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「花なんてさぁ、ほっつけときゃ〜勝手に育つよーな、
とにかくカンタンなのが一番!よねぇ〜! ちょっとさぁ、
アンタ、そんなんなぁい〜??」
「そーよ そーよねぇ〜 ギャッハハハハ〜〜!!」
・・・昼下がりの穏やかな店内に 突然おば様軍団の声がこだました。
ころぼっくるに隣接するレストランで
優雅にランチを済ませたマダム達のご来店である。
どうやらめずらしさで寄ってはみたものの、
花には特に興味はない方々らしい。
「・・・ほ、ほっつけときゃ〜・・・ですってっ!?」
通常は貴重な昼寝タイムであるのだが、めずらしく今日はこの時間帯に
来店していたJ子の眉根はつりあがった。
「全く!花や緑の愛好家の一員として、ああいう方がいるなんて、
ほんっと、なげかわしい限りだわっ!・・・」
実は「枯らす族」代表でもあるJ子なのだが、ついついこの手の発言には
挑発されてしまう。
J子は声のする一群の方へ つかつかと歩みよった。
すると・・・
おば様軍団前方にいた、一人のスタッフらしき青年が振り返った。
「はい・・・ こちらの花はとても丈夫で管理も簡単ですよ。
こぼれダネでもよく増えてくれますし・・・」
「おおおおお・・・・・」
(おば様軍団&J子の心の声)
花を愛するこのお店のスタッフの一員であろうに、
おば様方の失礼な発言にも気を悪くするでもなく、
あくまでも穏やかに、にこやかに、爽やかに、
そして優しく丁寧に商品説明をする・・・・・・・
年のころはそう、20代後半くらいであろうか、この青年は・・・??
「・・・あ、あの人さ、れ、例のあの韓国スターに似てない? ええと・・・ヨ、
ヨン様、じゃなくて・・・」
おば様軍団の一人が 後方でささやき始めた。
「そ、そうだよね、えーと、あの・・・な、なんてったっけ・・・」
「パク・ヨンハよっっ!!」J子は断言した。
「そうそう、それよ!それぇ〜♪」
・・・いつのまにか おば様軍団と同化しているJ子。
同じ好みのものにはいつでも誰でも一致団結出来る、
それがおば様軍団の強みだ。
「・・・それにしても いつからあんな素敵な人が入ったのかしらっ!?」
J子のとどまることを知らない好奇心の火蓋は
美人店長へと向けられた。
「店長〜!! ちょっと、あのお方は誰っ? アルバイト? 新しく入った子??」
美人店長は驚く
「は? やだぁJ子さん、知りませんでしたっけ?
彼はうちのマネージャー、仕入れも担当しているS君ですよ〜
もちろん社員だし、もうずっと前からうちにいますよ〜」
「えー!? じゃあ この店の商品も全部彼が選んで買ってきてるの??
(センスいいじゃん!)・・・でも アタシ、これまでに
会ったこともなかったわよ〜?!!」
「・・・そうですかぁ? あぁ、月曜日は仕入れで彼はいないし、
平日も最近は忙しくて お庭作りに出かけているときとかが多いから・・・
すれ違いだったのかな〜?・・・」
・・・そうだったのか・・・
「チッ!」J子は舌打ちした。
思えばJ子の来店は、特に彼のいない月曜日に集中していた。
“ころぼっくる会員ポイント2倍デー”だったからである。
即座におば様軍団に戻り、彼の説明ツアーに混じると、
さすが彼は自分で仕入れてきている商品だけあって、
商品知識はバッチリ! 今 店内にないものでも、
希望があれば、市場や生産者さんに問い合わせをして、
出来る限り探してくれる・・・と言う。
頼もしい限りだ!!
「S君だから、うちに気持ちよく出荷してくれる・・・という、
気難しい生産者さんもいるくらいなんですよ〜」
「自分で仕入れている、っていうこともあるかもしれないけれど、
商品への愛着、気配りは凄いですよ〜」
近くにいたスタッフからも、彼の評判をいろいろ事情聴取したJ子は、
若いのにしっかりしていて(もちろんイケメンだしぃ〜!)、
このお気に入りの店を、知らぬ間にしっかり支えてくれていた
“パク様”ことS君を すっかり気に入ってしまった。
「あのぉ〜 今のお薦めの花ってどれですかぁ〜♪」
おば様軍団に負けじと、S君にいろいろ花苗をチョイスしてもらい、
J子はその日、大変ご満悦で帰宅した。
「あ〜 これからは ころぼっくるに行く楽しみが
また二倍に増えたわ〜 ランランラ〜ン♪♪」・・・
しかーし! それからが なかなかS君と遭遇しないJ子の
苦悩の日々が続いた・・・
「くそー ポイント2倍をとるか、パク様との奇跡の再会をとるか・・・」
来店日選択も一苦労だ。
そんなある日! 店内に入ったJ子の耳に、久々にあのS君の
爽やかな声が響いた。
ワクワクしながら彼が接客している彼方を探すと・・・
「・・・オッホホホ〜、ですよねぇ〜、やっぱりお花って、
愛情をかけてあげた分だけ、ちゃあんと応えてくれるものですもんねぇ・・・
ほおんと、可愛いわぁあ〜・・・」
グワァァーーアアアン!!
それはなんと あの「ほっつけときゃ〜!」のおばハンである!
(しかも化粧濃いし!)
「・・・恐るべし、パク様のチカラ・・・」
J子と同様、このように日々、愛が満ち溢れた常連客が後を絶たない
平和なころぼっくる・・・なのであった。
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