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写真の妙味
カメラは1841年に日本にもたらされ、幕末から明治時代にかけて浸透しはじめた。よく知られているものに坂本龍馬の肖像写真がある。
その昔、写真は魂を抜かれると言われ、恐れられもしたらしい。
私の子供時代は、まだ一般家庭にカメラは普及していなかった。学校行事や町内行事の集合写真はあるが、家族が写してくれるスナップ写真はあまりない。写真館へ出向いて写真は撮るものだった。それも白黒だ。1935年に、コダックがカラーフイルムを売り出しカラー写真が出始めたが、一般的に使われだしたのはもっと後だと思う。
にっこり微笑む私のスナップ写真が増え出したのは、会社務めのころからで、結婚、そして子供の誕生と歳月の流れにつれ、写真はどんどん増えていった。
夫はカメラが趣味だった。何台も機種を揃え子供たちを撮るのを楽しみとした。私は子供たち一人一人にアルバムをつくった。そして、そのうち子供たちが写真を撮ることを覚え長男は花の写真を、次男は人物と、私もよく写してくれた。写真は正直だと思った。年令を隠さない。魂を抜くどころか魂をそのまま映し出すのが写真だったのかもしれない。
そして、写真の進化は目覚しい。
今春、壷井榮文学館の「岬文壇エッセイ」で賞に入り、顔写真を送るように言われた。(文学館便りに載せる)手元にあるスナップ写真を送ることも考えたが、駅やスーパーに備えられている「スピード写真」を利用した。ボックスに入るのに勇気がいったがすぐ写真が出てくる便利さだ。私は、写真は実写のモデルだけでなく、それを覆う空気感の伝わって来るものが好きだ。しかし使用目的の決まっている写真に空気は要らないだろう。本人だと確認できる写真ならそれで良いのだ。が、そこは人情。実物に関わらず、少しでも美人に写ったほうが嬉しい。スピード写真や、警察署で撮る免許書用の写真は、どうしてこうも人相が悪く写るのかと思っていたが、今回、普通の人相のものが出てきて一安心。
壷井榮文学館主宰の「岬の分教場文芸教室」に参加し、顔写真を添えて感想文執筆の依頼をされた。前回の写真が残っているのでそれを送ろうとも思ったが、またスピード写真に足を運んだ。
それにはわけがあった。
メニューに「美肌仕様」と言うのがあったのだ。どんなものかと思いながらも前回利用をしなかった。百円の追加で、美肌仕様の写真が出てくるらしい「美肌使用?」試して見たかった。
化粧品の広告などに使用前、使用後の写真が掲載されている。写真技術でシミを消したりシワを消す事が出来、効果抜群のように加工しているのだと聞いた事がある。
百円追加のスピード写真で、それが出来るようだった。
知人とそれが話題になった。「プリントシール機はもっと凄いよ」と知人が言う。
プリントシールは友達や仲良しと記念に撮り、シールにするものだ。その技術がいまや驚くほど良くなり、セルフポートレートにも利用されていると言う。肌を整えることはもちろん、目を大きくしたり、鼻を高くしたり、(底上げ)して撮ることが出来るらしい。
シワもシミも消え、垂れ下がってくる目元もパッチリ。20歳は若返ると聞かされた。
撮ってみたい誘惑に駆られる。次に顔写真を言われたら是非プリクラへ行って見よう。(しかし、いまのところ写真を送って欲しいと言ってくる要請はない)顔写真が必要と言われるように頑張ろうと思う自分が可笑しく、また楽しい。写真技術の進歩は希望を与えるものかもしれない。
しかしながらに思う。
こんなに加工する事が出来る写真とは何だろう。写真とは「真を写す」。それゆえに魂を抜くとも恐れられたものだったと思う。
巷には携帯電話、デジカメが溢れている。そしていくらでも加工出来るらしい。加工した写真が泳いでいる。その美しさ?に、疲れもする。白黒写真が懐かしくなったりする。昔の写真が懐かしくもなる。
昔の写真屋さんが写した写真はどれも凛々しい顔付きのものが多い。昔、人は凛々しい顔つきをしていたのか、それともそういうふうに修正加工していたのだろうか。若き特攻兵の写真を観る。映画のスチール写真で、俳優が同じ格好をして同じ様に写っている写真がある。現在と昔と顔の骨格が違っているのだろうか。顔付き、背景から浮ぶ空気感が違うのだ。戦争映画で、女優がモンペをはいても、モンペがニューファションのように映ったりもする。
その昔、実物も知らずに写真だけで嫁ぎ、新しい人生を踏み出した時代もあったという。
そんな時代の写真に修正や加工はあったのだろうか。
誰にでも手軽に写せる現在の写真の用途は何だろう。記録、記念、感動、アート……。
夫は、百円追加の私の美肌仕様の写真を観て「やりすぎだ!」と言った。
そのうち「これ、誰?」と言うかもしれない。
シャセイ 木村徳太郎
フルフルアメノ
ニチヨウビ
ダアレモコナイ
オエンガワ
ヒトリシャセイヲ
イタシマス
オニハニデキタ
ビワノキヲ。
ソウソウソレニ
カアサンモ
カイテアゲマショ
アトカラネ。
イクサニイカレタ
トウウサンニ
カケレバイモンニ
オクリマセウ。
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