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ストックからフローへ より
《上野:それから学ぶべきは、これまでのように住宅私有本位制資本主義を維持する方向にではなくて、ストックをフロー化する、つまり、住宅を、「所有する」ものから「使用する」ものへかえていくという方向へ舵を切るチャンスがやっときたんです。
その条件のひとつは、団塊世代が営々と築き上げてきた持ち家、超高齢化のおかげで、否応なく放出してフロー化せざるをえなくなるときがやがてくること。彼らは住宅をフロー化してケアサービスと交換することで、老後の安心と安全を手に入れることができます。つまり一生を抵当に入れて形成した資金を、一代で食いつぶしてあの世へいけばよいのよ。
ケアサービスを供給する事業主体には、第三セクターや市民セクターが育っているから、そういう公共的なセクターの介護事業体が、持ち家のある要介護者を死ぬまで安心して過ごせるようにお世話してあげれば、残った資産を事業体に遺贈してくださる方だっていらっしゃる。実際にそういう例が、すでにあります。そうすれば小規模な民間住宅を少しずつ公共財として地域にストック化していくことができる。そういう住宅をそのまま若い世代向けにシェアハウスとして提供してもいいし、地域の茶の間みたいなコミュニティセンターにしていってもよい。そうすれば、立派なハコモノなんていらない。
公共住宅だって、いまみたいに集合住宅のようなかたちでニュータウンにまとめて建てなくても、戸建ての住宅が公共住宅のストックとしてポツン、ポツンと地域のそこここにいっぱいあればいいのでは。民間住宅をこのまま公共財化して、低家賃住宅として低所得者に提供していくというやり方があります。》
《公共団体やNPOが、公共財としての賃貸住宅を、地域にストック形成していくときがきた、それも超高齢化のおかげで、と私は思っているの。後継者のいない商店街のシャッターの降りた店舗や、子どもが帰ってくる予定のない地方都市の住宅地の住宅を、どしどし放出してほしい。そして、これを支援するような制度と政策のしくみをつくってほしい。そのためには、子どもがいても、子どもには資産を遺さないことね。
ストックのフロー化については、もうひとつアイディアがあります。郊外にいっぱいつくったとても不便な公営住宅に、櫛の歯が欠けるみたいに空き室が生まれていますね。建設当時、四階建てまではエレベーターなしでつくっているから、足腰の弱った高齢者にはとても住みにくい。空き室が増えると、住宅はどんどん老朽化して荒廃が進む。そのくらいなら、そこに若年層を低家賃で入れたらいい。》
《辻元:若者の単身者や働きながら子育てをしている層にも、NPOや組合が運営するかたちで住居を提供できないかと私は考えている。公営住宅や雇用促進住宅などをリニューアルして財政にも寄与してもらうくらいの発想で活用すれば、いまの20代、30代の人たちが少しは暮らしやすい社会になるでしょう。
自分のなかの可能性を引き出せる教育システム。歳とってから年金と医療がきちんと保障される制度。そこに住宅に対しては共同経営的な発想にもとづくパブリックの手助けがあればずいぶん生きやすくなる。贅沢したいというわけではなくて、そこそこ暮らせる制度への構造改革だよ。》
●住宅に関しての上野さんの考え、私もいいと思います。そのように、地域で活用できるものを活用していくことが、今後地域を活性化し、お年寄りにとっても、子どもたちにとっても、暮らしやすい社会にしていくために欠かせないことなのではないでしょうか。
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