| 違う携帯を契約し、帰る道で大型の本屋へ吸い込まれる様に入っていった。 |
| いつもの、暇つぶしだ。 |
| 大抵、何の目的もなく入り、いつの間にか何冊かを手にしている。 |
| 私には関係のない家庭菜園やガーデニングの、 |
| 主婦が大半を占めているコーナーを通って思い出した。 |
| カズマの言葉を。 |
| 花の百科事典の様な、分厚いものを手に取り |
| バランスをとりながら、目次を調べて【月下美人】を探す。 |
| 白くて美しい花の写真とともに説明文や育て方が載っている。 |
| カズマの言った通り、かなりの芳香がするらしい。 |
| 花言葉を何度も読み返し、立ち読みをしたまま微笑んだ。 |
| まるで私ね。魔が差した、昨日の私。 |
| カズマという月が照らし、一夜限りの白い花弁を気まぐれに開いた花。 |
| カズマの【不吉】は当たってしまった。 |
| 花言葉を口の中で呟き、本を閉じて元の場所に戻した。 |
| 昨日ずっと居座り続けた、もう一人の私は、もうどこにもいない。 |
| 無邪気な笑顔、正直な振る舞い、月光の下で少し大人びて見えた顔。 |
| カズマの全てが愛しく思え、携帯を解約してしまった自分を 今更激しく責める。 |
| 家に帰り、カズマの寝たベッドで横になり、温もりを探したが、 |
| 冷たくて白いシーツには、情事の後の沁みと何本かの毛しか見つけられなかった。 |
| 夢の跡は、私に一層孤独を思い知らせた。 |
次回作は 『きらきら堕ちる』 近日連載スタート!!(予定)
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