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のんびりしたブログですがよろしくお願いいたします。

十一月の花

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十一月の花

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 霜月
 
 霜月になり木枯し1号がやって来た。風邪を引いてしまった。急いでストーブだ、コタツだと慌てる私をよそ目に……。
 朝顔がまだ咲いている。 
木枯らしに揺れている。

一つは、零れ種子で毎年庭を覆う小さめの白いアサガオが、花を終え種子を零し早々に芽を出し、二度目を咲いている。二つ目は、例年生い茂る白いアサガオに彩りを添えようと、鮮やかな青紫色の札のついた苗を購入した。色札は鮮やかな青紫色だったのに、薄い薄い水色で、今は殆ど白色になっているが咲いている。これは琉球朝顔(リュウキュウアサガオ)で冬も咲く多年草らしい。

そして三つ目、極め付き!

風引きで熱にうなされた夜、植栽に雪かと幻覚するほどに、大きな白い花を咲かせている。ユウガオだ。
秋色が増す中で、これらの大中小の白い花が揺れている。まだまだ蕾も多く、いささかこの元気良さに私は疲れもしている。

夏には夏の花が咲き、また次の夏を待つ心を満たしてくれるのが花だと思う。
違和感を持つのは、私だけだろうか。

人間と花の間には細やかな交流があった。友とし、師と慕い、慰められ、そして文化があった。「草木言問ひし時」(風土記)にあるように。草木が物を言うのはごく当たり前のことで自然なことであった。そういう交流、記憶が、私の中で失われていくようで危惧される。私の腹時計ならず花時計が狂っていきそうな気がする。

 人にはいろいろの思いがあろう。

 咲き続ける三つ目の白い朝顔(ユウガオ)に私は不思議を思う。

 ユウガオ(夕顔)といえば源氏物語を思い出す。しかしいつまでも咲き、地面を這う大きな白い花に、私は儚さやいじらしいと思える源氏物語の女人を感じられないのだ。

 ユウガオは「干瓢(カンピョウ)」?
 「枕草子」(清少納言)に、
 夕顔は花のかたちも朝顔に似て言ひ続けたるに、いとをかしかりぬべき花の姿に、実のありさまこそいとくちをしけれ。 (夕顔の花は花の形も朝顔に似ていて、アサガオ・ユウガオと続けて言うような、しゃれた花の姿なのにあの実といったらもうぶち壊しだ。)とある。
また、正岡子規の
 夕顔の棚つくらんと思へども 秋待ちがてぬ我いのちかも これは、瓢箪(ヒョウタン)?
清少納言は続けて言う。
 されど、なほ夕顔といふ名ばかりは、をかし。 (そうはいっても、やはり夕顔という名前だけは素敵だ)と……。

 私も「夕顔」という名前に、イメージを乗せていただけなのかもしれない。
干瓢にしろ、瓢箪にしろ、どれも夜に咲き、月の明かりを吸うことから幽玄化され、その名前から、イメージを膨らませていたのではないだろうか。
私は源氏物語より同じ千年記なら古事記の方が好きだし、紫式部より清少納言の方が好きだ。
しかし「夕顔」がどんな女性だったのかを感じられる花を見て見たいとは思っていた。佳人薄命を絵に描いたような女性。儚げながら可憐な女性……。そんな花を見てみたいと朝顔の苗を購入する時、「夕顔の苗」も注文しておいたのだ。

 咲いたその花の大きなこと。確かに夕方から夜明けまで咲き芳香はある。しかし、アサガオのように漏斗状には開かない、平開している。そのベタッとした平開咲きは、しどけなさを思わせた。そのあまりの妖々しさに「これは上田秋成の雨月物語だ」と思った。
 源氏物語「夕顔」の巻は、粗末な家垣に夕顔の花を見つけた光源氏に「心当てに それかとぞ見る 白露の 光添へたる 夕顔の花(ひょっとしたらあなた様かと思いました。 白露のような光を添えている夕顔の花のように美しい方なので)」と、女のほうが声を掛けた。光源氏は、女の和歌の才に心を奪われ通いつめる。が、女の住まいは粗末な家。世間を気にした光源氏は名も明かさず女性も正体を知らさぬまま、二人は幾度も逢瀬を繰り返すのだ。そしてある日、枕元に女性の幽霊が立ち、急いで太刀を抜いた光源氏。おびえた女は、息も絶え絶えとなり身体は冷たくなっていったのだった。その女の名前が「夕顔」だ。

  園芸店に頼んでおき購入したのは、正しくは「ヨルガオ」らしい。園芸店はこれを「夕顔」だと言う。花が咲いたとき、夫が「おばけだ!」と言った。何事かと思い、庭に出た私にもそれは「お化けだ」と叫ばさせた。それほど大きく、儚げや内気さを感じさせない花だった。
清少納言の「夕顔」論(夕顔という名前だけは素敵だ)に拍手を送る。しかし紫式部は花の本質をよく見極めていたとも思う。源氏五十四帖の巻名をすべて自然の風物に則り、花のその性質を本能的に知っていたのだろうとも思う。

 確かに月の夜、花が闇の中に浮き出し、じわじわと咲き出し、芳香を広げていくのは、えも言えぬ風情がある。それは「夕顔」の名にふさわしい。
しかし、源氏物語の<朝顔>は、現在の花の<槿(ムクゲ)・桔梗>とも言われる。あの時代の<夕顔(ユウガオ)>は、ほんとうはどんな花だったのだろう。<瓢箪? 干瓢? ヨルガオ?>

 話は逸れるが、女優カトリーヌ・ドヌーブが大好きだ。あの美しい妖艶さにため息が出る。高齢になっても容色は衰えず美しい。彼女に「昼顔」という映画がある。昼顔の本質が見事に描け、彼女の美しさが増す。そして、その続編として「夜顔」があるらしい。ぜひ観てみたい。ひよっとすると我が家の夕顔(ヨルガオ)の疑問は解けるかもしれない。

 たかが花、されど花、「草木言問ひし時」。いつまでも花はそうあって欲しい。
思いはそれぞれで良い。しかし人と花は、交流というより同等に扱っている文化であると思う。日本人の文化の記憶、祖先の記憶は体内にいつまでも残っていて欲しいと思う。
気候の変動があっても、残っていて欲しいと思う。木枯らしの中での朝顔(ヨルガオ)は疲れる。
 

九輪  _天王寺五重の塔_ 木村徳太郎  
 
       夕陽に鳴るよ 
       九輪が鳴るよ
       ちりりん ちりりん
       もう 日が暮れる

       子供かくれて
       伽藍に消える
       まだだい まだだい
       まだ きりがない

       鳩も廂に
       子守兒じれる
       ほうほう ほろりよ
       ほう 気がもめる

       夕陽が光る 
       九輪が光る
       ちりりり ちりりり
       もう 門しまる   

誇り高き花

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おならのおはなの挿絵

誇り高き ヘクソカズラ
 
 空高く散策が楽しい時である。赤い実が目につく。サルトリイバラ、ノイバラ、ヒヨドリジョウゴ、マユミにサネカズラ、ヤマボウシ、ハナミズキ、ガマズミ、アオキ……。白い実も目につく。ナンキンハゼ、センダンの実は青空に零れている。
ノブドウのグランデーションも、紫のムラサキシキブもある。黒と赤の絶妙な組み合わせのタンキリマメ、クサギもある。どれも精一杯装おっている。嬉しい秋野がどこまでも広がってくる。
 そんな中、目立ず物静かに、言うならば燻し銀とでも言うのだろうか、悠久の時を静かに封じ込めたように光っている実がある。
キャラメルを小粒に丸めたような琥珀色の実だ。蔓が絡まり陽を受けて反射している実は晩秋を丸めたように美しい。

  ヘクソカズラの実だ。

 皀莢(さいかち)に 延(は)ひおほとれる くそかづら 絶ゆることなく 宮仕へせむ   
 
と、万葉の時代から「クソカズラ」と言われ、名前を面白おかしく語られるあのヘクソカズラだ。   
 夏のあいだ小さい花を次次に咲かせ、その可愛さにサオトメバナとも、またお灸をすえているように、花の中心に火が点ったようにもみえることから、ヤイトバナとも呼ばれているが、全草に異臭があることから、ヘクソカズラと呼ばれ蔑み面白がって言われる事の多い蔓生の草である。

 しかし、ほんとうは厳かな花なのだ。ピカピカと光る琥珀色が誇らしく輝いている。

 伊勢神宮は天照大神が約2千年前に鎮座され、お社の式年遷宮の制度が、千三百年前の天武天皇の時代に作られた。それ以来ずう〜と二十年毎に社殿を新しくされて続いている。社殿だけではない。装束から調度品のすべても新しくされる。
 平成二十一年十一月三日には、遷宮を四年後に控えそれに先立ち、五十鈴川にかかる宇治橋が、檜の香りも新しく「宇治橋渡り始め式」が厳かに執り行なわれた。 
 式年遷宮は、新居にお移りになられる神様の新しい息吹もさることながら、優れた日本の伝統工芸の技術を絶やさないためにもあるのだと思う。二十年サイクルで遷宮の度に新しくするのは、勿体無いと感じる人もあるかも知れないが、千三百年前の昔の寿命からいくと、二十年と言うのは技術を伝承していくぎりぎりの年限ではないだろうか。現在平均寿命は大きく伸びたとは言え、二十年という期間は技術を守る職人達の匠の技を伝承して行くのに、相応しい年数なのであろう。
また遷宮を執り行なうことにより、経済の活性化も図れる。
 私はこの知恵の深い仕組みに驚くと共に、千三百年もの長い年月を伝える、世界に類無きこの伝承方法に日本人として誇りを覚える。

 新しくされる調度品の一つに、矢を入れる籠もある。その籠の材料がヘクソカズラだと言うのだ。万葉の時代から「クソカズラ」と呼ばれているあのヘクソカズラだ。
 ヘクソカズラの臭さが虫を寄せ付けない。蔓を誤まって引きちぎると手には、何時までも悪臭が残る。その悪臭が防虫になると言うのだ。そのためヘクソカズラの蔓が使われる。古人のこの知恵には感服するばかりだ。
 式年祭に先立ち、山歩きの有志の人たちによってヘクソカズラの蔓が集められる。蔓は湯がかれ、干され、均一になめされて籠に編まれていく。細い細い蔓である。悪臭と戦いそれは気の遠くなるような作業工程であろう。何人もの人の手が関わっているのだ。日本の伝統文化を絶やさない心意気と苦労が滲み出ての技である。沢山の人の手と知恵と汗で、脈々と続いている技だ。これは、脈々と続いている日本民族の心意気でもあろう。

 赤や白の実を抑え、琥珀の実が悠久の時を経てピカピカと光る。
陽に誇らしげに光った。実は潰さない限り臭くない。琥珀に光る玉は宝石の輝きを持つ。


 お話    おならのおはな  花ひとひら 作

 
家族揃って お夕飯が 始まりました。

「いただきま〜す」 元気に勝君が言ったとき 

「プウー」と おならの音が……。

お姉ちゃんが「勝! 行儀が悪い」と嫌な顔をしました。

勝君は下を向いたまま 大好きなハンバーグも食べないで 

しょげてしまいました。

それを見てお婆ちゃんが 

「勝 あした野原に行こうか?」と 誘いました。


次の日 お婆ちゃんと勝君は緑の波の田んぼを抜け

赤とんぼに挨拶をして 小川近くの野原にやってきました。

ラッパのような白い小さな花が 土手のたくさんの草に絡みついていました。

よく見るとそのラッパの真ん中は赤く そこから「プウープープー」

と音楽が出てきそうです。

「勝 その花のつるを引っぱってごらん」

つるをつかんだ勝君は

「わあぁ〜!臭いよ〜」いそいでつるを離して

汚い物をさわったように ズボンで手を拭きました。

お婆ちゃんが笑いながら「これはヘクソカズラだよ」

  勝君は小さな声で聞きました。

「ひよっとして婆ちゃんも 昨日の僕のオナラのこと 怒ってるの?

それでここへ連れてきたの?」

お婆ちゃんは「違うよ」と優しく言いました。

「ヘクソカズラは『臭い臭い おならの花だ』って嫌われるかもしれないね。

でもね とても大事な草なんだよ」。

「どうして?」

「この臭い匂いが とっても役にたつの」

「勝は前に走っている馬の上から 矢を飛ばすのを 見たことがあるね」

「うん あれ流鏑馬(ヤブサメ)ていうんだ」

「さすが勝は賢いね よく知っているね」

「じゃあ飛ばす矢を入れていた 入れ物を知っている?」

「うう〜ん なんだか知らないけど 背中に籠を背負い 

そこから矢を抜いて飛ばすんだ とても格好良かったよ」

「あの籠が この臭いツルで編まれているんだ

沢山の人たちが このつるを集めて つるを茹でて 干して

綺麗に滑らかにして 何日も何日もかかって 籠に編むんだね」

「軽くって丈夫で そしてこの臭い匂いが虫を寄せ付けないんだよ」

「ずううと大昔から編み返されて 大事に残されているんだ」

「たくさんの人たちの 苦労と知恵でこの臭い草を守っているんだね」

「うふ〜〜ん とても大事な草なんだ」

  勝君は感心してお婆ちゃんの顔をみました。

「そうだよ 自然には無駄なものなんか な〜んにもないだ」

「勝も臭い臭いと 逃げないでちゃんと

ヘクソカズラさん こんにちはありがとう」って挨拶をしようね。

「うん 僕どのお花にも木にも ちやんと挨拶するよ。

みんな 役にたっているんだね」

「勝は賢いね 勝もみんなを楽しませてくれるし 役にたっているよ」

勝君はヘクソカズラのお花を お姉ちゃんへのお土産に摘みました。

「昨日はごめんね でもおならだって大事なんだよ」って
 
言おうと思いました。


   名をへくそ蔓といい悠久の時刻む小さき花




           ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


   悪戯          木村徳太郎   
  
           湯構(ゆぶね)に 鯉を 入れようか

           すると 大人は 驚くだろう。


           「あ〜い〜湯だね このお湯は」

           湯然(のんびり)つかって ゐたならば


           鯉がぴくりと つゝくから

           大人は喫驚(びっくり) 湯構(ゆぶね)を上がる。


           すると 子供は 落ちついて

           知らぬ顔して 這入るのだ。

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