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オカリナを吹こう(32)
ミニ コンサート 「最高の七夕」
まだオカリナ教室をしていた頃、いろんな施設にオカリナを吹かせてもらいに行っていた。もと同じ職場の人が引き抜かれ、民間の介護施設へ施設長として沢山移っていった。生徒さんたちの励みにもなるのでそういう施設にボランティアで、オカリナ演奏によく行った。施設長の気概に賛同する施設や、なんとなく合わない施設とそれは様々だった。ボランティアに対する意識も様々だった。そんな中、毎月訪問する施設があった。全国的に展開するグループ会社が運営し、各施設の入居者を満杯にし、どれだけ採算が取れるか(売り上げを競う)ランキングがあった。介護事業もビジネスだった。
そんな中、懸命に本部とやりあいながら自分の感性を生かし介護に取り組んでいる元同僚に惹かれ、そのグループホーム(認知症対応型施設)に毎月行っていた。彼女は施設長会議(支店長会議)に出席するごとに売り上げが棒線グラフで表され、売り上げ優先を言われると話していた。その企業は儲けることばかりに走っていたのだろうか。最初から介護事業は儲かると踏んでの事業だったのだろう。時代の寵児のようにもてはやされた若い社長に、不正が発覚し企業は潰れた。しかし会社を潰すことは出来ない。入居している高齢介護者を放り出すことになる。施設介護事業は一括譲渡され、別の大手グループ会社が引き取った。
彼女は退職し自分の思う介護が出来るところへ転職していった。(介護も事業と言うからには採算も取れないといけない。しかし必要以上の採算重視より介護重視に自分をおきたかったようだ)
入居者と職員はそのままで、名称が代わったその施設に東京から単身赴任で新しい施設長が来た。そして私もボランティアで行かなくなった。
五、六年はたとうか。そこからオカリナボランティアを言ってきたのだ。オカリナ演奏を楽しみに待っていて下さっていたあの時の利用者さんは元気だろうか。色々とごたごたが有り施設の重苦しい空気はいま、どうなっているだろう、そんなことも思い浮かび引き受けた。
現在、どんな風に施設の日常が有るのか、どんな人たちが(どんな音楽を好まれるのか)分からない。私は度胸を決めて自分なりの選曲をしてとにかく訪問することにした。
30曲ばかり選んだ。その中から独奏するもの、みなさんに歌ってもらいその伴奏にオカリナを入れるものとに分けてみた。
独奏グループ
1.アメージング・グレス。竹田の子守唄、砂山、七つの子(メドレーで)
2.勿忘草をあなたに。遠くへ行きたい。岸壁の母(台詞を入れる)
3.君をのせて
皆に歌ってもらうグループ(歌詞カード持参)
1七夕、きらきら星。うみ。海。我は海の子
2青い山脈。瀬戸の花嫁。バラが咲いた。大きな古時計
3四季の歌。ふるさと。琵琶湖周航の歌。夕焼け小焼け
以上の20曲を用意した。
事前に琵琶湖周航の歌と青い山脈はみなさん大好きであることを聞いていた。そしてグループホームだ言うことも考慮して欲しいと言われていた。
1、2グループの順番は皆さんの前に立ってから決めることにした。
他に童謡唱歌オカリナ教本も持参した。
入所者さんもスタッフもほとんどが入れ替わっていた。施設が出来たときから入所されているOさんの顔が見えた。Oさんに声を掛けたが覚えておられなかった。スタッフの人が「アルツハイマーになられた」と言う。以前随分いろいろお喋りさせて頂いていたのにと思うと寂しくなった。出されるお八つもこぼしながら食べられている。でも顔がとても明るい。
用意した20曲を全部吹かしていただいた。まだ時間があるとのことで「いつも皆さんが歌っておられる歌で、リクエストがあれば言って下さい」と言う。
「荒城の月」がでた。唱歌用の教本を持ってきて良かったと思う(全ての楽譜を覚えてはいない。)教本のページを繰っていると「私踊る!」と言いながらもじもじしておられる方がいた。
「みなさん、荒城の月を吹かせていただきます。大きく歌ってくださいね。それと踊っても下さるそうです」とその方を前に引っ張った。
「先生の前に出て邪魔したら悪い」とまだもじもじしておられる。オカリナは伴奏だ。私が隅に下がり荒城の月を吹き始めた。昔踊ったことがあるのだろうかシナをつくり踊って下さる。それがとても楽しそうで面白い。オカリナを吹く口元も顔も緩む。すると、別の人たちも「私も踊る」と五,六人前に出てこられた。そして同じように手足を踊らせる。私もますます張りきって何度も「荒城の月」を吹いた。スタッフの人たちも「最高や!」と言いながら踊りの輪に入る。思いもしない状況になった。
みなさんから手拍子や大きな歌声が響いた。オカリナの音を小さくすると不振な顔をして踊りの方たちが振り返る。もう楽しいたら無かった。
皆さんが「今日はとても楽しかった。また来てください。本当に来てくださいよ」と大拍手をして見送って下さった。
Oさんのことは寂しかったが、私は最高の時間を貰った。オカリナを吹いていたから、こんな楽しいこともあるのだと嬉しかった。今の入居者は自立の人が多いとのことだったが、どの人も明るいのが嬉しかった。
そしてオカリナを吹き続けていたからこそこんな嬉しく楽しい時間が頂けたのだと思った。
きっと私はまたこの施設に寄せていただくだろうと思う。 |

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