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またも最後の最後で底力を見せた。ただ、秋山監督は運命の「10・2」を制した時のように号泣はしなかった。穏やかな表情で、ナインにその身を任せた。リーグ優勝した2日より1回多い8度、宙を舞った。 「レギュラーシーズンを144試合目の最後で決め、CSも6試合目で決まり、本当にきついシーズンだなと思う。日本一を獲るぞという強い気持ち、全員の気持ちでやっていた」 今シリーズ。指揮官自らも「目いっぱいやな…。胃が痛いばい」と漏らすほどの接戦続きだった。第1戦で逆転サヨナラ勝ちし、アドバンテージを含めて2勝分リード。勢いに乗るはずが、守備のミスが目立った第2、3戦を落とした。日本シリーズ進出を目前とした第5戦は、自慢の救援陣が崩壊した。 それでも簡単には屈しない。普段、温厚で淡泊な印象さえ受ける秋山監督も燃えた。0―0の3回1死一塁。柳田のライナー性の打球は中堅・陽岱鋼(ヨウダイカン)が、地面すれすれで捕球したと判定され、一瞬にしてダブルプレー。ベンチを飛び出した秋山監督は猛然と審判団へ詰め寄った。遅延行為で退場宣告される規定の5分は迫る。自身最後のタクトとなる可能性もある試合。だが、引かない。今まで見せたことのない姿だった。 6年間でチームを3度のリーグ優勝に導いた指揮官の、今季限りでの辞任が表面化したのは今月14日。CSファイナルS前日とあって、球団は当初、発表を控えるよう提案した。だが、指揮官は「しようがない。こうなってしまったんだ。発表しよう。俺はいいけど選手たちはどうだ。毎日、毎日“どうなんですか”と聞かれる。選手にウソはつかせられないよ」と拒絶。記者会見を開いた。 昨年10月21日に肺カルチノイドで死去した笠井和彦前球団社長兼オーナー代行(享年76)の命日を翌日に控えたこの日、日本シリーズ進出を決めた。職を引き継いだ後藤芳光球団社長兼オーナー代行と孫正義オーナーが21日に墓参りに行く予定だった。秋山監督にとっても、故人は現場のことを理解し、補強を含めてバックアップを惜しまなかった恩人。「今でも監督室へ入ってくる気がするんだよ」。一周忌を前に最高の報告ができた。 「今年はメジャーでも下位(ワイルドカード)が勝ち抜いた。セ・リーグもそう。パだけは何とかリーグ優勝のチームが行きたいと思った」。秋山監督はリーグ覇者としての強烈なプライドを口にした。本拠地開催のCSではここまで空席が目立ったが、最終戦にして観衆は初の満員3万8561人に達した。 |
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