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♪ 星たちは花になりました
風が語る星と花の物語
〜星たちは地上に降りて花になりました〜
夜空の星は、野の花のよう。
星のお話が風にゆれて流れて行きます
夜空に輝く星は、夜明け前に妖精になって 地上に降りてきます。
そして、星のドラマの主人公たちが
野山に、季節の花となって咲きこぼれます。
おおいぬ座(シリウス) しぶき氷の花
夜空は氷のように澄みきっています。
星たちは 青くくすしき光となり
しじまのなかを きらめきゆれつつ
地上をめぐります。「冬の星座」
勇者オリオンに従う おおいぬ座が青白い光を放ち
しぶき氷の花になりました。
寒々と青白く耀くシリウスは
湖におりて 煌く氷の花になりました。
(氷点下の冷え込みが続き、琵琶湖では打ち寄せられた波が、岸辺の草木に凍りつく着氷現象の「しぶき氷」の花が咲きました。)
長いトンネルを抜けると雪国であった。川端康成の『雪国』そのままの風景が広がる。京都から二つばかりのトンネルを抜けると、まさに<突然!>雪景色が飛び込んで来る。
昭和五十四年、私たちはそんなミニ雪国に転居して来た。 琵琶湖を見下ろす標高三百メートルほどの小高い丘のその住宅地は、雪が降ると陸の孤島になる。傾斜がきつく積雪の坂道はタクシーも登ってくれない。住民達は自家用車を坂の下の広場にとめ、そこから長靴に履き替え這うようにして坂道を登るのだ。
子供たちの通う幼稚園と小学校は、その丘から二キロばかり離れたところにある。雪混じりの冷たい風の日などは、長女の制服のスカートの襞はのびて凍てた板のようになった。だが、休日は子供たちのスキ―授業の練習をかねて、家族で近くのスキー場へ手軽に出かけられた。
次男の通う幼稚園の「クリスマスお楽しみ会」に丘を降りた。雪は年明けの学期始めと同時に降り始めることが多く、年内に降ることはまずなかった。その日も、雪を呼ぶ灰黒色の冬空は広がらず、絵筆で刷いたような水色の優しい冬日和だった。
お楽しみ会が終り出口に向かう人々から歓声があがっていた。「雪よ! 雪!」。ホワイトクリスマスにふさわしく、白い花を舞い散らすような大きな雪片が途切れなく降り下り、地面を薄っすらと覆っていた。私は、住宅地の坂道を思い浮べ、子供たちを急がせ車を進めた。
ワイパーが鈍く重いリズムを打って左右に振れる。目に入る視界はまるで雪女が荒々しく息を吹きかけて来るように絶え間なく、雪片がフロントガラスに張り付く。しかし視界を遮ぎるほどに降る雪も、県道は車の放つ熱で積雪は無かった。
住宅地の急坂までくると薄く雪が覆っていたが、私は県道を走っていた時と同じ感覚でアクセルを踏み続けた。早く家にたどり着くことしか考えていなかったのだ。
坂道は、十五度ほどの傾斜が十メートルほど続きその両脇に溜池と田んぼがある。両脇はガードレールが設置されていた。坂の途中に電信柱があり道幅を狭くしていた。そしてそこからきつい傾斜になる。私はいつもここでアクセルをさらに踏み込む。いつものように踏み込む足に力を入れた。そのとたん車が左右に揺れ後ずさりを始めたのだ。「アッツ! 厳冬の池に落ちてショク死する!」。瞬間「死」が頭をよぎり、慌ててブレーキを踏んだ。しかし、車は止まらずにズルズルと下がっていくばかり。心臓の大きな鼓動に合わせ、だただ後部を振りながら坂道をゆっくり下がっていくばかりだった。
「ドスン!」電信柱に当って車が止まった。
その距離と時間は、ほんの一瞬だったはずなのに私の全身からは汗が噴き出ていた。
車から降りると、車は電信柱に受け止められガードレールの数センチ手前で、うずくまるように止っていた。
車の上にどんどん雪が積もって行く。子供たちを車から降ろす。足元は雪で滑る。どうしたものかと思いあぐねる。車をそのままにしては帰れない。公道である坂道を私の車が占領したのでは、他の車が通れなくなる。
私は坂を登りきった所にあるKさんの家に駆け込んだ。自営業のKさんは運良く家にいてスコップを持って駆けつけて下さった。奥様が他の人も呼んで下さった。
雪はどんどん降り続ける。ブルーの車が雪で白くなって行く。駆けつけてくれた男性たちがひたすら積もる雪を掬い取り、タイヤ周りの雪を除けようとする。しかし除けても除けても上に雪が降りしきるのだ。雪をかき捨てる人たちの頭に腕にと、雪が積もっていく。
私は頭の中が真っ白になっていた。自分が率先して雪を除かなければいけないのに、寒さと恐怖でガタガタ体中を震えさせ立ち尽くしているばかりだった。次男が、「オッチャン。オオキニ」と言う声だけが、辛うじて私を現実の世界に立たせていた。
救援の人が三人から五人に増えた。坂道とタイヤ周りの雪をなんとか除雪し手早く一人が車に乗り込みアクセルを噴かす。それをあとの四人が車体を一気に押した。車は傾斜を登りきり緩やかな所まで登って行った。そのまま車を走らせて行く。私と次男は雪に滑って転びながら、車の後を追いかけた。
次男が大きく振りむき、「オッチャンたち、有り難う!」と手を振り叫ぶ。私もやっと我に帰り深々と御辞儀をして車を追いかけた。
夜になって雪はやんだ。十七軒ばかりの住宅地の息づかいの全てを吸いこむように静かな白い世界になった。その雪の中を、家族五人が揃って救助して下さった五人の家を一軒一軒お礼を言って廻った。
「良かったなあ〜。大事にいたらんと」と、皆さんが優しく言って下さった。
あれから三十年近くは経つ。十七軒だった住宅地は開発が進み今は五千軒近くの大住宅地になった。急な坂道に加え、なだらかな南向きの坂も作られた。陸の孤島どころか、銀行も大学も大型スーパーも出来人と家で埋まっている。顔を合わせてもどこの誰か分からない。
そしてなによりも最近は雪が降らない。雪の大変さ恐さは過去のどこかにおき去り消えていた。
雪に対応できるように4WDで、冬にはいち早くスタッドレスに変えていた。しかし、「雪がふれば、車は乗らない」と最近はタイヤをかえていない。
ところが今冬はよく雪が降る。正月は積雪だった。帰郷した次男夫婦を迎えにいけなかった。夫婦はバスを乗り違え(なんせ大きな住宅地だ。バスの路線もややこしい)雪の中を数キロ歩く羽目になった。
次男も雪は忘れていると思っていた。ところが、雪道を歩いてきた次男から、この三十年前の雪の日が話題になったのだ。
「あのとき、僕らは命拾いをした。感謝して、命を大切に無駄にしないように生きて行かんとあかんなぁ」と言う。「アンタ、まだ小さかったやろ。覚えてるの?」
「あたりまえや、覚えてる。怖かった」と言う。
忘れていた私は恥ずかしかった。次男の、「命拾いした命や。無駄にしたらアカン」に襟を正した。雪は大事なことを思い出させてくれた。
★★★★★★★★★★★★★★★
暁の神様 木村徳太郎
星の火皿を
つぎつぎ消そう
私は暁の神様
すっとべ
暗い夜も
湿っぽい風も
光の征矢を
放とう
私は暁の神様。
輝け
街も村も
人も獣も
おお鳴り響け
心の弦よ
私は暁の神様。
飛び出せ
子供よ凛々しく
暁のごとく。
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