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寺脇ー
《産業構造の変化なんですよ。重厚長大産業の時代は終わり、これからはソフトパワーの時代です。しかしソフトパワーは、科学技術振興にせよ大学にせよ文部科学省の領域にある。したがって経済産業省がこれからの産業政策で主導権を握るためには、文科省の領域に踏み込まなくてはいけない。
そこで経産省は「文科省はこんなに頼りないんですよ」という、一種のネガティヴ・キャンペーンをはじめた。これはすでに明らかになっていることなので言いますが、経産省は東大教育学部の苅谷剛彦さんとか京大経済学部の西村和雄さんなどを集めて、研究費は潤沢に出すから学生の学力がいかに落ちているか調査してデータをつくってほしいと依頼した。
その結果を、たとえば『分数ができない大学生』という書籍のかたちで国民に提示し、もう一方では学術的な体裁のレポートをつくって、政治家や財界人に見せてまわったわけです。その影響力がすごい。大学のなかには、これからは文科省ではなくて経済産業省に頼る時代だ、と公言する人も出てきています。
そのあいだ文科省は何をやっていたかというとーマヌケと言われればそれまでですがー財界のトップや政治家ではなく、親や地域の納税者たちの理解を得るために、「ゆとり教育で状況は悪くなりません。むしろこうよくなるんです」と日本中を行脚して膝づめで説明してまわっていたんです。
これが仇になりました。財界人や政治家はやはり発言力がありますから、「経産省はこう言っているぞ、本当はどうなんだ」と文科省にクレームが来る。まさか無視するわけにもいきませんので、「ゆとり教育で学力もつくんです」と言って対応したわけですが、なかなかわかってもらうのはむずかしい。》
神保ー
《PR合戦で経産省にしてやられたわけですね。》
寺脇ー
《東京のまんなかにいると「勝負あり」に見えますよね。文科省敗北、経済産業省大勝利。しかし現場に行くと全然そうじゃないですよ。腐っても文部科学省でして、地方の小学校の先生たちは、総合的学習を導入して子どもたちのモチベーションが高まった、と口々に言ってくれます。
いまは大きく三分されている状態なんです。ひとつは、「ゆとり教育」路線をきちんとやっている学校。もうひとつは、桐蔭学園のように、学力中心でひたすら受験勉強をしている学校。最後のひとつは、どうすればいいのか迷っている学校です。どっちつかずになるので、これが一番よくないかもしれない。この状況をどうやって落ち着かせればいいのかというと、やはり実績で示すしかないのではないでしょうか。
全国学力テストや統計調査をやってもいいんです。総合学習をきちんとやっている子どもとそうじゃない子どもでは、算数が「好き」か「嫌い」かでどのくらい差があるか、比較してみればいい。これはひとつの有効な考えだと思います。》
●お役人をやめたからこそ言えるような、ものすごい裏話?です…。そんなことになっていたなんて、一般庶民はつゆ知らず、ですね。時代の波に翻弄された「ゆとり教育」だったわけですー。
このことに限らず、世間一般に広がる「脅し」的なマスメディアの戦略に乗らず、自分の頭で考えることが大事ですね。もっとも、子どもが一番染まりやすく、それを防ぐにはどうしたらいいか四苦八苦中なのですがー。
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