野仲イサオ 煮石記

ミンミンと 鳴く蝉の声 夢心地

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5月の思いで

え〜厚さ寒さも彼岸までと言いますが、ここにきてようやく涼しくなったような気がしますな。

といっても、それは九州の話で、今日東京に帰ってきますれば、まだまだ暑い。なんでも10月の半ばまでは暑いんだそうで。

それで九州に帰りましたのも、今年で2回目。どちらも仕事がらみでありまして、こんな二回も行けましたのも珍しい。

前回5月に帰りました時は、高校の時の同級生と飲みまして、話に夢中になっておりましたら、終電まで10分を切っておりました。

慌てて駅まで走りまして電車に飛び乗りましたが、乗った瞬間に発車。「やれやれ、良かった間に合った」と思っておりましたら、ちっともよかない。

なぜなら反対方向に向かって走ってたんですから。

慌てて次の駅でおりますも、もう反対方向の電車も走ってない。

まわりを見回しましてもシーンとした、ただの住宅街。タクシーを拾おうにも私の実家までですと、とんでもない金額になりますし、あたりには宿屋なんてありそうもありません。

仕方がないんで、駅のベンチに横になったんですが、5月の夜中なんてえのは結構寒い。着ていた服も半袖でしたしね。

こんなところで一晩あかしたら病気になっちまうってんでね、とぼとぼ歩き始めました。なんか朝までやってる店はないかと。

そしたら10分ほど歩くとでっかい健康センターみたいなお風呂やさんがあるじゃありませんか。

「やれやれ助かった。ここなら仮眠室なぞがあるだろう」ってんで入りました。

「すいませ〜ん。ここは何時までやってますか?」

「朝9時までやってます」

「じゃあ朝までいてもいいですか?」

「いいですけど横にはなれませんよ。300円だけどお金あるの?」って言われました。

もしかしたら近くに安いホテルかなんかがあったのかもしれませんねえ。そんなこといわれるなんて。それとも、よほどみすぼらしくみえたのでしょうか。

でももう疲れておりましたし、面倒くさかったのでその風呂屋で一夜を明かすことにしました。

結局そこに5時間ほど滞在したのですが、地獄でありましたな。洗い場と風呂桶とサウナを順繰りにまわるのですが、せいぜい一時間が限度じゃあないでしょうか。

体を何回洗ったのか、桶に入ったのか、サウナに入ったのか数え切れません。時間が経つのが以上に遅かったですな。お客が一人減り、二人減りして一人になるのがひどく寂しかったです。

そしたらまた新しいお客が入ってきまして、仲間ができたように嬉しかった。しかしいつしかその客もいなくなり、また新しい客がきたりと、客が何世代変わったのかわからないぐらいでした。

これって不老不死の人の気持ちに似てるんじゃないかと思いましたねえ。

まあしかし、永遠に続くかと思われた苦行もいつかは終わるものでして朝実家に帰っての睡眠はこの上なく気持ちのいいものでした。

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