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2012年、ガイドブックを持って古事記ゆかりの地を旅し、古事記の世界を楽しみたいと思う。
小学校2年生のとき分かれたYちゃんも、古事記ゆかりの鳥見山を覚えていてくれたのだ。
やまと まほろば
2012年は「古事記」完成から1300年にあたる。
そして2月11日は建国記念日(紀元節だ)。紀元節は神武天皇の即位日の祭日だ。
この歴史の記念すべき瞬間に立ち会える喜び、
タイトル「やまと まほろば」を新しく加えていこうと思う。
子供のころ父が話してくれる古事記や日本書紀の世界が好きだった。とても面白かった。古事記の絵本を繰るのが好きだった。それは父が橿原神宮の神職だったからだろうか。父が児童文学をやっていたからだろうか。あのときの絵本はもう失くしている。(昔は古事記=神話=の絵本はたくさんあった。近年はあまり目にふれることがない)
大人になって古事記、日本書紀を読み返すとかなり難解だ。子供のころ聞いたり絵本で読んだものは、どれも心躍り楽しいものだった。
私が胸躍らせ聞いたあの話を孫に伝え、残してやりたいと思う。
古事記、日本書紀は様々な研究者によって語りつくされている。私などが口を挟むことでもないし、古事記の広い世界を解説するには私は勉強不足だ。
ただ子供のころ、父が聞かしてくれた「古事記」の面白さを取り戻せたらと思う。
父は言っていた。古事記は源氏物語より、もっと男と女の恋の話である。心の葛藤の話である。神様は人と同じで兄弟喧嘩もする、殺し合いもする、騙すこともする、生き方のすべてが含まれている、森羅万象、あらゆるものを抱いている素晴らしい書物だといっていた。
期せずして「なら記紀・万葉名所図会_古事記編_」が送られてきた。そしてなによりも嬉しかったのは小学校2年生のときに別れたYちゃんからの年賀状だった。
奈良で過ごした小中学校時代、私は「変人の児」と、教師たちからさげすまれていた。「古事記」が好きとでも言おうものなら「あんな荒唐無稽なありえない話が国始まりとは悲しい。」「おまえの親父は変人だ」と一笑された。「変人の児」は広まり何かにつけて笑いものにされた。家に帰れば父が「日教組のデモシカ、アプレ教師が国を潰す」と言う。私は居場所がなかった。季節季節に姿を変える自然が私の唯一の友達だった気がする。いま思えばあの自然が古事記だったのかもしれない。
目を瞑るといろんな野の花が浮かんでくる。優しい風が頬をなでていく。そして、奈良榛原の鳥見山のツツジも目に浮かんでくるのだった。
小学2年生になった新緑の萌えるころ、榛原からまだ奥の村の神社に引越しが決まり、父はお弁当を持って仲良しだったYちやんも誘って鳥見山へ連れて行ってくれた。咲き誇るツツジを前に、鳥見山の「八咫烏(ヤタガラス)」の話をしてくれた。
遠くは山々の連なりと雲海、つつじ咲き乱れる中、黄金の光を放ち八咫烏は神武天皇の前に舞い降りたのです。
「道が分からなくなった神武天皇の前に、天照大神の使いの八咫烏があらわれ、道案内をしてくれたので戦いに勝ったんだよ」と古事記の話をしてくれた。鳥が大きく羽根を広げたような稜線を見せている鳥見山、祝うような紅赤なツツジの群生、渡ってくる風の中に、私は古事記の人物が確かに傍で息づいているように思えた。
しかし、あれから半世紀以上も経つ。本当に私は鳥見山へ登ったことがあるのだろうか。そんな思いがしていた。
昨年末、ひょんなことから思い出すこともなかったYちゃんの現住所を知った。そして年賀状を出した。返信が来たのだ。
「昔のお話ですが、お別れする時、榛原の鳥見山に登ってつつじの花見をした記憶がありますか」と書かれていた。
そうだ、Yちゃんも鳥見山を覚えていてくれたのだ。つつじが満開だった古事記の中の鳥見山は本当だったのだ。二人で手をしっかりつなぎ、赤いツツジの前で父の話を汗握り聞いていたのは、やっぱり現実のことだったのだ。
私は決心した。「あのときのドキドキ感を取り戻したい。そして孫にそれを語ってやりたい」と。それは美しい日本を語ることだと思う。
「倭は 国のまほろば たたなづく 青垣 山こもれる 倭しうるわし」ヤマトタケルの歌だ。ヤマトタケルノミコトは「日本武尊」(日本書紀)「倭建命」(古事記)の二つの漢字表記がある。
「やまとは 国のまほろば たたなづく 青垣 山ごもれる やまとし うるわし」「まほろばとは本当にすばらしい所」という意味。「国のまはろば」は「国のなかで一番すばらしい所」と言う意味だ。
高校は地元を離れ、桜井の高校へ行った。日本史を教える高齢の女先生に出会った。私たちはお婆ちゃん先生と呼んでいた。お婆ちゃん先生が居眠りをしている私たちに言ったのだ「いつかあなたたちは、太古からの素晴らしい日本の歴史の詰まっているこの地で、青春時代を過ごせたことに感謝し、大きな財産になる時がきっと来るでしょう」と・・・ お婆ちゃん先生は古事記が好きだという私を変人扱いにしなかった。私は小中学校時代のいじめから解き放たれたのだった。
感謝の気持ちと、私はいま大きな財産の中を、とても贅沢に歩かせてもらっている。それを守り語り続けたいと思う。
参考文献
*「古事記」太安万侶によって献上された、現代に伝わる日本最古の書。
*「古事記伝」本居宣長の「古事記」全編に渡る注釈書 古事記の現在語訳はたくさんある。漫画でも描かれている。いろんな研究書がある。そんなな仲間入りはどだい無理な話である。
花ひとひらの古事記物語(やまと まほろば)であり、挿絵である。お許しいただきたい。
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やまと まほろば
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