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庵田定夏「ココロコネクト ヒトランダム」(2010年/ファミ通文庫)
限りなく消極的なライトノベル読者である私であるが、久々に新しい作品に手を伸ばしてみた。
この作品を選んだ理由は、絵師が「白身魚」だったから、という所謂ジャケ買いであった。
以前読んだ土橋真二郎作品の絵が気に入っていたから。
さて、「ココロコネクト ヒトランダム」である。
文研部に所属する五人、八重樫太一・永瀬伊織・稲葉姫子・桐山唯・青木義文は、奇妙な現象に直面していた。前触れなく起こった青木と唯の“人格入れ替わり”。それは次々と部員全員に襲いかかり、彼らを異常な日常に放り込む。戸惑いつつもどこかその状況を楽しむ太一たちだったが、心の連鎖は彼らの秘めた心の傷をも浮かび上がらせ…。平穏が崩れたその時、五人の関係は形を変える!第11回えんため大賞特別賞受賞作品、愛と青春の五角形コメディ。(背表紙あらすじより)
人格入れ替わりというと、山中恒の名作「おれがあいつであいつがおれで」がスタンダードだが、他にも沢山あるねー。
そのどれもが、入れ替わってからの騒動と顛末を中心に描いてるのだが、本作は少し趣向が違う。
入れ替わりに巻き込まれた登場人物たちの心理的な変化に重点が置かれているのである。
なので、入れ替わりが起きてからのエピソードはさして目新しいものではなく、あっさりと片付いていく。
<面白い物語>を期待する向きには、少しばかり肩透かしかもしれない。
その一方で、登場人物一人ひとりの人間性がしっかり描き込まれているので、読み応えはある。
まぁまぁの作品かしら。
続編に期待(いま読み始めているところ)。
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日日読書
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グレッグ・ルッカ「回帰者」(2010年/講談社文庫)
アティカスシリーズの完結編だそうだ。
ボディガードから暗殺者へと転身していった前作「哀国者」に少々とまどったので、ストレートな続編であるこの作品を読むのに少しばかりためらいがあったのは事実である。
しかし、完結編とあらば、読まずに済ますわけにはいくまい。
一読三嘆!
とてつもなく密度の濃い、緊張感に溢れた冒険小説の傑作であった。
シリーズ中屈指の傑作だと思う。
今回もまた、明確で力強い社会的テーマが根幹にある。
それは「国際的な人身売買」で、作者自身の怒りと糾弾がはっきりと見て取れる。
そうしたテーマ主義の強さが苦手なひとにも、本作は十分アプローチ可能な物語性の強さがある。
作品のテーマと主人公のアクションが完全に結びついているからである。
緊張感に満ちた物語の中で、主人公のアティカスの恋人アリーナと元恋人ブリジットが再会する一連のシークエンスはちょっと楽しい部分である。
ユーモラスというほどではないけれど、いがみ合う二人が基本的に似た者同士であることがにじみ出てくるのである。
本シリーズはアクションに次ぐアクションが印象的なのだが、そうした中できっちり人間が描かれており、その人間性が物語を動かしていくことに改めて気付かされる。
それにしても、ルッカの他の作品は翻訳されないのだろうか。
近年のハードボイルド作家の中では、リー・チャイルドと並ぶ才能だと思うのだが。
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