新米居宅管理者の日々

今年ぶれまくってやっと落ち着く私

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 ルイ十七世の謎と母マリー・アントワネット -革命、復讐、DNAの真実-  
 デボラ・キャドベリー著 櫻井郁恵訳
 近代文芸社 2004年9月10日初版 定価3000円+税  
 ISBN4-7733-7173-0 C0098 \3000E  

200年もの長きにわたって謎だったルイ十七世の科学的謎解きミステリーみたいな本かと思いきや

これがあまりに面白くて分厚い本にもかかわらず細切れの時間活用で夢中で読破しました。

本の価格も高いので図書館から借りた本ですが、久々にページをめくるのが楽しくてドキドキ。。。。

その前にあんまりなアントワネットを見たので、この本で救われました。



「遺伝子学が王子の死の謎を解明」という2000年4月のニューヨーク・タイムズの記事から始まります。

ニュースは大きな話題になりました。長いこと遺体が確認されず脱出説が根強く残り、数多くの偽者

が登場、姉のマリー・テレーズ生存中には100人以上もの自称ルイ十七世が出現、さんざん彼女を

悩ませました。当時、DNA鑑定が可能なら、あれほど苦しまずにすんだと同情を禁じえません。

この本の執筆に関して専門家からの豊富な資料提供、法医学者や遺伝子鑑定に関する研究者、歴史学者

公式文書、史料の原点を調べてくれたイギリスやフランスの図書館職員へ謝辞を述べられています。

物語は丹念な取材の上に成り立つ精密なものになっています。

あらためてフランス革命の狂気、それへ至る財政破綻、ギロチンの犠牲となった多くの貴族や革命家

たちに思いをはせます。

第一部と第二部にわかれており、第一部でアントワネットがオーストリアをあとにしてフランスへ嫁ぐ

日から、革命でルイ十六世に続きギロチンにかけられ、幼い十七世がタンプルの塔で、虐待の限り

を受けて死亡するまで描かれ、第二部では王政復古下のフランスで次々現れるニセ十七世たち。

それを信じる王党派の支援者達、ここでも集団ヒステリーのように「本物の十七世」だと認める人達が

それぞれの信じる十七世をかつぎだします。20世紀に入ってもこの決着はつかず、最後の11章で

一気に解決します。関連書籍は800冊以上でているとか。



8歳で母親から引き離され、養育者シモンは粗暴な「市民」で悪徳の限りを教え込み、暴力と暴言の

日々を送ったあとは遺棄され、生きたまま墓に塗り込められたような幽閉。排泄物や南京虫や悪臭の中

見るも無残な死をとげた10歳の少年。亡くなる前にみた医師は聾唖者だと思ったほど言葉を話さず

表情もなく反応が見えなかったと記録に残してあります。天使のようなバラ色の頬をした王子は、

まさに「凍りついた瞳」をもつ、虐待児に変わり果てていたようです。




ロシアのロマノフ王朝最後の皇帝ニコライ二世の場合は家族全員に対して銃殺が行われたので、

悲劇ではあっても、ここまで酸鼻を極めた悲惨さを感じられません。

アナスタシアを名乗ったアンナ・アンダーソンもDNA鑑定で偽者と証明されていますから、やはり

科学的解決のすごさに感動します。



翻訳者はあとがきでドストエフスキーがイワン・カラマーゾフに言わせた台詞を思い出したと

書いておられます。

「罪のない、苦しんだ子供の涙は何によって贖えるのか。またそんなことは可能であるか」

今は、地下で両親にはさまれて眠るルイ十七世の心臓は安らいでいるでしょうか。


2世紀にわたる謎、ぺてん、復讐の王室版推理物語。

ミステリーというなら、こういう上質のものをもっと読みたいものだと思いました。

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新・凍りついた瞳

 新・凍りついた瞳    ささやななえ 原作/椎名篤子
 集英社 2003年9月24日初版 定価905円+税  
 ISBN4-08-782061-0 C0979 \905E  

「凍りついた瞳」というのは、虐待を受けた子が示す「Frozen watchfulness(凍てついた凝視)」

無表情で無感動な目を表した言葉です。



児童虐待の実態とそれに取組む現場の専門職の方々、それをとりまく環境や制度、法律などを事例を

もとにわかりやすく説明してあります。ノンフィクションです。

YOUという雑誌に連載されたものをまとめて本にしてありますが、この漫画雑誌は比較的こういう

社会的な問題などをとりあげる若い女性向きの本で、一時期読んでいたことがあります。

最初の「凍りついた瞳」2作目の「続・凍りついた目」は原作・コミックとも読み、この「新」が

出版されたのは知っていましたが、手にとるのを躊躇していました。

やっと読みましたが、児童虐待のありようはエスカレートしていき毎日のように子供たちが殺される

ニュースが入ってきます。

「虐待連鎖」によるものもありますが、ネグレクトによるものもあり、その子供たちが成長して、

今度は自分が受けた虐待に苦しみ荒れるケースがあり、その憎しみは大人に向かっていきます。

そのとき、親のかわりにしっかり受け止めて愛情をそそいでくれる大人がいると、もう一度子供を

やりなおして人間への信頼を取り戻すことが可能です。

この本には虐待されて心的外傷を負った子供たちを忍耐強く支え親がわりを続ける大人や、虐待され

死亡した子供の検視を行い死因を究明する医師、虐待されて育ち傷ついている親へのカウンセリング

を続ける精神医、子供をミイラのようにして死に至らしめた親の弁護を引き受ける人権派の弁護士、

児童福祉をとりまく様々な職種が登場します。

最後に収録されている作品は、アメリカとの制度の違いを描いてあり、法律的に日本には子供たちを

守るシステムがまだ確立されていず、不充分でうまく機能していないことをとりあげられてあります。

最初の「凍りついた瞳」連載が1994年、それから8年後、虐待される児童は増える一方ですが、子供

を守る法律の整備はなかなか進んでいませんでした。



このコミックがすごいのは、こういう使われ方をしたからです。

原作者の椎名篤子さんのあとがきによれば、この漫画は子供虐待に関わる専門家たちの悲願だった

「児童虐待の防止等に関する法律」の改正に向けて、願いをこめて制作されたものだったのです。

同法は2000年11月に施行されましたが、完全ではなく3年後に見直しを行うということでした。

その時、椎名さんは法改正に向けて自分にできることをしたかったそうで、急いでこの作品を漫画

化しました。(関係機関や研究者が求めている法改正の一部を詳しいデータとともに収録)

まだ連載途中、すでに法改正に向けて動き出していた国会議員にコピーして配ったそうです。

そのコピーを読んだ議員達は強く反応、この漫画は同法立法や予算に多大な影響を与えました。

議員達を動かさなければ、現場はいつまでも変わらないまま。自分が何をできるか、各自が自分の

やれることをすることで、福祉の現場が変わるということをみせつけられた本でした。

前作と違い、非常にデータが多い、つまり統計の数字。その説明からしていかなければならない

内容の原作を、作者から「数字は全部入れて欲しい」と言われ、気が変になりそうになりながらも

りっぱに完成させた、漫画家のささやななえさんも素晴らしい仕事をされました。

ささやさんの作品の根幹には基本的に「人間を信じる」というテーマがつねにありますが、漫画化

したとき、そのへんがうまく出ているのを感じます。

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