カレーですよ。

雑誌連載中:ぶんか社「エキサイティングマックス!」連載「それでもカレーは食べ物である」第90回は西荻窪「とら屋食堂」です

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ビッグCでのお安くも楽しい食事が終わって、いろいろあった用事も済ませホテルに戻ってきました。快適で幸せなアナンタラサイアムバンコクの部屋。なんという幸せ。

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クラシックな南国のホテルってのはどうもショーン・コネリー時代のダブルオーセブンシリーズを思い出しちゃってグッと来ちゃうんだよねえ。たまらんねえ。



カレーですよ。



しかしそんな幸せに浸っているわけにはいきません。
熱いシャワーを浴び、人の心を取り戻し、気力を振り絞ってネクタイを締めジャケットを羽織って1階へ。

今回のホストであるヤマモリ株式会社、取締役の三林さんが奥様と待っていてくれました。

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「はぴちゃん、どうしたのそれ、ネクタイなんてしちゃって」

と笑われます。もう少しカジュアルでもよかったのにと言う優しい言葉をかけてくださり、肩から力が抜けました。今晩の会食、どんなレストランになるか聞かられていなかったので、だったらどういう風にも対応できるようにしておかないとね。

(しかし三林さんに「はぴちゃん!」と声をかけてもらうとすんごいテンション上がるんだよなあ。なんだろうなあ、あれは。なんか訳も分からずに嬉しくなるんだよ。ある特定の分野の人の持つ「熱」みたいなんだと思う)

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皆さんと合流してクルマに乗り込みレストランを目指します。バンコクの大渋滞とスコールをじっと耐えての、プロンポンに到着。


「AT-TA-ROTE/アッタロット」


というこのお店。素晴らしいお店でした。タイの見たこともないような宮廷料理から派生した数々の料理を試すことができるレストランです。ここでの食事は素晴らしい体験でした。

実はこのレストラン、ヤマモリが運営する名古屋、納屋橋のボクが大事に思ってやまないタイ料理レストラン、サイアムガーデンとリンクするものを持っていたんですよ。

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サイアムガーデンの料理監修もしているタイ料理教育と研究の権威であり「世界の台所」政策を進めるタイ国を代表する料理研究家でもあるシーサモーン・コンパン博士から料理を学んだというオーナーが運営しているそうなのです。そういうリンクがあるレストランをチョイスしてくれる、現地コーディネートをしてくれたヤマモリトレーディング、奥出さんのセンスが光るチョイスです。さすが!

タイの人々にもに人気があるタイ料理レストランでもあるここ。タイ人自身が「見たことも、聞いたこともないメニューだよ」と口をそろえる宮廷料理をカジュアルアレンジ、モダンアレンジした料理を提供するレストランです。

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もちろん普通に日本人のタイ料理好きが知っているような定番メニューも用意されていますが、それらを頼んでいるようではこの店の真価は見えてこないでしょう。

値段帯も現実的で、メニューチョイスは初めてだと少し難しいものの、食に興味のある旅行者であればぜひ立ち寄ってもらいたい場所だな、と思います。「タイの伝統宮廷料理を若い世代に伝える」ことをミッションとして自分に課したオーナーの気概が見えるようなメニューやセンスなのです。

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初めに出てきたカノムチーンフアノック。花と鳥をモチーフにした小さなサイズの前菜。フライドガーリックとレタスが添えられて、それを一緒に食べるスタイル。お菓子と食事の中間くらいにあるあまじょっぱさが面白いんです。

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その味をフライドガーリックとチリで食事寄りに寄せる感じ、とでも言いましょうか。

初めにこういう可愛らしいものが出るとなんだか和んで気持ちをつかまれます。楽しい気分ですね。

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蓮子の葉と花びらを使った前菜など、いかにも宮廷料理的なビジュアル、構成で感激させられます。

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他の料理でも皿の縁に美しく飾られるカービングなど素晴らしいものがおおく、なるほどと納得できますね。

次に出てきた、店名にもなっいる素朴なフリッター。
実は南インドでよく用いられるドラムスティックなのだとのこと。

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ああ、なるほど、こりゃあ面白いぞ。

サンバルに入ってくる以外のドラムスティックを初めて体験しましたねえ。
ちょっと驚きました。

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ほっくりした食感からじわりと自然な甘みがくる、実に美味しい揚げ物でちょっと止まらなくなるシンプルな美味しさです。

ヤムソムオーにも驚かされました。

柑橘果実、ポメロの和え物料理です。干しエビやフレッシュチリ、ナッツなどと和えてあり、バイマックルーの香りとあまじょっぱさ、少しのからさなどが柑橘の実と重なる味わいは驚きに満ちています。

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こういうセンスはなかなか体験できないよなあ。
メニューとしても日本のタイ料理店ではなかなかいきあわない料理で美味しくも貴重な体験です。


さて後半。


レストラン アッタロット、とにかくいろいろなディティールにこだわりと質感が感じられるお店です。

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メニューの写真のセンスと紙質に驚かされ、こだわりのワインセラーに目を見張り、快適でモダンなインテリアにリラックスする。や、いいと思う。モダンないいお店だと思います。さて食事の続き。

コームーヤーン、薄い肉が並ぶ絵はなるほど本物のコームーヤーン。豚の首肉を使用しています。

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なにしろ名前に豚の首肉とついているんですから。きちんとしたレストランならちゃんとその部位を使わないとね。
ソースは甘味噌的なものと辛いもの2種が添えられ、どちらもいいんです。味噌風の方は万能で、どの料理にもよく合い持ち帰りたくなるほど。おいしいねえ。

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干しバナナとコーンと厚揚げの炒めもすごくいい。
美味しくて面白かったですね。これは食べたことなかったなあ。

ガイトオードが鳥かごに入って出てくるという演出はシャレていて楽しい。
これもコームーヤーンと同様のソース2種が添えられています。

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パリッとした表面と柔らかな肉、満足感高いよい鶏唐揚げです。
上に乗っているフライドレモングラスが珍しいね。

こういう演出があるというのが楽しいですし、現代のレストランなんだな、と強く感じます。どうも東京のアジアエスニック料理、こういうところがまだまだ弱い気がしてなりません。

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そしてそういうところを知る三林社長や大アジアレストランの代表が取り組んでくれているのが東京ミッドタウン日比谷のプーケットオリエンタルだったりする訳です。とても頼もしく感じます。

さて、カレーももちろん登場。

ゲーンマッサマンヌア、とても面白かったですね。

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不思議な風味で知っているマッサマンとは別物。なんと表現していいのかちょっと迷ってしまう感じです。

コラーゲンのつるつる感強い口当たりとつよい甘み、ハーブではなくドライスパイスで仕上げられているのが理解できるのでやっぱりマッサマンスタイル。誤解を恐れずいえば鉛筆のような味。それはつまりシナモンとは違う樹皮のような感覚の味わいがある、ということです。それと対照的な飴のような感じの甘さとツヤ感のゲーンの舌触りが不思議なもの。クセはあるが美味しいのは全く間違いがないものです。

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ああ、これ興味深いねえ。大きな牛肉ブロックの破壊力もすごい。問答無用の肉肉攻撃。しかし、ちょっとあなたの味覚と知識を1からやり直し、と言われているような味で俄然勉強してみたくなるんです。

この晩は招待をいただいた会食なので店の方にあまり派手に色々聞いたりできなかったのですが、色々と面白い店なのでもう一度、必ず戻ってこようと思っています。

もう1種あったベジで激辛のものも面白い。

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ブルー(!)のカノムジーンが添えられていてカノムジーンナムヤー的に食べられるんですが、これもこの店の一押しのものみたいでバックボーンなど聞いてみたいとも思いました。やーほんとに面白い。

タイカレーでこんなに面白い思いをするのは初めてかもしれません。

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あとね、例のアレ。コンビニでもおなじみのアレ。台湾でも似たやつがあるアレですが、やっぱりいいねえ。

なんというんでしょうね。ボクらがいつも食べている普通のもの、よくあるもので好きなものがあるでしょう、そういうものがいいレストランの腕あるシェフによって、いい素材と技術、センスを注いで再構築されたもの。そういう料理が一番気持ちに響く感じがするんですよね。

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すごくおいしい!知ってる味なのになんで違うの?というあの驚きと不思議。たまらんなあ。これが、それでした。もうね、カレーじゃなくてこれをカオにかけて食べたい!!

いやあ、おいしいなあ。忘れがたい。

デザートも4種ほどメニューに揃います。

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タイアフォガード、こういうものが用意されているのがモダンなセンスで感心させられますね。

ピークプーンウィズアイスクリーム、ココナッツプリンとパンダンのアイスクリームなどもらしいデザートで、香りよく上品な甘さにまた感心。

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全体で見ると味付けが町にあるタイ料理レストランよりも上品な味付けで、極端に味のレンジの幅を大きくしていないところが宮廷料理からきているのだな、と感じさせるところがあります。
インド料理でも宮廷料理は見た目はもちろんのこと、質の良い食材を使って繊細な料理技法と味付けを当てはめてゆくのでリッチ、マイルドになるのは納得がいくところです。

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とにかく料理の出自に興味が惹かれ、食に対する好奇心を大いに刺激される面白い店でありました。

そういう側面と同じくらいの割合で、リラックスと快適さを求めることもできるフレキシビリティがある、懐深いレストランです。

価値のある店だと思うので確かめに行ってみてください。

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三林社長、ヤマモリ、サイアムヤマモリ 、ヤマモリ トレーディングの皆様。会長も他の皆様も本当にありがとうございました。

大変に貴重な会食でした。


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