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ゆでられた蛙の寓話

ゆでられた蛙の寓話
 企業の倒産をめぐるシステム研究で、徐々に忍び寄る脅威に対しての不適応があまりに多すぎるので、「ゆでられた蛙」の寓話が生まれた。お湯が沸騰中のなべに蛙を入れれば、蛙はあわてて外へ飛び出そうとする。しかしその蛙を常温の水に入れ、怖がらせなければ、蛙はそのままでいるはずだ。さて、そのなべが熱源にのっているとする。水温を徐々にあげていくと、実に興味深いことが起こる。水温が摂氏二十一度近くに上昇しても、蛙はまったく動かない。実際、見るからに満足げな様子だ。水温がさらに上昇するにつれて、蛙はだんだん消耗し、とうとうなべからでることができなくなる。束縛するものは何もないのに、蛙はそのままゆでられてしまうのだ。なぜか?生存への脅威を感じるとる蛙の体内センサーが、環境のゆっくりした漸進的変化でなく、突然の変化を感じるようにできているからだ。
 似たようなことがアメリカの自動車産業に起こった。一九六〇年代、彼らは北米の生産を支配していた。それにごくゆっくりと変化が兆す。デトロイトのビック・スリーは、たしかに一九六二年には日本を自分達の脅威とは見ていなかった。その年の米国市場での日本車のシェアは四%に足りなかったからだ。六七年も、そのシェアは十%未満で、脅威ではなかった。七四年も事情はおなじで、日本車のシェアは十五%足らず。ビック・スリーがみずからのやり方と前提の核心に批判的な目を向けるようになったのはようやく八十年代初めのことで、日本車のシェアは二十一・三%に上昇していいた。八九年には三十%に届こうとしており、アメリカ自動車産業は国内販売台数の約六〇%を占めるだけになっていた。
 徐々に変化してゆくプロセスを見きわめる力を養うには、いまのあわただしいペースをゆるめ、派手なものでかでなく目立たないものにも注意を払う必要がある。潮だまりのふちに腰を下ろしてのぞきこむと、はじめはこれといった動きは何もないように見える。これども長く目をこらしていると、潮だまりは不意に生気をおびる。美しいさまざまな生物たちがそこにいる。しかし、ややゆっくりすぎる動きのせいで、最初は見えないのだ。問題は、われわれの頭がひとつの周波数に同調しすぎていることである。七八回転でしかみえないかのように、その半分の回転では何も目に入らない。ペースを落とし、重大な脅威をしばしば隠しているゆるやかなプロセスに目を向けることを学ばなければ、あの蛙と同じ運命をたどるだろう。
『The Fifth Discipline –The Art & Practice of The Learning Organization』
By Peter M. Senge

『最強組織の法則―新時代のチームワークとは何か―』ピーター・M・センゲ
P33


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