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吉田一郎『国マニア』(ちくま文庫、2010)

普段、岩波文庫や講談社学術文庫など割と固めの本を読んでいる身にとっては、このような軽めの本は珍しい。
なお同じ出版社の筑摩書房でも、ちくま学芸文庫なら割合読んではいるのだが。
たまたま古本屋で見かけて、その頃難しい本に苦戦していたために、軽めのものを買ってみたわけだ。
300円前後と安く、まあこのような冒険もわるくないかな、という気持ちで。
表紙には、たくさんの国旗が印刷されていて、そういえば小学生の頃など、世界の国の旗を見ては喜んでいたなあと思い出した事も、購入の淡い動機にはなった。

本書は、「世界の珍国、奇妙な地域」を3、4頁ほどの分量で、時にウィットな批判も交えて解説するというもの。
普通の日本人には、全くなじみの薄い国・地域ばかりである。
今「地域」といったが、これは日本国にとっての地域であって、他国から独立国としての承認がある所も多い。
無論、そのような「地域」が世界にある事は知っていたのだが、これほどまでに多くあるとは知らなかった。

本書は、題名からして、内容が薄っぺらいようにも思える(私だけか?)。
実際、言葉尻はとても学術書などといえるようなものではない。
しかし、内容はよく調べられていて、世界史、現代世界史、経済史など、ある程度の広範な知識背景無しでは、ここまで記述しえなかっただろうと思うのである。

本書では、イギリスの植民地関連の地域・国が多く取り上げられている。
恐らくそれは、筆者自体、返還前後の香港に渡航・在住経験があるためであり、またそれはこのような著書を生み出す契機にもなっているはずである。
本書を読み終えてまず感じたのは、イギリスが、過去にいかに多くの地域に支配を及ぼしたか、そして現在においてもなお、世界中にいかに大きな影響力があるかという事である。
同時に感じたのは、イギリスが如何に自己の都合のいいように、世界を、文字通り搾取してきたのかという事である。
ところで私は、理想を持つ事を大事にしているが、同時に現実主義者の一面もある。
弱いものいじめは好きではないし、また自分自身、弱いものから何かを奪おうなどとは思った事もない。
しかし、現実は、弱いものはいじめられるのであって、それらをすべて根絶できるとも思わないし、しようなどとも思わない。
19世紀の列強による世界の侵食は、致し方ない面もあるのでないかと思ってもいた。
そのように思っていながら、本書を通じて、私は、なお英国が行ってきた搾取の度合いの大きさを感じずにはいられない。
これに関連して思い出すのが、宇沢弘文の『社会的共通資本』(岩波新書)という本であり、確かこんなくだりがあったように記憶している。
筆者が、イギリスの大学に留学中、その大学の講師にならないかという話があったが、筆者は断った。
なぜなら、その大学の運営資金は、植民地時代のいわば搾取が元になっており、現在でも利息が当該旧植民地からあがってくるからというものだった。
その頃の私は、なにをそんなに気にする事があるのかと思ったものだが、今ならなんとなく宇沢の気持ちもわかる気がする。

本書の中で、一番印象に残った地域は、英国領「ピケトニアン諸島」である。
南太平洋に浮かぶ、まさに絶海の孤島の住人の祖先は、もとは、18世紀後半、イギリス軍の指揮から反抗的に離脱した十数人の水兵と、タヒチ島の女性達だという。
つまり、落人の島なのである。
たしか、『今昔物語集』に同じような内容の説話が載っていたと思うのだが、これは現実の話なのである。

書名や出版社に関わらず、慣れていないジャンルの本にも挑戦する大切さを知った事だった(もちろん今までもそうしてはきたのだが、思い直した次第)。
是非一読をお勧めしたい。

最後まで読んで頂きありがとうございます。

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