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下草刈でヒヨドリジョウゴの実がありました。湖や真っ赤なカエデを映すような透明の実でした。
ヘルスツーリズム の 旅 ( 森林療法)
森林浴は体にも心にも良いものだと感覚的に思っていたが、その効果が解明され数値で証明された。
子供のころ山村で過ごした。親に叱られたり友達に苛められると、山に入り木々を渡る風の音、鳥の鳴き声、小さな花々に慰められた。
そんなこともあり、山散策が好きだし山の植物に興味があったので、ヘルスツーリズムの講座に参加した。講座名の「ヘルスツーリズム(Health Tourism)」は聞きなれない言葉だが、 医学的な根拠に基づく健康回復や維持増進につなげる観光で、ニューツーリズム(産業観光・エコツーリズム・グリーンツーリズム・ヘルスツーリズム・ロングステイ・文化観光)の一つだ。「森林浴の医学的効果・森の植物・森の歩き方・など」をガイドする養成講座を6月に受けていた。
ビートルズのジョン・レノンが日本の軽井沢で長期滞在し、日本の自然に癒され芸術活動をしていた事、精神を病んでいた夏目漱石が森に癒されていた事などを始めて知った。講座で映し出される日本の自然の美しさに目を見張り、画像それだけにでも私は癒されっぱなしだった。森林療法とか、ツーリズムなどは決して特別なものでなく、自然の恩恵を受けることで、次の活力を得られ誰でもが癒されることだと思った。自然破壊や混沌とした時代であっても、自然の大きさに触れ、日本古来の文化にふれることがどれほど人を癒す事かと改めて感じた。
講座の参加者は登山の達人が多く、私には少し場違いでヘルスツーリズムの素晴らしさを「知識」として感じたままで終わりそうだったが、それのモニターツァーが11月末に募集され、登山は低山らしいので参加してみた。
出発前に体調チエックをする。 参加者10名のうち血圧も唾液マーカで測るストレス度も私が飛び切り高かった。果たして緊張度は解けるのだろうか、心配だった。
1日目は強風の中だ。紅葉した葉が一面敷き詰められる。琵琶湖の波が白く砕ける。こんな波を見るのは初めてだ。穏かに布を広げたような湖面を、浮き寝鳥がゆたりゆたりとサーフインをしている。それが私の知っている晩秋の琵琶湖だった。こんなに荒々しい時もあるのだ。自然の百面相に驚いた。
その荒波を蹴って沖島に向かう。沖島は世界でも数少ない人間が生活する淡水湖に浮ぶ島である。話には聞いていたが訪ねるのは始めてだ。その島の宝来山(225.0)に登る。ケンケン広場とか、お花見広場とか、ホオジロ広場と、島の子供たちの手による案内板だろうか、素朴な案内板が微笑ましい。強風がゴウゴウと山を吹き渡たる。しかし寒くはないのだ。木々が強風をかばいあっているようだ。「好きな木を見つけ、その木に頭の先をくっ付けて語りかけて下さい」と添乗者が言う。木に体を寄せ天上を仰ぐと恐いぐらい枝が揺れている。木にしがみ付きたくなる。しかしそのとき私は発見した。枝先だけが揺れているのではない。幹から揺れているのだ。地面すぐ上から揺れている。そしてその揺れに身を任せるとなんと気持ちの良いことか。強風も感じなくなる。私の問いかけに優しく木が答えてくれるのだ。今までにも大木を見上げるとそれだけで気持が良かったが、木と一体になると余計に癒され快感を覚える。だんだん緊張感や怖さが薄れて行くような心地だった。
山の頂上で、軽いエクササイズや下草刈の労働もする。
なんと体調チエックのストレス度が大きく低下していた。森や林を散策すると癒されることは実感していたが、こうして数字で表示されると頼もしい。いままで山は頂上を目指して登るものと思っていたが、こうして木と語らい、労働作業をしたり、エクササイズを加えると、より癒される事を実感した。
宿泊所に戻るころは、人見知りの激しいタイプの私だが、いつしか仲間(10名の参加者)と打ち解けていた。温泉につかり、地場産の料理に舌鼓を打つ。部屋割りがあったが一部屋に寄り、語り合う。眠くなると各部屋に戻る。大昔の修学旅行や、夜を徹して青臭い論議をやった学生時代を思い出した。
翌朝カーテンを開けると、静かな湖面の対岸に昨日の沖島が見えた。夏に訪問した瀬戸内海を思い出した。目を移せば柿の実が青空に点描画を描いている。紅葉、黄葉が広がっている。なんという素晴らしいロケーションだろう。それらを眺めて朝風呂に入る。これで癒されなければ嘘だろう。その日の第一回体調チェックは、前日のストレス度が嘘のように低かった。
次は伊崎国有林散策だ。「伊崎の竿飛び」の伊崎不動に参る。竿飛びの現場は深い湖の色と切り立つ絶景が恐かった。伊崎山(210)の尾根を歩いた。子供時代はこのような尾根を歩き、隣村までお使いに行ったものだ。そんなとき四季折々に小さな花が咲いていた。コウヤボウキ、ショショバカマのロゼット葉、ヤブコウジ、サルトリイバラなどが懐かしい顔をみせてくれる。大きな岩には、ヒトツバがびっしり群生していた。「園芸店でこれ買うと高価やで」と誰かが言う。そんな話題が出る俗気も面白い。
気を良くして歩いていると落ち葉に滑って尻餅をついた。男性が杖を貸してくれた。杖があると楽だった。子供時代の身軽さとは、随分遠くなったものだと思う。
昔を懐かしんだり登山のイロハを教えてもらったり、沖島や伊崎の歴史を学んだりとても有意義なツァーだった。数値を計るとさらにストレス度は軽減していた。
ヘルスツーリズムのストレス減は、医学的に一週間は持続する事が証明されているらしい。
早くも十二月。ストレス度の低くなったのを維持し、時局を乗り越えよう。
(追記)この時のメンバーで「沖島を盛り上げよう会」が発足された。私も参加させてもらうことにした。
今回のツァーで一番嬉しかったのは、高校卒業以来別居で、今は海外にいる息子が「良い体験をしたね。以前アメリカ人を沖島に案内した事があり、木造の小学校が印象に残っている」というメールを貰ったことだ。別居期間が同居期間より長くその感性も分からないままだったのが、「小学校が記憶に残っている」と言う感性に私は癒された。実は私も、湖に面した広場を持つ在校生7名という木造の小学校が、一番記憶に残ったツァーだったのだ。
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