さまざまな学びのかたち〜すくーるhana便り〜

「学力がつく」ことは「人間として生きる上での自信がつくこと」 …教育・子育てについて等意見交換しましょうねー

寺脇研

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[第3章 ゆとり教育は間違っていたのかーミスター文部省が語る本音のはなし]から
【世界のなかの日本の学力】より

寺脇ー
《日本の子どもの学力は低下してはいません。しかし状況がいいわけでもない。
 つまり、100年経とうが200年経とうが同じ学力・能力が必要とされるという前提に立てば、学力が上がったとか下がったという議論もできます。しかし求められる能力は、現実には、10年どころか3年で変わるかもしれない。たとえば、20年前にコンピューターを運用する能力は求められなかった。コンピューターそのものがなかったからです。求められる学力は常に変化する。

だから、たとえば分数ができるかどうか、同じ問題の正答率を30年間比べてみてもあまり意味はない。本当に問題なのは、21世紀に、あるいは、現在から未来に向かって求められる能力が、現在の教育システムで子どもたちに根づくかどうか。そして、どうも根づいていそうにないので、カリキュラムを変えようということになったんです。》


【ゆとり教育はなぜ失敗したのか】より

宮台ー
《歴史をふりかえると、文部省の「個性化教育」は、時代に即した正しい方針だったんです。しかし国民の意識が変わらなかった。これを「国民の意識を変えられなかった」といえば文部省の責任になります。でも文部省は行政官僚制の一部署にすぎません。文部省にそこまで期待するのは本末転倒。われわれが愚かだったんです。》

寺脇ー
《だから「ゆとり教育」というのは、二段構え、三段構えの改革になりました。1977年の方針がうまく行かなかったからです。
 理由のひとつは、宮台さんがおっしゃったとおりで、77年にカリキュラムの発想を変えたことをみんなが理解してくれなかったことです。もうひとつは、構造が変わらなかったことです。つまり知識重視・系統的学習重視の時代と学校の構造が同じだった。

 考えてみれば、世の中の経験がまったくない学校の先生が、「世の中はこうなんだ」とか、経験主義で行くとか言っても説得力が全然ない。しかし、リクルートで長年働いてきた藤原和博さんみたいな人が先生になって、「この街でハンバーガー屋さんをつくるとしたら、どこがいいかわかるか」と言ったら、ものすごいリアリティがある。

 それで77年のあと、92年と2002年に学習指導要領を改定していますが、とりわけ2002年は、構造まで変えてしまうことにしたのです。
 2002年以前には、藤原さんのような外部の人が校長になるなんてありえなかった。いまだったらベネッセにいた人でも塾の先生だった人でも学校の先生になれる。校長にもなれるし、講師として来るのもOKです。また、そういう決定は親や地域住民に対して情報開示され、いわばガラス張りにした。

 だから2002年の改定はハード面の改定なんです。いくら方針を決め、教育内容というソフト面を変更しても、構造を変えないとダメだとわかった。学校の構造を変え、しかももっとオープンにしたら、住民や親も、自分たちも教育の責任者だという認識をもたざるをえなくなるだろう。それでようやく「ゆとり教育」も実績があがるのではないかと思ったんですね。》


●要するに、各学校の校長の一存で、どんなことだってできる、ということでしょう。それが、藤原和博前和田中学校長により証明された、というか、彼が先鞭をつけたということになるのでしょうか。
 せっかくこのように制度的には「開かれた」状況になってきているのだから、各地域の校長先生たちには、地域の人材を活用するシステムをどんどん作っていってほしいと私は思っています。

 地域には、「子どもたちのためならやってやろう」という気持ちを持っている方々が多く存在しているはずです。どんな仕事でも、どんなボランティア活動でも、ちゃんと話を聞いてやりとりをする機会を設けることができれば、それは貴重な「学びの場」になるはずです。そのような方々の「活用の仕方」がわからない先生のために、「インタビューゲーム」はあるのですがー。

 他にも、学校図書館を地域のお母さんたちに管理運用を任せて活性化させたり子どもたちの憩いの場にするとか、隠居しているけど元気なおじいちゃんおばあちゃんたちに校庭の芝や草木の管理をしてもらうとか、学校にもっといろいろな人が出入りするようになると、閉鎖空間に風が吹き込み、それこそ学校全体の風通しがよくなるのではないかと私は思っています。

 私だって何でもやりに行っていいんですが、いきなり「らくだ教材やれますよ、ジンベなんていうタイコがあるんですがー」等と言って尋ねていっても怪訝な顔をされるだけでしょう。そもそも先生や学校全体にそのような異質?を受け入れる空気がないとどうしようもないことですからねー。校長先生が「開かれた学校」を本気で考え、地域に伝えていってくれないことには、動きようがありません。

 藤原和博前和田中校長は、任期5年で辞め、今は大阪府教育委員会顧問となっているようです。ただ、通常地域の学校の校長は、2〜3年で異動しているようです。これだと、抜本的な改革はなかなか難しいでしょうから、まずこの点を教育委員会なり何なりが考えていかないといけないんでしょうね。 

※対談者紹介
●寺脇研:1952年生まれ。東京大学法学部卒業後、文部省(当時)に入省。広島県教育長、大臣官房審議官などを歴任し、文部省・文科省の顔として「ゆとり教育」を推進。2006年に退官し、現在は、京都造形芸術大学芸術学部教授、日本映画映像文化振興センター副理事長。映画評論家としても有名。著書に、『格差社会を生き抜く教育』(ユビキタススタジオ)『それでもゆとり教育は間違っていない』(扶桑社)『官僚批判』(講談社)など多数。

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