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櫛名田比売のように優しく可憐にコスモスが咲いています。この花は強い花でもありますね
真っ赤なベロのようなケイトウ、真っ黒な種、いろんな花が楽しいですね
五穀の起源。須佐之男命と 八俣の大蛇
神々の知恵と奮闘でまた光が戻りました。天の岩戸を日蝕と重ねる人もいますが日
蝕を題材に物語を記しても、古事記ほどの迫力と面白さは描けないでしょう。古事
記は「凄い」としか言いようがありませんね。そしてこの凄さが日本の原点なので
す。私たちは胸を張って日本人であることに誇りを持ちましょう。
このような騒動になったのも、もとを言えば須佐之男命が原因です。神々
は「乱暴な須佐之男命をどうしたらよいだろう。身についている罪穢が、髭
や爪に集まるよう祈りそれを切って須佐之男命の望み通りに黄泉の国へ追っ
ぱらおう」と決めました。
「イタタタタタ、ひどい目にあった。私はただ天照大御神にお別れを言いに行っただけなのに…」とぶつぶつ言いお腹も空いて来ました。神様たちも大騒ぎの後でやはり空腹でした。そこで食べ物の神の大気都比売神(おおけつひめのかみ)にご馳走を出してもらうことにしました。須佐之男命も高天原を去る前に「何か食べさせて欲しい」とお願いしました。大気都比売は快く引きうけ、お尻から五色の米を取り出しご飯を炊き、次に山芋を取り出しグチャグチャと咬んでトロロ汁を、鼻からは小豆や栗を出して煮込み、美味しい料理を手早く作りました。ところがそれを見た須佐之男命が「わざと汚い所から出して私に食べさせる気だな」と腹を立て大気都比売を切り殺してしまいます。殺されても死体からはどんどん食物が出てきました。頭からは蚕が、目には稲の種が、耳から粟が鼻からは小豆が、ほと(陰部)からは麦が、お尻からは大豆が生まれました。これを神産巣日命(かみむすびのみこと)が大切に集め、種として土に蒔きました。(私たちの食べている五穀と養蚕の起源です。今、大気都比売は徳島市の神山町上一宮大粟神社に祭られています。余談ですが、昭和の中頃を思い出します。その頃は日本のお母さんは人前でも電車の中でも胸を出し泣く我が子に乳房を含ませていました。それを「原始人みたいで汚く、日本の恥だ」と言う先生がいました。子に乳を含ませる母親を私は恥ずかしいとは思いませんでした。慈愛の場面だと思っていました。思うとあれは須佐之男命が「汚い」と思ったのと同じ心だったのでしょうか。そして今古事記を読み直し、大気都比売はお母さんだと思えてきます)
神様たちは須佐之男命の狼藉ぶりにとうとう堪忍袋の緒が切れ高天原から追放しました。須佐之男命は逃げるように降臨し、そして思いました。『うけい』で手弱女を得たから私の勝ちだと思ったけれども、あれはとんでもない間違いだった。私が生んだのはマイナスの世界だった。それを姉の天照大御神は勝ったのに、私の幼い心をじっと見つめておられ、何も言わずに、成長して大人の心になるのを待っていて下さったのではないか。全ては私の誤解で美味しいものを食べさせてやろうと食物を出して下れた大宜津比売まで殺してしまった。
そんな事を思うと須佐之男命は元気を失くし、天照大御神の途方もない大きな温い御意(みこころ)が今更のように思われて来るのでした。 須佐之男命は、出雲の国の肥の河の上流鳥髪(とりかみ)へ降り立ちました。大きな川が流れていました。人影は見えず小高い山に登って見まわしましたが辺りはまったく静かで人の気配はありません。淋しく風が吹き時おり鳥が高く鳴くのみでした。須佐之男命はお腹のすいたまま高天原を出て来たので、喉は渇くし疲れも出るし足も痛み始めます。水音が聞こえます。痛む足を引きずりながら音に惹かれ近づいていきました。水が石に砕けながら踊るように流れています。力を振り絞り這うようにして水を息もつかずに飲みました。疲れが落ち着いて行きます。草の大地に寝転ぶと、緑の木立ちの上には高く澄んだ青い空があり、白い雲が悠々と流れています。川原には葦が(マコモが)群れ、葉がザワザワと揺れています。その美しい情景に見とれ、マコモの葉ずれに乗っているといろんな事が頭に流れていきました。
稗田阿礼さまが天地が開けるとき「浮く脂。ただよう海月。葦の芽」と、生々とした気配がかすかに動くさまを美しく、形容され朗誦されていましたね。 私にも稗田阿礼さまのあの澄んだお声が聞こえてきました。「あの葦の芽と言うのはマコモだったのです」・・・・
最近、マコモとマコモタケを知りました。そして水辺の葦の芽がツンツン萌えあがるように生命力をもって生まれたあの命の元の、宇摩志阿斯訶備比古遅神(ウマシアシカビヒコジノカミ)を思い出しました。ウマシは(美しい)アシカビ(葦黴)ヒコヂ(男)。で、アシカビとはマコモのことだったのですね。<夏林人>さんのブログで教えて頂きました。マコモのことは前回の「十月の献立」に投稿しています。)
生命のエネルギーのマコモが茂り、そして須佐之男命も食し、疲れた体をマコモの葉擦りで癒されたのではと、想像するのはどんなにか楽しく嬉しいです。
マコモの茂み
須佐之男命はマコモの葉擦りを聞いていると心が落ち着きました。生きる力がなくなったように目を閉じ、大きな淋しさでしたがマコモの葉の大きな風になったのです。太陽は西の山に落ちかかっています。美しい!須佐之男命は自然が、こんなにも美しかったことに始めて気付きました。清しく澄んだ光が透き通って、静かに生命ある光を放って行くように思い、須佐之男命から涙が落ちました。それはさ迷い荒れていた須佐之男命に、忘れていたふるさとの母に抱かれているような懐かしさと安堵感でした。そして、太陽である姉の天照大御神にも、他の神々にも見守られていることをはっきりと須佐之男命は悟ったのです。
流れに足を浸しました。水の流れは澄み、心を開いた須佐之男命には淋しさも悲しみも静かに流れ消え去って行くようでした。時おり流れてくる木の葉にも親しさが湧き笑みを浮かべます。そんな中珍しい木切れが流れて来ました。掬い取ると 「おお、 これは箸だ」 箸が流れて来ると言うことは川上に人がいるに違いない。須佐之男命は元気百倍、川上ヘ向って歩き出しました。マコモの藪をかき分け川の石を飛び越え、心の中に込み上げてくる人懐かしい気持ちで急ぎ足になりました。しばらく行くと木立の中に一軒の家が見えました。「お尋ね申す 」何度も声をかけますが誰も出て来ません。人がいるみたいなのにどうしてでしょう。須佐之男命は庭へ廻りました。すると美しい少女を中にしてお爺さんとお婆さんが泣いています。不思議に思って「あなたたちは誰なのです。どうしてそんなに泣いているのです」お爺さんが涙を拭いながら「私は、この国を治めている大山津見神(おおやまつみのかみ)の子で、足名椎(あしなづち)です。妻は手名椎(てなづち)と言い、娘は、櫛名田比売(くしなだひめ)と申します」 「何が悲しくて、そんなに泣いているのです」と須佐之男命が聞くと、三人は益々悲しげに声をあげ泣じゃくります。
お爺さんが話し始めました。「私達には八人の娘がおりました。その娘たちは、どの娘もとても美しく、清清しい声の心優しい娘ばかりでした。ところが、高志(こし。北陸地方)に八俣の大蛇の化け物が住むようになり、毎年ここに来ては娘を一人ずつ食べて行くのです。もうこの娘が最後になってしまいました。もうすぐやって来ます。櫛名田比売は美しい瞳を潤ませ可愛い小さな口も震わせています。「こんなに可愛らしい娘が化け物に食べられてしまう。それが泣かずにいられましょうか」とお爺さんは声を張り上げオイオイ泣きました。 須佐之男命は、櫛名田比売の清らかな愛らしい美しさに心打たれ「その八俣の大蛇という化け物は一体どのような姿をしているのです」とお聞きになりました。「目は、熟れたホオズキのように真っ赤で、体は頭が八つ尾も八つに分かれており、そこには苔や桧や杉の木が生え、その大きさは八つの谷と八つの山を渡るほどで、お腹は何時も血が流れ赤くただれています」と体を震わせながら答えます。 櫛名田比売は恐ろしさに今にも気を失いそうです。須佐之男命が凛々しい声で言いました。「櫛名田比売を私の妻に下さい」足名椎が驚き「あなたはどなたです」と不審にそして、その中に凛々しさと神々しさのあるのを感じて聞きました。「私は、高天原を治めている天照大御神の弟で須佐之男命と言います。たった今、高天原からこの土地に降りて来たところです。」足名椎と手名椎は驚き「そのように尊い方とは、大変失礼をいたしました。もちろん娘は喜んで差し上げたいです。」そして櫛名田比売に「そなたの気持ちはどうじゃな」と聞きました。櫛名田比売は八俣の大蛇の恐ろしさを聞いてもびくともしない、逞しく男らしいそれでいてどこかに気品が溢れる須佐之男命をつぶらな瞳で見つめ、頬を赤らめ手をついて「不束者ですが」と答えました。そのしぐさの可愛らしいこと。須佐之男命は大喜びで、声もキビキビと早速に八俣の大蛇退治計画に掛かりました。「あなたたちは、お米を噛み砕いた強い酒(八塩折りの酒)を作って下さい。家の回りに高くしっかりと垣を巡らし、そこに八つの入り口を作り、それぞれに並々と注いだ八塩折の酒樽を置いて下さい」辺りに強い酒の香りが漂いました。「これで準備はオッケイです。あとは私に任せて下さい。櫛名田比売は櫛になって、私の髪の中に隠れ下さい」と櫛名田比売に優しく息を吹きかけると櫛になりました。 須佐之男命はその櫛を愛しそうにそっと自分の髪にさしました。 やがて生暖かい気持ちの悪い風が吹いてきました。足名椎と手名椎は唇をふるわせて部屋の奥深くに逃げました。須佐之男命は櫛に手を置き、「心配ない」と櫛名田比売の衣をかぶり、顔を伏せ八俣の大蛇を待ちました。遠くから雷鳴の轟きが聞え大地が揺れ木の倒れる音がし、その凄まじさと言ったらありません。山も海も空も大きく唸りをあげ、こだまをかえして響き、火のような真っ赤な光が空中高く上がり、谷深く別の光が右に、左に狂ったように踊ります。それは八つの大きな目でした。 さすがの須佐之男命も息を飲み「うまく酒を飲むか、それとも、まっすぐ私を一飲みするか」と、剣をつかむ手にもびっしりと汗が滲みました。 その時、天照大御神の気高い暖かさと父の伊耶那岐神に言依(ことよ)せられていた海の世界が思い浮かびました。「そうだ今こそが、私は父なる神の言依に答える時、<神意のごとく為さしめ給え>と深々と祈りました。息を吸いゆっくり吐くと心は落ち着き「神々のすることに間違いない」という安心感が全身に満ちました。 飛ばされるほど激しく大地が揺れ、庭の大木が音をたてて倒れ、急に静かになりました。八俣の大蛇の八つの頭が酒の匂いを探しています。そして八つの酒樽を見つけるや、それぞれに「バシャ、バシャ」と首を突っ込み「グワオー」と喉を鳴らし体をうねらせ飲み始めたのです。だんだんと動きが鈍くなり酒樽に首を突っ込んだまま、細長い舌をヒヨロッと出したと思うと、雷のような大鼾で寝てしまいました。 須佐之男命は着ていた櫛名田比売の衣を払い、その下に帯刀していた十拳剣(とつかのつるぎ)で八つの首をばらばらにしました。頭は空中高く跳ねカッと口を開いたままドサリと地に落ました。つぎに胴を切りました。辺りは噴き流れる血の海になりました。止めを刺そうと八つの尾を順番に切り落とし最後の尾を切ろうとしたとき、十拳剣が「カチンッ」と欠けてしまいました。どんなものでも切れる十拳剣です。不思議に思い尾を裂き切り開いてみると、輝く見事な太刀が収まっていました。剣の見事さに驚いた須佐之男命は「こんな立派な剣は、私のような者が持つべきでない。こうして無事に退治できたのも天照大御神の守りがあったからだ」と感謝の気持ちと、高天原で随分迷惑をかけたお詫びに天照大御神に献上することにしました。
この続きは またふることに云ふ
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