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動物の謡15編 【私のユートピヤ】
絵本の企画として岡本ノート出版部へ提出せるものなり。図書はドウブツノウタ。(6歳〜8歳向)
(4) カバ(河馬) 木村徳太郎
アルヒ ノ コトダ
アシ ノ シゲミデ
ヒルネ ヲ スレバ
ハチガ チクリト
ミミ ヲ サス。
カバハ ビツクリ
オクチ ヲ アケテ
オホキナ コエデ
ウオウオウ ト
ナイタトサ。
アマリ ナクカラ
グルリ コロン ト
メガ トンデ デテ
タンコブ ミタイ ニ
ナツタトサ。
ダカラ ミロミロ
ナキムシノコ ハ
カバト オナジダ
オメメ ガ コブニ
ナツテイル。
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狐の裁判(2) 昭和二十四年三月発行
いよいよこんどは人形劇だ。プログラムには「狐の裁判、一幕、出演、ギニヨール座」と書いてある。藤井君たちは、学級文庫でこの話を読んで知っていた。あれを、どんなふうにしてやるのだろう、人形がうまく芝居が出来るのかな。どうだろうか。鐘が、がらんがらんと鳴った。みんな、ぱち、ぱちと、手をたたいた。幕がする、すると上がった。子供会に来ていた子供たちは、全部きゅうにしんと静かになってしまった。
百姓が現れた。穴の中から熊の声が聞こえる。百姓が熊を穴の中から助けてやった。それだのに熊は百姓を食おうと、いっしょうけんめいだ。百姓が助けてもらおうと、ぶるぶるふるえている。みんなは、面白いので、どっと笑った。藤井君は人形のように思えない。どうしてあのように、うまく動くのだろうか。隣りで見ていた小山君が、藤井君にささやいた。「電気だぞ、電気で動く仕掛けだぞ。そうでない事には、あんなにうまく動くはずがない」
藤井君もそうではないかと思った。みんなも感心して見ている。
舞台に狐が現れた。これから裁判だ。どのようにやるのかな。子供会に来ていた子供たちも、だんだん芝居の筋が解かって来て、いまではもう夢中になって見ている。もう、人形がどうして動くのか、そんなことを考えている者もない。人形よりも、芝居の面白さにまるで、自分がやっているように、力がはいる。
人形はほんとうに、怒ったり、笑ったりするように見える。狐が裁判をして、上手に百姓を助けた時には、みんな、我を忘れて手をたたいた。
人形劇が終ると藤井君は、自分でも人形劇をやってみたいと思った。それで、となりに座っていた小山君に、そっとささやいた。
「ね、小山君、僕たちも人形劇をやって見ようよ」
「うん、でもやり方がむつかしいだろうね」
「研究すれば、出来るさ。明日、学校から帰ったなら、僕の家でやろう」
「うん、やろう。じゃ僕、明日君の家に行くからね」
その時、舞台の陰から、人形をぶらさげて、ギニヨール座のおじさんが一人現れたので、藤井君と小山君は話をやめた。すると、どうだろう。そのおじさんが、人形の使い方を、これから説明するのだと言う。藤井君も、小山君も嬉しくてならない。みんなと同じように、わぁっと手をたたいた。
「これが、いま、芝居をやっていた百姓の人形です。頭と手と、それから、あとの着物は、ほら、ごらんの通りからっぽです」
子供会に来ていた子供たちも、藤井君も小山君も驚いてしまった。あんなに上手に動いていたのに、からっぽなんてどうもおかしい。そのとき、誰かが言った。
「指でやるのだ。手を入れて動かすのだ」すると、おじさんは
「そうです。知っている人もいるのですね。まるで手袋のようですが、着物のすそから、こうして手をいれて人さし指を、首のところにつっこむのです。そうして立てれば、ほら人形が立ったでしょう。親指をまげると、ほら首が下を向くでしょう。手首をまげると「今日は」の挨拶です。この芝居をみてくださった人たちに、有難うをしましょう。ほら、どうです。お辞儀をしましたね」
みんな感心して、手をぱちぱちたたいた。すると、どうだろう。人形も、同じように、手をぱちぱちとたたく。みんなはよけいに嬉しくなって、手が痛くなるほどたたいた。
「親指と中指を、ぱちぱち合わせれば、このように拍手になります。優しいでしょう。みなさんもすぐ出来ます。では、えっと、誰か、ちよっと来て下さい。そうそう、前にいるあなたとあなた」
指さされた二人の男の子は、もじもじしていたが、てれくさそうに頭をかきながらおじさんのところへ出ていった。
おじさんは狐の人形を、ポケットから出すと、
「さぁ、君は狐の人形、君は熊の人形だ。手をいれて人差し指を、首につっこんで、しっかりつっこみなさいよ。では、みんなによく見えるように、しっかり手を上げて。」
二人の男の子はおじさんに言われるとおりに、手をあげた。
一人の子は、さっきおじさんがやったとおなじように、自分で、手をぱちぱちと、たたいてみせた。
みんな、どっと笑った。その子は、照れくさくなって、人形を持ったまま頭をかいた。それでよけいみんなは、涙がでるほど笑った。藤井君も、小山君も腹をかかえて笑った。
「ではこちらへきて、ちよっと、芝居をして下さい」
二人の男の子は、舞台の陰の方へ行った。おじさんが、「さあ、狐の人形を出してください」
ぐんと、いきおいよく、狐の人形が出た。まるで、ばねじかけのぜんまい人形みたいに。すると「あら、あら、駄目だね。まるで地面から飛び出したみたいです。人形劇の筋によっては、そんなこともありますが、そう熊が穴から助けられた時ですね。でもいまは違います普通のときのように、右か左の舞台の袖のところから出るように。もう一度やりなおしてください。」
狐の人形が姿を消すと、こんどは舞台の左の方から、すうと姿を現した。するとおじさんは、また、注意をした。
「おやおや、今のようにすううと出てきたんでは、幽霊みたいで芝居になりませんね。手首を動かして、歩いているようにしなければ駄目ですよ」
男の子は、それで、手首を左右にちよっと動かさせて、ひょこひょこ歩いているような格好で、もう一度やりなおした。
「うまいぞ。うまいぞ」
誰かが見物席から、おもわずさけんだ。
藤井君も小山君も、いよいよ自分たちで、人形劇をやってみようと、思い込んでしまった。簡単にやれる。それでいて、あんなに面白いのだもの。
人形劇が終ると、もう明日まで待っていられなくなって、今日から稽古してみようと思った。それで、藤井君と小山君は、人形劇がすんで、ほっとして、ひとやすみしていた、おじさんさんのところへ出かけて、人形劇のやり方と、人形のつくりかたを教えてもらって、いっしょうけんめいに、ノートにそれを書いた。それは、次のようなことだ。
基本的動作―――首や手足の動作
1. 頭の上げ、下げ (人差し指のまげのばし)
2. 両手をたたく (親指と中指を、合わせる)
3. 右手、左手の運動 (親指と中指のうごき)
4. 左向く、右向く (うでまたは、手首で向きを変える)
5. そりかえる、おじぎをする (手首の曲げ伸ばし)
6. 歩く、走る (肘から上を、真直ぐしたままで形の大きさに比例した速度で人形を動かす)
7. 立つ、座る (手首から上を、真直ぐにしたままで首を曲げて人形の裾から入れてひだをつくる)
演劇表現―――表情のしかた
1.笑う (首をうごかす手をふる。少しそり身になって 身体をふるわせる)
2.怒る (首をうごかす手を強くふる。大きな息をする ように身体を動かす)
3.泣く (首をうごかす手を顔にあてる。うつむきか げんに、身体をこまかくふるわせる)
4.喜ぶ (両手をあげて、身体を元気よく動かす)
これだけ書いた時、おじさんが言った。
「人形は人間のように細かい動き方は出来なくて、動く範囲に限りがあるが、工夫をすれば、あまり細かく動ごかなくても、ほんとうの人間よりも、もっと細かく動いているように出来るよ」と言った。それから、これはちょっと注意だがねと言って、おじさんは自分で紙に書いてくれた。それにはこんな事が書いてあった。
1.踏み出しは、男が左に、女が右。
2.人の名ざしは右のかいなをまいて天をつく。
3.胸ひざの伸びて屈むはしのびあし。闇には宙をなでて行く。
4.男泣きは、手よりもっていき拭く涙。女は顔をもっていてぞなく。
5.笑うときは、男は肩をそうるなり、女は袖を当ててうつむく。
6.用無き人形は、露ほども動かさぬを上手の人と言う。
なんだか難しい言葉だったが、藤井君と、小山君には、すぐに解かった。おじさんにお礼を言って帰ろうとすると
「君たち、人形の作り方は知っているかね。なんだったら、ついでに書いて行きたまえ。教えてあげよう」と、言ったので、藤井君と、小山君は、
「はい、教えて下さい」と元気な声で言った。早く覚えて、上手にやりたいと思っているものだから、藤井君も、小山君も時間のたつのを忘れて、おじさんが言ってくれることを、いつしょうけんめいにノートに書いた。
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