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久しぶりに太田記念美術館に行ってきた。
江戸時代の庶民信仰について深い興味があったからである。
展示は富士信仰・伊勢参り・浅草寺から始まり、江の島・大山など、江戸市民にとって身近な神社仏閣を描いた錦絵が数多く並べられていた。
これらの神社仏閣は、言わば盛り場としての性格も持っており、混雑する参拝客目当ての見世物や大道芸なども絵に描かれているのが興味深かった。
全体的な印象だが、比較的有名な広重らの風景画が多かったような気がする。
勿論珍しいものもあり、個人的には渓斎英泉「江都三囲稲荷之前堤之景」の鳥居の絵が面白かった。
よくある三囲稲荷の絵というのは、隅田川側から見た、土手の上に鳥居の上部が見えている構図のものなのだが、今回の展示品は土手の反対側、つまり三囲稲荷側の様子が描かれたものだった。
今回の特別展は小規模のもので、図録がなかったのが残念だった。
以下、余談。
数年ぶりに行った太田記念美術館は、素敵に改装されていた。
一階展示室の中央部に中庭のような休憩場所が設えてあるのがまず目を引いた。
それと、畳敷きの一角があって、そこのショーケースには肉筆浮世絵が飾ってあって、ゆっくり座って眺めるようになっていた。
二階展示室は狭い通路のような形であり、全体的にはこじんまりとしている。
それが却って落ち着いた印象だった。
大きな特別展の際にはもっと展示スペースが設けられるのかもしれないけれど、このこじんまりした感じが気に入ったのだった。
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日日文化活動
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国立小劇場の文楽公演を観に行ってきた。
経済的な事情で、第一部のみである。
1「寿式三番叟」
2「伽羅千代萩」<御殿の段>
3「近頃河原の達引」<堀河猿廻しの段>
「寿式三番叟」は、謡曲から人形浄瑠璃化された作品である。
「三番叟」は歌舞伎舞踊にも移されていて、そちらはだいぶ前に歌舞伎座で観ていたので、今回の文楽作品を楽しみにしていた。
しかし、素直な感想を言うと、人形による舞踊というのはやはり無理があるような気がしたなぁ。
「伽羅千代萩」<御殿の段>は、堂々たる封建的悲劇で見応えがあった。
「近頃河原の達引」は、少し前に調べたことがあったので、観たかった作品。
お俊伝兵衛の心中もの作品で、内容的にはやや地味な印象を受けるが、この<堀河猿廻しの段>は面白い見せ場が二つある。
一つは、お俊の盲いた母親が三味線の師匠であって、教え子の女性と一緒に三味線を弾きあう場面。
勿論人形が弾くふりをするのだが、実際の三味線方が舞台脇で弾いているので、その弦捌きが見えている。
何気なく見比べていたら、三味線方と人形の弦捌きは完璧に合致していたのである。
もう一つは、お俊の兄で猿廻しの与次郎が、二匹の猿を使って猿廻しの芸を見せる場面。
一人の黒子が両手に猿の人形を付けて動いてみせるのだが、「これなら自分でもできるよなぁ」と苦笑しながら見ていたのだが、その動きはどんどん繊細、絶妙になっていき、まさに芸であった。
最後には二匹が舞踊に興じ、それぞれ異なる動きを見せたりするに至って、「自分にはできません、ごめんなさい」と心の中で謝った。
本公演は、大夫も三味線も人形も、重要無形文化財保持者が大勢出演していて、彼らの芸を堪能しただけでも観に行った価値はあったと思っている。
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先週後半、名古屋まで調査旅行に出かけていた。
調査の要目、というか目的の施設は以下の通り。
初 日 蓬左文庫
二日め 西尾市岩瀬文庫
三日め 鶴舞中央図書館
蓬左文庫には二度目である。
今回も、尾崎久弥コレクションにおける<膝栗毛もの>戯作の調査であった。
しかし、とにかく多量のため、今回も予定の半分に満たず時間切れになってしまった。
予めマイクロフィルムの『尾崎久弥コレクション』で予備調査を行い、万全を期したつもりだったのに。
それにしても居心地の良い施設で、調査に必要な基本図書も充実しており、対応も親切。
私が知る限り、最高の図書施設である。
岩瀬文庫には前々からずっと行きたかったのだが、少し行きづらい場所にあることと、数年前に施設の建替え工事などがあったため、今ごろになってしまった。
見たい・調べたい本がどっさりあったので、朝からワクワクしながら名鉄線に揺られて西尾に向かった。
西尾駅からはタクシー(帰りは歩いて駅まで戻った)。
新しくてきれいな岩瀬文庫もまた、実に居心地が良くて、大きな窓から見える緑が素晴らしかった。
閲覧室の奥の方には、なぜか畳敷きのスペースがあり、何のための場所なのかいろいろ考えてしまった。
私の知る限り、最高の図書施設である(二度目)。
調査対象の書は、草双紙、膝栗毛もの、魯文と多岐多量に渡ったため、案の定予定していた全ては見られなかった。
鶴舞中央図書館には、旅先で急遽行くことに決めた。
宿泊していたホテルが思ったよりも鶴舞に近かったのと、別件で鶴舞に行く用事ができたので、前日ホテルで決めて急いで準備をした(所蔵している和本の目録を持参していったのが勝因)。
ごく普通の公共図書館であり、特にたくさん和本類を持っているわけではないが、以前、草双紙コレクターがまとめて寄贈したものが文庫として所蔵されているらしい。
カウンターで閲覧したい旨を述べたところ、ちょっした騒ぎになってしまった。
どうやら普段閲覧するひとがほとんどいないらしく、図書館で発行した目録も見当たらないし、書庫のどこに置かれてあるかも分からないと言ってしばらく待たされた。
結局見ることができたので良かったが、そんなもんかー、と思って複雑な気分だった。
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今月初めのことだが、知人に誘われて国立小劇場に日本舞踊の公演を観に行った。
この公演はある流派の発表公演とのことで、観客も出演者の関係者ばかりだったらしい。
私を誘ってくれた知人の方も、出演者の関係者であった。
そのおかげで、公演後に楽屋に入ることを許された。
劇場裏の玄関から入ると、目の前に大きなお稲荷さんが壁に掛かっており、まずそれに感激。
公演スタッフとキャストが廊下を走り回っていた。
大きな楽屋に入ると、出演が終わったひとは化粧を落とし始めているし、これから出演するひとは舞台衣装に着替えたりしている。
知識では知っていたものの、生まれて初めて劇場の楽屋に入った私は、すっかり興奮してしまった。
「何だか怪しいやつみたいだなぁ」と思いつつも、鼻息を荒くしている自分を抑えられなかった。
いい経験したのー。
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天理ギャラリー「天理図書館開館80周年記念特別展―新収稀覯本を中心に―」
先日、天理ギャラリー「天理図書館開館80周年記念特別展―新収稀覯本を中心に―」を観覧してきた。
天理ギャラリーは、東京天理教館にあるこじんまりとした展示スペースで、しばしば天理図書館の文物を展示している。
今回は新収書中心の展示ということで、和漢洋に渡るさまざまな時代の書籍が展示されていた。
私の興味の範囲でいうと、近世の絵入版本類と俳書類にどうしても目が行ってしまう。
特に、天下の孤本という青本『四季豊年蔵』全四冊が目を引いた。
絵師が西村重長ということなので、赤本の表紙を改めた再刷本かもしれない。
画風も赤本風かと思われるがいかがだろうか?
それ以外にも近世の絵入版本が多く、実際に書誌を取りたくてウズウズしてしまった。
しかし、実はもっとも驚き興奮したのは、芭蕉自筆巻子本(米沢本)『幻住庵記』が、地味に目立つことなく展示されていたことであった。
これは再稿本として知られている真蹟で、一度見てみたいと思っていたものであった。
俳諧関連でいうと、西山宗因自筆の『向栄庵記』と与謝蕪村の新出書簡にも鼻息が荒くなってしまったのだった。
帰りがけに図録を購入したのだが、受付脇に図録のバックナンバーが沢山置かれていたので覗いてみると、古い図録はみな100円均一で売られていた。
思わず端から全部チェックして、以下の四冊を拾い出した。
「芭蕉」「馬琴」「グーテンベルクの世紀」「近世名家自筆本」
「近世名家自筆本」は在庫がないというので、手垢で汚れた展示本を無料で分けてくれた。
得したなー。
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