さまざまな学びのかたち〜すくーるhana便り〜

「学力がつく」ことは「人間として生きる上での自信がつくこと」 …教育・子育てについて等意見交換しましょうねー

宮台真司

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【こんな改革ならやめなさい】より

神保ー
《藤田先生の『誰のための「教育再生」か』では、最後に執筆者一同で提言をされていますね。読みあげてみますと、ただちに中止すべき施策として、(1)全国一斉学力テスト、(2)教員免許更新制、(3)教師の階層化、(4)寛容なき厳罰主義、(5)国家による教育統制の強化。見直すべき法律や制度として、(1)06年教育基本法、(2)教育の市場化・学校選択制。何だかここ最近の教育改革を全否定しているような印象ですが(笑)。》

藤田ー
《まず全国一斉学力テストですが、約100億ものお金がかかっています。それでいて、学校間・地域間の得点競争を煽ったり、カリキュラムから外れてテスト対策の学習をする学校が出たりといった弊害ばかりで、学校や子どもにとってメリットは何もない。学習状況を把握して教育の改善に活かすというならサンプル調査で充分です。そのほうが遥かにいいデータがとれる。そのぶんお金を必要な教職員の補充などにまわすほうがよほど教育はよくなる。よけいな改革はやるなということです。

 小中学校の教育は、基本的に、子どもたちが前向きに、元気で大らかに勉強していれば、それで充分なはずです。方針やスタイルがころころ変わると、教育の一貫性やリズムが乱れ、大らかさが失われ、伸びる力や多様な可能性を抑え歪めかねないということを自覚すべきです。》

藤田ー
《確かに保護者の方から見れば、いろんな情報が押し寄せてくるのですから、不安をいだくのも当然かもしれません。だけど小中学校の段階で、いま騒ぎ立てられ煽られているようなものについて不安を持つ必要はない。くりかえしますが、自分の子どもが元気に学校に行っていて、前向きに勉強や部活動などに取り組んでいて、成績もそこそこであればーもちろん成績がよければそれに越したことはないですがー不安を持つ必要はありません。》

宮台ー
《藤田先生がおっしゃたとおり、「子どもの姿を、親が自分の目でちゃんと見て、メディアがどうのこうのじゃなく、自分としての自分が問題を感じるかどうか」を基本にしたほうがいい。不安を煽ることで儲かる性質を持つメディアが発信する情報に煽られて、自分が直面してもいない問題について不安を抱くのは、不健全だし、賢明じゃありません。

 僕はずいぶん前から育児マニュアル批判をやってきました。地域の相互扶助が廃れ、続いて親族の相互扶助が廃れたので、アノミーに陥ったお母さん方が育児雑誌を頼りますが、マニュアル通りの子は皆無なので「なぜうちの子はこうなんだろう」と不安になり、不安を解消するべくますますマニュアルに依存する、という雪だるま式の悪循環があります。

 他人の声やマスコミの声を自分の声だと錯覚するのはやめましょう。教育は誰もが経験者です。わが身をふりかえって自分の声を聞いてほしい。大らかに元気に育ってほしい。お友達を助け助けられる存在になってほしい。うまく生きる大人よりもまともな大人になってほしい。学校はそれを手助けしてほしいー多くの人がそう願うんじゃないでしょうか。

 親は自分のことを思いだしてほしい。「大らかに元気に学校に行く」以上のことを要求されましたか。多くの方は要求されていないはずです。要求されなかったせいで自分が変に育ちましたか。一部には要求された人もいたかもしれませんが、自分がいまあることにそれはどんな意味を持ちましたか。

 自分が要求されなかったことや、自分にとって意味がなかったことを、なぜ子どもに要求するのか。確かに社会は変化しています。でも親御さんが子どもだったころと子どもの感じかたは変わっていない。であれば、教育には変わってはいけない部分はあるはずです。「自分の育てかたならぬ、自分の育ちかたが間違っていたのかどうか」を問い直すべきです。》


●この文章は、今の私にとっても響いてきました。「教育」というより、「子育て」の原点ですね。
「子どもたちが前向きに、元気に大らかにー」…たしかにそうです。
 そして、もしも子どもが「後ろ向きに、元気もなく大らかさもなくー」ということになっていったら、「自分の育ちかた」を振り返ることが第一ということにも合点がいきます。

 【教育の究極の目標は何か】より

宮台ー
《では、藤原校長は何を目標にしているのか。彼はあえて言いませんが、彼がイギリスとフランスで二年ずつ家族と生活していたことから考えると、やはり「包摂」でしょうね。人に即していえば、異質なものにビクビクして、神経質になったり排除的になったりせず、どっしり構えて、いろんなことを受け入れて前に進める「包摂的な人間」を涵養すること。

 まあ、立派な人間だと思えば右翼だろうが左翼だろうが手厚く支援した玄洋社の頭山満みたいなやつといえばいいでしょうか(笑)。社会に即していえば、その社会で育ちあがるだけで自動的に「包摂的な人間」が量産されるような、そうした「包摂的な社会」を維持することが目標なのだと思います。

 僕も藤原さんの感受性を共有します。「世の中で幸いだと思われているもの」を得られるか得られないかで一喜一憂する人間ーリースマンのいう「外部志向型」ーは不幸ですよ。藤田先生のまさにおっしゃるように「PISAやTIMSSの結果なんかに一喜一憂しない国民をつくること」こそが、まさに教育の目標となるべきなんです(笑)。》


●「包摂」という言葉は、私にとって耳慣れない言葉ですが、その意味を知ると、とても魅力的な言葉だと感じました。
「包摂的な人間」…自分自身の進む方向にあるのはこのような人間ですし、これが「教育の究極の目標」だとすると、教育というのはなんて奥深いものか、と思います。
 そしてやっぱり、教育というのは「我が身を振り返ること」から逃れることはできないものだとも感じますー。

【日本人が自滅的な教育改革を行ってしまう理由】より

宮台ー
《戦後の日本も、仮検定教科書の段階では「国語」はなく、「言語」と「文学」にわかれていて、「言語」はまさにリテラシー教育でした。52年のサンフランシスコ平和条約発効後、「言語」が廃止され、「文学」から「国語」と名前を変えた鑑賞教育が残ります。おかげで、わわわれは「文脈を参照して内容を割り引く」作法を教育されなくなりました。

 たとえば「批判」概念は、日本では「攻撃」と同義で扱われがちで、なかなか人を批判しにくい。しかし本来は「文脈を参照して中身を割り引く」作法。別の言い方をすれば「前提を遡ることで対象をずらす」作法です。それを「攻撃」だと受け取るのは、文脈を参照する思考、前提を遡る思考そのものが、自明性を壊す作法として嫌悪されているからです。》

《同じ時期ヨーロッパでは、北イタリアのコミュニティハウスー小さな公民館や集会所ですねーからスローフード運動が始まりました。確かにスーパーの食材は安い。でもスーパーで買えば地元農家が寂れ、地域農業、地域文化、人間関係、街並みなど「コモンズ」に影響が及ぶ。ならば少し高くても「コモンズ」に貢献しようというものです。》

神保ー
《結果的に高くつく場合があるわけですね。》

宮台ー
《そうです。藤原和博さんとの共著『人生の教科書[よのなかのルール]』(ちくま文庫)に示されているように、こうした因果性は教育の場でこそ容易に教えられるものです。学校教育こそが思考訓練の場になるはずなんです。ところが戦後日本は、正確にいえばサンフランシスコ講和条約が発効してからは、冷戦激化を背景にして、こうした思考訓練を意図的に放棄したのですね。》

神保ー
《宮台さんがおっしゃったように、日本が平和主義とアメリカの核の傘、あるいは、平和憲法と日米安保条約といった根本的矛盾をかかえていることを考えれば、リテラシー教育や批判的思考の訓練を意図的にさせなかったところもありそうですね。》


●やっぱりなぁ。「自分の頭で考えることをさせようとしない教育」がお上の意図するところであるとは薄々感づいていたけれどー。国民ひとり一人が自ら主体的に考えることをしてしまったら、大変なことになりますからね。既得権益を手放そうとしない方々にとっては特に。

 でもそれだと、「国力」は落ちてきて当たり前。今起こっている社会のさまざまな問題の根本にあるのは、広い意味での「お上(為政者)の意図した教育」にあるのだと私は思っていますがー。
 

【教育と民主主義の矛盾】より

宮台ー
《僕にも「教育民主主義」に関する疑念があります。教育は民主的に運営すればうまくいくとは必ずしもいえません。教育を自由化・市場化すべしという議論があります。市場に出ている商品の中で何を選ぶかというのと、選挙の立候補者のなかで誰に投票するかというのは、似ています。共通して「衆愚化」が起こりやすいんですね。

 民主化とは民の声に従うことだから、民が好きなものを選ぶ市場化はいいことだという考えがあります。実はこれがまずい。教育とはもともと奇妙な営みです。社会学では父性的温情主義(パターナリズム)といいますが、たかだか先に生まれたにすぎない年長世代が、何がよきことかを決定して子どもたちに教えるわけですからね。

 でも、何が本当によきことかなんて、先に生まれたから程度のことでわかるはずもない。僕も含めて誰もが限定されたスパンとスコープに閉じ込められているわけです。人生は短く、視野は限られている。社会を成り立たせている基盤が何なのか、簡単にはわからない。なのに、社会によかれと、社会全体を変えるような重大な決定をしてしまう。

 近代社会は、流動的であるだけでなく再帰的ですから、環境がどんどん変化するにもかかわらずプログラムを変えないことが、それ自体重大な決定になります。法社会学では「法を変えないこと自体も持続的法体験のひとつだ」と言います。だから決定は回避できません。だからわれわれには、決定に関わる勘違いによって社会を空洞化させる危険といつも表裏一体です。

 教育は必然的にパターリズムで、複雑で流動的な社会でのパターリズムは必然的に危険です。だから教育は必然的に危険です。こうした教育の危険を「教育民主主義」によって回避するのは土台無理です。エリート主義的に響くでしょうが、藤田先生のおっしゃるように教育や社会に関する専門知の、全体的集約化が必要です。

 ラディカル・デモクラシーを唱える政治哲学者のシャンタル・ムフが、民主主義の最大の誤用を「合意主義」だとします。「合意主義」では社会がダメな状態のまま止まってしまう。万人の異議申し立てに開かれた「闘義主義」が正しいのだとします。「討議」ではなく「闘義」という字をあてます。教育プログラムを「合意主義」から切り離すべきです。》


●私は宮台さんのここのところの考えに、とても納得するものがあるのですが、みなさんはいかがでしょうかー。

「教育とはもともと奇妙な営みです」
「何が本当によきことかなんて、先に生まれたから程度のことでわかるはずもない」
「環境がどんどん変化するにもかかわらずプログラムを変えないことが、それ自体重大な決定になります」
ーこれらのことを考えると、安易に「改革」に手をつけることなどできないはずですが。

 「教育」の難しさ、奥の深さを考えさせてくれると同時に、だからこそ「おもしろい」のだと私は感じます。
 「たかだか先に生まれたにすぎない」、私もこの言葉を常に頭の隅においておきたいと改めて思いました。

宮台ー
《その意味で「ゆとり」について日本人に錯覚があったのかもしれません。さきほど触れた杉並区立和田中学校では、ドリル学習を重視し、時間をたくさん使います。同じ時間を使うとして、「てんこ盛りの内容をスピーディにやる方針」から「厳選した内容を反復練習して完全に身につけさせる方針」へのシフトこそが「ゆとり」と呼ばれるべきです。

 これは基礎学力とは何かにも関わります。「てんこ盛りの内容をスピーディにこなす方針」のもとでは、基礎学力に微積分が含まれるでしょう。「厳選した内容を反復練習して完全に身につけさせる方針」であれば、基礎学力とは分数や四則演算を大人になっても忘れないことになります。でも微積分は普通の大人は使わないけど、分数計算は使えます。

 むろん子どもによってはどんどん先へ進む能力があるから、そういう子は反復練習の内容に高度なものを入れていけばいい。そうでない人は、まず基礎学力に集中し、そのほかの時間は、「よき市民」としてー「よき労働者」「よき消費者」としてー社会を生きるために必要な実践的能力をつけるために使うほうがいい。それが総合学習だったはずです。

 ところが、実際の「ゆとり教育」はそうはなりませんでした。最低限教えるべき内容が減ったけれど、反復練習の時間を増やすかわりに、授業の時間も減らしてしまった。「厳選した内容を反復練習して完全に見につけさせる方針」からほど遠いものになってしまったわけですね。どうしてこんなデタラメになったんでしょうね。》


●宮台さんのゼミには、らくだを開発した平井雷太さんの息子さん有太さんが出入りしていたことがあり、宮台さんは有太さんの多彩な才能を買っていたようです。
 彼は平井さんの著書『セルフラーニング どの子にも学力がつく』が[新版]になった際に、推薦文を本の帯に書いていました。下記に記します。

《あらゆる状況で自己推進する力、他者と入替不能な自己を養う「新教育」。
 その画期的メソッドが、すくーるらくだ式「セルフラーニング」だ。 

「自発性」と「内発性」は違う。「自発性」は人為的環境で生じる。
 限定された課題がすでに与えられ、評価してくれる人がおり、
 同じ競争ゲームの参加者がいるような疑似環境だ。
「内発性」はこれと違う。
 どんな環境にあっても自分に必要な課題を発見して前に進む力だ。
「自発性」がさして役に立たないのは、学校から社会に出た昨今の若者を見れば瞭然だ。
 自発性を育てる「旧教育」に対し、内発性を育てる「新教育」。
 限定された疑似環境でのみ課題をこなす官僚エリートが、
 疑似環境の変動を嫌ってあらゆる場面で保身策をめぐらす昨今だ。
「旧教育」と「新教育」、どちらが公共的課題だろう。
「セルフラーニング」に内蔵された奥深い意味を理解できるのではなかろうか。》

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