カレーですよ。

雑誌連載中:ぶんか社「エキサイティングマックス!」連載「それでもカレーは食べ物である」第90回は西荻窪「とら屋食堂」です

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ついに検見川の愛するあのお店が元も場所にて完全復活。
本当に心待ちにしていました。



カレーですよ。



とにかく待ちに待っていた開店です。

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本当に大事に思っている検見川の素晴らしいレストランがついに元の場所、正しく創業の場所にて建て替え完了、完全な形で復活です。心待ちにしていました。兎にも角にも一日千秋の思いでこの日を待っていたんです。


「印度料理 シタール」


は、検見川の、いや、千葉県を代表する名レストランです。今回の本店の建て替えはその第二章の幕開けとなるわけです。

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グランドオープン、2019年3月7日を前に、光栄にも増田社長と奥様の静枝さんからのご招待をいただいて、プレオープンのおめでたい席にお邪魔をいたしました。
ボクがいくつか頂いた貴重な席に友人のアキノ・リーさんとスパイシー丸山さんをお誘いしてのお祝いの席。何としてもきちんと影響力がある人を誘いたかったのです。大事なことなんです。

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これまでも何度かお邪魔をしては仮店舗(とてもそうは思えない、こんなに立派なんだからここで営業でいいのでは、と友人二人が口をそろえたのが面白かった。そしてその通り!)で食事をしてその帰りがけに建て替え中の本店を覗かせていただいていました。

神田川石材商工さんのタンドールの設置作業を見学させていただいたり、内装工事の最後近くを見せていただいたり。貴重な経験です。増田社長はいつでもボクのわがままの先回りをしてくれて「どうぞご覧になっていってください。」と案内をかって出てくださいました。本当に恐縮で、でもとても嬉しいんです。

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印象的な濃い赤、レンガ色の外観を目に、扉を開いて中に入ります。
テーブルとイスが入り、内装も仕上がった美しい店内にしばし立ち竦み、見惚れてしまいました。

まったく素晴らしいお店になっていました。テーブルとイスが入る前の店内は見学させてもらっていましたが、インテリアが入るとなにかこう、しっとりした雰囲気になります。

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今までと違い敷地全部を使った建屋は広々しており、そこに素敵な意匠の壁と壁内に作り付けの棚、ペイントでシックなラジャスターンスタイルを表現してあります。

心惹かれる凝ったガラス窓は木枠の中を窓格子で四つ割りにされており、その4枚のガラスはそれぞれ模様の違うアンティークガラスが使われるというなんともロマンティックな作りになっています。

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テーブルとイスは前から使われているあの美しい彫刻の入った重厚なもので、いつもの椅子に座れるというところは常連さんたちはきっと心落ち着く嬉しさがあるだろうなあ、という想像も容易です。常連のお客さん、きっと心の中で喝采をあげたはず。

圧巻はホールの中ほどに立つ2本の柱。
ごくごく濃い色、黒に近いブラウンの柱、近づいてよく見てみると木製のタイルのようなものが全面に貼り付けられ作られているんですよ。よく見てハッと気がつきました。ああ、これはあれだ。インドのブロックプリントのためのスタンプ、「ウッドブロックスタンプ」ではないかしら。

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静枝さんに伺うと、まさにそれ。本来テキスタイルの模様入れのためのプリントに用いられる伝統的な木製のスタンプの原版です。そのデザインは草木模様、花模様、鳥、動物など多岐にわたる美しいパターンデザインで、すべてインドの職人さんの手になるもの。ハンドメイドのため、すべてが一品ものとなる貴重なスタンプなんですよ。コレクターも多いらしいんです。そのアンティークスタンプ、使い込まれて素敵な風合いになったものをインドで買い求め、日本の職人さんの手で丁寧に薄く削いでもらって(本来は手に持ってスタンプするものなので元版は厚さがあるもの)、その微妙にサイズが違うそれぞれの版を柱全体にパズルのように組み合わせ、調整を重ねて一体感を作り出しているんです。

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いやあもうまったくもって素晴らしいものです。食事中も気になって見入ってしまう魅力的なものだったなあ。

打って変わって厨房はモダンそのもの。
美しく輝くステンレスの作業台や棚、巨大な煮込み釜や背の低い大型寸胴用のコンロ。それとは別の調理用コンロは8口もあり、ここシタールがどれくらいの繁盛店でどれほどのキャパシティが必要なのかを物語ります。
そしてタンドール。

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こちらも大型のものとワンサイズ小さなものがそれぞれ1台づつ、2台が稼働しています。このホール面積で2台のタンドール、それはつまりどれだけシタールの焼き物とナーンがお客さんたちから愛されているのが。そういうことですよね。
タンドールは神田川石材商工が持っている最大サイズのものと、その下のサイズのものが鎮座するタンドールブース、配置の関係で以前のようなカウンターからのかぶりつき、ボクが大好きだった特等席は無くなってしまったのですが、その分通りから窓を通してその作業を見ることができます。少し距離がありますが、ホールからも眺めることができて、ファンにはたまらないものがあるでしょう。

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広く、効率いい導線を持つこの素晴らしいキッチンは元飲食店マネージャーの経験を持つボクにはどうにも魅力的で、色々と想像力を掻き立てられます。

ホールの皆さんの動きと愛情あふれる対応も旧店舗となんら変わらず、オールドファンをこころ穏やかにさせてくレます。それこそがシタールの魅力の大きな部分ですからね。
そうは言いながらもきちんとアップデートはあって、ハンディターミナルを使うモダンなオーダーシステム取り入れられていました。温故知新、その言葉が隅々に息づいています。

料理はもうね、ボクとしたことが、書かないでいいんじゃないかとまで思っています。言わずもがな、ということです。

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しかし言わずもがなと黙っているのもちょっと苦しい。そう、それくらい、誰かに伝えたくなるくらい、シタールの料理は美味しい。やはりあの最高の料理のことは多少なりとも、いや、大いに口にしたくなるんです
建て替えの前の店、仮店舗、そして新しく建て替えられたここ、シタールでもあの素晴らしい味は何も変わっていないのです。

たとえば、バターチキン。

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シタールのバターチキンを食べて欲しいのですよ。皆さんがよく知っているバターチキンとは色々違うことがわかるはず。バターチキンというとインド料理の価値を損ねるようなものも多かった時代が長かったのです。いわゆるお砂糖で甘い味に振ったやつ。(砂糖が悪いのではないよ)その時代は終わりつつあってホッとしています。シタールのはそっちでもないし、正統派の酸っぱさが少し勝つやつとも違うのです。そういうもの達とはまったく立ち位置の違う独特で素晴らしいものとして、「シタールのバターチキン」として、燦然とこの店のレギュラーメニュー、名物料理として存在しているのです。

。味を例えるなら、どことなくチェダーチーズのニュアンスを感じてしまうんですよね。もちろんチーズなど使ってはいないのですが。調理の果てにそういうニュアンスが浮かび上がるのでしょうね。実に面白いです。

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南インドマトンカレーはフルーティな感覚を覚えるマトンが不思議で素晴らしいもの。マトンの癖など微塵もないんですが旨みやコク、個性はきちんと残る好バランス。強い辛さが爽やかさを呼ぶ味で、知らぬ間に汗をかかされているのが気持ちいいです。

レモンライス、これは日本人が見るとなぜピラフにカレーをかけるのだ、という声も出そうなやつ。

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でもそこは控えめな味付けと香りでカレーを邪魔せず、逆にひとつ上の美味しさと華やかさを得ることができる組み合わになっています。テーブルソルトをすこし振りかけるとメインを張れる個性と味が浮かび上がるのが素晴らしいなあ。

焼き物の素晴らしい仕上がりも、揚げパンのバトラもいいしね。

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テーブルのタマネギアチャールと野菜をバトラに挟んでインドの野菜サンドという風にして食べるとますます美味しいので覚えておいてね。

そう、テーブルの上にあるタマネギ。あれには気をつけたほうがいいよ。本当に美味しくて止まらなくなるから。インドの浅漬けである「アチャール」。このタマネギのアチャールはちょっと抑えがきかなくなるような中毒性感じる旨辛の美味しさがあるんですよね。カレーとごはんに添えるもよし、サラダにトッピング、混ぜてもよし。ナーンを頼んだ人はサラダとこのタマネギを少し挟んで食べてみてほしい。驚くはずです、おいしくて。

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このスタイルのものはインドレストランで出てくるアチャールの基本ですが、シタールのものはやっぱりシタールの味がするのが嬉しい。柑橘の酸味が強めで爽やかです。

テーブルのカスタマーセットの中には他にも調味のためのアイテムがあり、どれも是非体験してほしいものばかり。甘いチャツネはクラシックでとてもいいんだよ。ターリ盆の上に少し添えてナーンやカレーに合わせるとよいですよ。

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もうね、野生黒蜂蜜は本当に素晴らしい。チャイに入れるとマイルドな甘みでチャイのお代わりが欲しくなります。香りも風味も格段にアッップして夢見心地になること間違いなし。この癖のない、しかし口に含むと明らかにいいものだとわかる蜂蜜は本当に多くの人に知ってもらいたいといつでもおもっているんです。

揺らがぬ味、どれがなくなっても困るメニュー。変わらぬことが幸せなこと。シタールのあの喜びあふれる料理の数々は変わってもらっては困るものなのです。

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とはいえ立ち止まっていないということも背中あわせて持ち合わせているのが信頼につながります。いつも気の利いた季節のメニューが、また新たに調整され、生まれて巡ってくるのを知っています。

ボクもすでに人生半ばを越えていますが、これからも生涯通うことになるであろう大切なお店の、2度目の素晴らしいスタートに立ち会わせていただいた喜び、来るたびに思い出しては、忘れられないものになるのであろうな、と想像しているのです。

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増田社長、おめでとうございます。


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