来た道行く道通りゃんせ/風にのって花ひとひら

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弘ちゃんは生きている(65)
 野球チームも形になってきた。隣町の野球チームから練習試合を言って来た。梶野先生も弘たちも張り切ったものの、野球道具を揃えるだけでせい一杯のチームである。ユニホームもなかった。相手のチームは揃いのユニホームを着ている。それはとても格好よく、それに弘たちは自分達のチームがみすぼらしく見え気弱になった。梶野先生が、校長にユニホームの新調を願い出たが、校長は水道施設のお金もままならないのに、それどころではないと思っている。あまり頼みごとばかりするとまたもとの「おまえら校長」にもどりそうで強く頼めなかった。
 ウメは考えていた。越出あや子たちは、ウメだけが野球チームに入れてもらっているのがおもしろくないので、ますます年上のウメを避けていた。ウメの事を「梶野先生はひいきしてはるんや」と陰口まで叩く。ほんとうはあや子たちも野球の仲間に入りたかったのだ。ウメは、あや子たちがはっきり梶野先生に「仲間に入れて欲しい」と言えば良いのにと思うが言わないので、それなら、ウメから進んであや子たちの輪に入っていこうと思った。ウメは思い切って越出あや子に「今度の休みの日、炭焼き小屋へみんなで遊びにおいで」と声をかけてみた。あや子たちは父親と二人きりというウメの生活も珍しかったし、ウメの住む山の中も珍しいので、あや子、古川由子、中谷智恵子らで行くことにした。ウメは、本当は前田朝子にも来て欲しいと思っていたが、特別に声をかけると女児たちはまたいろいろと勘ぐっていらぬことを言うので、リーダ格のあや子に声をかけたのだ。
 ウメは男児の白い丸首下着を一枚ずつ持って来るように弘たちに頼んでいた。奥田君はそれを聞いて「なにすんねん。お前変態か」と言いながらも、隆も炭谷君も他の男児も持ってきてくれた。それをウメは豊富な水洗い場で洗って干してある。下着が十五枚集った。新品のようなものはたぶん隆が出したのだろう。よれよれの汚れた物もあった。きっとそれは弘の物だろうとウメは思う。
「弘ちゃん。かわいそうに。お母さんが継母で意地悪やと言っていたから、綺麗に洗濯もしてもらっていないのだろう」と思う。
ウメはそのシャツを念入りに洗った。石鹸の匂いと弘の匂いがたち登るようだった。
 ウメは桧の葉を集めて、それを煮出しその液にシャツを浸けてみた。以前吉野の山奥の炭焼き小屋に、渡りのお父ぅについていたとき、そこの村長さんの家に泊めてもらっていた。村長さんの奥さんがウメに綺麗なハンカチをくれ、奥さんが草木染めというものを教えてくれた。
「自然は、いろんなことに役立って人間にかえしてくれるてるんやよ。有り難いね」と話しながら、ヨモギやヤマモモや、タンポポで布を染めていた。ウメはそれを思い出し、家の周りにいくらでもある桧木で試してみたのだ。葉っぱは緑なのに、少し蜜柑色に白いシャツは染まっていた。ウメは嬉しかった。これで揃えのユニホームは出来ると思っていた。しかし、新品とよれよれのシャツでは染まり具合が違う。ウメはみんな同じ色になんとかしたかった。そのためには何回も何回も染め液につけかえてそれぞれのシャツの染め具合を調節しなければならなかった。そこでそれをあや子たちにも手伝ってもらおうと思ったのだ。
 あや子たちは、ウメの家が以外にすっきりと整頓されているのに驚いた。中谷智恵子などは、いつも弟や妹の玩具や本で足の踏み場も無い自分の家を思い出し、ウメのように、自分も家の中をすっきりさせれば、農作業に忙しい父母が喜ぶだろう、ウメちゃんを見習おうと思ったほどだ。ウメのお父ぅは桐久保さんの手伝いで出かけて留守だ。いつもは静かな山の中の家が、おおぜいの女児たちの賑わいで、まわりの山々までが華やかになった。彼女達はお互い顔を合わせ話し合うとみんな仲よしだ。最初珍しそうに遠慮がちにウメの家を見回していたあや子たちも黄色い声で騒ぎ出す。森のキツツキまでが驚くようだった。
 ウメは庭にみんなを案内した。大きな釜が石油缶をコンロにしてのっかっていた。中にシャツが浸かっている。
「薄い色のものは何回も浸け直し、全部同じ濃さになるようにしたい」ことをウメは話した。「みんなで力をあわせて、同じ色に染めあげてこれを野球のユニホームにしたい」と話した。
 あや子たちはますますウメが大人にみえた。みんなで一緒に心をあわせ、かつ、古いシャツも新しいシャツもみんな同じ色になるようにしたいと言うウメの心意気に感心した。
 女児たちの心が入るのか、シャツはだんだんオレンジ色に濃淡を揃えて染まっていく。夢中になる女児たちを、同じ様な色の夕焼けがあたりを照らしはじめた。シャツが夕陽にとけ込むように十五枚干された。みんな同じ夕焼け色だった。

梅干

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梅干オブジェ

 梅壷にひびが入っている。梅酢が上がってくると、例年梅壷へ塩漬け梅を移しかえるのだが、これでは移し変えられない。ガラスの広口瓶が、戸棚の奥に仕舞い込んであったのを思いだしそれを利用することにした。
塩もみを終え、アクを絞った縮緬紫蘇を梅の上に乗せる。深瓶なのでかき混ぜることが出来ない。紫蘇と梅酢が合わさったときの、紅色に染まるあの一瞬が見られないと不満に思いながら上から抑えてみた。裏返した手のひらは紅色に染まっていた。
 鮮やかな紅色を見るや、梅壷のひび割れの気落ちなど飛んでいった。これで今年の梅干漬けも、80パーセントが成功だ。しかも、透明瓶なので中身がよく見える。紫蘇が梅粒と梅粒の間を徐々に紅色に染めながら、まるで生き物のように下へ流れ落ちて行く。紅色と梅粒の動画をみているようだ。あまり綺麗なので、瓶を暗所に置かず食卓の上に飾っておくことにした。素敵な紅いガラスのオブジェが、食卓の花として加わった。私は毎日それを眺めて楽しんでいる。

 <一日目>蓋のように被せた赤紫蘇から濃い紅色が出て、中ほどまで染まってきた。
『私は母親を早くになくし、女親から受け継ぐであろう暮らしの知恵や家事の躾が出来ていなかった。父はそれを気にし、婚家になんども詫びを入れ嫁がせた。詫びる父の背中に、私はベテラン主婦になることを誓った。
その手始めが梅干漬けだった。漬け方が分からない。料理本をみて梅をつけてみたものの紫蘇はそのまま梅の上に乗せて置くものだと思っていた。その年、紫蘇はずるけ梅に黴が生えた』

 <二日目>瓶の赤色は濃さを増してくる。赤色が均等になるように瓶を揺らしてみた。
『夫が懇意にしている同僚の実家が植木屋だった。長女出産祝いに梅の木をくれた。借家の庭の隅に、夫と遠慮がちに植えた。それから八年後に家を建て、引っ越し作業をほとんど終えた夜、この地に住んでいた思い出にと、夜店に出かけた。10センチにも満たない草花の苗のような梅が、ポットに入れられ100円で売られていた。二つ買った。新居の庭には父が、「梅干をつけられるなんてもうりっぱな主婦だなぁ」と呟きながら梅の木を祝いに植えてくれた。私はそれを聞きながら小さいポット苗の梅を植えた』

 <三日目>梅酢はますます紅色を濃くし、ガラス瓶に押し付けられた梅の面だけがピンク色だ。
『梅漬けにカビが生えると、良くない事が起きると言う。これは梅(心)の手入れが疎かになることを戒めた言葉だろう。その年、私は義母を預かった。パートに出ていた。梅をかえり見る余裕はなかった。梅はどす黒く黴ていた。
塩、梅、塩、梅と置いて行くと塩だけが底に溜まる。翌年、私はビニール袋に梅と塩を入れ転がすと、均一に塩が馴染むこと、重しをきつくすると早く梅酢が上がることを知った。夫、長女、長男、次男、私の順で初夏の風をきって、自転車で重石になる石を探しに出かけた。カルガモ親子のようだった。以後、その重石と袋塩まぶし法で、我が家の梅干はつくられる』

 <四日目>上に被せた紫蘇も梅酢をたっぷりと吸い、ガラス瓶のオブジェは風格が出てきた。
『夫はゴルフに出かけるとき、必ず水筒に梅干を二,三個入れる。これを持っていくと好成績が出るという。長男は青年海外協力隊で赴任時、テング熱にかかり梅干で回復した。私は梅干を口に含み、その酸っぱさに顔を歪め筋肉トレーニングをしている。梅干は我が家になくてはならない宝物になってきた』

 <五日目>瓶は、赤い宝石のような梅をいっぱいに詰め込み、静かに土用干しを待っている。
『首にタオルを巻き、日焼けをものともせず、梅を一つ一つ表裏返していく。草いきれと梅の香りが広がっていく。一つ口に入れてみると梅は温かく、ふんわりとした塩味だ。父の笑顔を思い出す。「何も出来ない娘で」と詫びていた姿を思いだす』

 <六日目>梅のガラス瓶が朝日を受け光っている。
『長女誕生記念の梅は、老木になり枯れかかってきた。仕方が無かろう。娘だって、もう子を持つ主婦だ。夫がかわりに小梅の苗木を買って来た。何時まで梅干を漬けられる分からないのに。
しかし、何も出来ない私を受け入れてくれたあの日から、梅干には家族の歴史と味が含まれている。出会った瞬間、梅が紅に染まるように、私たち家族も出会って赤く染まってきたのだ。小梅の苗木は私へのプレゼントと受け取っておこう。
私もずいぶんと物分り良く、梅干のように丸くなったものだと思う。すっかり梅干婆さんになってしまったもの。




               「穂高岳 」     木村徳太郎   【日本の旗】ノートより


                   霧から山が 開けてく

                   山は雪山 穂高岳。
                  

                   白樺つヾいて 風の道

                   葉っぱの匂ひが 流れてた。


                   どこかで鶯 うたふたうから

                   渓流(ながれ)の岩魚が 聞いてゐた。


                   白樺つヾいて 山の道

                   お空の青さが 目にしみた。

                   山から山が 開けてく

                   山はアルプス 穂高岳

2007.07.07



 ☆ 今日は七夕さんですね。こちらは雲が厚いです。最近は笹飾りを近所でもあまりみません。
デイサービスや介護施設では笹飾りをたくさんみました。☆

昨年の七夕、星祭です。http://blogs.yahoo.co.jp/hanahitohira06/10261787.html




              

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