カレーですよ。

雑誌連載中:ぶんか社「エキサイティングマックス!」連載「それでもカレーは食べ物である」第90回は西荻窪「とら屋食堂」です

食べるといふ事

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神田カレーグランプリ。

決勝戦兼お祭りが毎年晩秋に神田駿河台下の小さな広場で行われています。
そんな言い方が似合わないくらいにホットなイベント。

優勝店や投票数などは毎度ながら大変に興味深いのですよ。
もちろん細かい数字は公表はされていないのですが、あの投票結果は本当のカレー民主主義の結果の感があるのです。
というのも、わたしも会場を回り、店とメニューを一通り見て、投票所の様子なども観察しているのだけれど、これは投票の中心はマニアではない普通の人なのだな、というのを感じわけです。
古書市と同時開催というのも影響しているとも思います。

それはつまりマニアではない普通の人たちがその年、どんなカレーを求めているかがわかるというわけなんです。いい意味で偏りなく人が集まっているのが神田カレーグランプリ。代々木公園のアジアエスニックフェスティバルとは違った価値があると感じます。

マニアックなものを提供して時代を引っ張る店主の方々も、大衆が求める味を淡々と作り続けて磨きをかける店主の方々も、どちらも尊く頭がさがります。

今年の秋も良いイベントとしてもらえればいいなあ、と思っています。


<追記>
苦言をあえて投げれば会場のキャパシティ。去年はもう限界を超えていた感があります。這々の体でカレーも手に入れられずに逃げ出す人も。千代田区神田界隈で探すという枠もあり大変かと思いますが、なにかしら知恵を絞ってもらえればと思います。


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あくまでわたしの持論なのですが。


本来カレーにはそのカレーごとに固有の辛さがあって、辛さを段階で調整するというのはちょっとおかしいと感じます。

それはなぜか


わたしの飲食業での10年ほどの経験の中で思うところがありました。
コックさんたち。
その日にやって来た食材を見て、その食材に対してベストな形での調理方法とメニューを決めて調理、提供に努めるのが一番自然でプリミティブな形です。お母さん、おばあちゃんと近いスタイルだと思います。
そこにレストランというフィルターが入って、現代という要素も加えると、決められているメニューの中でその日の食材を使ってベストを尽くす、というものではないでしょうか。

さてカレーですが、本来コックさんたちは、その料理に対して彼らの経験やセンス、論理の中にあるベストな味付けと「その結果の辛さ」という形で味の決め所を導き出して完成させているはずです。それが一番自然だと思います。

辛さの調整というのは面白い。しかし功罪どちらもあると思うのです。からさの安易な調整は味の破綻を招くこともありますゆえ。
しかしその中でも、段階で変わる辛さの中で変化する味の調整までちゃんと取り組んでいる店もあるはずだ、ということも忘れてはいけないと思うんです。

それで、振り返ってわたしたち外食カレーのカスタマーは「辛さを変えられないんだ」と気軽にいってしまう人もいる。そういう人は損をしているのじゃないかなと思います。
少し考えて、「ではなぜこの辛さなんだ?」という疑問を持つことや「好みの辛さの店を探そう」というアクションに健全性を感じます。

利便性で失われるものというのは必ずついて回るものだ、と考えています。


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名古屋。

色々思うところがある「名古屋のカレーシーン」。

「名古屋ににカレーなし」と、とある著名なカレー関係の方がいっていました。僕は初めはむしろその言葉に反対だった。いや、名古屋だって面白いカレー店がある。よく見えていないだけでエスニックシーンだってある。名古屋港のパキスタン人の集まるお店の成り立ち(港湾関係で働くパキスタン人が多く、そこからの、、等)やスリランカ人が多く営む中古車売買業とレストランの関係(自国への輸出等。名古屋は自動車の街でもある)とか。

でもね。

名古屋、それでもやっぱりカレーのシーンが見えてこないんです。

東京、大阪、福岡、札幌。この4都市にあって名古屋にないものはなんだかわかりますか?アマチュアシーンなんです。状況はどんどん変わるし時間は過ぎてゆくものですが、少し前までは間違いなくそうでした。
いみじくも、先日たまたま駒込のコザブロで名古屋藤が丘にある店の店主と話す機会がありました。3年前にその店で店主と僕が話した状況、名古屋のカレーシーン。それは未だ変わっていないようです。

アマチュアシーン、何かと言うと、たとえば食べ歩きとそれに付随するブログ、SNS。たとえば料理研究。料理を研究するアマチュアの人たちとそれを期待し、彼らの料理を楽しみに食べる人。そういうカルチャーのようなものが名古屋からは聞こえてこない。あったとしても大阪のようなムーブメントまで行っていない。アマチュアが底支えをしていないんです。いや、底支えをするアマチュアがいない。それらのひとが存在することによって個人店の店主でちょっと癖のある面白いカレーを出す店が、そのマニア層に支えられ、あともうちょっとの冒険ができるシーンが作られて。そこからその小さな動きを面白がるメディアが入ったり、メジャーな店での今までなかったメニューの登場とか、そういうような流れ。

そういうものがないんですよ。

悪い意味ではなく名古屋の食文化は緩やかにとじ、内側を向いていると感じます。そういう空気があるからこそいわゆる「名古屋メシ」と呼ばれるようになった他地方では見られない独特の食文化が出来上がっており、とても面白い。これは大事にしなければいけない部分でしょう。

思うにカレー、その名古屋メシ文化にフィットしないものなのかもしれません。たとえばまるまる別の食文化であるインドカレーなんていうものは名古屋では地域の食に溶け込んだりしにくいものなのかもしれない。東京なんかだとインドレストランやネパールレストランが日本人のニーズを拾っていい意味でインド料理やネパール料理ではない「東京インドカレー」的なものを生み出していると考えています。大阪もしかり。ところが名古屋ではそういう方向で動く気配がない。

それで注目しているのがカレー麺です。カレー麺、スパゲッティ、うどん、つけ麺、ラーメンに蕎麦、きしめん、焼きそばといろいろありますが、主は麺です。従がカレー。麺ありき、そこに追加としての、フレイバーとしてのカレー。これが実は名古屋地域でカレーの類での括れる枠なんじゃないか、なんていうことを考えています。

名古屋の人はどう思われるでしょうか。


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2015年8月、という日付のメモを見つけました。
忘備録的にここに記しておいてみましょうか。



カレーですよ。



現在ボクは自分の文章の管理執筆をApple社のMacBook Airに搭載されるOSXとiPhone7のiOSにまたがって連携してくれる「メモ」というアプリケーションで行なっています。決して万能のツールではありませんが、なんとなく使い始めてそれっきりそのまま、という感じで使い続けています。
レイアウトが必要だとかWord形式とか言われた時だけOSXのPagesに流し込んでいます。

その「メモ」の中をぐるぐると探っている時に古いメモなんかを見返したりします。2015年8月

タイトルに「個人的ベスト5」とありました。なんだろう、と開いて見ると、テレビの仕事が来た時のメモでした。切り口として 「ナン以外で食べるインドカレーについて」なんてことを提案した形跡がありました。えーっと、オンエアになったんだっけ、どうだったっけ。
それ以外に括りなしではぴいさんの個人的ベスト5も教えてください、と言われて書き出したものがこれです。

>>

個人的ベスト5は、、、

*錦糸町 ベヌスサウスインディアンダイニング(南インド料理)
まさにそのまんまケララやコーチンの食堂の味がする素晴らしい店。東銀座のダルマサーガラの元シェフが一旦帰国ののち再来日、自店をもった。

*巣鴨 プルジャダイニング(ネパール料理)
ネパール料理店は数あれど、こんなにも家庭料理然としている料理は他にない。大変美味しいのだが料理以上にここの女性店主のプルジャさんの人柄で通ってしまう。

*幡ヶ谷 スパイス(洋食カレー)
洋食カレーには珍しい3つのカレーソースを作り分け。特に辛口のチキンカレーはあと引く味。盛りもすばらしい大盛り加減。合いがけ推奨。

*吉田カレー(欧風)
欧風なのだけど中華の手法を使ったりとおもしろい。味はピカイチ。常に進化を深める味追求の姿勢のシャイで繊細な若い店主が頼もしい。ハウスルール厳しいので注意。

*町田 アサノ(カツカレー)
カツカレー嫌いのわたしが東京で食べられるカツカレーはここと下北沢のぱんにゃ(松尾貴史さんの店)、銀座スイスだけ。さらさらのカレーと薄く揚げ焼きにした仕上げの正統派カットレットを乗せるこだわり。まったく素晴らしい。

<<

なんて書いていました。

なるべくバラバラのジャンルでなるべくみなさんが面白がってくれそうな、しかもきちんと美味しい店と自分で決めて選んだんだと記憶しています。

正直にいうとベストなんとかとかランキングとかってナンセンスだと思っています。
生まれも育ちも親も違う人に同じ味を投げかけて全員から美味しいなんてことが帰ってくるなんてさらさら思っていませんし。それにしてもやっぱり人目につきやすいのはベストなんとかなんですよね。日夜苦悩しながらそういうものと付き合っております。

結構大変なんだぞ。

あ、この時の企画はボツになって向こうさんの提案の内容を咀嚼して喋った記憶があります。番組、なんだったっけかなあ。


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日本人シェフが作るインド料理、インドカレーというジャンルがあると思います。
昔と違って今は柔軟な発想で、インド料理を現地そのままの調理をするのではなく、自分たちの土地と文化の流れの中にある食材や技法を使って独自のスタイルのスパイス料理を生み出す日本人シェフが増えてきました。
その中で第1世代目、2世代目、3世代目というインド料理を得意とする日本人シェフたちがいます。
日本におけるインドカレーの始まりは太平洋戦争終戦後と考えられます。
その中で1世代目は日本のインド料理の夜明けに立っていたシェフたちと考えます。戦後早々にスタートを切っている「アジャンタ」や「新宿中村屋」などで経験を積んだ日本人シェフたち。
その戦後の先頭に立っている銀座の「ナイルレストラン」では初代はインド人、代替わりした2代目はインド人と日本人両方の血を持つ立ち位置で独自のポジションを確立していますがやはり1世代目といってもいいと考えます。3世代目を見ていると特にそれを感じます。
またデリーはその創業ストーリーがまさに日本人が生み出したインドカレーということで間違いなくこの1世代目に入るといえます。

2世代目として主にアジャンタから独立したシェフたちと1世代目に影響を受けた層のシェフたちがいます。
アジャンタ卒業生はここに。
栃木益子町「けらら」山本シェフ。横浜能見台「ガネーシュ」石原シェフ(没/店は存続)、大分高田市「サルナート」瀬口シェフ。千葉検見川「シタール」増田シェフ。仙台「チットラ」今井シェフ。高幡不動「アンジュナ」藤井シェフ。埼玉北浦和「さらじゅ」小森シェフ(閉店)。「初台スパイス食堂 和魂印才たんどーる」塚本シェフ。千葉船橋「サールナート」小松崎シェフ。料理教室「サザンスパイス」渡辺先生。

他にも中核をなす、多くの影響を広く及ぼすシェフたちは多くいます。「スパイスカフェ」伊藤シェフ、ヘンドリクス」若林シェフ、「ケララの風Ⅱ」沼尻シェフ、、、特に伊藤シェフはインド料理、カレーから一定の距離を取るようなスタンスも見え隠れしていてその未来を想像するとワクワクしてしまいます。

3世代目は2世代目の店で修行した人、2世代の店のファン、フォロワーたちの出店でしょうか。本当に多くの自由な発想のお店とシェフが台頭してきています。その営業形態すら今までにないものもも多く、屋台スタイルの営業、昼間だけの間借り営業、パーティースタイルの不定期営業や料理教室の形をとっての食事会だったり。もちろん今まで通り、大きなリスクを背負って自分でお店を持つ方もいらっしゃいます。ただ、お店持つというスタイルのプロとアマチュアとの間で今までのジャンルわけでは区分できないスタイルを持つ若いシェフたちが増えてきているという事実があります。
その中で少しだけ心配なのは、接客やトラブル時の対応です。飲食店での現場のホール経験がないと大変だなあ、と思います。他ではなかなか勉強できる機会もないまま自分の看板を持つ方も多いと聞く昨今、そういうトラブルに巻き込まれた時に上手に切り抜けられるかが心配です。お客さんはプロ、アマという見方はしてくれません。お金を腹っていうんだからそのぶんの責任を果たせ、と言われます。そして理不尽な言動には毅然とした態度を見せなければいけないのもお店商売です。頑張って欲しいと強く思います。

それにしても代を重ねることにいい意味で正統派インド料理に足す、引くをセンス良くできるシェフたちが増えてきた、と感じています。素晴らしいことです。



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