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今回は第八編を読み進めました。
「我が心をもって他人の身を制すべからず」がテーマです。
ここは、福澤の人間観を知る上で大事なところだということですが、私も大変興味深く彼の人間観を学ぶことができました。
この編の冒頭で、アメリカのウェイランドの「モラルサイヤンス」という書の中で、人の身心の自由を論じた部分があり、その大意を紹介していましたが、村山先生はそこが「福澤らしい文章」ということでした。以下に抜粋します。
《人の一身は、他人と相離れて一人前の全体を成し、自らその身を取扱い、自らその心を用い、自ら一人を支配して、務むべき仕事を務むる筈のものなり》
その後に続いて五点上げて説明を加えていますが、それらは《人に欠くべからざる性質にして、この性質の力を自由自在に取扱い、もって一身の独立をなすものなり》ということでした。以下に五点記しておきます。
第一、人には各々身体あり。
第二、人には各々智恵あり。
第三、人には各々情欲あり。
第四、人には各々至誠の本心あり。
第五、人には各々意思あり。
福澤はまず最初に、
“人=一身”を説いているところが、当時としては非常に斬新であり、
現代においても‘新しい’と言える思想を持っていた、
ということが、私としてもとても興味をひくところでした。
ここのところは、学んだことを言葉にして表すのはまだまだ難しいのですが、
自分自身の記録として記しておきたいと思います。
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“まず人はひとり一人別々の身体をもっている”
身体と心はつながっており、身体は人間そのものであり、自然の産物だということ
そしてそれは絶対‘不可侵’であるべきものであるということ
その根っ子には、“一身独立”の考えがある
しかし、その一方で福澤は、
“交わり”を、「世の益をなす」ものとして、欠くべからざるものとして説いた
一身独立を謳いつつ、なぜそれだけではダメなのか、
“交際”が必要か、彼は強い信念をもってそれを説いた
独立の活計(活発に生きて働く)
不覊独立
蟻の門人
人=万物の霊
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●福澤のキーワード
最後の方に、見慣れない言葉を羅列してしまいましたが、福澤を知るためのキーワードだと思うので、頭に入れておきたいと思います。
最後に突然、「万物の霊」という言葉が出てきたのが、おもしろいなぁと思ったところでもあります。この人は最終的に何が言いたいのか、ますますわからなくなってくるような言葉ですが、単純にわからないからこそ、おもしろいのでもあると私は感じます。
●身体・身と弓・身ずから(自ら)・・・
村山先生は、身体という字には、「身」と「弓」を合わせた字もあり、身体というのは自分のもの、だから不可侵なのだとも説明してくださいました。
漢字の由来とはおもしろいものです。「弓」は人間の体躯から来ているものなのだそうです。
そして、「自ら」という言葉がありますが、それは「身ずから」に通じる言葉でもあると…。う〜ん、深いなぁと思います。
これらのことを知って、自分のそれこそ‘身体に落としていく’ことが、“教養を身につける”ということなのではないか、とフト思ったりもしました。
●「自ら(みずから)」と「自ずから(おのずから)」
最近読んだ田口ランディさんの本に、「自」の字には、「自ら(みずから)」と「自ずから(おのずから)」の二つの読み方があるとあったことを思い浮かべました。
《この一つの漢字で二つの読み方をする両義性、自立性と他立性と一致した(あるいは、自律性と他律性の交差した)ところに立ち上がってくる「存在」の問題》
福澤のテーマとも合致してくるのではないかと感じました。
●これだけ徹底的な近代的見方をした人は他にいないのではー
村山先生が上記のように述べられました。そして、「男女関係においては非常にラディカルな思想の持ち主」であるとのことです。
これらのことも、非常に私の興味をひきました。なぜ福澤はこれほどまでのことを学ぶことができ、それを思想として昇華することができたのかー。
村山先生に尋ねると、福澤の母は所謂「賢母」と言える方で、その母親にとても影響を受けたのではないかということでしたし、緒方洪庵の適塾に通い、それこそ徹底的に勉強を重ねたということでした。
先生に「自伝」を読むことを勧められましたので、読んでみようと思います。
●内田樹(うちだたつる)の思想と通ずる−
私は内田さんの本を読み、とても影響を受けていますが、彼が伝えたいことも、「人は一人では生きていけない」「人は人の中でこそ人になり自分になる」ということだと、私は解釈しています。
教育人間塾に通い、福澤の考えを学んでいくにつれ、彼もそのことを強調しており、それを伝えたいのではないかと思えてきました。
当時の第一線の思想家が、現在の第一線の思想家(と勝手に私が思っているのですが)の考えと同じであるということが、私にとっては驚きです。
さらなる学びを進めていくのが、とても楽しみになってきました。
ちなみに、内田樹の最新刊は、『ひとりではいきられないのも芸のうち』です。味わい深いタイトルだと思いませんか?
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