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この本を図書館に予約申し込みをしてから半年程経ったでしょうか。この本は、市町村によっては貸し出し禁止の措置を取っているところがあると聞いていたので、札幌でもそうなのかと思っていました。
そうではなくて、評判を読んでいたので借りる人が多かった、ということだったのでしょうか。
なぜ貸し出し禁止の措置を取られたかは、ご存知の方も多いと思いますが、この本は警察の作成した供述調書を基に書かれていたからだと私は記憶しています。通常手に入れることができず、公にされることはないものを手に入れることができたのは、著者が元法務省東京少年鑑別所法務教官だったからなのだと思いますが、詳細はわかりません。
供述調書の信憑性など私はわかりませんが、私はこの本を読むことができてよかったです。著者は、供述調書と自身の取材により、この事件の背景と真実(に近いだろうもの)を浮かび上がらせてくれました。著者は、少年、その父親、放火で亡くなってしまった少年の継母と子どもたち、そのご両親、少年の実母、そのご両親、それぞれの当事者の方々に真摯に向き合っていると感じました。
また著者は、他の誰も指摘していない少年の「障害」の部分にも言及し、それにより継母のご両親から信頼を得、誰からの取材も受けつけていなかったご両親に直接お会いして話を聞くということができています。
この事件から私は、自身の親としてのあり方を深く考えさせられました。この事件から学び、教訓とすべき家庭は数多く存在すると思います。
以下に、本書から抜粋しますが、まずは【あとがき】からー
《進路や成績を巡っての親子間の軋轢はいつの時代にも、どの家庭にもある。今回の事件の場合、父親が持つ絶対的な価値基準の下で、少年には服従しか選択肢がなかった。「支配」と「愛情」をはき違えた父親の度を越した暴力が、どこにでもある軋轢を、想像を絶する悲劇へと増幅させてしまった。
われわれは結果の特異性に目を奪われがちだが、すべての過ちの始まりは父親がわが子を「所有物」だと思ったことにある。そう考えると、いまの日本で同種の問題を孕んでいる家庭は、けっして少なくないだろう。
日本は格差社会に突入し、「所得格差」が「教育格差」へ反映される傾向があるようだ。しかし最近の事件を見ると、「上流」家庭で目を覆う悲劇が起きることが多いように思う。
両親が医師、息子が東大寺学園に通うこの家族は、他人から見れば上流だったのかもしれない。しかし、支配と服従だけの親子関係など長く続くはずがない。少年の日常生活のどこかに「逃げ場」が存在していたらと、残念でならない。
民香さんの両親は、私にこう言っていた。
「孫が少年院から出てきたら、支えてやりたい。それが死んだ娘の願いだと思う」
大切なのは血がつながっているかどうかより、真の愛情があるかどうかーこれは、私が東京少年鑑別所の法務教官を務めた時、実感したことでもある。愛されている、必要とされていると思うことが、少年の更生には何より必要だ。悲しみを乗り越えて少年を愛そうとする「祖父母」の思いが、胸を打った。
あの日から早くも1年が経とうとしている。事件を他人事だと忘れることは簡単だ。だが、本書を読んでくださった方には、できれば改めて家族のあり方を考えてほしい。子どもはけっして親の所有物ではない。そのことに気付くだけで、避けられる「次の悲劇」があるかもしれない。
本書の取材・執筆に当たり、多くの方々の支えをいただいた。少年事件という特殊事情もあり、お名前を挙げることは控えるが、この場を借りてお礼を申し上げたい。
そして最後に、亡くなった民香さんと2人の子どもたちの冥福を心から祈り、筆をおきたいと思う。
2007年5月 草薙厚子 》
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私も読みました。この本を読んでよかったと私も思っています。今、子どもが簡単に親を殺してしまうという事件が相次いでいます。この少年も親の所有物として育てられ、自由がなかったのでしょう。
とても親として勉強になりました。貸し出し中止や発売中止は親として残念。
2008/11/12(水) 午後 6:30 [ met**mylov* ]