来た道行く道通りゃんせ/風にのって花ひとひら

のんびりしたブログですがよろしくお願いいたします。

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弘ちゃんは生きている(41)
            ☆ 
今日は嶽登りである。
「私(うち)の弁当も持って行って欲しいわ」
美代が甘えて言う。弘は聞えないふりをして自分の弁当だけを包む。
「一緒に持って行ってやり」。
母が美代の言い分を助けるように言う。
「厭だい。おら、隆さんと一緒にのぼるんだから、女は女と登ればええやん」
弁当を包んだ風呂敷を肩へ斜めにかけながら言う。「持って行ってやりと言うたら
持って行ってやったらええやろ。兄ちゃんのくせに」
弁当を持ってやりそうにない弘に、押し付けがましく母親は声を荒げて再び言った。
「だって・・・」
愚図っていたら、
「持って行ってやらへんのやったら、お前の弁当もおいて行き。食べなんだらええ」
背中の弁当を、母親はひったくりそうな勢いだ。
美代の言うことをいつも聞いて、おらの言い分をちっとも聞いてくれないと不服に思いながらも母親が恐くって、背中にななめにかけた風呂敷を弘はしぶしぶ下ろしかけた。
嶽登りに持って行く酒を、四合瓶につめていた父がそれを見て、
「お父っあんが持っていったろ。お前先に行け」
と、美代の弁当を自分の包みの中へ入れる。
「すまんな。お父う」
母には素直に言葉の出ない弘だが、父には気軽に話せる。
「あんたが甘やかす。そやから弘は私を馬鹿にするんや。」
母は父に皮肉を言って、からみだす。
持って行くのに都合が良いように包みながら、父親は聞かないふりして相手にならない。
「早よう行け」。
と母親に答えず弘をうながす。
父と美代よりも弘は一足先に家を出た。
あや子、由子が歩いていたのを追い越して県道を急いで隆の家に来る。
青年団の人が、五、六人家口にいた。
村の各戸から集められた餅米で搗きあがった小さい御供餅(ごくもち)が一升桶に入って、五つばかり縁側に並べてある。
この御供餅を青年団の人々が嶽の頂上まで担いで登る。
弘の来たのを知って、隆はすぐに出てきた。
「隆君の弁当、おらが一緒に持って行ったろ。」
美代の分を持って行くことを断わって母に叱られた弘だが、桐久保さんに望みの自転車を買ってもらった嬉しさが、なんとなくお世辞をつかわせる。
「おらのは、おらが持っていく」
弁当をくるんだ風呂敷を背中にななめにくくりながら隆はことわる。
登る道は、学校の近くからと、桧牧区と自明区からの三箇所がある。学校の近くから登って行く道を隆と弘は選んだ。
炭谷君が、男子の五、六人とかたまって登って行くのと出会って一緒になる。
杉木立ちの林道を、雑木を拾って杖にして雑談をしながら頂上に向う。
途中、桧牧区の道と自明区の道とみんなが登ってきた道と中腹で合流する。
此処で一休みをして、目の下に小さくなった村の家々の名前をあてあったり、四キロ離れた町を眺めて、休みの時に行った映画館のことなどを話し合った。
弁当を再び肩にして登りかけたとき、自明区の登り道の方から、山根君や奥田君の話し声が聞え、五、六人登ってくる姿が木立ちを透かして目に入った。
「自明区の奴らがきよった。あいつらに越されんように早よいそご」。
炭谷君がみんなをけしかけるように言った。その声に応じるように、まるで鳥が飛び立つように、みんなは慌しく駆け出した。
それに引きづられたように、隆も弘も皆の後ろについてかけ出した。
大将株になって、先頭を走り出した炭谷君が気負った気持をあらわにして、当りの雑草をいたずらに杖でなぎ倒して登って行く。
「あっ!慌てて手拭忘れてきた。」
腰につったタオルを、休憩場所に忘れて来たことを思い出した子供が、先ほどの休んだ所へひきかえしていく。
皆はその子供を、一息ついて待ってやった。
「わぁ〜〜」
と、自明区の山根君や奥田君がタオルを取りに引き返した子をからかっているのか、大きな侮り声が聞えてくる。
杉木立ちを透かして、炭谷君が心配そうに下を見るが杉木立ちの道が曲がっていてちゃんと見えない。
いつもの嶽登りなら、区と区の対抗意識はない。同級生として楽しく雑談をしたりして登るのだが、前田さんが伐ってしまった材木のことで、自明区の峰垣さんと桧牧区の桐久保さんの諍いが子供たちの間にも対抗意識をかきたてていた。
炭谷君が下へ引き返そうとすると、タオルを持って息をはずませながら、先ほどの子が帰って来た。
「一人やと思おて自明区の奴ら、おれをからかいやがんねん。」
と、タオルを腰のバンドにはさみながら口惜しそうに言う。それを受けて
「よし、石投げたろ!」
と、山根君や奥田君が登ってくる下の道に向って土をつかんで炭谷君が投げようとした。
「炭谷君。そんなことしたらあかん。やめとき」
と、隆が止める。
止められて、炭谷君は掴んだ土を残念そうに足元に投げ捨て、何事も無かったようにまた先頭に立って林道を登り始めた。みんなは自明区の子供たちの悪口を言いながら、炭谷君の後ろに続いた。木立ちが透けて登ってくる自明区の山根君たちの姿が時々見える。山根君たちにも桧牧区の隆たちの姿が見えたのだろう。自明区の子供たちが駈け比べのように後ろから桧牧区の子供たちをおって競うように登ってくる。子供たちの間に競争意識がもりあがって、頂上を競うありさまになった。が、それだけで別に諍いにもならずどちらも頂上についた。
    

イタドリの花

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   イタドリの 花 降る   ☆


明け方夢を見た。イタドリの花の夢を見た。
イタドリの花は、足元から乾いた粉雪を吹き上げ、すっぽり身体を包みこんでしまう地吹雪のような花だ。それは、まるで雪煙のように咲く。
野草の中で、私はこのイタドリの花が大好きだ。
本物の雪の世界は厳しく辛いが、花の咲く10月初めはまだ暖かく、雲一つない青空をバックに舞うこの花姿は、冷たい猛吹雪ではなく優しい花吹雪の世界に私を包み込んでくれる。そして、銀世界(花)へと誘いこみ、私を感傷的にさせる。
そして、
「雪の降る町を思い出だけが通り過ぎていく。」
「遠い国から足音だけが追いかけてくる。」
「だれもわからぬ我が心」
「この空しさをいつの日か祈らん」
花に顔を寄せ、10月の季節外れに、「雪の降る街を」の歌を私は口ずさむ。すると、白い花びらが、私の心にほろほろと零れて行くのだった。


そんな「イタドリの花」のような雪が降った。イタドリの花の夢をみた朝だった。
起き抜けの眠た目で雨戸を開けると、飛び込んできたのは「銀世界!!」。
全てが真っ白の中に沈んでいる。驚きで胸が高鳴った。
夢の中で、イタドリの花が雪煙となってもうもうと舞っていた。同じように、目の前で本物の雪が、もうもうと花びらのように舞っている。
「イタドリの花」の夢は、正夢だったのだ。
フワフワモヘアーのような雪が、裸木だった枝に花を咲かせ、フユイチゴは白い台座で光を思いきり吸い込みルビーのように光っている。ナンテン、センリョウ、マンリョウ、ヒャクリョウ(ヤブコウジ)の赤い実が、白い世界でこそ本当の宝石の輝きとばかり、清々しく神々しく自分たちを誇示している。オモトの赤い大きな実は、まるで“正ちゃん帽”を被たように愛らしい。ジャノヒゲの実は、深い湖の雫を固めたように群青色に濡れている。スイセンは”雪中花”の名にふさわしく、雪の鏡に全姿全容を映し黄金色の筒状の花びらはそのスイセンの魂のように厳かだ。
そして庭一面が、まるでイタドリの花を敷き詰めたようになっていた。私は雪の上に一つ二つと足跡を付けて行った。本物の雪が足の下でキシキシと鳴った。
「アツ!」サザンカの花が点っている。ロウバイが蝋引きをした造花のように陽に跳ねて、返り香を雫にしている。竹が「ザザザー」と音をたてて衣を脱ぎ捨てた。
見渡す限り、色々な「彩」が点々と灯る音のない世界だ。雪の降る、いや花の降る音だけが聞える。
私はもう一度目をこすり空を見上げた。雪が灰色の結晶になり次から次へと舞い降りてくる。まるでイタドリの花が、次から次へと舞い降りて来るようだ。
そうだ!子供のころだ。こんなふうに舞い降りる雪を、手のひらやスカートで受けたのだ。私は急いで家の中へ引き返し、赤いマフラーと手袋を出した。私も雪の中の赤い実になってみたかった。
赤い手袋の上に舞い降りる雪は、すぐに消え雫となって光り続ける。それは決して冷たくはない。雪は冷たく消える儚いものと、好きになれなかった。寂しすぎる。しかし、
手袋の上で雫となった雪片を頬に当てると、心地よくて温かい。
積もった雪は、堅く厳しくやはり好きになれなかった。だが、空の隙間をぬって陽光と共に降り積もる雪は、まるで光の敷物を広げたようにふんわりとかさ高い。
雪はふわふわと舞い降りる、轟々と降り下りる<天と地の間>の雪が好きだった。私は「積もる」雪よりも「融ける」雪よりも、天から休みなく灰のように舞い降りるその「瞬間」の雪が好きだったのだ。手のひらに受けて融ける雪は寂しい。積もった雪は「情(じょう)」の塊のようで、なお寂しい。私はきっと、その寂しさから逃げるように、10月に咲く雪のようなイタドリの花(それは融けることも冷たく積もることもしない)を愛でていたのだろう。
イタドリの花は、「舞い降りる」という「動」の一瞬一瞬だけのものだった。私はきっと、「溶ける」「積もる」ことの寂しさから逃げるように、イタドリの花を愛でていたのだろう。それは、花に苦しい現実からの逃避のように誘われていたのかも知れない。
しかし、正夢となった今日の雪は、「解けること」も、「積もること」も「舞い降りること」も全てが、「雪」なのだと私に教えてくれている。
今年は暖冬のために雪は少なく、立春前に降った久しぶりの大雪が、私に大きな新鮮なときをプレゼントしてくれた。
私の上にどんどん雪が積もっていく。私の体は優しいイタドリの花のような雪に埋もれていく・・・。

 
        イタドリを細工して父さんと水車をつくる

        川面につけると流れがキラキラと抜けて行く

        「あはは、うふふ」笑い声がリズムを打つ

        イタドリは大きくなると白い花に覆われる

        吹雪くように覆われる

        水面がキラキラ花吹雪もキラキラ

        花をつついてみると「あはは」と

        父さんが笑ったように零れた。


★イタドリ(タデ科)
山野のどこにでも多く生える大形の多年草本。
高さ30cm〜1.5m位。若い時は紅紫点がありタケノコ形で酸味の茎を生で食べ根茎は民間薬にする。痛み取りの薬効のあることからイタドリ(疼取)というが、はたして本当かどうか分からない。(牧野新日本植物図鑑より) 





寒の夜更け     木村徳太郎      楽我記ノートより
   
       
              しんと静かな

              寒夜更け

              犬も遠くで

              鳴いてゐる。

              寝床の中も

              淋しゆうて。


              外は寒空

              寒の月

              襲衣(かさね)も冷える

              寒の夜。

              火番の叔父さん

              会うとうて。

              つんと冷たい

              冬二月

              僕はお部屋で

              横になる。


              寝床の中が

              勿体のうて。



(イタドリの煮びたし)
1)イタドリをさっと炭酸で湯がき一晩水にさらず。
(茹ですぎるとイタドリが融けるので湯にくぐらす程度)
2)水に晒したイタドリの皮を剥く
  水を何回か変え一晩晒す。
3)それを5、6センチの短冊切りにする。
4)これを油炒めにしても佃煮風に味濃く煮ても良い。が、
5)醤油、砂糖、出汁で油あげと煮びたしにすると絶品。
6)もう美味しいのなんのって・・・。

知人の料理旅館のおかみも舌を巻きました。一度お試し下さい。


2007.02.07

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