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影絵 「随筆きょうと」82号(落とし文より)
「絵本読んで」と帰郷中の孫がヒザに乗ってくる。ほおを上気させ、瞳がキラキラ光っている。その光に誘われるように孫を抱きしめ、髪に顔を埋めた。すると、小さな手で絵本を指差し、父の顔を見上げている幼い私が、影絵のように浮かんで見えた。私の読み聞かせる声に父の優しい声が重なった
_外は雪_
ふいに孫が「おしっこ」と言う。慌てて玄関先に急ぐ。そこに孫のおしゃれな長靴<足首をベルトで絞めるカラフルなスノーブーツ>が澄ましている。そしてその横に、突然小さなピンクのゴム長靴<長靴好きの娘が何時何処へでも履いていた>と、大きな長靴が現れた。<子供のとき私は父の大きな長靴をいつも履きたがった。>その三足の長靴が、わずかに照らすサイドランプだけの鈍色(にびいろ)の玄関に、並んで浮かび上がった。
翌朝、孫が障子を破ったまま帰った。昔、木の葉を挿んで繕ったたように、破れを修理しようと思うが、枯葉ばかりで適当な葉が見つからない。それをよいことにして、私はそのまま破れた穴から外を覗いて見た。
横なぐりに吹雪く白一色の世界に、赤いシシガシラ(山茶花)がチラチラと仄見えた。
ああ!その前を突然、紅いセータの女の子が走り去った。シシガシラの赤い花びらがほろほろと散った。この冬、私は私の遠い姿(影絵)を何度も何度も見た。
♪ 「ブランコ」 木村徳太郎 昭和十七年【ボクラノアソビ】絵本掲載用として作詞
ブランコ ユレバ
カゼガ ナルナル
オミミニナルヨ。
ブランコ ギイコ
ジヨンコガ カケル
ナキナキ カケル
タアカク ヒクク
サクラノ エダガ
ユレルヨ ユレル。
ブランコギイコ
スズメガ ニゲタ
三ビキニゲタ。
ブランコ ユレバ
ナゼカ ココロガ
トトント ハズム。 (注)ジョンコは幼児の履物
2007.01.19
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