医療現場から患者さんの視点へ

現場の医療を患者さんにわかりやすく伝えていきたいと思います。シリーズになってますので最初から読んで頂いた方がわかりやすいです。

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 Eさんは有能な営業マンで、趣味はゴルフでした。ある日だるさと目眩を自覚し疲れているのだろうと思うも、医者でも行ってみるかとたまの休みに近くの総合病院を受診しました。外来は混んでいて受診前に心電図をとる指示を受け三時間ほど待った後、やっと外来の医者に会えました。すると外来の医者が困った顔をして、「Eさん、悪いけどすぐ入院した方が良いなぁ」と言われてしまいました。「先生、どうしてですか?昨日もゴルフいったりしていたんですよ!」
 Eさんの病気は完全房室ブロックと言って、心臓内の電線が完全に切断されてしまう病気です。心臓の上の部屋(心房)と下の部屋(心室)が協調して動かず、結果として徐脈(脈が遅くなる状態)を招きます。Eさんの心拍数は35〜40回/分しかありませんでした。大人の活動時における心拍数は60回/分前後、状況によっては120回/分あります。しかしこれが半分に近い脈に落ちると、当然全身への血流も減ります。そのため色々な症状が出現し、最悪の場合心不全・脳梗塞など起こします。Eさん「そう言えば数ヶ月前から目眩・動悸・立ちくらみなどあったなぁ・・・」
 歩いて来院したEさんは診察室から車いすで病棟に運ばれます。本人は症状がそれ程強くないため、抵抗があるようでした。(当たり前ですよね)入院後奥さんと一緒に診察した医者から詳しく病状を聞き、徐脈を予防するためにはペースメーカー手術を受けるしかないと言われます。「先生が言っているのだから、間違いないでしょう。じゃ、やってください。」
 これには正直医者の方が少し驚きました。いきなりペースメーカー植え込みをその日のうちに即断で受け入れる患者さんは、あまり多くありません。後に判ったことですが、Eさんは「餅は餅屋。専門家はそれなりの知識・経験があるのだから、素人がどうこう言っても始まらない。」という信念があったのです。その日のうちにEさんは一時的な体外式ペースメーカーを挿入され、二日後手術室で電気生理学的カテーテル検査という心臓カテーテル検査・ペースメーカーの植え込み術を受けました。術後順調で一週間後退院しました。
 Eさんは後にその医者から「ペースメーカー植え込み術をこれから受ける患者さんに、Eさんの経験を話してもらえませんか?医者が対等に話をしているつもりでも、どこか患者さんとの間には自然と上下関係が出来てしまいます。患者さん同士なら医者との関係とは異なり、治療を受ける側の先輩・後輩として話をしてもらえるとより治療に対する理解が深まると思うのですが・・・」
 Eさんは勿論快諾しました。現在でもEさんはその医者にかかっています。

 治療を受けるとき、患者さんの方としてはいきなり予想外の事態に混乱する人も多くおられます。Eさんのような肝が据わった患者さんは珍しく、大抵は入院すら嫌がります。又医者と患者さんの間にはどうしても治療を行う側と受ける側の距離があります。普通の仕事と異なるのは、クライアントであるはずの患者さん側がどうしても下の立場になってしまうことです。医療側はそのことをしっかり理解しつつ、どうすれば説明が受け入れてもらえるかを考えなければと常に思います。

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初めまして。こんな記事もありますから、飛んできました。非常に参考になりました。先生方からみたこういう記事、珍しいので興味をもって読ませていただきました。私は洞不全なので、ブロックの方ほどではありませんでしたが、運動できるかだけは
確認して、すぐに自分では決断できました。患者との関係をこういうふうに、考えておられるのは、非常におもしろいなと思いました。これからもここで勉強させていただきますので、よろしくお願いいたします。

2012/8/11(土) 午前 4:03 pac*mak**0714


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