|
乙女 の 花
大好きなハルジオンを花束にして電車に乗りました。少しドキドキしています。
昔、ハルジオンのことを、こともなげに「貧乏草」と言った女の人がいました。
私はそれがトラウマになっているのです。楚々とした素敵な女性だったのに・・・。
ハルジオンは、牧野富太郎博士の命名で、漢字「春紫苑」と書きます。私の大好きな花なのです。
車窓から見える琵琶湖が、キラキラ耀いています。ハルジオンのような小さい漣が戯れているのでしょう。
そんなことを思いながら、ハルジオンの花束に顔を埋めてみました。仄かな匂いは、まるで乙女のような香りがしました。その優しい匂いと電車の揺れに誘われて、私は小さく口ずさむのでした。
「今年もまた咲きました あなたに似てる春女苑
だから今もまだあなたと 暮しているみたい
花には花の悲しみが 人には人の苦しみが
いつしか巡る季節の中で 思い出に変わるかしら
寒い冬には春のぬくもり思い出せず
疑ったり 迷ったり 心は弱いものですね
信じていいです 春女苑
必ず咲きます 春女苑」 (作詩・作曲 さだまさし)
さだまさしさんは、ハルジオンに春女苑という漢字を当てています。ハルジオンは、乙女のような、そして春風のような女人がふさわしい花だと、私も思うのです。ハルジオンは決して「貧乏草」などではないのです。
とは言っても、薄桃色の和紙に包まれた大きな野花の花束を抱く私を、人は「ビンボウグサを抱いた老女」と不審に思うかもしれません。それが心配で、恥らう乙女のように顔を伏せおりました。すると、
「綺麗なお花ですね」と、知らない方が声をかけて下さったのです。嬉しかった!
ハルジオンが、素敵な花だと思ってくださる方は、やはりほかにもいらっしゃるのです。
それで私は、自信を持って先ほどより、もう少し顔をあげもう少し大きく歌いました。電車の音は軽やかにリズムをとってくれました。
「ハルジオンコンサート(私が勝手に命名)に出演するのです。私の絵本“星たちは花になりました”に、オカリナ演奏を入れて欲しいと言ってこられました。
『ハルジオン(乙女)は、星座になりました』と、絵本のページは開かれていきます。一曲目は<見上げてごらん夜の星を>。続けて十曲が選曲され、絵本の最後に「花や星を大切に。自然の美しさを」と結ばれていることから、「滋賀県には、琵琶湖と言う素晴らしい自然があります。」と、“琵琶湖就航の歌”で締め括るように構成された台本が、届けられたのです。絵本と曲を上手に組み合わせて下さっているのです。私の思いをちゃんと伝えてくださっているのです。出演しないわけにはいきません。大喜びで引き受けさせていただきました。もちろん、ボランティアです。吹奏させてもらえることが嬉しく、とても有り難いのです。そしてその感謝の気持を表わしたいと、ハルジオンをたくさん摘んで行ったのです。
「聞きに来てくださった方々に、ハルジオンを貰っていただこう」と思ったのです。
ハルジオンは優しい微風がとても似合う花なのに、どうしたことでしょう。
屋外での、その日の演奏会場は、風がきつく楽譜が飛んで行ってしまいました。
でも、慌てません。なぜなら・・・。
乙女座となるハルジオは、「苦しみから逃げて空に駆け上り、星座になりましたが、人間はそんなことは出来ません。だから、いろんな苦しみや裏切りや悲しみにも耐えて、地上でしっかり足を踏ん張って頑張りましょうね」と、私はいつもメーセージを送贈ているのです。楽譜が飛んだぐらいで萎れていては、ハルジオンに申し訳ありません。恥かしげに顔を伏せはしても、ハルジオンは萎れてなんかいないのです。私も頑張りましたよ。もちろんハルジオンの花もたくさんの方がもらって下さいました。
そして、お礼にと、女の子がハルジオン色の雲を千切ったような綿菓子をくれました。フヮフヮのピンク色の雲です。ハルジオンが雲に乗ったみたいでした。
雲を千切っていただくと、ハルジオンに似た香りが口中に広がっていきました。
私は思うのです。「心」はなんと素晴らしいものだろうかと。
年齢に関係なく、乙女になることだって出来ますし、そしてまた、貧乏草と思うことも出来るのです。
私は、ハルジオンを乙女のようだと、いつまでも思える心のほうを、大切にしたいと思うのです。
無理かな! 乙女の恥じらいとは裏腹のような大きな口をあけ、綿菓子をいっぱいにほおばっていましたもの。
(お知らせ)
そしてまた嬉しいことに参加させていただけました。ボランティアは、私を楽しませてくれ、そして、素晴らしい巡り会いが生まれるのです。
朗読(声で名作に接する事が出来ます)(眠くなったら眠れます)(沢山の人と一緒に、同時に感動できます)オカリナの音(ね)を、少しだけ、朗読に加わえさせて下さいました。
お近くの方や、時間のある方は、ぜひお遊びにおいでください。
♪ 「仔馬」 木村徳太郎 「ドウブツ(動物)序詩」ヨリ
此處は 大阪
梅田駅
ごくんと逆吃(しゃっくり)
機関車は
貨物の仔馬
驚かせ
知らぬ顔して
發車です。
青森までは
まだ遠い
仔馬なんども
跳ねるだろ。
2007.05.22
|