o)ノわぁ♪、、、
寄席に行ってらしたのですね。。。
余り知ってる方はいませんが私もたまにTVですが見ます、、、
日曜日の笑天は良く見ます。
笑いは良いですよね、、、
又見にいかれると良いです(。´・ω-)bネッ
いつも訪問有難うございます( *・ω・)*_ _))ペコリン
2010/9/21(火) 午後 6:11 [ - ]
この文章を読んでいて「ソラセヤナ〜オッタン」が頭から消えなくなりました・・・これだけ繰り返し「ソラセヤナ〜オッタン」がでてくると「ソラセヤナ・・・」記憶回路に残るのは同然やなオッタン・・であり笑えた・・・桂枝雀さんは大好きでした
2010/9/21(火) 午後 6:19
枝雀(変換が死弱になった)さんの死は、私にも意外でした
あんな人でもねえって
三島由紀夫の時はちっとも思わなかったのに ナンデヤロナ〜
2010/9/21(火) 午後 6:40
やはり関西ですから、上方落語なんですねー。(あたりまえ)
テレビに出るのは圧倒的にオワライゲイニン。かつては関西吉本に圧倒されてましたが、結構関東勢も頑張ってますね。そのほんのわずかになったテレビのスペースの半分が「笑点」。のこり半分を江戸と上方の落語が…。年に一度か二度上野の鈴本演芸場に出かけますが、まったく知らないけれど、実力十分の落語家さんたちが育っているのを見てホッとして帰ってきます。
2010/9/21(火) 午後 8:06 [ ほくと ]
落語はわたしも大好きですよ。筋を述べるとほんの数行で終わってしまうのですが、それを15分〜20分で笑わせ、しかもオチまでつけるのですから、たいした芸術ですよね。
2010/9/21(火) 午後 8:18
ひなちゃん。今晩は。いつもありがとう。笑点も面白いですね。知っている人たちも入れ変っていきますが、これはどの世界も仕方の無いこと。そんななかで伝統を絶やさないで頑張っているのは嬉しいですし、大事にしなければいけませんね。笑わせてもらえて嬉しい文化です。
2010/9/21(火) 午後 9:30
吉野の宮司さま。有り難う御座います。宮司さまも桂枝雀さんがファンでしたか。うふふ、宮司さまは吉本神社?の宮司様で笑いを皆さんに与えて下さっていますね。私は以前、宮司様の 吉水神社の解説講義を聞かせていただいたことがあり、大笑いしました。楽しかったです。後醍醐天皇さまや、義経や弁慶も聞いているのかと思うと、余計楽しかったです。笑うっていいですね。
ソラセヤナァ〜オッタン、そんなふうになんでも合槌が打てればいいですね。
2010/9/21(火) 午後 9:43
海月さま。有り難う御座います。枝雀さんが亡くなられたのはほんとうに残念です。枝雀さんて、天才だったのだと思います。だから悩みも半端じゃなかったのかな。枝雀さんの芸のように、なよなよとしなやかに生きていて欲しかったと思います。
人って表面では分かりませんね。いまでもビデオとか見て、鬱だったと思うと、気の毒で泣けてきます。(笑えません)でもやっぱりそのうち笑ってしまう。天才芸ですね。
2010/9/21(火) 午後 9:50
ほくとさま。有り難う御座います。鈴本演芸場ですか。一度行って見たいです。私はスクーリングとかで夏は40日ほど東京へ行く事があり、休みのたびに末広亭に行っていました。楽しかったです。
吉本新喜劇にも、ときたま行きます。(みんなに以外だと言われるのですが)笑って帰りはスカッとします。実力のある落語家が育って行って欲しいですね。
2010/9/21(火) 午後 9:58
こうま地蔵さま。有り難う御座います。数行にオチもつける。優れ技ですね。こうま地蔵さまみたいですね。
落語を聞いておなかを抱えて笑えるのって幸せですね。
2010/9/21(火) 午後 10:02
花ひとひら様 おじゃまします。
寄席へお出かけ何よりでございます!三回セットとはなんて魅力的なチケットなのでしょう!寄席、一度は出向き大笑いしたいものです^^
体中で笑う事っていいものです。 落語聞きたくなりました! 今夜はお月様を愛でて笑いましょうか^^
いい一日でありますよう
2010/9/22(水) 午前 10:30
こうげつさま。有難うございます。是非お出かけになってお嬢様と一緒に寄席で大笑いしてくださいね。いつも笑顔の絶えないこうげつさまですが、お腹を抱えて大笑いも良いものですよ。
十五夜のお月様、雲が厚く根気良く待っています。そのたびに小芋の数が減っていきます?
ススキやハギを用意して、お月様見られなくとも待っているのって好きです。
今年は数が少ないですが、彼岸花もススキもハギも揃いました。こうして毎年季節を愛でることが出来る幸せです。
暑さも明日からはやわらぐとのこと、秋を存分に楽しめますね。
こうげつさまにも良き秋の思い出がまた増えることを願っています。
2010/9/22(水) 午後 7:04
花ひとひらさんも子供の頃から、落語の渦の中で暮らしていらしたんですね。私もラジオでよく落語を聞いていた世代ですが、花ひとひらさんには適いません。
落語家のお弟子さんになりたかったなんて、ユニークな子供さんだったんですね。もしその時落語を始めていらしたら、きっとオモロイ女性の落語家が生まれていたでしょうね。残念至極だなぁ・・・
2010/9/22(水) 午後 8:21 [ afuro_tomato ]
オオ 以外な面を見て とっても嬉しいです。
今 ゲゲゲの女房に出てる 水木しげるの義父
あの人の名 いつも忘れてしまいますが
趣味で漫才を始めたそうで 先日見ましたが
漫才を目の前で聞くと言うのは全くの初めてなのですよ。
聞く楽しみ 心からだせる 笑い声
花ひとひらさんが 漫才・・・ とっても心ほんのりです。
今日は 外へ出て お月さん 眺めました。
子供の頃 ススキと秋の味覚をお皿に盛って・・・
親子で過ごした 十五夜思い出してました。
2010/9/22(水) 午後 10:15 [ - ]
afuro_tomatoさん。おはようございます。今日は彼岸の中日で、満月ですね。私はオハギを作ろうか、月見饅頭にしようかと迷いながら小豆を炊いています。
そうですね。いまからでも遅くないかも・・・・
挑戦してみますか。なぁ〜〜〜んて。
今の仕事の面接時、「面白い人や、即決」て決めてもらいました。そこの定年年齢を超えてたけど、「オモシロイ」で週、1、2回勤務しています。笑いが絶えませんよ。うふふ、嬉しいなぁ〜。
2010/9/23(木) 午前 8:05
志乃さま。おはようございます。漫才や落語はやはり目で見ても楽しむものでしょうか(目だけに訴え、馬鹿みたいなジャスチャーでお笑いを取っている芸人もいますが)本当は話芸、扇子の使いかた、着物の動作、声、すべての総合芸術だと思います。でも心から笑えるのって楽しいですね。日本の優れた文化です。
お月見で月をめでるのも日本の文化。つくづく日本人の感性に感謝です。雲間でみれなくとも、「お月見」と、いろんな人を思い、空を見るのも大事です。(私は口も動きますが)子供の頃、また我が子とのお月見、思い出すのもお月様のお陰。有難いですね。
2010/9/23(木) 午前 8:15
花ひとひらさんのブログが本になればいいですね「ソラセヤナァ〜オッタン」・・・笑いあり涙あり・・どんな落語よりも落ちがあり勇気が貰え・・楽しく笑い、やさしさがもらえる
2010/9/24(金) 午後 1:20
吉野の宮司さま。有難うございます。混沌とした世情です。小さな自分の世界だけに閉じこもろうとしています。これでいいのだろうかとも思うブログです。でも私の楽しみが「楽しく笑い、やさしさがもらえる 」なんて言っていただけると、「ソラウレシイワ」
宮司さま。今日は襲いかかったようにも感じられる寒さでした。紅葉がいっきに進むのでしょうか。穏やかにいきたいものですね。
安野光雅画伯の「日本のふるさと奈良展」に行きました。吉水神社の「一目千本」もありました。心の故郷に抱かれるようでした。
落語も共通(但し、質の良いもの)しているかもしれません。日本のよさを教えてもらえることに感謝です。
寒い日はちよっと、コーヒーでもご一緒に。
2010/9/24(金) 午後 7:57
生で観たら面白いでしょうね。傑作
2010/10/2(土) 午後 2:01
あるくさま。有難うございます。面白いですよ。また3回目に行くのを楽しみにしています。
落語は話芸ですね。扇子1本でいろんな形を浮かび上がらせるのがまた楽しい。扇子が蛇にもなったり、鉄パイプにもなったり、見事な日本の芸ですね。
2010/10/3(日) 午前 9:45