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イタドリの花

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イタドリの花

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   イタドリの 花 降る   ☆


明け方夢を見た。イタドリの花の夢を見た。
イタドリの花は、足元から乾いた粉雪を吹き上げ、すっぽり身体を包みこんでしまう地吹雪のような花だ。それは、まるで雪煙のように咲く。
野草の中で、私はこのイタドリの花が大好きだ。
本物の雪の世界は厳しく辛いが、花の咲く10月初めはまだ暖かく、雲一つない青空をバックに舞うこの花姿は、冷たい猛吹雪ではなく優しい花吹雪の世界に私を包み込んでくれる。そして、銀世界(花)へと誘いこみ、私を感傷的にさせる。
そして、
「雪の降る町を思い出だけが通り過ぎていく。」
「遠い国から足音だけが追いかけてくる。」
「だれもわからぬ我が心」
「この空しさをいつの日か祈らん」
花に顔を寄せ、10月の季節外れに、「雪の降る街を」の歌を私は口ずさむ。すると、白い花びらが、私の心にほろほろと零れて行くのだった。


そんな「イタドリの花」のような雪が降った。イタドリの花の夢をみた朝だった。
起き抜けの眠た目で雨戸を開けると、飛び込んできたのは「銀世界!!」。
全てが真っ白の中に沈んでいる。驚きで胸が高鳴った。
夢の中で、イタドリの花が雪煙となってもうもうと舞っていた。同じように、目の前で本物の雪が、もうもうと花びらのように舞っている。
「イタドリの花」の夢は、正夢だったのだ。
フワフワモヘアーのような雪が、裸木だった枝に花を咲かせ、フユイチゴは白い台座で光を思いきり吸い込みルビーのように光っている。ナンテン、センリョウ、マンリョウ、ヒャクリョウ(ヤブコウジ)の赤い実が、白い世界でこそ本当の宝石の輝きとばかり、清々しく神々しく自分たちを誇示している。オモトの赤い大きな実は、まるで“正ちゃん帽”を被たように愛らしい。ジャノヒゲの実は、深い湖の雫を固めたように群青色に濡れている。スイセンは”雪中花”の名にふさわしく、雪の鏡に全姿全容を映し黄金色の筒状の花びらはそのスイセンの魂のように厳かだ。
そして庭一面が、まるでイタドリの花を敷き詰めたようになっていた。私は雪の上に一つ二つと足跡を付けて行った。本物の雪が足の下でキシキシと鳴った。
「アツ!」サザンカの花が点っている。ロウバイが蝋引きをした造花のように陽に跳ねて、返り香を雫にしている。竹が「ザザザー」と音をたてて衣を脱ぎ捨てた。
見渡す限り、色々な「彩」が点々と灯る音のない世界だ。雪の降る、いや花の降る音だけが聞える。
私はもう一度目をこすり空を見上げた。雪が灰色の結晶になり次から次へと舞い降りてくる。まるでイタドリの花が、次から次へと舞い降りて来るようだ。
そうだ!子供のころだ。こんなふうに舞い降りる雪を、手のひらやスカートで受けたのだ。私は急いで家の中へ引き返し、赤いマフラーと手袋を出した。私も雪の中の赤い実になってみたかった。
赤い手袋の上に舞い降りる雪は、すぐに消え雫となって光り続ける。それは決して冷たくはない。雪は冷たく消える儚いものと、好きになれなかった。寂しすぎる。しかし、
手袋の上で雫となった雪片を頬に当てると、心地よくて温かい。
積もった雪は、堅く厳しくやはり好きになれなかった。だが、空の隙間をぬって陽光と共に降り積もる雪は、まるで光の敷物を広げたようにふんわりとかさ高い。
雪はふわふわと舞い降りる、轟々と降り下りる<天と地の間>の雪が好きだった。私は「積もる」雪よりも「融ける」雪よりも、天から休みなく灰のように舞い降りるその「瞬間」の雪が好きだったのだ。手のひらに受けて融ける雪は寂しい。積もった雪は「情(じょう)」の塊のようで、なお寂しい。私はきっと、その寂しさから逃げるように、10月に咲く雪のようなイタドリの花(それは融けることも冷たく積もることもしない)を愛でていたのだろう。
イタドリの花は、「舞い降りる」という「動」の一瞬一瞬だけのものだった。私はきっと、「溶ける」「積もる」ことの寂しさから逃げるように、イタドリの花を愛でていたのだろう。それは、花に苦しい現実からの逃避のように誘われていたのかも知れない。
しかし、正夢となった今日の雪は、「解けること」も、「積もること」も「舞い降りること」も全てが、「雪」なのだと私に教えてくれている。
今年は暖冬のために雪は少なく、立春前に降った久しぶりの大雪が、私に大きな新鮮なときをプレゼントしてくれた。
私の上にどんどん雪が積もっていく。私の体は優しいイタドリの花のような雪に埋もれていく・・・。

 
        イタドリを細工して父さんと水車をつくる

        川面につけると流れがキラキラと抜けて行く

        「あはは、うふふ」笑い声がリズムを打つ

        イタドリは大きくなると白い花に覆われる

        吹雪くように覆われる

        水面がキラキラ花吹雪もキラキラ

        花をつついてみると「あはは」と

        父さんが笑ったように零れた。


★イタドリ(タデ科)
山野のどこにでも多く生える大形の多年草本。
高さ30cm〜1.5m位。若い時は紅紫点がありタケノコ形で酸味の茎を生で食べ根茎は民間薬にする。痛み取りの薬効のあることからイタドリ(疼取)というが、はたして本当かどうか分からない。(牧野新日本植物図鑑より) 





寒の夜更け     木村徳太郎      楽我記ノートより
   
       
              しんと静かな

              寒夜更け

              犬も遠くで

              鳴いてゐる。

              寝床の中も

              淋しゆうて。


              外は寒空

              寒の月

              襲衣(かさね)も冷える

              寒の夜。

              火番の叔父さん

              会うとうて。

              つんと冷たい

              冬二月

              僕はお部屋で

              横になる。


              寝床の中が

              勿体のうて。



(イタドリの煮びたし)
1)イタドリをさっと炭酸で湯がき一晩水にさらず。
(茹ですぎるとイタドリが融けるので湯にくぐらす程度)
2)水に晒したイタドリの皮を剥く
  水を何回か変え一晩晒す。
3)それを5、6センチの短冊切りにする。
4)これを油炒めにしても佃煮風に味濃く煮ても良い。が、
5)醤油、砂糖、出汁で油あげと煮びたしにすると絶品。
6)もう美味しいのなんのって・・・。

知人の料理旅館のおかみも舌を巻きました。一度お試し下さい。


2007.02.07

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