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今まで行ってもいないのに、最後だからと出かけて行くのは好みではないのです。が、今回は結果、そうなってしまった。どこかにいいカレーライスの店がないか、と探していたら、この店を見つけました。見つけた時点で閉店が決まっていました。
カレーですよ。
普段はほぼ乗らない西武新宿線の上石神井から先の路線。西荻窪からバスが出ているのでほんの時たま乗ることもあるこの路線。今日は終点の本川越まで行きます。
きっかけが出来て、閉店まじかの古い洋食店に行くことになりました。
「カレーキッチン ジャワ」
という看板が賑やかな商店街の路地の端に置いてありました。
路地にはいると小さな行列ができています。きっとこの店の閉店を聞いてお別れにきた人たちなのでしょう。口々に残念な旨を小声で呟いているのを聞きながら、ゆっくりと列は店内に進んで行きます。
名物の欧風のルウはもう売り切れの様子、聞くともなしに聞いていると閉店の24日まで仕込みが持つかわからない、なども小さく聞こえたりします。
そんな中、ボク一人だけが異邦人の趣。皆さんのような感傷もなく、淡々とカウンターに座り、注文をします。店のおねえさんがトッピングは今日は揚げニンニクがない、と教えてくれました。では、
「ジャワカレー ビーフ チーズのせ」
といたしましょう。
古いお店です。こういう感じのお店をきたない、という人も今では多いのじゃないかな。そういう風に風情を楽しめない無粋な人が増えました。
相手に寄り添う、という文化が年々薄れているような気がしています。そうだな、例えばですけれど、舞台だてというものがあります。このお店だったらさながら昭和のホームドラマ。最近だったらテレビ版の「孤独のグルメ」でもいいでしょう。情緒をもって対峙、自分をその場所になじませてやる、その空気を楽しむ。そういうものができない人が増えて行き、こうやっていい店が商売を畳んで行くのかもしれません。
やってきたカレーは、思わず笑顔になってしまうような、ごはんの大盛り加減。驚きです。これでもかと盛られた白ごはんと、クラシックなサーバーに入ったビーフカレー。チーズが平たいスライスチーズでそれをくるりと巻いて突き刺してあるのが洒落ています。
カレーのうつわをかき回すと大きなビーフがグリグリとスプーンに当たって引っかかってきます。手応え十分、ワクワクします。最近じゃあ流行らないのかビーフカレーを売りにするお店が昔ほど多くありません。なのでたまにいいビーフカレーに当たるとわくわくするんです。
さて、カレーをたっぷりかけて、福神漬けも添えてやって、いただきます。濃く、深く、でもものすごいものではない、淡々と王道を行く正統派洋食カレーライスの味です。おいしいなあ。こういうのは好きだなあ。ビーフのね、脂身のところなんてとろんとろんでちょっとたまらない。ああ、久しぶりのビーフカレーだ、と頭と舌が喜んでいます。
そしてね、こういうのが大事なんです。ものすごいものじゃなくていいんですよ。コックさん全員が一流シェフである必要はありません。味なんて不確かなものなのです。あ、これは受け手の方の話ね。
大前提としてあるのですが、送り手、料理人はどんなひともみな、持てる技術を精一杯つぎ込んで、コストも考え、お客の体も考え、心も考えて、その技術を例えばカレーに注ぎ込みます。これは当たり前。主に個人店の話しかも知れません。
そしてさっきの話とつながるのですが、受け手側は風情を含めて料理を楽しむ。相手に寄り添うことで記憶の中の味は何倍もいいものになって残ります。自分から楽しむ。それこそが美味しいものの食べ方かもしれません。イライラしていたりがっかりした気分で食事をした時の味、ボクはほとんど覚えていません。それがどんなに素晴らしいお店の料理であった時でも。
このお店はボクの好きな感じの空気のお店です。あまりお客さんが入っていない、中途半端な午後半ばに入ってみたかった。長くやっている店には独特の匂いと空気感があって、それを含めて食事をするのがボクの好きなやり方です。カレーを食べているんじゃないんですよ。お店を、空気を食べているんだろうと思います。
だからきょうは少しきまりが悪い。きっと今日のこのお客さんたちは、そういう時間をこの店で何度も過ごしてきて、お別れがてらにその空気を少しでも吸っておこうと来ているのだろうから。
ボクはそっとカウンターででそういう様子を見て、その記憶を食べて、店を出ようと思います。
ごちそうさまでした。
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