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『LOVE』では、リンゴのドラム演奏の素晴らしさを再認識できます。
『ゲット・バック』の前に使われた『ジ・エンド』のドラム・ソロもいいのですが、
『サムシング』や『カム・トゥゲザー』でみられるドラム演奏は、
創造性豊かで曲をより魅力的なものにしています。
リンゴは控えめなドラマーですが、
誰よりも安定感がありビートルズのリズムを支えてきました。
そんなリンゴですが、
リンゴらしくない迫力あるドラム演奏を聴ける曲があります。
それはジョン・レノンのソロ作品『ゴッド(神)』です。
そこにはいつものシンプルに演奏するリンゴはいません。
荒々しくも心の奥底にまで迫ろうとするリンゴがいます。
『ジョンの魂』はリンゴ抜きには語れないアルバムです。
その象徴的な存在である『ゴッド』についてはなおさらです。
「ローリング・ストーン」誌は『ゴッド』について、
ロック史上最高のボーカルが聴けると絶賛しましたが、
この評論にはひとつ欠けているものがあります。
それはロック史上最高のドラムも聴けるということです。
それはテクニックではありません。
ドラマーのもつ本質的な部分です。
『ゴッド』は、
ビートルズとの決別という話題性、
それまでにない斬新な曲の構成、
恐ろしいまでに生々しいジョンのボーカル、
ビリー・プレストンの抑揚あるピアノ演奏など、
それらに注目がいきがちです。
しかし、リンゴのドラムをしっかり聴いて欲しいのです。
そうすれば、
この曲のベースがリンゴのドラムであると認識できるはずです。
しかも凄い演奏をしているのです。
『ゴッド』は同じフレーズを15回繰り返します。
ジョンはそこで全てのことを否定します。
それに合わせてリンゴのドラムが大胆に変化します。
それまでのリンゴではあり得ないほどです。
まるでアドリブのようにさえ感じられます。
その不安定な緊張感が曲にリアルさを与えているのです。
♪I don't believe in magic !
から始まって、
♪I don't believe in Mantra !
このフレーズあたりから聴く者の息が止まりそうになります。
なぜなら、リンゴの演奏がボーカルと拮抗するほど凄まじくなるからです。
この『ゴッド(神)』における演奏は、
ジョンを知りつくしているリンゴだからできたのかもしれません。
ジョンに必要なものがなんであるかを理解しているからです。
アラン・ホワイトやジム・ケルトナーでは成しえないことです。
♪I don't believe in Beatles !(ぼくはビートルズを信じない)
の一つ手前のフレーズ
♪I don't believe in Zmmerman !(ぼくはディランを信じない)
普通のドラマーであれは、
ここでクライマックスを意識して強い演奏をします。
ところがリンゴは違います。
むしろ控えめに演奏しジョンのボーカルを際ただせるのです。
そこにリンゴらしさを感じます。
あくまでも主役はジョンであるということをわきまえているのです。
人間的な素晴らしさを感じます。
それ以降は最後まで淡々と演奏します。
私の疑問は、
ビートルズを否定するこの衝撃的な作品を
リンゴがどのような気持ちで演奏していたかということです。
もしかするとジョンと同化していたのではないだろうかと思うのです。
でなければあんな激しい演奏をリンゴがするわけがないとも思えるのです。
目の前でジョンが
♪ And so dear friends (親愛なる友よ)
♪ You just have to carry on (がんばるしかないんだよ)
♪ The dream is over (夢は終わったんだよ)
と歌うのです。
リンゴの気持ちがどうであったのか気になります。
『ジョンの魂』では『ゴッド』の他にもリンゴの素晴らしい演奏が聴けます。
ビートルズとは一味違うリンゴのドラムを
ぜひ多くの人に聴いてもらいたいと思います。
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