来た道行く道通りゃんせ/風にのって花ひとひら

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二月の歌(轍を行く)

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 轍(わだち)行く
 
 大雪になった。ここ数年暖冬で雪が降らない。雪が降っても風に舞う綿屑のような頼りない雪ばかりだった。ところが降ったのだ。五十センチばかりの積雪だ。梅の花びらが一片二片舞うころになってそれを包み込むように積って行った。
 豪雪地方の人たちは難儀な生活を強いられておられる。申し訳ないと思うが久しぶりにみる積雪は光っていた。

 朝一番、日課になっている「歩き」に出た。http://blogs.yahoo.co.jp/hanahitohira06/38925677.html竹葉から落ちる雪が雪煙をあげている。まだ誰も歩いていない雪道は白布を広げたように輝いていた。その上をゆっくりポコポコ、楽しみながら歩く。
タッタタッタとこちらに向かってくる一団があった。揃いのウエァーを着て、二列縦隊になり雪煙をあげてくる。近くにある高等学校の生徒のようだ。足音がだんだん大きくなり静寂の世界に、なんとも大きな足音が響いてくる。私は怖かった。
菓子袋片手に道幅いっぱいに広がり、声高に通学するこの学校の生徒を見ている。信号を無視するのをみたこともある。そんな一団がこちらに向かってくるのだ。
 道を開け避けようとするが、積雪で道の端が良く分からない。来た道を急いで引き返そうかと迷っていると、みるまにその二列隊がリボンのうねりのように一列隊になった。そして私の脇を大きな声で「おはようございます」と帽子をとり、すり抜けて行ったのだ。次の生徒もまたその次も…。
雪の花がホロホロ零れて行く。
一番最後の生徒が「おはようございます。お気をつけて」と、少し止まるように頭を下げて言う。それにつられ、私も条件反射のように「おはようございます。お気をつけて」と、頭を下げていた。可笑しかった。
雪の花が可笑しいと笑うようにホロホロ零れた。
 一列隊がまた二列縦隊になって遠ざかって行く。白い雪道を帯びのように流れて行く。唖然として見とれている私を残して雪煙が上っていく。一瞬の出来事だった。
雪の花のように爽やかな清らかさを、私の心に咲かせて行った。 とても嬉しくなってきた。
若者に挨拶されたのが嬉しいだけではない。彼らが駈けて行ったあとには、彼らの足跡の轍が出来ていたのだ。その轍が光っていた。私がこらから進もうとする前に、鮮やかな轍が出来ていたのだ。
彼らの足跡が一本の道になっている。私の先入観は吹き飛んでいた。
そうだ、あの若者たちは真白い中に描かれた轍なのだ。道しるべを示す轍だ。そんな風に思えた。
「今時の若い者は……」そんな偏見はよそう。

私の前に轍が出来、私がポコポコと歩いて来た私のつけたたどたどしい足跡の道を、彼らは逞しく踏んでいった。

 轍を胸を張って進むと、小学生たちが雪遊びに興じていた。雪を転がしながら大きくして行く雪だるまではなく、台形の容器やバケツやボールに雪を詰め、それを組立てている。出来上がりが最新型のロボットに似ていた。私の子どもの頃は頭にバケツを被せ、タドンと炭で目鼻を描く雪だるまだったが……。
子供たちは四角い雪だるまに、コーヒー瓶の蓋だろうか、大きな目玉をつけ、カラフルなスーパーボールをはめている。そして最後に手袋をかけていた。私の子どもの時も、雪だるまに寒かろうとマフラーを貸した。枝を突き刺し手袋も貸した。「な〜〜だ。変わってないんだ! 」

 自然が変わったように見える。時代が変わったようにみえる。でも本当は何も変わっていないのではないだろうか。

轍が力強く光っている。私は明るい未来を見たような気がした。
彼らがつけた轍の上を安心して歩いて行こう。そう思う。
雪の花がホロホロ零れた。

「歩き」から戻り私も雪遊びをしてみた。水分を多く含む重たい雪である。見た目はフワフワだが固めると水分がまとめ役になり、堅いボールが出来る。投げると砕けることなく遠くまで飛んで行った。
よく雪の降ったころ、サラサラの粉雪が道路も屋根も凍らせ、その上にまた雪が降り根雪となり、冬の間中雪が有った。私はこのフワフワ雪をどれだけ心待ちしていたことか。フキノトウが顔を出し、春が隣に来ていることを教えてくれる雪だった。冬の終りを告げる<なごり雪>だった。
 五十センチの積雪は、そんななごり雪だった。
もうすぐ春がくるのだ。そして力強い轍もみえてくる。



     一本の轍は春へ向う道



      ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
        
      月光(ひかり)の銛       木村徳太郎    
       光の銛を      
       見ましたか。

       夜の四つ角
       寒の街

       ぐさつと刺さつて
       居りました。

       光の銛を
       見ましたか。

       月が怒つて
       投げた銛

       何故だか恐くて
       ありました。       


       

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