カレーですよ。

雑誌連載中:ぶんか社「エキサイティングマックス!」連載「それでもカレーは食べ物である」第79回は横浜都筑「ラニ」です

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現在東京で一番気になっている2つのレストランがあります。

一つは渋谷の宮下公園の向かいにあるエリックサウスマサラダイナー。インディアンキュイジン、モダンインディアンというキーワードを初めて店側から提示したレストランとして理解しています。タンドールと呼ばず石窯グリルと呼び、そこここにこだわりが感じられます。
日本のインド料理のゲームチェンジャーになり得る可能性を感じているんのです。

そしてもうひとつ。



カレーですよ。



東京ミッドタウン日比谷の中にできたタイレストラン。タイレストランという括りに入るのだと思いますが、そこに収まらない面白さがあるのです。

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店からのアナウンスで「基本に忠実なカジュアルタイ料理と更に我々なりの解釈を加えた“発展的タイ料理”」というキーワードがありますし、タイフュージョンという言葉も見え隠れします。

それはつまり、どちらの店も背骨をインド、タイの郷土料理に持ちながらその先に進もうというものだと理解しています。メニューにも、料理のプレゼンテーションにも、店のセグメントやインテリアまでも全体でアップトゥデイトを目指す取り組みに見えます。

ここは、


「プーケットオリエンタル日比谷店」


前述の動きはボクが思い続けてきた「アジア料理のポジションチェンジ」の芽吹きに他ならないと感じています。

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日本ではアジアの料理は不当に扱われてきたのではないか、という感覚をいつでも覚えていました。受け取る側のコンシューマーも、店をやる方もアジアの料理を簡便で安いもの、というイメージをぬぐいきれないままにここまで来たのではないかな、と。

ジャケットとドレスを纏い出かける先はフレンチとイタリアン。それに懐石、高級中華。残念ながらインド料理とタイ料理はそういうシチュエーションではなかなか選ばれないんです。そういうクラスのレストランがないというのも一因。そういうレストランを作れないというところもあるでしょう。
中華はなぜアジアのレストランに入らないか。これは多分「カレー」という日本語の呪いに染まらなで済んだからだと考えているんですよね。ここら辺は面白いのでまた別の機会に書きたいと思っています。

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そんな中でこの2つの店はそういうフィールドではない場所への芽吹きであると感じています。ついに来たな、という気持ちです。カジュアルな店ですが先に進むための考え方、武器を持っていると思います。

さて、この晩はプーケットオリエンタル日比谷店。ヤマモリ株式会社の三林社長が席を設けてくれました。二人の女性も同席、華やかで楽しい席になって、そんな場所に招待くださって大変に光栄。
ここ、プーケットオリエンタルは、ヤマモリタイカレーでおなじみのヤマモリ(株)の関連会社である大アジアレストラン(株)が運営しています。となれば、国内で唯一かもしれません。ドレスをまとった女性を誘えるタイレストラン、名古屋の納屋橋にある「サイアムガーデン」とのつながりも期待できて、わくわくします。

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店は洗練されたインテリアで、いわゆる怖い仮面と謎めいた旗と民芸品が並ぶタイプのむかしのアジアエスノ店ではありません。モダンでシックな店内。およそ今までのタイレストランのイメージとは別のものを持っています。お客さんたちも場所柄もあってか女性が多いですね。

アラカルトメニューから選んだこの夜の料理。なんだかメニューの2/3近くが出て来てしまって素晴らしいテーブルになっちゃいました。すごいすごい。

アイスバインの冷製パクチービネグレッド

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ここからまずタイ料理ではないという楽しさ。アイスバインときたよ。骨付きアイスバインを煮込んであって、食べやすくスライスされて盛り付けられています。自家製パクチービネグレッド、というのがタイ料理とのリンクになるんですね。最初から大変楽しい。

生ハムと季節のフルーツの生春巻

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生ハムが贅沢、厚いものです。生ハムの塩味がマンゴーによく馴染み、ここら辺の感覚はアジアの料理らしさを感じます。が、モダンな感覚も併せ持つのがここ、プーケットオリエンタルらしさです。

ソフトシェルクラブの生春巻(シェフ特製4種のソースで)

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香ばしく揚げたソフトシェルクラブはそのやんわりした食感はそのまま。もちっとした生春巻との相性も良いですねえ。オリジナルのソース4種と合わせるというのがうれしさ込み上げます。こういう欲張りメニュー好きですねえ。

市場直送 活〆鯛のオリジナル瞬間燻製カルパッチョ

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築地仕入れの本日の鮮魚をカルパッチョに仕立ててあるのですが、ガラスの器に燻煙をたっぷり封じ込め、それを蓋にしてテーブルに供されるというエンターテイメントなひと皿。

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燻製のいい香りがふわりと広がりタイのヤムソースで仕上げたカルパッチョに風味が重ねられてゆきます。目の前で仕上げられていく楽しさ。この店のシグネーチャーディッシュとしての存在感もあり、パフォーマンスも含めて楽しいひと皿でした。

パクチーとチーズのふわふわオムレツ

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タイ料理の気軽な定番カイジャオ(卵焼き)。ここではチーズとパクチーを使用した鉄鍋オムレツに翻訳されます。プリッキーヌとナンプラーで食べるとらしさがまして楽しい一品。これ、いいな。こういうシンプルなのはいい。

空心菜のタオチオオイスター炒め

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こちらもタイ料理の定番、空心菜の炒め。中華の技法を使う華系タイ料理です。時期によって提供できないときもあるよ、という但し書きに誠実さと常識を感じます。野菜は自然のもの。無理をして通年出すのは違和感を感じます。

和牛モモ肉のオイスターソース炒め

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厳選したきちんと美味しい和牛を使用。野菜は旬にこだわり、調味はガーリックとオイスターソースの仕上げ。オーソドックスメニューですが、良質な素材でブラッシュアップという考え方は好みだなあ。

まだまだ続く料理の数々。
品数が多いがハーフサイズ対応ができるアイテムも多く、自由自在です。

豚トロの炙りスパイシータマリンドソース

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いわゆるコームーヤーン、タイスタイルのローストポークです。オリジナルのマリネ液で豚トロを一晩の漬け込みののち香ばしく焼き上げてあります。これもまた自家製のタマリンドソースとハーブが用意されていて、壺型の容器で添えられたレタスに包んで食すというプレゼンテーション。いちいち工夫があって盛り上がります。

大海老のレッドカレー炒め

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きました、カレーですよ。有頭大海老をたっぷり使った、レッドカレーペーストとココナッツミルク仕立てのあまから味。チューチークンということになるのかな。大変好みの味です。そのボリューム感に目も胃袋も奪われます。これはたまんないなあ。

鉄鍋ソフトシェルクラブのカレー卵炒め

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またきました、カレーですよ二連発!!熱く熱した鉄鍋に香ばしく揚げたソフトシェルクラブをじゅっと乗せてやり、別のフライパンに用意された卵がたっぷり入ったココナッツカレー風味のソースを流し込んでやるスタイル。これを眼の前でやってくれるのだからたまらないです。すごい!湯気すごい!香りすごい!

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美味しそうなカレーの香りと手鍋にぶつかる卵カレーソースのじゅわっという音が周り中に広がり他のテーブルからの視線がこの鉄鍋に集まるひと皿です。これは素晴らしいなあ。

チキンガパオライス

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もちろんパッカパオラーカオもメニューにあります。タイ直輸入のフレッシュガパオを使用。叩いた肉とフレッシュのガパオを使わないときちんとしたものにはならないパッカパオ。大事に真面目に作ってあります。うれしいねえ。

茹で鶏のせ炊き込みご飯 カオマンガイ

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しっとりと仕上げのぷりっとした鶏肉とチキンスープでおいしく炊いたライスの組み合わせのカオマンガイはもう日本国内に専門店もできるほど日本人にも馴染みの料理になりました。

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その土台となるごはん、チキンももさることながら大事なのが添えられるソースなんですよ。オリジナリティがここに集約されるカオマンガイな訳ですが、ここプーケットオリエンタルのそれはきちんとオリジナリティが感じられる良いものです。

オリジナル濃厚ココナッツトムヤムラーメン

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トムヤムクンを使ったヌードル類は本国になかったオリジナル。いつの頃からか定番化して本国でも見かけるという声を聞くようになりました。
プーケットオリエンタルのこれ、ひと口食べて思わず呟いちゃった。「あ、麺がきちんとしてる。おいしい」。
小麦の香り良い黄色い玉子麺が大変上出来で、そう、麺類なんだから麺がしゃんとしてないとダメだな、と思い知るわけです。香味オイルの香りと濃厚なトムヤムスープも大変な出来。これはちゃんと納得ができるトムヤムラーメンだなあ。これ、本当にうまい。

さあ、〆のご飯と麺もいただいて、これだけ食べましたがデザートもあるんです。

液体窒素を使ったイリュージョンマンゴー&バニラアイスクリーム

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これには驚かされました。これはもうショーですね。
たしかにこういうパフォーマンスを行う西洋料理のレストランはあるんですよ。でも、タイレストランでこうくるか、という驚き

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突然のことに思わずオロオロにやにやとしてしまいました。目の前で‐196℃の液体窒素を使ってアイスクリームを作るパフォーマンス。いやあ驚いたなあ。「目でも楽しめる」というのはどうやらデザートにまで及び、この店のコンセプトの一つなのだということがよくわかります。

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濃厚なアイスクリーム、おいしいです。

そして食後にいただいたコーヒーがきちんとおいしいのにも驚かされました。これとても大事なんです。
そこそこいいレストランが何故だか最後のコーヒーに美味しくないものを出している事例をよく目にするんだよね。

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なんとまあ、勿体無い、そう思います。
素晴らしい料理には最後まで気を抜かずコーヒーまできちんとこだわって欲しいものです。このレストランにはそういういい意味での緊張感があるんです。気遣いがあるということです。

一緒にいただいたケーキがキースマンハッタンのものであったのも驚かされました。ええ!なぜ?と三林社長にうかがうと「友達だから!!」と笑いながら一言。トップ同士が友人なのだそう。

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なんという自由で豪快、楽しいチョイスの理由でしょうか。
惚れ惚れするねえ。

色々な意味で隙がないお店だなあ。

他にも築地仕入れの活けロブスター(450g)を水槽から選んでお好みの調理、なんていうものやゲームヘンと呼ばれる野生種のひな鶏1羽を丸ごと開いて秘伝のタレで焼き上げたひな鶏の漬け焼きスパイシータマリンドソース〜ガイヤーンなど、頼んでみたいメニューが本当に多いんですよね。

そして驚くべきはそのお値段。

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ここ、東京ミッドタウン日比谷の中でも飛び抜けてリーズナブルだと感じます。このインテリアと雰囲気、料理の楽しさ、なのにこの値段。

3桁のものも数多くあるアラカルト料理、食事類。コースは3980円から、ロブスター尽くしコースなのに6980円までとこちらも内容を見るに驚くべきお値段です。これではなるほど、ひっきりなしのお客さんの出入りの理由もわかろうというものです。

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東京ミッドタウン日比谷の中でも特別人気を集めているそうですよ。うんうん、そうでしょうねえ。
で、紹介した料理を見ても言わずもがな。安かろう悪かろうなどという言葉はここには存在しないわけです。

カウンターもあってソファー席、半個室もテラスもあり上手に使えばカジュアルにもセミフォーマルにも使える幅と使い出の良さも注目点。それに加えて東京ミッドタウン日比谷という場所、日比谷駅直結というアクセスの良さも見逃せないでしょう。なかなかこれはいうことがないのではなかろうかねえ。最強です。

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そしてこの流れの中から次世代のアジアエスニックレストランのあり方が見えてきていると感じています。ボクとしてはそこが一番注目するべき点だと感じています。
今までのスタイルやジャンルとしての民族料理、エスノディッシュなどが消えるというのではなく、それらに加えて新しいジャンルが増える。そういう未来が見える気がしています。

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確実に今見ておくべきレストランです。


#カレーツーリズム #カレーダンニャバード #カレーですよ

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