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今回は、投稿歌数の関係上、生沢康晴一人の選となりました。
ご了承下さい。
=生沢康晴選=
1位「覇」
③猫背なる茂吉の写真の陰影に鰻のぬめりのごとき陽の射す 水野薫 6点
★茂吉の鰻好きは有名で、歌も残っているので鰻が導かれたのは直ぐに想像できる。
私は、白黒写真自体の陰影では無く、飾られた白黒写真に陽が射して黒い部分にあの独特な鈍い金属色の輝きを見たのではないかと思う。
確かにそれは、鰻のぬめりのように感じられる。
2位「王」
④明日はもう会えぬ事すらあり得ると腹立つ思いグッと飲み込む 未花 4点
★現在の日本の状況、否、世界の状況を考えると、いつ何時何があるか分からないと思うので、決して大げさとは思わない。
「明日はと言いさしのまま出て行きて帰らぬ人となりて帰り来」と言う歌も思い出させる。人間の一生とはいつ何処で途切れるか判らない。良く解る心境だと思う。
3位「樹」
②伸びろよと水やりしていたアスパラに背丈を越され少し憎らし 田尻まぐろ 4点
★とてもストレートで良いと思う。「伸びろよ」と鍵カッコで会話にしてしまうともっと良いと思う。「水やりしていた」は字余りの上稚拙な感じがするので、「水やりをする」か「水やりをした」として音数を整えると良いと思う。
以上の結果となりました。
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子サボテン歌会選者選
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選者選結果発表
=佐田 毅選=
1位「覇」
③ぎんなんとしめじを入れて炊き込みぬ酷暑の夕餉に秋のさきぶれ 白侘助2点
★炊き込みご飯は、何でもおいしい。ここでは、ぎんなんとシメジの炊き込み、実際に食べている錯覚を覚える。おいしそうだね。この歌の結句は説明的だが、炊き込みの味によってゆるされるだろう。 2位「王」
⑦コスモスの花園荒らした暴風雨 「野分」と呼びし祖母の懐かし 愛3点
★コスモスの花園を荒らした暴風雨、しかし、コスモスは強い花ということができる。昔の人はそういったさまを「野分」と風流な捉え方をしているのが詩的である。
3位「樹」
④空高くアクロバットの航空ショー なかには還らぬパイロットのあり 百鬼1点
★アクロバットの航空ショーなんてナンセンスと思うがどうだろうか。還らぬパイロットも出て来るのも当たり前である。どうもこういう歌は苦手だ。
=高田 好選=
1位「覇」
⑩木訥の夢追い人を自称して亦も見逃すシャッター・チャンス 湖青3点
★被写体を前にして夢想しているうちに、シャッター・チャンスを逃してしまったと、言うのであるが、この被写体は読み手にいろいろと想像をさせてくれる。例えば被写体を社会動向の、ひとつにカメラを向けたとしょう。木訥の夢追い人ゆえに、見逃して終う人生のチャンスもあるのではないだろうか。シャッターの被写体を読者が変えることによって、一首がもしかしたら、作者の意図としていない読みがなされるかも知れないが、それは其れとして、良い作品なのである。
2位「王」 ①着信灯君の血潮の色に似てトクトク息付く吾が携帯 未花1点
★携帯電話が携電にならなかったのですよね 私としては少し残念なのです。一時 ケイタイとカタカナ書きにするようにと言われていた時もあったのだが 徹底されなかったようです。それはさておき作者の心理を、胸の高鳴りを、表現する方法として下の句の扱いはなかなかに上手で若々しく 好感が持てます。トクトク息付くは上の句にも下の句にも係っている。
3位「樹」 ⑤宇宙には不要な放射能廃棄物 生んで生みだす人間怖し 水野薫3点
社会詠はややもすると報道関係の記事のようになってしまうのですが、この作品は、自分の立ち位置を確りと決めた結果が生み出した感慨であると思う。作者も人間であり自分を含めた人間が怖いと言っている。これからは、余談ですがニューヨークのブロンクス動物園に鉄格子をはめこんだ檻があり「鏡の間」と言われている。人間の上半身が映るのである。そこには世界で最も危険な動物 (THE MOST DANGEROUS ANIMAL IN THE WORLD )と書いてあるそうです。
先生方遅ればせながら有難う御座いました。
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=佐田 毅選=
1位「覇」
⑤晴れあがる日本列島 赤 黄 赤 致死量のごと朝の予報図 水野薫2点 ★天気予報士が説明しているとき、上記のような図が出てくるが、我々は何となくそれを見ている。大震災以降の予報の背景には不気味さがつきまとう。色を致死量と見てしまうのは、人間の内面にある恐怖の象徴にほかならない。
2位「王」
①羽化したて濡れてるセミはエメラルド早く飛び立てハトが見てるぞ 田尻まぐろ4点
★ハトの餌食になる羽化したセミ。弱肉強食の世界に身をおくセミに思いを馳せている作者の内面が感じられる。エメラルド色が、生存の危うさを象徴しているようだ。
3位「樹」
⑪カラカラと風に吹かれる足元の蝉の骸とベランダに立つ 日比野蛇足3点
★たかが蝉の骸とも言えそうだが、その生きざまは虫と言えど無視できない。その蝉の命の形跡が作者の足元にある。作者はベランダに立ちながら足元の蝉の骸にわが身の生のプロセスを重ねているような気がする。
次点
⑦円高の続く列島のあちこちに生かさむための炊き出し増えん 百鬼1点 ★社会詠は難しい。円高によって得する場合もあるが、格差社会を助長させてホームレスを増やすのも確かである。その辺りに目を向ける必要がある。
=水谷和枝選=
1位「覇」
⑧焼くならば焦がしてやろう俺の背だ 上げるジャッキに刺さる太陽 YOU4点
★焼くならば焦がしてやろう。刺さる太陽とも一寸過激に表現している。 手動のジャッキで上る台の上に乗っているのだろうか?今年の炎暑に負けない! エネルギッシュで若々しい歌。 2位「王」 ①羽化したて濡れてるセミはエメラルド早く飛び立てハトが見てるぞ 田尻まぐろ4点
★永い土中の生活から始めて地上に出て羽化したばかりの羽がエメラルド色に濡れている蝉。短い命ながら狙うハトから今を生き延びよと応援している。 3位「樹」 ⑤晴れあがる日本列島 赤 黄 赤 致死量のごと朝の予報図 水野薫2点 ★今年の夏は去年以上に毎日の猛暑日だった。 熱中症予防情報の真っ赤な顔の図が連日続いた。致死量のごとと表現しているが 、実際連日熱中症による死者が続いたと今朝のテレビが報じている。 晴れ上がる日本列島と遁れようの無い猛暑を歌っている。
次点 ③ししとうの数個にひとつ“当たり”あり尖る辛味をグツと呑みこむ 白侘助2点
⑩病床の別れの言葉はまた逢おう逢うこと無きと知りつつ共に 湖青3点
以上二首を候補歌としたい。
=生沢康晴選=
1位「覇」
⑩病床の別れの言葉はまた逢おう逢うこと無きと知りつつ共に 湖青3点
★私は、この場面を友との永遠の別れと想像した。来世までも結ばれた固い友情もあると思う。この場合、互いの間には「また逢おう」以外の余計な言葉は要らない。
「逢う」が重なるが、私はこの場合は気にならない。むしろ、「また逢おう」と括弧で表現するほうがより実感が湧く。結句の表現も良い。
2位「王」
⑤晴れあがる日本列島 赤 黄 赤 致死量のごと朝の予報図 水野薫2点
★上句より熱中症等を想像させ「致死量」と導くのがとても良い。ただ、夏はこの予報図は解るのであるが、もしかすると解らない人や、未来を見た場合何の予報図であるのか解らない場合もある。連作の一首とするか、「2011年●月●日の熱中症予報」とか注釈しても良いかと思う。天気図とか気温図、深読みすると放射線拡散予想図ともとれてしまう。
3位「樹」
⑨関東を明るく照らした福島の人が傷つき涙を流し うまれ1点
★社会詠はどんどん挑戦して頂きたいと思っている。今回の震災で、今まで当たり前のように使用していた電力をはじめとするライフラインが、当たり前のものではなかったことが東京でも思い知らされた。そして、その電力を生み出す原発がこのように多くの人々を傷つけてしまうことも。
ただ、やはりここでも上記と同じように現在だから解る歌である。「原発事故」とか注釈をするか、連作の一首としても良いと思う。
また、結句「涙を流し」であるが、「流し」とすると最早過去のようにも取れてしまうので「流す」とした方がより実感が湧く。
今月は以上の結果となりました。
先生方お忙しいところ有難うございました。
来月も引き続き宜しくお願い致します。
皆様からの忌憚亡きご意見もお待ちしております。
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※今月より互選、選者選を分けました。左欄「子サボテン歌会互選」、「子サボテン歌会選者選」となりました。それぞれをクリックしてご覧下さい。
=佐田 毅選=
1位「覇」
⑫シュワシュワと遠くの空を閉じ込めたラムネの瓶の底の夏色 日比野蛇足8点 ★この歌には詩情が感じられる。シュワシュワのオノマトペが効いていて、「遠くの空を閉じ込めたラムネの瓶」の底に夏色があるという。夏の風物詩が詰まっていると感じられる。
2位「王」
⑥腐らせた弁当ぼとりとゴミ箱に落とせば罪も捨ててるようだ YOU5点 ★妻に作ってもらった弁当か、それとも恋人に作ってもらった弁当か、あるいはコンビニのか、とにかく忙しくて腐らせてしまった弁当をゴミ箱に捨てる罪悪感は大きいと言わざるを得ない。
3位「樹」
⑩列島の汚染されゆく砂粒を吐き出してをり鍋底の貝 白侘助7点
★類型的な大震災の歌には、食傷気味なところがあるが、この歌は生活に結びついた不安が詠まれていて、原発事故の現実を思い知らされる。
次点
③階段の途中に座り泣き叫ぶ児を叱りいるソプラノの声 百鬼4点 ★母親の児に対する姿が見えるようだ。親には親の、児には児の人格があるわけだが、どうにもならない両者の思いに、第三者の反応は複雑である。
=山口美加代選=
1位「覇」
⑤警備員の額に汗が溢れ出る 今年も容赦しない太陽 愛2点
★この暑い日中の陽射しをまともに浴びている立ちぼうの警備員さん。見るたび に大変だろうなあと思わずにはいられません。一字明けは警備員だけでなく、自 分自身に照り付ける太陽の暑さ、或いは出来事とも捉えられる。勢いのある歌。 2位「王」 ⑥腐らせた弁当ぼとりとゴミ箱に落とせば罪も捨ててるようだ YOU5点 ★下句の罪も捨ててるようだ が面白いと思った。普通は罪の意識がどうとか詠むが罪を捨てるという発想が歌として面白かった。こうは言うけれど、弁当を捨て るという行為に対し、作者は十分罪の意識を持っているはず。でなければこうは詠まないだろう。 3位「樹」 ⑩列島の汚染されゆく砂粒を吐き出してをり鍋底の貝 白侘助7点
★東北大震災後、原発は思いもよらない被害をもたらしている。安心安全の大切 さを改めて考えさせられるタイムリーな歌。結句、鍋底の貝が何ともできないやり きれなさを感じさせる。 次点 ⑪なわばりを争うカマキリさながらにせわしく動くタワークレーン二基 田尻まぐろ2点 ★今は都会も、東北の復興地も復旧工事で一杯である。どこもタワークレーンが 作動している。なわばりを争うように動きっぱなしだったのだろう。カマキリの例 えが、夏の季節に合い、暑さを増幅させるようだ。 他に、④ なでしこジャパンの歌、⑫ ラムネの瓶の底の夏色 も捨てがたかった。 =高田 好選=
1位「覇」
⑫シュワシュワと遠くの空を閉じ込めたラムネの瓶の底の夏色 日比野蛇足8点
★なんと 郷愁の広がる詠であろう(私の年齢のせいだけではないと思うのだけれど)ラムネは社会の変化とともに 浮き沈みがあった。ラムネも私も良き時代であったなーと言えるものがあるとするならば それは 遠き夏の あの日ではないだろうか。ラムネの瓶の底の夏色を見ながらラムネを飲んでみたい思いに なった。 2位「王」 ⑩列島の汚染されゆく砂粒を吐き出してをり鍋底の貝 白侘助7点
★東日本大震災のあの大津波に浅蜊の貝柄はストレスをうけて異変が出ていたという。それだけでは済まずに、今やその上に放射能汚染である。じわじわと列島全体に汚染が広がっているのではないだろうか。そのような不安感を、貝が吐き出す砂粒をとおして訴えている。 3位「樹」 ⑧ダンスでも如何と君を誘うには自信の持てぬ直ぐな人生 湖青2点 ★4句5句に おやそうなのと思わず考えてしまった。 直ぐな人生がこの場合は躊躇いになっているのである。要領よく ええかげんに生きるより 良き人生だったと思えるようになるのですが。でもこのナイーブな感性が男というものでしょう。
次点 ②抱き寄せんばかりに選びぬお揃いのピカピカお皿に君のカルパッチョ 未花3点
★なんとすなおな初々しい愛の表現でしょう。初句から3句のインパクトには圧倒された。ピカピカは使われすぎて安易ではありませんか。可能なら他の言葉に置き換えて欲しいものです。 先生方お忙しいところどうも有難う御座いました。
これからも宜しくお願い致します。
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※互選結果は1ページに掲載出来る文字数の関係上別ページに掲載しております。
左欄「子サボテン歌会」をクリックしてご覧下さい。
0時から7時までYahooがサーバーメンテナンスを行っており更新が出来ませんでした。申し訳御座いません。
再更新致します。
=佐田 毅選=
1位「覇」
⑩低レベル放射能を浴びてきた俺の背中を抱いてる美津子 YOU2点
★低レベル放射能を浴びて、ボランティア活動でもして来た青年だろうか。その青年の背中を、彼女が抱いているという。単なる恋歌と違って、世相を反映しているところがよい。この場合の固有名詞は生きていると思う。
2位「王」
①かわるがわる愛の重さの比べっこ膝枕して腕枕されて 未花2点
★言い差し止めが気になるが、微笑ましい恋に歌である。離婚が多くなっている現代、死ぬまでこうあって欲しいものだ。
3位「樹」
⑥若葉ふる山道続くけものみちわれも獣となれるひととき 百鬼3点
★けものみちだからまわりは若葉が覆い茂っていることが分かる。若葉の季節のけものみちにはこの季節にふさわしい穏やかなけものの姿が想像される。
佳作2名
⑦先生の眼と眼が会えば指されそう しらんぷりんしてテキストを見る みみ3点
学生の頃、先生からあてられはしないかと思い、できるだけ先生と目が合わないようにしたものであった。そんな若い時の心理が窺えて面白い歌。
⑨100日の法要営む被災地の夕べにまたも襲う 震度4 愛4点
相変わらず余震が続いている。小松左京の『日本沈没』が現実になってしまうような思いがする。 今一番心配なのは、福島の原発に大津波がまた襲ってくるのではないかということである。
=佐田公子選=
1位「覇」
⑫悪しきもの吸上げすひあげ伸びゆかむ一樹は黒きスケープゴート 白侘助2点 ★「悪しきもの」は、天災・人災・政治の腐敗など憂慮する事態を指しているでしょう。伸びゆく樹は、節電対策のために植えられた草木ではなかと思います。緑のカーテンとして推奨されていますが、それを混濁した「悪しきもの」を吸い上げてゆく身代わり(スケープゴート)に見立てたところがいいと思います。草木たちはぐんぐん伸び、作者の環境も快適にしてくれます。が、一方では、悪しきもののために黒く育っているのではないかと作者は心を痛めているのではないでしょうか。観念的ですが、現在直面している日本の事態を歌ったいい歌だと思います。「吸い上げすひあげ」のリフレインも効果的です。
2位「王」
③少しだけ君とのあいだ縮まった?そううそぶいてメールを待って Ryoko3点 ★恋人とメールをやりとりしているうちに君との距離が縮まったのではないかしらと思いはじめ、また相手からのメールを期待しているという恋の歌。「メールを待って」という言い差し止めが気になります。「メールを待ってる」「メール待ってる」(「を」は省略しないほうがいいのですが)はどうでしょう。
3位「樹」
⑥若葉ふる山道続くけものみちわれも獣となれるひととき 百鬼3点
★若葉の茂る獣道に入って行った作者は、自分も若々しく逞しい獣になったように思われたのでしょう。草いきれも感じられてきます。
=高田 好選=
1位「覇」
⑫悪しきもの吸上げすひあげ伸びゆかむ一樹は黒きスケープゴート 白侘助2点
★感性が働いた感覚鋭い社会詠で、胸に重たい物が詰まるおもいがした。 だれしもが今の現状に この日本は大丈夫だろうかと考えてしまうのではないだろうか。そして 行きつくところ生け贄の巨大な樹が育っているしかも黒く不穏である 悪とは何か一樹とは何かそれぞれに思考を巡らすことができるのではないだろうか。 2位「王」
⑨100日の法要営む被災地の夕べにまたも襲う 震度4 愛4点
★被災地の何れにお住まいの方だろうか。御霊よやすかれと祈りを捧げている時になんと言うことでしょう。震度4である。忌まわしい体感がまたも甦るではないか。切実な詠で身につまされる。 そちらも 梅雨に入ってしまいました。どうぞお体を大切にして下さいませ。 3位「樹」
⑭日本を支えてゆこうどこまでも 一億本の柱となって 日比野蛇足4点 ★真っ直ぐな思いの通った佳い詠だと感じました。このひたむきな心と勇気が大切です。私もなります一億本分の一の柱に。
山口先生はご体調不良のため、佐田公子先生にお願いいたしました。
先生方お忙しいところ有難うございました。
来月も宜しくお願い致します。
皆様からのご意見をおまちしております。
忌憚無きご意見をコメント欄に宜しくお願い申しあげます。
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