さまざまな学びのかたち〜すくーるhana便り〜

「学力がつく」ことは「人間として生きる上での自信がつくこと」 …教育・子育てについて等意見交換しましょうねー

中島岳志

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 カフェハチャムは、発寒にできた小さな喫茶店です。ここは、商店街と地域の活性化を願う人たちが作り上げたお店です。ここの立ち上げには、北大公共政策大学院准教授の中島岳志さんが深く関わっていることに、私はとても興味を持ちました。

 中島さんは、『中村屋のボース』『インドの時代』『ヒンドゥー・ナショナリズム』の著作に代表される南アジア地域研究の専門家ですが、『The Big Issue』にコラムを寄せたり、格差社会に関するシンポジウムで発言したり、さらには最近『週間金曜日』の編集委員にもなったとのことで、多方面で活躍し注目されている新進気鋭の学者と言えるでしょう。

 その彼が、なぜ発寒という地域の商店街の活性化に力を入れているのか、そしてなぜ、その商店街のお店で「秋葉原通り魔事件」をテーマにした講演をするのか、私はとても興味を持ったので、参加しに行きました。

●発寒地域のことー

 ここには近年超大型のショッピングセンターができたことにより、ただでさえ空きが目立つようになってきた商店街に、さらに追い打ちをかけることになりました。
 私の知っている限りでも、老舗の和菓子屋さんの売り上げが落ちたり、知り合いの喫茶店が閉店になったりしています。なにせ「超大型」ですから、その影響範囲は広大です。

●カフェハチャムー

 この日は30人程集い、小さな店内はぎゅうぎゅう詰めでした。中島さんはカウンター内で話をしましたが、「洗い場の蛇口の前で話すのは初めて」と言っていたほどです。
 
 私にしてみれば、中島さんの話をこのような身近なところで聞くことができるなんてなかなかありませんから、とても貴重な体験でしたがー。

 このお店は、地下鉄東西線発寒南駅から歩いて5分程、JR発寒中央駅からは歩いて10分程のところにあり、駐車場はありません。

●中島さんのレジメー

 今回中島さんはレジメを用意されていました。下記の内容ですが、6ページに渡ります。

1)2008年6月8日、事件当日の犯人による携帯サイトへの書き込み
2)加藤智大容疑者の歩み
3)承認格差という問題
4)おわりに ・疎外、承認、存在論的不安→人間の関係性
       ・福田恆存の言葉(『人間・この劇的なるもの』)
       ・新自由主義の問題
       ・なぜ「カフェ・ハチャム」なのか

ーレジメをもとに中島さんは、加藤智大容疑者が事件を起こすに至った背景をとても丹念に追っていきました。そしてそれにより私は、今まで知らなかった、そして知ろうとしなかった、加藤容疑者の心のひだ、闇、苦しみ、叫びが聞こえてくるような思いを持ちました。

●あるミュージシャンの詞

 今回印象に残ったのは、加藤容疑者が聞いていたであろうという、あるミュージシャンのCDを中島さんが持参して聞かせてくれたことです。

 彼が犯行3日前に、「なんでつなぎがないんだ」と大声で叫びながら他の人の作業着をめちゃくちゃにして無断退社した後に書き込みしていた携帯サイトに、このミュージシャンの歌詞の言葉がほぼそのまま載せてあったというのです。

 このことに気づいた人(学者)は、他にいないのではないでしょうか。中島さんは日頃から自分でもこのミュージシャンのCDを聞いていたので、すぐにピンときた、と言います。

「美しくなんかなくて 優しくもできなくて それでも呼吸が続くことは許されるだろうか」
「その場しのぎで笑って 鏡の前で泣いて 当たり前だろ 隠してるから気づかれないんだよ」

 そのミュージシャンの歌を私は初めて聞きましたが、なかなか胸に迫ってくるものがありましたー。

●「殺された人っていいな」・・・

 秋葉原の事件はさまざまな波紋を呼び起こしましたが、その中でも衝撃的だったのが、中高生からの上記の言葉だったそうです。

 殺された人たちは、テレビのワイドショーなどでそのキャラクターなどを顔写真入りで紹介されます。それに対して、いじめられている子どもたち、社会で承認されていないという鬱屈感を持っている人たちなどが「うらやましい」というのはなぜでしょう。

 とにかく世間に自分のことをまがりなりにも知ってもらえる、そのことが「うらやましい」のです。「殺された」りしたら、テレビに出て自分のことを知ってもらえる、それもほとんど「いい子だった」「いい人だった」というようなかたちで…。
 そのようなことにしか「希望」を持てない子どもたちが増えているのが、今の社会の現実だということをあらためて知り、私も背中が凍る思いがしました。

●「地域のつながり」と秋葉原での事件

 中島さんは、地域での「つながり」が欠けてしまってきている今こそ、このような小さなお店、いろんな人が気軽に集えるたまり場のようなところの大事さを伝えられていました。

 このような「まともな関係性を持てる場」が各地にあれば、そして加藤容疑者の住む地域にもあれば、こんな事件を起こさずに済んだのかもしれません。

 中島さんがなぜカフェハチャムなどの地域の小さなたまり場のようなお店に力を入れているのか、なぜ秋葉原の事件をこれほどまでに事細かに話してくださったのか、私はよくわかりました。

 派遣で働いている人たちは、各地を転々とさせられます。会社の寮などに住み、収入が少ないことからろくに飲みにも出歩けません。そのような生活は、人とのつながり、地域とのつながりを持てません。そのような仕組になっているとしか言いようがありません。

 そういった意味でも、20年程前私が自動車工(期間契約社員)として働いていた時代とは違ってしまっているのだと思います。私は東京へ出て働きながら、さまざまなつながりを求めて出歩き、そしてそれは叶っていったのですから。

●おわりにー

 中島さんの話は、その広い知識と深い見識からか、とても引き込まれ、また納得させられました。
 ここに紹介しきれない話がまだまだいっぱいあります。小さなお店で間近で彼のお話を聞くことができて本当によかった、貴重なひとときでした。

 ただ、時間の関係で私は、お話が終わってすぐに帰らなければいけなかったのが残念でした。直接中島さんと話がしたかったですし、たまたまその場で約10年ぶりに会うことができた知人もいたので尚更です。私にとって、まさにつながり、出会いの場となりました。
 また、カフェハチャムに行きたいと思いますし、私の暮らす地域にもこのような場ができないかなとも思いました。

 北海道工業大学の環境デザイン学部のゼミ室では、地域の方々がどなたでも参加OKの「ホットカフェ」というのを月2回程開いており、私も子ども連れでよく参加していました。今はなかなか都合が合わないので参加できませんが、今でもやっているでしょうかー。
 あの試みは今回のお話に通じるものだと思いますが、街中から離れた大学まで参加しに行ける人は限られています。やはり、「商店街」かそれに類する場所でするのがいいのでしょうね。

 図書館で手にしたときには、340ページという分厚さにちょっと腰が引けたのですが、いざ読み始めてみると、私がこれまでほとんど知らなかった「ボース」という人に対する興味がどんどん掻き立てられ、ここ数年読んだ本の中でも、私の中ではトップクラスに位置づけられる本となってしまいました。

●「中村屋のボース」というフレーズは、これまでにも耳にしたことがあり、「中村屋のカリー」には、どうやらインド人のボースという人と深いつながりがあるようだ…何かおもしろそうだなぁ、とは思っていました。

 でも、ボースという人が革命家で、イギリスのインド支配に対して抵抗した結果日本に来て日本でも追われる身になり、「日本にパン屋の草分け」である「新宿中村屋」に匿われ、そこの娘さんと結婚して日本に帰化し、その上で祖国の独立のために行動し、結果的に第2次大戦の際に日本軍に加担し・・・という人生は、私の想像を遥かに超えた、まさに歴史絵巻を繙くような知的関心を呼び起こされるものでした。

 さらに、ボースの残した「遺産」として「中村屋のカリー」があり、それが生みだされた背景には、当時イギリスから日本に入ってきていた「カレー」に対して、「自分の祖国のものはこんな味ではない」と、イギリス支配に抗する、あるいは、本当のインドを知ってもらうという意味において心血を注いで作られたものであるというのは、ますますこの歴史上の史実に対する興味を掻き立てられるものでした。

●そんなボースですが、祖国インドの独立を第一として行動した結果、心の内では日本の侵略戦争に加担することはしたくないと思いつつ、目的を達するためにその気持ちと相反する行動に出てしまったので、彼の生涯や業績は死後ほとんど顧みられることがなかったということです。

 また、彼は独立運動を通じて、日本の国家主義者たちと親しくなりました。それには複雑な経緯があるのですが、当時の社会情勢としては自然な流れだったと言えなくもないかもしれません。

 そして、国家主義者と言われる人たちのことを私は本書を通じて詳しく知ることになりましたが、簡単に言えば「とてもいいところのある人たち」でした。私にとって、彼らのことを知ることも、とても新鮮な思いがしました。これまでそのような人たちのことを知ることは意識的に避けてきた面がありますから。

 戦争への加担、国家主義者たちのと親密な付き合い…それらのことを考えると、私のような者がボースのことをほとんど知らなかったのも無理はない、という気もします。歴史の表舞台にはこれまで表れてこなかったものですので。

●中島岳志さんは、ボースのご遺族の方から貴重な資料を預かり、ありとあらゆる彼に対する文献を調べあげただけでなく、彼の辿った軌跡を日本のみならずインドでも丹念に訪ね歩いて、29歳という若さでこの本を著しました。

 彼は若くして生涯を左右するようなテーマに出会ってしまったとしか言いようがないのでしょう。この本の中からも、彼の「情熱」が伝わってきます。もっとも、彼の参加したシンポジウムでも、「熱いもの」を感じましたから、もともとそういう人?なのかもしれませんがー。

 自分の知らないこと、ことに、自分の思想と一見相反するかのように感じられることを深く知ることが、こんなにもおもしろいことだということがわかりました。

 「恋と革命の味」と言われる「中村屋のインドカリー」、今度東京を訪れた際には、ぜひ訪れて口にしたいと強く思いましたー。

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