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家に戻って、俺はすぐに2階の自分のベッドに転がった。

部屋を照らす光がまぶしい。

俺は右腕で目をおおいかぶせると、ふぅっと一つため息をついた。


あの日から、

あきの気持ちをしったあの日から

こうなることは分かっていたはずだった。

それでも、

それでも少しの期待を抱いていた自分。

それでも諦められなかった自分。

たった二文字の言葉を伝えられなかった自分。

そんな自分をとても情けなく感じた。


もう何もしたくも、考えたくもなかった。


そんな脱力感の中、ふとあの間違い電話を思い出す。

すると、不思議とあの声がまた無性に聞きたくなってきた。


俺は携帯を開いて、あの子の番号を見つめた。

10時・・・ちょっと過ぎ・・・

迷惑ではないだろうか・・・

だが番号を見つめるほど聞きたくなるあの声。

俺はいつのまにかボタンを押していた。

「プルルルルル・・・」

ゆっくりと耳に近づけた携帯から、呼び出し音が聞こえる。

仰向けになって上を見ると、やっぱり部屋を照らす電灯がまぶしく感じ、

今度は左腕で目を隠した。

「プルルルル・・・」

もう何回鳴ったかも分からない。

それでも、電話を切ることはしたくなかった。

「ガチャっ・・」

突然消える呼び出し音。

「・・・もしもし。」

次に聞こえてきたのは俺の望んでいたあの声だった。

「あの・・・この前の・・・・。」

俺は静かに言った。

「・・・もう、電話くれないかと思いましたよ。」

奥から彼女の嬉しそうな声が聞こえる。

「へへへっ、すみません。」

迷惑など思っていなかったのだと俺はホッとした。

「・・・なんか・・・元気ありませんね・・・。」

心配そうな声が奥から聞こえた。

「そうですか?」

俺はわざと明るく言う。

「はい。」

彼女ははっきり言った。

たった一度喋っただけなのに、ひょっとして・・・見透かされてる?

「ハハっ、そんなことありませんって。」

俺はまた、無理やり笑いながら言った。

「・・・ムリ・・・しないで下さいよ・・・。」

とっても、優しく、寂しそうな彼女の声。

その声に、急にいろんな感情がこみ上げてきた。


徹平のこと。

あきのこと。

壊したくない友情。

壊す事のできない想い。

失いたくない親友。

失いたくない最愛の人。

どちらか片方しか選ぶ事を許されなかった選択肢。


失くしたのは・・・最愛の人。

初めて恋した女性。

好きで、好きでたまらなかったあの想い。

「くっ・・・・・」

気づいたときには涙が出ていた。

目を隠していた腕が涙でしめる。

「・・・・・。」

「ふっ・・・くっ・・・。」


俺は、電話の奥の相手に謝ることも

ムリに笑うこともできずにただ泣いていた。

顔も知らない相手だ。

別にいいとも思った。

ただ、こみ上げる涙を止めることはできなかった。


「・・・・あなたに出会えて本当によかった・・・」

無言だった電話の置くから急に歌声が聞こえてくる。

とても綺麗な声。

透き通った、優しい歌声。

「くっ・・・・・・・」

その歌声で俺の涙はもっとあふれた。

もう腕はべっちょりだ。

彼女の歌声は、電話から俺の耳に。

頭から足のつま先まで響き渡った。

俺の心の中にすぅっと入り込む歌声。

心にしみるメロディー。


俺はもう、ムリに涙を止めようとは思わなかった。

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感動です!!
また読みに来ますね!!

2008/9/23(火) 午後 3:03 [ - ]

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ありがとうっ!!!

2008/9/23(火) 午後 3:14 [ はるか ]


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